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決まらない
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「ママこれ」
「はい。じゃああと4冊ね」
「うん」
渡された本を受け取ると新たな本を探し始めたアズの背中を見守る。
アズとエル、現在2人のご褒美探しに町まで来ているのだが、本が欲しいと言うアズのため本屋に来ていた。
それほど欲張りなアズではないが、気になるものを全て買っていては切りがないため5冊までと決め欲しいものを選んでいる。
パラパラとめくっては中を見また棚に戻していく。
当たり前だがそれほど発展してないこちらの世界では漫画など娯楽的本は絵本ぐらいである。
そのためアズが今手にしている本も年齢的に絵本ではなく、小難しい単語や文章が書かれた分厚い本である。
はっきり言って自分には理解出来る気がしない。
しかしそれを躊躇いなく手にするアズに感心し、選んでいる辺りから本の中身を大体理解しているらしいことに驚く。
確かに字の読み書きを教えたのは縁だ。
だがそこからの努力は彼本人のものであり、そこまでの知識をいつの間にか身に付けていたことに今まで気付かなかった。
「オレも教えられることは教えてたから」
そう言って笑うエルはどこか誇らしげだった。
普段の調子から忘れてしまっていたが、エルも元々それなりに教育を受けていたらしく教養もあり弟思いである。
自分が教えられることがあるならばと喜んで教えていたらしい。
「まぁあの調子なら大丈夫そうですね。それでエルは何にするんですか?」
「え。あ、あぁ、うーん、ど、どうしよう。オレまだ全然決まってなくて。というか何も浮かばなくて……」
アズと違い意外に優柔不断なエルは中々決められないようだ。
「うーん、そうですね。あっ、お酒とかは?」
以前酒入りのケーキを喜んで食べていたため言ってみるが首を振られた。
「そこまで酒好きってわけでもないし。それに子どもたちの前で酒呑むってのもなんか………」
繊細だなぁと思った自分はかなり図太いのだろう。
縁的にはそこまで気にしなくていいとは思うが、子どもたちのことを思って言ってくれたのならば喜んで受け取っておこう。
では他にはないかと色々案を出してみるが、エルの反応はいまいちよろしくない。
「あとはそうですねぇ……あっ、そういえばジークたちが言ってたんですけどナイフ用のホルスターとかどうですか?何かたくさん持ってたでしょ?」
それほどの数何に使うんだとばかりに持っていたエル。
態々用途を聞こうとは思わないが、どうせ持つならば持ち易いようにしてもいいのではと思ったのだ。
「嫌だったら防具とかでもいいですし。リルが狩ってきてくれた魔物やら動物やらの皮とかありますから何かしら使えるんじゃないですか?」
肉以外必要ないと言うリルに、ならいつか使うかもしれないから貰っとけというアレンたちにまぁいいかと鞄に突っ込んでおいたのだ。
「…………それ何の魔物だったのか聞くの怖いんだけど。アイツ基本的に大物しか狩ってこないじゃん」
顔を引き攣らせているエルだが、縁はいまいちよく分からず頭を捻る。
「みんなよく食べますからね。流石リルです」
「いや、うん、まぁ、それはそうなんだけどさ……」
自分の分だけではなく家族分とってきてくれるリルはなんて優しいのだろうと縁は思っていた。
「この前作った唐揚げ美味しかったですよね。今度は焼き鳥でもしてみましょうか」
「………………ソウダネ」
はてさて焼き鳥のタレはどうやって作るのだろうかと考え始めた縁に、隣りでは呆れたような視線をエルが向けてきているのに気付くことはないのだった。
「まぁホルスターはいいかもね。防具もいいけどオレあんまり着込むの好きじゃないから」
身を守るものをそんな理由で嫌がるのもどうかと思ったが、本人がいらないと言うならいいのだろう。
必要になったらなったでその時にでも作ればいい。
「エニシってオレが武器持ってんの怒ったことないよね。なんで?」
「?、怒る必要がないからじゃないですか?」
「危ないとか思わないの?」
「いや、危ないから持ってるんでしょう?」
身を守るため、生活するために必要だからこそ持っているだろうにそれを怒る理由がよく分からない。
「あぁ、もしかして初めて会った時のこと気にしてます?あんなの忘れていいですよ。怪我もなかったですし、何より今こうしてエルが隣りにいてくれることが私は嬉しいんですから」
「……そんなわけないでしょ。忘れるわけないし。あれは本当に悪かったと思ってる。でも……………許してくれてありがと」
こうして見ると彼も随分変わったなぁと何とも感慨深い。
「どういたしまして」
アレンたちがエルのことを今どう思っているか分からないが、縁にとっては彼は最早かけがえのない大切な家族だ。
彼が理由もなく人を傷付けることも、以前のように縁を襲おうなんてことを考えるはずがないこともちゃんと分かっている。
「エルがいてくれないとまたダンジョンで穴に落ちた時に道連れにする人がいなくなっちゃいますからね」
