二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

文字の大きさ
上 下
291 / 475

ここまで

しおりを挟む
 まだ外だと言うのに聞こえてきたふざけた声に皆一瞬足を止めた。

 「だ・か・ら~、オレらが受けてやるっつってんじゃん。けどオレたちもAランクなんだからそんな端金じゃ依頼なんて受けれねぇの」

 「ですがこれが定められた報酬額です。納得いただけないようでしたらお引き取り下さい」

 「そんなこと言って~、オレたちが受けなきゃあと誰が受けんの?Aランクなんて早々いないぜ」

 なんとも頭の悪い話し方である。
 何も言わず中に入って行くジンに縁たちも続く。
 
 「納得出来ないようなら受けていただかなくて結構。私たちも暇じゃないんだ。依頼を受ける気がないなら早々に出て行ってもらおう」

 至極まともなジンの言葉に、しかし頭の悪いのだろう男たちは空気まで読めなかったらしい。
 ニヤニヤと下品としかいいようがない笑みを浮かべる。

 「そんなこと言っていいのかな?オレたちがいなくなったら困んのはそっちだろ?」

 意味が分からずククルに尋ねれば、A.Sランクはその実力から戦力としてもギルドや国からも必要とされているらしい。
 国の防衛や難易度の高い依頼などのため自国に留めておきたいのだろう。

 「けどそのせいで態度がデカくなる連中もいるんです。確かに高ランクは珍しく実力もあるかもしれませんが、あの態度では周りからもよくは思われていないでしょう」

  ククルの説明に納得し、これがジンが言っていた厄介な奴等だったのだと分かった。
 だがジンとてバカではない。
 そんなこと分かった上で帰れと言っているのに男たちには伝わっていないらしい。

 「お爺ちゃん。こういう方達にははっきり言わないと伝わりませんよ。依頼を受ける気もないのにここにいられては迷惑だと。それに実力があると言って贔屓していてはギルドが成り立ちません」

 「ああ?んだとキサマ」

 波風立てぬようとジンたちも気を使っていたのだろうが、ここで折れても男たちは唯々調子にのりまた同じことを繰り返すだけだ。
 ならばその前に過ちを正し、その鼻っ柱をへし折ってくのも手。
 突然会話に割り込んできた縁に男たちが先程までの笑みを消しこちらを睨みつけてくる。

 「そうでしょう?なんのために報酬額が提示されていると思っているんです。そんなに報酬を上げて欲しいのであれば自身で依頼主に交渉するか、依頼内容以上の結果を見せなければ。ないものに余計に金を払えなんてただの詐欺ですよ」

 「ふざけんなっ!誰にもの言ってやがる!」

 貴方たちにですが?
 顔を合わせておきながら全く関係ない人間に話しているのとでも本気で思っているのだろうか?
 バカとは総じて人の話しを聞かな過ぎる。

 「貴方たち以外に言っているように見えるならそれは異常なのでお医者様にかかったほうがいいですよ」

 何故一々誰に言っているか確認しているのか理解に苦しむ。
 怒っているということは自分が言われたのだと分かっているだろうに。

 「そうだね。君たちが何と言おうと私たちが意見を変えることはこの先もない。納得出来ないようであればこのギルドとは言わず、この国から出て行ってもらって私たちは一向に構わないよ。はっきり言っておくが、このギルドにはAランクは他にも存在している。皆協力的だから君たちみたいな人間は必要ないんだよ」

 「っ!~~~もういいっ!お前ら帰るぞ!」

 そう言い帰り際入り口近くにいた縁に手を伸ばしてきたが、それをエルが黙って見ているはずもなく、縁に触れる前に払い落とされていた。
 最後の最後まで迷惑な人間である。

 「言い勝てなかったからと手を出すのは自分を小さく見せますよ」

 縁の忠告に男たちはまだ何やら叫びながらもギルドを後にするのだった。
 しんと静まり返る室内にどうしようかと周りを見渡そうとし、その瞬間温かい何かに抱きしめられた。

 「怪我は!?」

 心配し駆け寄ってきてくれたマーガレットに大丈夫だと返すと、逆に彼女に何ともないかと尋ねれば笑って再び抱きしめられた。

 「私のことを心配するのなんてジンかアンタぐらいだよ。アンタが無事ならよかった。私のためとは分かっているがそう簡単にケンカを売って危ない目には合わないでくれよ」

 確実に男たちには目をつけられただろうが、はっきり言って男たちに負ける気が縁はしてなかった。
 だからこその発言でもあったのが、それを知らないマーガレットたちにはかなり心配をかけてしまった。
 無事でよかったと抱きしめてくれるマーガレットの温かい手に亡くなった母の手を少し思い出した。

