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ドヤァ
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本人たちは真剣なのかもしれないが、周りもそうかと聞かれればそうでもないということがある。
「ママ、ねこさんすき?」
「ええ。とても可愛くて好きですよ」
茶毛に青い瞳は可愛く、元々動物好きでもあった縁は子猫をとても気に入っていた。
「ケイより?」
子どもらしい可愛い質問に微笑む。
「そうですねぇ。可愛らしい猫さんも好きですけど…可愛いくて優しい繋が私は大大大好きですよ」
「……うわぁ、すっごいドヤ顔」
どうだとばかりに子猫を見上げる繋にエルが呆れていた。
動物好きな繋には珍しくケンカ越しだが、繋には悪いがその怒り方すら大人たちから見れば可愛く止めるに止められない。
悔しいのか唸り声を上げる子猫を撫でつつ、のんびりお茶をするのだった。
それから暫くして子猫を連れ帰宅したのだが、案の定というか、やはりと言うべきか子猫は何故か縁意外に懐かず、子どもたちはママに近づけないと泣いてしまった。
「そいつ……猫じゃねぇだろ」
「ってか、コイツなんで縁から離れねぇんだよ!」
「「「「ママ~」」」」
家族からの捨ててこいコールにどうしたものかと戸惑う。
噛みも引っ掻きもしてはいないが、近寄るなとばかりに威嚇する子猫に仲良くしようにも誰も近付けないのだ。
ただ一人縁を除いて。
それこそどこに行くにも縁の後ろを付いてくる子猫は可愛らしいものだが、これでは誰かに子猫を託すどころか縁以外に懐くかすら怪しい。
「逆にもう他の方に託した方がこの子も諦めますかね?」
「どうだろな。下手すれば脱走して帰ってきそうだ」
いっそのこと手放した方が子猫も諦めがつくかもと縁が言うが、それは難しいのではないかとセインが唸る。
ジークも頷いており、だが捨て置くことも出来ない。
「子どもたちのためにもやっぱり手放した方がーー」
「ガウッ!」
「わっ!?リ、リル?どうしーーあっ」
トコトコとリルが近付いてきたかと思えば、目の前で一鳴きする。
出会った初めの頃以来縁に対して吠えるということもなかったためかなり驚いたが、よく見ればその視線は縁ではなく縁の膝に向かっていたため視線を落とせば子猫がコテンと気絶していた。
大人でさえ驚くような鳴き声だ、子猫が驚かないわけがなく恐怖で気を失ってしまったのだろう。
「其方たちは少々優し過ぎる。己が立場が分かっていない小童にはこれぐらいしてやらねば分からんぞ」
「…立場、ですか?」
「そうだ。可哀想だからと手を貸してばかりではいつまで経っても独り立ち出来ぬ。それを抜きにしても世話になっている立場でまるで自分の方が上だと勘違いしている小童は1度しっかり叱ってやらねば」
リルの言葉に甘やかしてしまっていた自分を恥じた。
子猫の態度に困りながらも自分にしか懐かないことに少しだが嬉しさもあったのだ。
だが共に生活する以上可愛いからとそれが許されるわけもなく、どちらが上か教えておかなければならない。
セインたちにもリルの言葉を伝えれば、なるほどと頷き手伝ってくれる。
少々可哀想だが、セインたちにも吠えられ威嚇されれば尻尾を丸めながらも勝気に鳴くことはなくなった。
「君が嫌いだからじゃないんです。彼らは私にとって大切な家族だから嫌いになってほしくないんです」
力無く子猫に、決して嫌いだからしているわけではないと言い背を撫でてやる。
「怖い目に合ったからこその防衛本能かもしれませんが……言ったでしょう?私たちは君を傷付けたりしないって。私も、私の家族も君を傷付けることはありません」
だから怖がらなくていいと言い続ける。
「繋だって泣きながらも1度だって君に手を出しはしなかったでしょう?戦えばきっと勝てるのに言葉で怒ることしかしなかった」
魔法を使える繋も、力が強い真たちも泣きながらも子猫に手を上げることなどせず、きっと考えもしていないに違いない。
優しく可愛い子どもたち。
