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魔界とは魔族が住む場所と聞いていたため地獄のようなものかと思っていたのだが、見て回った限り暗さはあれどそう怖くもなく、建物としても人間が住むそれとそう大差はないようだ。
「誰がそう大人しく待っていてやるもんですか」
そう呟くと未だ足に巻き付く鎖を抱え出口を目指すのだった。
結局足の鎖を外すことは困難だった。
だから壊した。
どういう作りなのか分からないが、足に嵌められた部分はいくら魔法を使おうと切断することは出来ず、ならばと括り付けられていたベットの脚の部分を切断することにしたのだ。
勿論先程の吐き気を忘れていたわけではなく、かなりの苦痛ではあったが耐えられないほどではない。
何より命がかかっている今、多少の気持ち悪さなど些細なものだ。
それでも衝撃はかなりのもので時間がかかったが何度も息をつきながら何とか切断することができた。
あとは逃げるだけと部屋の外に出てみるがーー
「(なんでこう大きい城というのはどこも似たような作りなんですか!)」
持ち前の方向音痴が発揮されてしまい似たような場所をぐるぐると回ってきてしまう。
本人はいたって真面目に出口を探しているのだが、今いる自分の位置が分からずどこも同じように見えてしまい進んでいるのか戻ってしまっているのかさえ分からない。
もっと分かりやすく~~室と書いておいてほしい。
むしろ出口への案内看板をつけておいてほしかった。
ここまで広い建物に、しかしひとっこ一人見当たらず逆に不気味で仕方がない。
もしものためにヒソヒソと隠れながら行動しているが、一向に玄関に着くことが出来ずイライラしてくる。
「(あんな男にアズとエルを返してなんかやるもんですか。1人寂しく孤独死すればいい)」
魔族というものに老後があるのかは分からないが、老いてなお面倒を見てくれる人もなく1人寂しくのたれ死ねばいいと悪態をつく。
手放したのも、憶えていなかったのも自業自得だ。
今更面倒を見ろと言ったって返してやらない。
「(顔が良くても性格が悪過ぎるんですよ。大体人に鎖をつけるって何なんですか)」
1人の不安を男への悪態をつくことで何とか心のバランスを保っていた。
「…………帰りたい」
ふと本音が溢れた。
「どこにだ?」
「っ!」
まさか返答があるとは思っておらず驚き振り返ればいつの間にやら男が立っており慌てて離れる。
どうやって急に現れたのか、どうして自分の場所がバレたのかと言いたいことは山程あるがどうせこの男は答えはしないだろうと少しずつ距離をとっていく。
「まさか逃げるとはな。あの状況でまだ魔力を使う気が起きたのは私も予想外だ」
甘く見ていたという男に、ならそのまま油断しててくれれば良かったのにと舌打ちをする。
「だがここまでだ」
そう言い一歩近づいてきた男に背を向けると廊下を走り出す。
折角部屋から抜け出したのだ、再び連れ戻されてなるものかと力の限り廊下を走り続ける。
「私は気の長い方ではないぞ」
そんなこと知ったことではない。
ずっと走り続けているのに行く先々に男が呆れ顔で待ち伏せており余計に腹が立つ。
まるで子どもの鬼ごっこのようで、ならばと目についた部屋に駆け込み隠れてみるがそんなこと意味がないとばかりに見つけられてしまう。
「人間というものは本当に愚かだな。こうなってもまだ抵抗しようとするとは」
「離してっ!」
鎖を掴まれたかと思えば、ズルズルとそのまま廊下を引き摺られていく。
所々壁や床を掴み抵抗を試みるが爪が数枚剥がれただけで結局部屋に連れ戻されてしまった。
挙句また逃げ出さないようにと両足に加え両手首と首にも長い鎖を付けられる。
「ふざけるなっ!離しなさい!」
「これに懲りたら2度と逃げ出そうなど考えないことだ」
誰がそんなこと聞くものか!
暴れる度ジャラジャラと激しく音を立てる鎖が腹立たしい。
何故自分がこんな目に合わなければいけないのか。
「明日から色々余興を考えているから今の内休んでおくんだな」
人の話しを聞かない外道が!
自分は男を楽しませるための玩具ではない!
睨み付ける縁を気にした風もなく男はまた音もなく部屋を出て行くのだった。
「愚かな人間らしく最後まで抵抗してやりますよ」
こんなことで諦めると思ったら大間違いだ。
自分には会いたい人達が、愛する家族が待っていてくれるのだから。
「こんなことならエルに魔族の弱点をもっと詳しく聞いておくんでした」
魔族は魔力が何より大切で命だとは聞いていたが、あの男の魔力がどれほどでどうすれば全てが無くなるまで魔力を使い切るかが分からない。
「アズ、は大丈夫だろうけどエルは……止めるかな」
嫌っているとはいえ実の父が討たれるのを黙って見ているだろうか?
もし縁が捕まることで解決すると言われたら仕方ないと差し出すなんてことしないだろうか?
彼に限ってそんなことはないと信じたいが、可能性がないとは言えない。
そうなった時自分は彼を許せるだろうか?
