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がんばるぞ
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「「ママ……」」
「ごめんね、ちょっと待っていてくれますか?」
最近そう言われることが増えた。
最初はなんで?早く!と我儘を言い甘えていたが、それも顔色悪くベッドに横になる姿にまたママと会わせてもらえなくなるのでと不安になった。
前に風邪でママが寝込んだ時うつってはいけないと数日離され泣いたのを覚えていたから。
「大丈夫だ。言ってたろ?真と愛依の弟か妹が今ママの腹の中にいるんだ。いっぱい食う子だからママが疲れちまってんだよ」
不安そうに立ち尽くす僕たちにパパがそう言い頭を撫でてくれる。
「ママおなかすいてるの?」
「ママたべたらなおる?」
ならご飯を持っていこうと走り出そうとしたが、後ろからパパに捕まえられてしまい離してと暴れる。
ママを治してあげるのに!
「待て待て待て。お前らの気持ちは嬉しいが疲れてるつってんだろ。肉や魚はすぐ吐いちまうし、そんなに量は食えねぇよ」
ならば何ならいいのか?何ならママは元気になるのかと聞こうとすれば、後ろからのしのしという音と共にリルがやってきた。
口に咥えられている木の籠の中には色とりどりの果物がいくつも詰め込まれている。
「お、今日もとってきてくれたのか。ありがとな」
籠を受け取りリルを撫でようとしたパパの手は避けられたが、パパは気にすることなくまたありがとうと言っていた。
ママや僕たちには触らせてくれるリルだけど、パパたちが触ろうとすればいつも逃げていく。
ママはリルを抱きしめて一緒に寝ることもあるのに……
「ほら、これなら持っていっていいぞ」
渡された赤く丸いそれは最近ママが美味しいと言っていた果物だった。
ママが美味しいならと僕たちも食べてみたけど酸っぱくて一口でやめた。
「ママこれたべたらげんきなる?」
「そうだな。真たちが持っていってくれたらもっと喜んでくれるぞ」
「「いく!」」
食べやすいようにと切ってもらい、落とさないよう気を付けながらママがいる部屋まで運んでいく。
「「ママ~、ごはん」」
「……ごはん?」
もうそんな時間だったかと慌てるママにちがうと首を振るとここまで運んできた皿をそっと差し出す。
「ママたべたらげんきになるってパパが」
「ママげんきなる?」
早く食べてと言えば、久しぶりに見たママの笑顔に愛依と2人嬉しくなった。
「ありがとう。ママのために持ってきてくれたんですね。とても美味しそう」
おいでと手招きされ寄っていけばギュッと抱きしめてくれる。
「真と愛依のおかげで頑張れそうです。2人も楽しみにしていて下さいね」
「シンね、いもうとがいい」
「アイは……アイもいもうと!」
すでに弟は翔がいるため次は妹がいいとねだる。
それから妹だったら一緒に何をしようかとママと話していれば、様子を見にきたのだろうアーパパに少しママを休ませてやってくれと言われ愛依と手を繋ぎ部屋を出る。
「真と愛依もありがとう。2人のおかげで元気が出ました」
部屋を出ていく時そう言ってくれたママに笑って頷くと、リルを探すため走って庭に向かう。
「「リル!つれてって!」」
「……ガウ?」
あれを食べたママは元気になるとパパが言っていた。
あれを食べたママも元気になったと言った。
ならもっと食べればママはもっと元気になる!
「あれとってきたところつれてって!」
「ママげんきになるの!」
だが困ったように鳴き動かないリルに、パパなら何とかしてくれるのかもと再び走るとパパの姿を探す。
「「パパっ!」」
「あ?どうした?」
かなりの勢いでぶつかったのにパパはやっぱり痛がることなく受けとめてくれる。
「ママげんきする!」
「ママげんきなるの!」
「はぁ?」
こっちに来てとリルの前までパパを引きずっていった。
「リルつれてっていって。シンいっぱいさがす」
「アイもママげんきするみさがす」
興奮しながらも説明すれば、何となく話しを察したジークは悩んだ。
「今からか?今日はもう食べたんだろう?なら明日にしろ。明日ならパパも一緒に行ってやるから」
「「本当?」」
「ああ。悪いがお前もそれでもいいか?面倒だろうがコイツらも縁を早く元気にしたいんだ」
「ガウ」
やっぱりパパだと愛依と頷き合う。
強くてカッコいいパパが2人は大好きだった。
「ほら、リルも頷いてくれたから今日は大人しくメシ食って風呂入って早く寝ろ。起きるのが遅かったらおいていくからな」
「「やだ!」」
それはイヤだと首を振るとパパに言われた通り今日は早く寝ることにするのだった。
次の日両手いっぱいに実を抱え家に戻った2人にママは笑って抱きしめてくれるのだった。
「ごめんね、ちょっと待っていてくれますか?」
最近そう言われることが増えた。
最初はなんで?早く!と我儘を言い甘えていたが、それも顔色悪くベッドに横になる姿にまたママと会わせてもらえなくなるのでと不安になった。
前に風邪でママが寝込んだ時うつってはいけないと数日離され泣いたのを覚えていたから。
「大丈夫だ。言ってたろ?真と愛依の弟か妹が今ママの腹の中にいるんだ。いっぱい食う子だからママが疲れちまってんだよ」
不安そうに立ち尽くす僕たちにパパがそう言い頭を撫でてくれる。
「ママおなかすいてるの?」
「ママたべたらなおる?」
ならご飯を持っていこうと走り出そうとしたが、後ろからパパに捕まえられてしまい離してと暴れる。
ママを治してあげるのに!