「そこ!?ってか道連れは確定なわけ?」
ふふ、冗談ですよ冗談。…………たぶん。
「はい。じゃああと4冊ね」
「うん」
渡された本を受け取ると新たな本を探し始めたアズの背中を見守る。
アズとエル、現在2人のご褒美探しに町まで来ているのだが、本が欲しいと言うアズのため本屋に来ていた。
それほど欲張りなアズではないが、気になるものを全て買っていては切りがないため5冊までと決め欲しいものを選んでいる。
パラパラとめくっては中を見また棚に戻していく。
当たり前だがそれほど発展してないこちらの世界では漫画など娯楽的本は絵本ぐらいである。
そのためアズが今手にしている本も年齢的に絵本ではなく、小難しい単語や文章が書かれた分厚い本である。
はっきり言って自分には理解出来る気がしない。
しかしそれを躊躇いなく手にするアズに感心し、選んでいる辺りから本の中身を大体理解しているらしいことに驚く。
確かに字の読み書きを教えたのは縁だ。
だがそこからの努力は彼本人のものであり、そこまでの知識をいつの間にか身に付けていたことに今まで気付かなかった。
「オレも教えられることは教えてたから」
そう言って笑うエルはどこか誇らしげだった。
普段の調子から忘れてしまっていたが、エルも元々それなりに教育を受けていたらしく教養もあり弟思いである。
自分が教えられることがあるならばと喜んで教えていたらしい。
「まぁあの調子なら大丈夫そうですね。それでエルは何にするんですか?」
「え。あ、あぁ、うーん、ど、どうしよう。オレまだ全然決まってなくて。というか何も浮かばなくて……」
アズと違い意外に優柔不断なエルは中々決められないようだ。
「うーん、そうですね。あっ、お酒とかは?」
以前酒入りのケーキを喜んで食べていたため言ってみるが首を振られた。
「そこまで酒好きってわけでもないし。それに子どもたちの前で酒呑むってのもなんか………」
繊細だなぁと思った自分はかなり図太いのだろう。
縁的にはそこまで気にしなくていいとは思うが、子どもたちのことを思って言ってくれたのならば喜んで受け取っておこう。
では他にはないかと色々案を出してみるが、エルの反応はいまいちよろしくない。
「あとはそうですねぇ……あっ、そういえばジークたちが言ってたんですけどナイフ用のホルスターとかどうですか?何かたくさん持ってたでしょ?」
それほどの数何に使うんだとばかりに持っていたエル。
態々用途を聞こうとは思わないが、どうせ持つならば持ち易いようにしてもいいのではと思ったのだ。
「嫌だったら防具とかでもいいですし。リルが狩ってきてくれた魔物やら動物やらの皮とかありますから何かしら使えるんじゃないですか?」
肉以外必要ないと言うリルに、ならいつか使うかもしれないから貰っとけというアレンたちにまぁいいかと鞄に突っ込んでおいたのだ。
「…………それ何の魔物だったのか聞くの怖いんだけど。アイツ基本的に大物しか狩ってこないじゃん」
顔を引き攣らせているエルだが、縁はいまいちよく分からず頭を捻る。
「みんなよく食べますからね。流石リルです」
「いや、うん、まぁ、それはそうなんだけどさ……」
自分の分だけではなく家族分とってきてくれるリルはなんて優しいのだろうと縁は思っていた。
「この前作った唐揚げ美味しかったですよね。今度は焼き鳥でもしてみましょうか」
「………………ソウダネ」
はてさて焼き鳥のタレはどうやって作るのだろうかと考え始めた縁に、隣りでは呆れたような視線をエルが向けてきているのに気付くことはないのだった。
「まぁホルスターはいいかもね。防具もいいけどオレあんまり着込むの好きじゃないから」
身を守るものをそんな理由で嫌がるのもどうかと思ったが、本人がいらないと言うならいいのだろう。
必要になったらなったでその時にでも作ればいい。
「エニシってオレが武器持ってんの怒ったことないよね。なんで?」
「?、怒る必要がないからじゃないですか?」
「危ないとか思わないの?」
「いや、危ないから持ってるんでしょう?」
身を守るため、生活するために必要だからこそ持っているだろうにそれを怒る理由がよく分からない。
「あぁ、もしかして初めて会った時のこと気にしてます?あんなの忘れていいですよ。怪我もなかったですし、何より今こうしてエルが隣りにいてくれることが私は嬉しいんですから」
「……そんなわけないでしょ。忘れるわけないし。あれは本当に悪かったと思ってる。でも……………許してくれてありがと」
こうして見ると彼も随分変わったなぁと何とも感慨深い。
「どういたしまして」
アレンたちがエルのことを今どう思っているか分からないが、縁にとっては彼は最早かけがえのない大切な家族だ。
彼が理由もなく人を傷付けることも、以前のように縁を襲おうなんてことを考えるはずがないこともちゃんと分かっている。
「エルがいてくれないとまたダンジョンで穴に落ちた時に道連れにする人がいなくなっちゃいますからね」
「そこ!?ってか道連れは確定なわけ?」
ふふ、冗談ですよ冗談。…………たぶん。
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