二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

文字の大きさ
上 下
435 / 475

できるんだもん……

しおりを挟む
 上機嫌でエルたちと狩りにいった筈の娘は、何故か膨れっ面で帰ってきた。
 最初こそエルの背に隠れどうしたのかと驚いたが、苦笑いしながらも狩りが上手くいかなかったのだとエルが教えてくれた。

 「自分だけ捕まえられなかったって拗ねちゃって」

 「それは……愛依にしては珍しいですね。何かあったんですか?」

 繋とは違い狩りに行く時は率先して付いていく愛依は、弓や剣こそ使わないが器用に罠を作り捕まえていた。
 それなのに何故?と首を傾げる縁に……

 「罠にはかかったんだよ。そこから仕留めるまでに暴れて逃げられたんだ。オレがやるって言ったんだけど自分でやるって聞かなくてーーって痛っ!愛依痛いからっ」

 エルの背に隠れ話しを聞いていたらしい愛依がなぜバラすんだとばかりにエルを叩いていた。
 どうやら自分の失敗をバラされたのがかなりご立腹のようだ。

 「こらこら。エルお兄ちゃんが痛がってますから止めてあげなさい。それより帰ってきたら言うことがあるでしょう?」

 「……………………ただいま」

 「はい、おかえりなさい」

 手を伸ばせば抱きついてきた小さかな身体を抱き上げつつ、隣りで褒めてとばかりに自分が捕まえた獲物を見せて来る真の頭を撫でてやる。
 どうやらこちらは上手くいったらしい。

 「初めての狩りはどうでした?」

 「あ、あの、その、この子たちが教えてくれたおかげでなんとか」

 愛依を気遣いながらも両手に仕留めたウサギと鳥をぶら下げながら嬉しそうにそう言う。
 エルを見れば「エニシよりは全然マシだよ」と言われ喜んでいいのか微妙なところだった。
 自分はそもそも罠にかかるのをじっと待っているのが苦手なだけで罠はちゃんと作れるのだと言い訳しておく。

 「まぁ獲れたなら良かったです。みんな~、お兄ちゃんたちがお肉を獲ってきてくれましたよ~」

 まだまだ育ち盛りの子どもたちにお兄ちゃんが頑張ってくれたよと告げれば、本当?とばかりに駆け寄ってきた子どもたちに微笑む。

 「お兄ちゃんが頑張るみんなのために獲ってきてくれました。夜ご飯楽しみにしてて下さいね」

 「「「やった!」」」
 「お肉だ!」
 「兄ちゃんすげー」

 餌付けのようになってしまったが、喜ぶ子どもたちの姿に彼も嬉しそうだ。

 「では今後のためにもエルに捌き方を教わっておいて下さい。イリスさんも一緒に」

 少し離れて話しを聞いていたイリスも呼び寄せると、縁は狩りで汚れてしまった双子を風呂にいれることにする。

 「………………アイだって…できるもん」

 「そうですね。今日は上手くいかなかっただけです。次はパパとママと真の4人で行ってみましょうか。パパは狩りが上手いですから一緒に教えてもらいましょう」

 ママもまだ下手くそだからと言いながら頭を洗ってやる。
 怒ってムキになればムキになるほど何事もいかないからと宥めつつ、同じ双子でも上手いことできた真も褒めておく。

 「シンはおさかなさんつかまえたい」

 「……………」

 このマイペースなところは一体誰に似たのだろうか?
 ジークではないことを考えれば縁しかいないのだが本人にあまり自覚はなかった。
 しかし大切な息子の願いならばと今度魚料理(ちらし寿司)を作る約束をすれば、ご機嫌に身体を洗うのだった。

 「真はママとお魚さんとどっちが好き?」

 「?、ママ」

 あ、よかった。
 思わず尋ねてしまったが、望んだ答えが返ってきてホッとした。

 「アイだってママだいすきだもん!」

 負けないとばかりに叫ぶ愛依にありがとうと抱きしめる。
 いつか反抗期がき、親離れする日が来るとしても今こうして大好きだよと言ってくれる彼らが愛しい。

 「本当に?ママは真と愛依みたいに上手く木登りも出来ませんよ?」

 「アイができるからいいの!」
 「シンも」

 「愛依たちみたいに速くも走れません」

 「アイたちができるもん!」

 「愛依たちみたいに狩りも出来ません」

 「アイがつかまえてくるもん!おっきいのとってくる!」
 「シンはおさかなさんとってくる」

 愛しい愛しい我が子たち。彼らは縁の自慢だ。
 繋とも翔とも違うが優しく逞しく育ってくれている。

 「ありがとう。何でも出来る2人がママは羨ましい。頑張る2人の姿が見れてとっても嬉しい。ありがとう、大好きですよ」

 ギュッと抱きしめれば、やっと笑ってくれた愛依に縁も微笑むのだった。



 
 
しおりを挟む
感想 121

あなたにおすすめの小説

傷だらけの僕は空をみる

猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。 生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。 諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。 身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。 ハッピーエンドです。 若干の胸くそが出てきます。 ちょっと痛い表現出てくるかもです。