「待て待て待て。お前らの気持ちは嬉しいが疲れてるつってんだろ。肉や魚はすぐ吐いちまうし、そんなに量は食えねぇよ」
ならば何ならいいのか?何ならママは元気になるのかと聞こうとすれば、後ろからのしのしという音と共にリルがやってきた。
口に咥えられている木の籠の中には色とりどりの果物がいくつも詰め込まれている。
「お、今日もとってきてくれたのか。ありがとな」
籠を受け取りリルを撫でようとしたパパの手は避けられたが、パパは気にすることなくまたありがとうと言っていた。
ママや僕たちには触らせてくれるリルだけど、パパたちが触ろうとすればいつも逃げていく。
ママはリルを抱きしめて一緒に寝ることもあるのに……
「ほら、これなら持っていっていいぞ」
渡された赤く丸いそれは最近ママが美味しいと言っていた果物だった。
ママが美味しいならと僕たちも食べてみたけど酸っぱくて一口でやめた。
「ママこれたべたらげんきなる?」
「そうだな。真たちが持っていってくれたらもっと喜んでくれるぞ」
「「いく!」」
食べやすいようにと切ってもらい、落とさないよう気を付けながらママがいる部屋まで運んでいく。
「「ママ~、ごはん」」
「……ごはん?」
もうそんな時間だったかと慌てるママにちがうと首を振るとここまで運んできた皿をそっと差し出す。
「ママたべたらげんきになるってパパが」
「ママげんきなる?」
早く食べてと言えば、久しぶりに見たママの笑顔に愛依と2人嬉しくなった。
「ありがとう。ママのために持ってきてくれたんですね。とても美味しそう」
おいでと手招きされ寄っていけばギュッと抱きしめてくれる。
「真と愛依のおかげで頑張れそうです。2人も楽しみにしていて下さいね」
「シンね、いもうとがいい」
「アイは……アイもいもうと!」
すでに弟は翔がいるため次は妹がいいとねだる。
それから妹だったら一緒に何をしようかとママと話していれば、様子を見にきたのだろうアーパパに少しママを休ませてやってくれと言われ愛依と手を繋ぎ部屋を出る。
「真と愛依もありがとう。2人のおかげで元気が出ました」
部屋を出ていく時そう言ってくれたママに笑って頷くと、リルを探すため走って庭に向かう。
「「リル!つれてって!」」
「……ガウ?」
あれを食べたママは元気になるとパパが言っていた。
あれを食べたママも元気になったと言った。
ならもっと食べればママはもっと元気になる!
「あれとってきたところつれてって!」
「ママげんきになるの!」
だが困ったように鳴き動かないリルに、パパなら何とかしてくれるのかもと再び走るとパパの姿を探す。
「「パパっ!」」
「あ?どうした?」
かなりの勢いでぶつかったのにパパはやっぱり痛がることなく受けとめてくれる。
「ママげんきする!」
「ママげんきなるの!」
「はぁ?」
こっちに来てとリルの前までパパを引きずっていった。
「リルつれてっていって。シンいっぱいさがす」
「アイもママげんきするみさがす」
興奮しながらも説明すれば、何となく話しを察したジークは悩んだ。
「今からか?今日はもう食べたんだろう?なら明日にしろ。明日ならパパも一緒に行ってやるから」
「「本当?」」
「ああ。悪いがお前もそれでもいいか?面倒だろうがコイツらも縁を早く元気にしたいんだ」
「ガウ」
やっぱりパパだと愛依と頷き合う。
強くてカッコいいパパが2人は大好きだった。
「ほら、リルも頷いてくれたから今日は大人しくメシ食って風呂入って早く寝ろ。起きるのが遅かったらおいていくからな」
「「やだ!」」
それはイヤだと首を振るとパパに言われた通り今日は早く寝ることにするのだった。
次の日両手いっぱいに実を抱え家に戻った2人にママは笑って抱きしめてくれるのだった。
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