だから大丈夫だと言い続ける縁に、力無くだが返事をするように鳴く子猫を褒めるように撫でてやるのだった。
「ママ、ねこさんすき?」
「ええ。とても可愛くて好きですよ」
茶毛に青い瞳は可愛く、元々動物好きでもあった縁は子猫をとても気に入っていた。
「ケイより?」
子どもらしい可愛い質問に微笑む。
「そうですねぇ。可愛らしい猫さんも好きですけど…可愛いくて優しい繋が私は大大大好きですよ」
「……うわぁ、すっごいドヤ顔」
どうだとばかりに子猫を見上げる繋にエルが呆れていた。
動物好きな繋には珍しくケンカ越しだが、繋には悪いがその怒り方すら大人たちから見れば可愛く止めるに止められない。
悔しいのか唸り声を上げる子猫を撫でつつ、のんびりお茶をするのだった。
それから暫くして子猫を連れ帰宅したのだが、案の定というか、やはりと言うべきか子猫は何故か縁意外に懐かず、子どもたちはママに近づけないと泣いてしまった。
「そいつ……猫じゃねぇだろ」
「ってか、コイツなんで縁から離れねぇんだよ!」
「「「「ママ~」」」」
家族からの捨ててこいコールにどうしたものかと戸惑う。
噛みも引っ掻きもしてはいないが、近寄るなとばかりに威嚇する子猫に仲良くしようにも誰も近付けないのだ。
ただ一人縁を除いて。
それこそどこに行くにも縁の後ろを付いてくる子猫は可愛らしいものだが、これでは誰かに子猫を託すどころか縁以外に懐くかすら怪しい。
「逆にもう他の方に託した方がこの子も諦めますかね?」
「どうだろな。下手すれば脱走して帰ってきそうだ」
いっそのこと手放した方が子猫も諦めがつくかもと縁が言うが、それは難しいのではないかとセインが唸る。
ジークも頷いており、だが捨て置くことも出来ない。
「子どもたちのためにもやっぱり手放した方がーー」
「ガウッ!」
「わっ!?リ、リル?どうしーーあっ」
トコトコとリルが近付いてきたかと思えば、目の前で一鳴きする。
出会った初めの頃以来縁に対して吠えるということもなかったためかなり驚いたが、よく見ればその視線は縁ではなく縁の膝に向かっていたため視線を落とせば子猫がコテンと気絶していた。
大人でさえ驚くような鳴き声だ、子猫が驚かないわけがなく恐怖で気を失ってしまったのだろう。
「其方たちは少々優し過ぎる。己が立場が分かっていない小童にはこれぐらいしてやらねば分からんぞ」
「…立場、ですか?」
「そうだ。可哀想だからと手を貸してばかりではいつまで経っても独り立ち出来ぬ。それを抜きにしても世話になっている立場でまるで自分の方が上だと勘違いしている小童は1度しっかり叱ってやらねば」
リルの言葉に甘やかしてしまっていた自分を恥じた。
子猫の態度に困りながらも自分にしか懐かないことに少しだが嬉しさもあったのだ。
だが共に生活する以上可愛いからとそれが許されるわけもなく、どちらが上か教えておかなければならない。
セインたちにもリルの言葉を伝えれば、なるほどと頷き手伝ってくれる。
少々可哀想だが、セインたちにも吠えられ威嚇されれば尻尾を丸めながらも勝気に鳴くことはなくなった。
「君が嫌いだからじゃないんです。彼らは私にとって大切な家族だから嫌いになってほしくないんです」
力無く子猫に、決して嫌いだからしているわけではないと言い背を撫でてやる。
「怖い目に合ったからこその防衛本能かもしれませんが……言ったでしょう?私たちは君を傷付けたりしないって。私も、私の家族も君を傷付けることはありません」
だから怖がらなくていいと言い続ける。
「繋だって泣きながらも1度だって君に手を出しはしなかったでしょう?戦えばきっと勝てるのに言葉で怒ることしかしなかった」
魔法を使える繋も、力が強い真たちも泣きながらも子猫に手を上げることなどせず、きっと考えもしていないに違いない。
優しく可愛い子どもたち。
だから大丈夫だと言い続ける縁に、力無くだが返事をするように鳴く子猫を褒めるように撫でてやるのだった。
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