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ちゃんと聞いて
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「アイわるないもん!」
皿洗いも終わり玲はどうしたかと様子を見に行こうとすれば、廊下にまで響き渡る子どもたちの泣き声と愛依の怒ったような声が聞こえてきた。
「悪くねぇわけないだろ。繋が泣いちまってんだから謝れ」
「やっ!アイわるない!」
声からしてジークが愛依を叱っているようだが、その内容からは何があったかは分からず首を傾げるとどうしたのかと近寄っていく。
「愛依が繋を突き飛ばしたんだよ。怪我はしてねぇみたいだが危ないだろ」
なるほど。繋が元気に泣いている理由は分かった。
「そうですか。なら真はなんで泣いているんですか?」
「あ?あー、繋につられて泣いてんじゃねぇのか?」
ねぇのか?って………なぜ知らないのか。
セインに抱きつき泣く繋だが、それを見て真がつられて泣くとは思えない。
愛依にしても感情が豊かではあるが理由なく繋を突き飛ばすとは思えなかった。
「ちゃんと繋に謝れ」
「やだ!パパきらい!」
あらあらあら。とうとう嫌いとまで言われてしまっている。
悪いことをしたら叱るのは大切だが、そう頭ごなしに叱ったところで子どもが納得も反省もしないだろうに。
「真おいで」
繋はセインが、玲はアレンが宥めてくれているが、ジークは愛依を叱っているため真が放っておかれてしまっていた。
泣きながらもヨロヨロと歩いてきた真を抱え上げる。
「愛依」
「っ」
縁にまで怒られると思ったのかビクリと肩を震わせ俯く愛依に苦笑いする。
普段それほど怒る方ではないが、全くないわけではなく偶に泣かせてしまうこともあるため怯えられてしまった。
ギュッと服を握りしめる愛依は泣くのを我慢しているのか怒ってはいるが顔は無表情だ。
「大丈夫。怒ってませんからおいで」
そう言い優しくもう1度名前を呼べば、漸く顔を上げそろそろと近付いてくる。
それでも普段とは違い抱き付いてくることはなく、一歩手前で止まってしまった。
「………アイわるないもん」
「ちゃんと理由があったんですよね?愛依も真も繋お姉ちゃんのこと大好きなのママはちゃんと知ってますよ」
「うん」
身体的違いや父親が違うことに疑問を抱いているかもしれないが姉妹仲が悪いことは全くなく、むしろ良いとも言えるほどだ。
そんな愛依が理由なく繋を突き飛ばすはずはなく、何かしらわけがあるはずだ。
「…………ねーね、シンのシッポふんだの。シンいたいって…だからアイどんした」
それで真は泣いていたのか。謎が解けた。
話しからして繋が誤って真の尻尾を踏み、泣いた真を守ろうとして繋を突き飛ばしてしまったようだ。
人間である縁には尻尾がないためどれほどの痛みかは分からないが、真の泣き方からしてそれなりに痛かったのだろう。
「真のためだったんですね?」
頷く愛依に微笑みおいでと手を伸ばせば、今度こそ抱き付いてきた小さな身体を抱きしめてやる。
「真を守ろうとした愛依は優しいですし間違ってませんよ。けどやり方がちょっと間違ってただけです」
そう、方法が悪かっただけだ。
「繋お姉ちゃんもわざと踏んだんじゃないんですよ。どんするんじゃなくてどいてって言えば繋お姉ちゃんも分かってくれましたよ」
「シンないてたの」
泣く真に驚き咄嗟に手を出してしまったのだろう。
「そうですね。でも愛依にどんされて転んだ繋お姉ちゃんも痛かったはずですからそれはごめんねしましょう?」
真を守ろうとしたことは間違いではないが、突き飛ばして転ばさせてしまったことはよくない。
「真の尻尾を踏んでしまったことは繋お姉ちゃんもきっとごめんねってしてくれますから。愛依はどんしてごめんねって。真を守ってくれた優しい愛依なら出来ますよね?」
愛依がしたこと全てを否定するわけではない。
真を守ろうとしたのだと言うならば怒る理由などはなく、ただ手を出すのではなく言えば分かってくれたよと教える。
「アイわるない」
「悪くないですよ。家族を守ろうとした愛依は悪くないです。けど真と同じで繋お姉ちゃんも痛い痛いしたからそこだけごめんねしましょう?」
「…………うん」
頷いた愛依に微笑むと繋を呼びお互い謝らせた。
涙で顔をグシャグシャにしながらもごめんねと真に謝る繋に愛依も漸く納得したのか声は小さかったがきちんと謝っていた。
「それで?理由も聞かず自身の子を叱っていたパパはどうします?」
「…………悪かった」
理由も聞かず愛依が悪いと決め込んでいたジークがバツが悪そうな顔で謝ってくる。
「私にですか?何のことでしょう?」
相手が違う。
「あー、その………悪かったな愛依。あー、あれだ、ごめんな」
「パパきらい」
「っ!」
「………じゃないよ」
「そ、そうか」
あからさまにホッとするジークに側でそれを見ていたアレンとセインが肩を震わせているのだった。
「というか3人もパパがいてなんでこれぐらい解決出来ないんですか?」
