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「そんな顔するぐらいならついて行けばよかっただろ?」
「…………」
縁が出かけてからまだ1時間。
言葉にこそしないが寂しいとばかりに足に張り付いてきた我が子の姿に苦笑いする。
あまり猫可愛がりするセインではないがそれでも娘を愛しているし、繋も今はそれを分かってくれている。
主に縁の気遣いによる努力の賜物だが。
以前「パパ、ケイきらい?」と言われ驚きのあまり固まっていれば、後ろでそれを聞いていた縁が苦笑いしていた。
「ほらほら大切な娘が泣きそうになってますよ?」
自分ではそんなことを言ったことも、態度もしたいことはなかったのでまさかそう思われていたことにかなり驚いた。
「そっ、そんなことあるわけないだろ!繋は俺の大事な娘だ!」
「でも……パパ、ギュウしてくれない」
「へ?」
ぎゅう?ぎゅ………ギュウ?
「パパはママのことギュウするのにケイにはしてくれないって」
苦笑いしながらもどういうことか戸惑う自分に縁が説明してくれたが理解が出来ない。
「パパはママにはチュウするのにケイにはしてくれないとも言ってましたよ」
それは………自分にそれをしろと言うことだろうか?
確かにセインも繋は愛しているし、大切だとも思っているがそんな親バカみたいなマネ自分がするのはおかしいだろうとしてこなかった。
それでも父親として自分なりに大切にしてきたつもりだったのだが……
「パパは恥ずかしがり屋だから出来ないだけと言ったんですけどね。でもパパが大好きだからギュウもチュウもしたいときかなくて」
それは嬉しい。嬉しい限りだが……
愛娘にギュウやチュウする自分の姿を思い浮かべ恥ずかしくなった。
アレンやジークならば悩まず出来るのだろうが、自分は存外カッコつけだったらしい。
「セイン。別に恥ずかしいことじゃないでしょう?確かに私もセインには似合わないかもしれないと少し思いましたけど、大事な娘がそれを望んでいるならしてあげておかしいことじゃないですよ」
おかしいことじゃない。
「私には普通にしてくれるでしょ?そこに娘が加わっただけです。真や愛依にもしろとは言いませんけど繋だけにでもしてあげてくれませんか?」
縁にするのはもはや当たり前なことで恥ずかしいなど意識したことがなかった。
むしろ自分のものだと主張するためにもしていたが、それが他にもとなると途端に意識してしまい恥ずかしい。
だがしたくないというわけでもない。
そろそろとしゃがみ込むと涙目の娘に向かい腕を広げる。
「おいで」
「パパっ!」
飛び込んできた温かく小さな身体を抱きしめると、その額にキスしてやる。
「ごめんな。パパが悪かった」
「ううん。ケイ、パパだいすき」
これではどちらが親か分かったものではない。
中々想いを伝えられないダメな父親に、しかし呆れることなく言葉で伝えてくれる我が子。
どうやら縁に似てくれたらしいことに感謝するのだった。
「2人だけズルいです。ママも混ぜて下さい」
「ママもギュウ」
キャッキャッしながら笑う娘の姿に癒される。
産まれる以前は本当に愛せるか自信がなかった。
縁を自分に繋ぎ止めておくためと利用しようとしていたが、いざその姿を見れば愛しさで胸がいっぱいになった。
この子は自分と縁が愛し合った結果なんだと愛しくて仕方がなかった。
だが産まれてからというもの親の愛というものを知らなかったため子への接し方が分からず不安にさせてしまった。
本当にダメな父親だ。
「ごめんな。これからは気をつけるから」
「パパは恥ずかしがり屋ですからね。でも大好きな繋のお願いなら聞いてくれますからいくらでも言ってあげて下さい」
「うん!」
本当にこの2人には頭が上がらない。
そんなこんなで以前より仲が深まった親子は今日も仲良しだった。
張り付いてくる繋を抱き上げるとそのまま近くの椅子に腰かける。
縁がいない日は殆どがこんな感じだ。
可哀想だとも思うが、ここまで自分に甘えてくれるのが嬉しいとも思ってしまう。
「パパ…」
「ん?ここにいるぞ」
擦り寄せてくる頭を撫でつつ外を見る。
まだ1時間。
どれくらいかかるか分からないが帰ってくるにはもう暫くかかるだろう。
「パパ、ケイきらいならない?」
「なるはずないだろ」
「アイもシンもできるのにケイできない」
なんてこと言うのかと思っていれば、どうやらずっと気にしていたらしい。
セインの血も受け継いでいるが人間として生まれてきた繋は妹たちには出来て自分が出来ないことを悩んでいたのだろう。
「そうだな。けど2人に出来ないことが繋には出来るだろ」
身体能力で言えば確かに双子の方が上だ。
だがそれは獣人として生まれたが故に出来ることであり、人間だが縁とセインのを血を継いで生まれた繋はそれ以上に出来ることもある。
「繋は魔法が使えるだろ?ママがすごいって褒めてたぞ」
「ほんと?」
「ああ。アズもエルも驚いてた」
縁の子だからと言ってしまえばそうだが、人間でここまで出来るのはすごいとかなり驚いていた。
「それにママより動けるだろ。ママはすぐ危ないことばっかりするからな」
ちゃんと自分の血も流れているのだと実感する。
あまり動くことを好まないようだがその動きから人間にしては身体能力が高いと分かる。
だから落ち込むことはないと背を撫でてやれば笑顔で頷きそのまま眠りにつくのだった。
「繋は俺の自慢の娘だよ」
そう言い眠る額におやすみのキスを贈るのだった。
「…………」
縁が出かけてからまだ1時間。
言葉にこそしないが寂しいとばかりに足に張り付いてきた我が子の姿に苦笑いする。
あまり猫可愛がりするセインではないがそれでも娘を愛しているし、繋も今はそれを分かってくれている。
主に縁の気遣いによる努力の賜物だが。
以前「パパ、ケイきらい?」と言われ驚きのあまり固まっていれば、後ろでそれを聞いていた縁が苦笑いしていた。
「ほらほら大切な娘が泣きそうになってますよ?」
自分ではそんなことを言ったことも、態度もしたいことはなかったのでまさかそう思われていたことにかなり驚いた。
「そっ、そんなことあるわけないだろ!繋は俺の大事な娘だ!」
「でも……パパ、ギュウしてくれない」
「へ?」
ぎゅう?ぎゅ………ギュウ?