色んな疑問が浮かびながら今は逃げることだけ考えるんだと自分に言い聞かせるのだった。
「誰がそう大人しく待っていてやるもんですか」
そう呟くと未だ足に巻き付く鎖を抱え出口を目指すのだった。
結局足の鎖を外すことは困難だった。
だから壊した。
どういう作りなのか分からないが、足に嵌められた部分はいくら魔法を使おうと切断することは出来ず、ならばと括り付けられていたベットの脚の部分を切断することにしたのだ。
勿論先程の吐き気を忘れていたわけではなく、かなりの苦痛ではあったが耐えられないほどではない。
何より命がかかっている今、多少の気持ち悪さなど些細なものだ。
それでも衝撃はかなりのもので時間がかかったが何度も息をつきながら何とか切断することができた。
あとは逃げるだけと部屋の外に出てみるがーー
「(なんでこう大きい城というのはどこも似たような作りなんですか!)」
持ち前の方向音痴が発揮されてしまい似たような場所をぐるぐると回ってきてしまう。
本人はいたって真面目に出口を探しているのだが、今いる自分の位置が分からずどこも同じように見えてしまい進んでいるのか戻ってしまっているのかさえ分からない。
もっと分かりやすく~~室と書いておいてほしい。
むしろ出口への案内看板をつけておいてほしかった。
ここまで広い建物に、しかしひとっこ一人見当たらず逆に不気味で仕方がない。
もしものためにヒソヒソと隠れながら行動しているが、一向に玄関に着くことが出来ずイライラしてくる。
「(あんな男にアズとエルを返してなんかやるもんですか。1人寂しく孤独死すればいい)」
魔族というものに老後があるのかは分からないが、老いてなお面倒を見てくれる人もなく1人寂しくのたれ死ねばいいと悪態をつく。
手放したのも、憶えていなかったのも自業自得だ。
今更面倒を見ろと言ったって返してやらない。
「(顔が良くても性格が悪過ぎるんですよ。大体人に鎖をつけるって何なんですか)」
1人の不安を男への悪態をつくことで何とか心のバランスを保っていた。
「…………帰りたい」
ふと本音が溢れた。
「どこにだ?」
「っ!」
まさか返答があるとは思っておらず驚き振り返ればいつの間にやら男が立っており慌てて離れる。
どうやって急に現れたのか、どうして自分の場所がバレたのかと言いたいことは山程あるがどうせこの男は答えはしないだろうと少しずつ距離をとっていく。
「まさか逃げるとはな。あの状況でまだ魔力を使う気が起きたのは私も予想外だ」
甘く見ていたという男に、ならそのまま油断しててくれれば良かったのにと舌打ちをする。
「だがここまでだ」
そう言い一歩近づいてきた男に背を向けると廊下を走り出す。
折角部屋から抜け出したのだ、再び連れ戻されてなるものかと力の限り廊下を走り続ける。
「私は気の長い方ではないぞ」
そんなこと知ったことではない。
ずっと走り続けているのに行く先々に男が呆れ顔で待ち伏せており余計に腹が立つ。
まるで子どもの鬼ごっこのようで、ならばと目についた部屋に駆け込み隠れてみるがそんなこと意味がないとばかりに見つけられてしまう。
「人間というものは本当に愚かだな。こうなってもまだ抵抗しようとするとは」
「離してっ!」
鎖を掴まれたかと思えば、ズルズルとそのまま廊下を引き摺られていく。
所々壁や床を掴み抵抗を試みるが爪が数枚剥がれただけで結局部屋に連れ戻されてしまった。
挙句また逃げ出さないようにと両足に加え両手首と首にも長い鎖を付けられる。
「ふざけるなっ!離しなさい!」
「これに懲りたら2度と逃げ出そうなど考えないことだ」
誰がそんなこと聞くものか!
暴れる度ジャラジャラと激しく音を立てる鎖が腹立たしい。
何故自分がこんな目に合わなければいけないのか。
「明日から色々余興を考えているから今の内休んでおくんだな」
人の話しを聞かない外道が!
自分は男を楽しませるための玩具ではない!
睨み付ける縁を気にした風もなく男はまた音もなく部屋を出て行くのだった。
「愚かな人間らしく最後まで抵抗してやりますよ」
こんなことで諦めると思ったら大間違いだ。
自分には会いたい人達が、愛する家族が待っていてくれるのだから。
「こんなことならエルに魔族の弱点をもっと詳しく聞いておくんでした」
魔族は魔力が何より大切で命だとは聞いていたが、あの男の魔力がどれほどでどうすれば全てが無くなるまで魔力を使い切るかが分からない。
「アズ、は大丈夫だろうけどエルは……止めるかな」
嫌っているとはいえ実の父が討たれるのを黙って見ているだろうか?
もし縁が捕まることで解決すると言われたら仕方ないと差し出すなんてことしないだろうか?
彼に限ってそんなことはないと信じたいが、可能性がないとは言えない。
そうなった時自分は彼を許せるだろうか?
色んな疑問が浮かびながら今は逃げることだけ考えるんだと自分に言い聞かせるのだった。
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