称号は神を土下座させた男。

春志乃
ファンタジー
「真尋くん! その人、そんなんだけど一応神様だよ! 偉い人なんだよ!」 「知るか。俺は常識を持ち合わせないクズにかける慈悲を持ち合わせてない。それにどうやら俺は死んだらしいのだから、刑務所も警察も法も無い。今ここでこいつを殺そうが生かそうが俺の自由だ。あいつが居ないなら地獄に落ちても同じだ。なあ、そうだろう? ティーンクトゥス」 「す、す、す、す、す、すみませんでしたあぁあああああああ!」 これは、馬鹿だけど憎み切れない神様ティーンクトゥスの為に剣と魔法、そして魔獣たちの息づくアーテル王国でチートが過ぎる男子高校生・水無月真尋が無自覚チートの親友・鈴木一路と共に神様の為と言いながら好き勝手に生きていく物語。 主人公は一途に幼馴染(女性)を想い続けます。話はゆっくり進んでいきます。 ※教会、神父、などが出てきますが実在するものとは一切関係ありません。 ※対応できない可能性がありますので、誤字脱字報告は不要です。 ※無断転載は厳に禁じます

おお、勇者よ!姫ではなく王を欲するとはなんたることだ!

銀紙ちよ子
BL
魔王を倒した勇者が望んだのは姫ではなく王だった。 日本から異世界の王家に転生した俺は、魔王が世界を脅かす中、懸命に勇者を育成していた。 旅立つと聞けば薬草を持たせるかポーションを持たせるかで悩み、多めに包もうとした支度金を止められ、果ては見送りまで阻止された。 宿屋に定食屋に薬屋に武器屋。冒険者ギルドにエルフに獣人達。あちらこちらに協力を頼み、勇者育成のためのクエストを実装する日々。 十年の歳月を経て、幼い勇者は無事に成長し、とうとう魔王を倒した。 そして帰ってきた勇者が望んだのが……。

完結·助けた犬は騎士団長でした

BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。 ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。 しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。 強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ…… ※完結まで毎日投稿します

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

【本編完結】十八禁BLゲームの中に迷い込んだら、攻略キャラのひとりに溺愛されました! ~連載版!~

海里
BL
部活帰りに気が付いたら異世界転移していたヒビキは、とあるふたりの人物を見てここが姉のハマっていた十八禁BLゲームの中だと気付く。 姉の推しであるルードに迷子として保護されたヒビキは、気付いたら彼に押し倒されて――? 溺愛攻め×快楽に弱く流されやすい受けの話になります。 ルード×ヒビキの固定CP。ヒビキの一人称で物語が進んでいきます。 同タイトルの短編を連載版へ再構築。話の流れは相当ゆっくり。 連載にあたって多少短編版とキャラの性格が違っています。が、基本的に同じです。 ※ムーンライトノベルズ様にも投稿しています。先行はそちらです。

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

幼い精霊を預けられたので、俺と主様が育ての父母になった件

雪玉 円記
BL
ハイマー辺境領主のグルシエス家に仕える、ディラン・サヘンドラ。 主である辺境伯グルシエス家三男、クリストファーと共に王立学園を卒業し、ハイマー領へと戻る。 その数日後、魔獣討伐のために騎士団と共に出撃したところ、幼い見た目の言葉を話せない子供を拾う。 リアンと名付けたその子供は、クリストファーの思惑でディランと彼を父母と認識してしまった。 個性豊かなグルシエス家、仕える面々、不思議な生き物たちに囲まれ、リアンはのびのびと暮らす。 ある日、世界的宗教であるマナ・ユリエ教の教団騎士であるエイギルがリアンを訪ねてきた。 リアンは次代の世界樹の精霊である。そのため、次のシンボルとして教団に居を移してほしい、と告げるエイギル。 だがリアンはそれを拒否する。リアンが嫌なら、と二人も支持する。 その判断が教皇アーシスの怒髪天をついてしまった。 数週間後、教団騎士団がハイマー辺境領邸を襲撃した。 ディランはリアンとクリストファーを守るため、リアンを迎えにきたエイギルと対峙する。 だが実力の差は大きく、ディランは斬り伏せられ、死の淵を彷徨う。 次に目が覚めた時、ディランはユグドラシルの元にいた。 ユグドラシルが用意したアフタヌーンティーを前に、意識が途絶えたあとのこと、自分とクリストファーの状態、リアンの決断、そして、何故自分とクリストファーがリアンの養親に選ばれたのかを聞かされる。 ユグドラシルに送り出され、意識が戻ったのは襲撃から数日後だった。 後日、リアンが拾ってきた不思議な生き物たちが実は四大元素の精霊たちであると知らされる。 彼らとグルシエス家中の協力を得て、ディランとクリストファーは鍛錬に励む。 一ヶ月後、ディランとクリスは四大精霊を伴い、教団本部がある隣国にいた。 ユグドラシルとリアンの意思を叶えるために。 そして、自分達を圧倒的戦闘力でねじ伏せたエイギルへのリベンジを果たすために──……。 ※一部に流血を含む戦闘シーン、R-15程度のイチャイチャが含まれます。 ※現在、改稿したものを順次投稿中です。  詳しくは最新の近況ボードをご覧ください。

処理中です...