 「大丈夫ですよ。それより疲れてお腹は空いてませんか?ギルドも先程の騒ぎで人もいませんし、今日はお昼の時間だけ閉めてみなさんでご飯を食べません?頼んでいた醤油がやっと出来たのでみなさんに食べてもらって味の感想をククルさんに教えて上げて欲しいです」

 「確かに。やはり直に意見をもらえた方が私としても大変助かります」

 ククルからの援護により偶にはいいかと頷いてくれたマーガレットに、縁だけでなくギルド職員全員が手を上げて喜ぶのだった。
 

 



 
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

虐げられ聖女(男)なので辺境に逃げたら溺愛系イケメン辺境伯が待ち構えていました【本編完結】(異世界恋愛オメガバース)

美咲アリス
BL
虐待を受けていたオメガ聖女のアレクシアは必死で辺境の地に逃げた。そこで出会ったのは逞しくてイケメンのアルファ辺境伯。「身バレしたら大変だ」と思ったアレクシアは芝居小屋で見た『悪役令息キャラ』の真似をしてみるが、どうやらそれが辺境伯の心を掴んでしまったようで、ものすごい溺愛がスタートしてしまう。けれども実は、辺境伯にはある考えがあるらしくて⋯⋯? オメガ聖女とアルファ辺境伯のキュンキュン異世界恋愛です、よろしくお願いします^_^ 本編完結しました、特別編を連載中です!

雪狐 氷の王子は番の黒豹騎士に溺愛される

Noah
BL
【祝・書籍化!!!】令和3年5月11日(木) 読者の皆様のおかげです。ありがとうございます!! 黒猫を庇って派手に死んだら、白いふわもこに転生していた。 死を望むほど過酷な奴隷からスタートの異世界生活。 闇オークションで競り落とされてから獣人の国の王族の養子に。 そこから都合良く幸せになれるはずも無く、様々な問題がショタ(のちに美青年)に降り注ぐ。 BLよりもファンタジー色の方が濃くなってしまいましたが、最後に何とかBLできました(?)… 連載は令和2年12月13日(日)に完結致しました。 拙い部分の目立つ作品ですが、楽しんで頂けたなら幸いです。 Noah

偽物の番は溺愛に怯える

にわとりこ
BL
『ごめんね、君は偽物だったんだ』 最悪な記憶を最後に自らの命を絶ったはずのシェリクスは、全く同じ姿かたち境遇で生まれ変わりを遂げる。 まだ自分を《本物》だと思っている愛する人を前にシェリクスは───?

侯爵令息セドリックの憂鬱な日

めちゅう
BL
 第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける——— ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。

伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃんでした。 実際に逢ってみたら、え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこいー伴侶がいますので! おじいちゃんと孫じゃないよ!

婚約者の浮気相手が子を授かったので

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ファンヌはリヴァス王国王太子クラウスの婚約者である。 ある日、クラウスが想いを寄せている女性――アデラが子を授かったと言う。 アデラと一緒になりたいクラウスは、ファンヌに婚約解消を迫る。 ファンヌはそれを受け入れ、さっさと手続きを済ませてしまった。 自由になった彼女は学校へと戻り、大好きな薬草や茶葉の『研究』に没頭する予定だった。 しかし、師であるエルランドが学校を辞めて自国へ戻ると言い出す。 彼は自然豊かな国ベロテニア王国の出身であった。 ベロテニア王国は、薬草や茶葉の生育に力を入れているし、何よりも獣人の血を引く者も数多くいるという魅力的な国である。 まだまだエルランドと共に茶葉や薬草の『研究』を続けたいファンヌは、エルランドと共にベロテニア王国へと向かうのだが――。 ※表紙イラストはタイトルから「お絵描きばりぐっどくん」に作成してもらいました。 ※完結しました

俺のこと、冷遇してるんだから離婚してくれますよね?〜王妃は国王の隠れた溺愛に気付いてない〜

明太子
BL
伯爵令息のエスメラルダは幼い頃から恋心を抱いていたレオンスタリア王国の国王であるキースと結婚し、王妃となった。 しかし、当のキースからは冷遇され、1人寂しく別居生活を送っている。 それでもキースへの想いを捨てきれないエスメラルダ。 だが、その思いも虚しく、エスメラルダはキースが別の令嬢を新しい妃を迎えようとしている場面に遭遇してしまう。 流石に心が折れてしまったエスメラルダは離婚を決意するが…? エスメラルダの一途な初恋はキースに届くのか? そして、キースの本当の気持ちは? 分かりづらい伏線とそこそこのどんでん返しありな喜怒哀楽激しめ王妃のシリアス?コメディ?こじらせ初恋BLです! ※R指定は保険です。

処理中です...