「「「…………」」」
気まずそうに顔を逸らす3人に大きな溜め息をつくのだった。
皿洗いも終わり玲はどうしたかと様子を見に行こうとすれば、廊下にまで響き渡る子どもたちの泣き声と愛依の怒ったような声が聞こえてきた。
「悪くねぇわけないだろ。繋が泣いちまってんだから謝れ」
「やっ!アイわるない!」
声からしてジークが愛依を叱っているようだが、その内容からは何があったかは分からず首を傾げるとどうしたのかと近寄っていく。
「愛依が繋を突き飛ばしたんだよ。怪我はしてねぇみたいだが危ないだろ」
なるほど。繋が元気に泣いている理由は分かった。
「そうですか。なら真はなんで泣いているんですか?」
「あ?あー、繋につられて泣いてんじゃねぇのか?」
ねぇのか?って………なぜ知らないのか。
セインに抱きつき泣く繋だが、それを見て真がつられて泣くとは思えない。
愛依にしても感情が豊かではあるが理由なく繋を突き飛ばすとは思えなかった。
「ちゃんと繋に謝れ」
「やだ!パパきらい!」
あらあらあら。とうとう嫌いとまで言われてしまっている。
悪いことをしたら叱るのは大切だが、そう頭ごなしに叱ったところで子どもが納得も反省もしないだろうに。
「真おいで」
繋はセインが、玲はアレンが宥めてくれているが、ジークは愛依を叱っているため真が放っておかれてしまっていた。
泣きながらもヨロヨロと歩いてきた真を抱え上げる。
「愛依」
「っ」
縁にまで怒られると思ったのかビクリと肩を震わせ俯く愛依に苦笑いする。
普段それほど怒る方ではないが、全くないわけではなく偶に泣かせてしまうこともあるため怯えられてしまった。
ギュッと服を握りしめる愛依は泣くのを我慢しているのか怒ってはいるが顔は無表情だ。
「大丈夫。怒ってませんからおいで」
そう言い優しくもう1度名前を呼べば、漸く顔を上げそろそろと近付いてくる。
それでも普段とは違い抱き付いてくることはなく、一歩手前で止まってしまった。
「………アイわるないもん」
「ちゃんと理由があったんですよね?愛依も真も繋お姉ちゃんのこと大好きなのママはちゃんと知ってますよ」
「うん」
身体的違いや父親が違うことに疑問を抱いているかもしれないが姉妹仲が悪いことは全くなく、むしろ良いとも言えるほどだ。
そんな愛依が理由なく繋を突き飛ばすはずはなく、何かしらわけがあるはずだ。
「…………ねーね、シンのシッポふんだの。シンいたいって…だからアイどんした」
それで真は泣いていたのか。謎が解けた。
話しからして繋が誤って真の尻尾を踏み、泣いた真を守ろうとして繋を突き飛ばしてしまったようだ。
人間である縁には尻尾がないためどれほどの痛みかは分からないが、真の泣き方からしてそれなりに痛かったのだろう。
「真のためだったんですね?」
頷く愛依に微笑みおいでと手を伸ばせば、今度こそ抱き付いてきた小さな身体を抱きしめてやる。
「真を守ろうとした愛依は優しいですし間違ってませんよ。けどやり方がちょっと間違ってただけです」
そう、方法が悪かっただけだ。
「繋お姉ちゃんもわざと踏んだんじゃないんですよ。どんするんじゃなくてどいてって言えば繋お姉ちゃんも分かってくれましたよ」
「シンないてたの」
泣く真に驚き咄嗟に手を出してしまったのだろう。
「そうですね。でも愛依にどんされて転んだ繋お姉ちゃんも痛かったはずですからそれはごめんねしましょう?」
真を守ろうとしたことは間違いではないが、突き飛ばして転ばさせてしまったことはよくない。
「真の尻尾を踏んでしまったことは繋お姉ちゃんもきっとごめんねってしてくれますから。愛依はどんしてごめんねって。真を守ってくれた優しい愛依なら出来ますよね?」
愛依がしたこと全てを否定するわけではない。
真を守ろうとしたのだと言うならば怒る理由などはなく、ただ手を出すのではなく言えば分かってくれたよと教える。
「アイわるない」
「悪くないですよ。家族を守ろうとした愛依は悪くないです。けど真と同じで繋お姉ちゃんも痛い痛いしたからそこだけごめんねしましょう?」
「…………うん」
頷いた愛依に微笑むと繋を呼びお互い謝らせた。
涙で顔をグシャグシャにしながらもごめんねと真に謝る繋に愛依も漸く納得したのか声は小さかったがきちんと謝っていた。
「それで?理由も聞かず自身の子を叱っていたパパはどうします?」
「…………悪かった」
理由も聞かず愛依が悪いと決め込んでいたジークがバツが悪そうな顔で謝ってくる。
「私にですか?何のことでしょう?」
相手が違う。
「あー、その………悪かったな愛依。あー、あれだ、ごめんな」
「パパきらい」
「っ!」
「………じゃないよ」
「そ、そうか」
あからさまにホッとするジークに側でそれを見ていたアレンとセインが肩を震わせているのだった。
「というか3人もパパがいてなんでこれぐらい解決出来ないんですか?」
「「「…………」」」
気まずそうに顔を逸らす3人に大きな溜め息をつくのだった。
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