「パパはママのことギュウするのにケイにはしてくれないって」
苦笑いしながらもどういうことか戸惑う自分に縁が説明してくれたが理解が出来ない。
「パパはママにはチュウするのにケイにはしてくれないとも言ってましたよ」
それは………自分にそれをしろと言うことだろうか?
確かにセインも繋は愛しているし、大切だとも思っているがそんな親バカみたいなマネ自分がするのはおかしいだろうとしてこなかった。
それでも父親として自分なりに大切にしてきたつもりだったのだが……
「パパは恥ずかしがり屋だから出来ないだけと言ったんですけどね。でもパパが大好きだからギュウもチュウもしたいときかなくて」
それは嬉しい。嬉しい限りだが……
愛娘にギュウやチュウする自分の姿を思い浮かべ恥ずかしくなった。
アレンやジークならば悩まず出来るのだろうが、自分は存外カッコつけだったらしい。
「セイン。別に恥ずかしいことじゃないでしょう?確かに私もセインには似合わないかもしれないと少し思いましたけど、大事な娘がそれを望んでいるならしてあげておかしいことじゃないですよ」
おかしいことじゃない。
「私には普通にしてくれるでしょ?そこに娘が加わっただけです。真や愛依にもしろとは言いませんけど繋だけにでもしてあげてくれませんか?」
縁にするのはもはや当たり前なことで恥ずかしいなど意識したことがなかった。
むしろ自分のものだと主張するためにもしていたが、それが他にもとなると途端に意識してしまい恥ずかしい。
だがしたくないというわけでもない。
そろそろとしゃがみ込むと涙目の娘に向かい腕を広げる。
「おいで」
「パパっ!」
飛び込んできた温かく小さな身体を抱きしめると、その額にキスしてやる。
「ごめんな。パパが悪かった」
「ううん。ケイ、パパだいすき」
これではどちらが親か分かったものではない。
中々想いを伝えられないダメな父親に、しかし呆れることなく言葉で伝えてくれる我が子。
どうやら縁に似てくれたらしいことに感謝するのだった。
「2人だけズルいです。ママも混ぜて下さい」
「ママもギュウ」
キャッキャッしながら笑う娘の姿に癒される。
産まれる以前は本当に愛せるか自信がなかった。
縁を自分に繋ぎ止めておくためと利用しようとしていたが、いざその姿を見れば愛しさで胸がいっぱいになった。
この子は自分と縁が愛し合った結果なんだと愛しくて仕方がなかった。
だが産まれてからというもの親の愛というものを知らなかったため子への接し方が分からず不安にさせてしまった。
本当にダメな父親だ。
「ごめんな。これからは気をつけるから」
「パパは恥ずかしがり屋ですからね。でも大好きな繋のお願いなら聞いてくれますからいくらでも言ってあげて下さい」
「うん!」
本当にこの2人には頭が上がらない。
そんなこんなで以前より仲が深まった親子は今日も仲良しだった。
張り付いてくる繋を抱き上げるとそのまま近くの椅子に腰かける。
縁がいない日は殆どがこんな感じだ。
可哀想だとも思うが、ここまで自分に甘えてくれるのが嬉しいとも思ってしまう。
「パパ…」
「ん?ここにいるぞ」
擦り寄せてくる頭を撫でつつ外を見る。
まだ1時間。
どれくらいかかるか分からないが帰ってくるにはもう暫くかかるだろう。
「パパ、ケイきらいならない?」
「なるはずないだろ」
「アイもシンもできるのにケイできない」
なんてこと言うのかと思っていれば、どうやらずっと気にしていたらしい。
セインの血も受け継いでいるが人間として生まれてきた繋は妹たちには出来て自分が出来ないことを悩んでいたのだろう。
「そうだな。けど2人に出来ないことが繋には出来るだろ」
身体能力で言えば確かに双子の方が上だ。
だがそれは獣人として生まれたが故に出来ることであり、人間だが縁とセインのを血を継いで生まれた繋はそれ以上に出来ることもある。
「繋は魔法が使えるだろ?ママがすごいって褒めてたぞ」
「ほんと?」
「ああ。アズもエルも驚いてた」
縁の子だからと言ってしまえばそうだが、人間でここまで出来るのはすごいとかなり驚いていた。
「それにママより動けるだろ。ママはすぐ危ないことばっかりするからな」
ちゃんと自分の血も流れているのだと実感する。
あまり動くことを好まないようだがその動きから人間にしては身体能力が高いと分かる。
だから落ち込むことはないと背を撫でてやれば笑顔で頷きそのまま眠りにつくのだった。
「繋は俺の自慢の娘だよ」
そう言い眠る額におやすみのキスを贈るのだった。
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