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聞いたことない
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「ルイお前どうした!?」
突如現れた自分の弟はいつの間にやら小さくなっていた。
驚きに確かめるように頭や顔に触れるが、本人に自覚はないのかブンブンと首を振られた。
「なんだ?何か変な魔法にでもかかったのか?お前のことだ、いつか何かやらかすとは思ってたんだ」
「オレどんだけ信用ないの?」
「信用を得られるほどの何かをお前がしたことがーーーん?」
きょとんとこちらを見上げてくる小さな弟が声を発した様子はない。
ならば誰がと後ろを振り向けばーー
「………随分成長が早いな」
「いや、オレ縮んでないからね。慌てんの分かるけどよく見てよ」
珍しくも自分より落ち着いている弟の姿に冷静になった。
「ほんとそっくりだね。でも目はエニシだ。嬉しい」
今まで見たことがないほど穏やかに子どもの頭を撫でる弟の姿に、漸く縮んだと思っていた弟がエニシとの子なのだと理解した。
なんでそんなに落ち着いているんだとか、なんでそう簡単に受け入れられるんだとか突っ込みたいとことは多々あるが嬉しそうに微笑む弟はとても幸せそうで言えなかった。
「言ってた通りだな。間違いなくお前の子だ」
誰がどう見ても彼の子だと自信を持って言えるだろう。
ちがうところがあるとすれば、その瞳の色が母親であるエニシに似たところぐらいだろう。
「パパあそぼ」
「いいよ」
にこりと笑った子どもはパパと呼ぶとルイの手を引く。
「おーちゃんも」
「お、おーちゃん?俺、のことか?」
差し出された小さな手は明らかに自分に向けられているが、おーちゃんと呼ばれる意味が分からなかった。
「おじちゃんだからおーちゃんなんじゃない?でしょ?」
「おーちゃんいこ」
そう!と頷き握られた手は思ったより温かく、そしてとても小さかった。
謎の発想にああ本当にこの子はルイの子なんだなと実感した。
機嫌がいいのかフフフフフ~ン♪と鼻歌を歌う子どもに手を引かれながらも待っていたエニシの元に向かえば、これまた楽しそうに笑う表情にどうやら先程までの会話を聞かれていたらしいと恥ずかしくなった。
「言った通りだったでしょ?」
「……ああ」
まんまと罠にハマってしまったような複雑な心境だった。
「慌ててる兄貴面白かった」
余計なことは言わなくていい。
「誰だって驚くだろこれは!」
「ええ。私も初めて見た時はロンとそう変わりない反応をしてしまいました」
あっさり肯定されてしまえばこれ以上怒るにも怒れない。
それから皆で追いかけっこをし遊ぶと、先に疲れて休んでいたエニシの隣にロンも腰かける。
「可愛いでしょ?」
「中身までアイツに似てくれなければいいがな」
突然のおーちゃん呼びにその兆しはあったが。
可愛いか可愛くないか聞かれれば勿論可愛いのだが、それではルイのことを可愛いとも言っているようで恥ずかしく素直に言えなかった。
「ーー前に弟のことを頼むとロンは言っていましたね。私が生きている限り頑張ります。なのでロンにはあの子のことをお願いできますか?」
なにやら不穏な言い方に聞こえ、何かあったのかと聞けば何もないと笑われた。
「私が産みましたけど私は人間なのであの子の苦労を、竜族である貴方たちの苦労を全てを分かってあげることはできません。だからこそロンやルーにそこを支えてあげてほしいんです」
「………当たり前だ」
今こうして触れあえてはいるが、実際卵が孵化しあの子に会えるのはもう少し先だ。
産まれてみないことには分からないが、今この瞬間のことも記憶に残っているかは分からない。
分からないことがあるならば、自分が何かあの子にしてやれることがあるのだとすれば喜んで手を貸そう。
「ありがとな」
「ん?」
ずっと言えなかった言葉。
「ありがとう、ルイを番にしてくれて。ありがとう、ルイの子を産んでくれて。ありがとう………家族になってくれて」
両親が仲間が生き絶えていく中、弟と2人不安がなかったと言えば嘘になる。
長男として、ルイの兄貴としてしっかりしなければと頑張ってきたが、何をするのにも空回りばかりで上手くいかなかった。
そんな中エニシに出会い、ルイが番になり、その上子まで授かった。
もう感謝しかない。
懐かしくも新しい家族にルイ以上にロンも嬉しかった。
「こちらこそ。ロンにはいつも子どもたちがお世話になってますからね。この前は一緒に追いかけっこをしてもらったと真と愛依が喜んでました」
あの双子は獣人だけあって体力が有り余るほどある。
そんな2人に人間であるエニシがついていけるはずもなく、その代わり付き合わされるのが父親であるジークやエルにロンだったりする。
「あの子はルーの子です」
「?、そうだな」
何を当たり前のことを言うのかと首を傾げる。
「で、ルーにそっくりだと言いましたけどそれってロンにも似てるってことでもあるんですよ。ふとした時にああこの2人兄弟なんだなって2人を見ていて思うことがありますから」
「………」
「可愛さが増すでしょ?」
ふふふと楽しそうに笑うエニシに恥ずかしくも嬉しく感じてしまうのだった。
突如現れた自分の弟はいつの間にやら小さくなっていた。
驚きに確かめるように頭や顔に触れるが、本人に自覚はないのかブンブンと首を振られた。
「なんだ?何か変な魔法にでもかかったのか?お前のことだ、いつか何かやらかすとは思ってたんだ」
「オレどんだけ信用ないの?」
「信用を得られるほどの何かをお前がしたことがーーーん?」
きょとんとこちらを見上げてくる小さな弟が声を発した様子はない。
ならば誰がと後ろを振り向けばーー
「………随分成長が早いな」
「いや、オレ縮んでないからね。慌てんの分かるけどよく見てよ」
珍しくも自分より落ち着いている弟の姿に冷静になった。
「ほんとそっくりだね。でも目はエニシだ。嬉しい」
今まで見たことがないほど穏やかに子どもの頭を撫でる弟の姿に、漸く縮んだと思っていた弟がエニシとの子なのだと理解した。
なんでそんなに落ち着いているんだとか、なんでそう簡単に受け入れられるんだとか突っ込みたいとことは多々あるが嬉しそうに微笑む弟はとても幸せそうで言えなかった。
「言ってた通りだな。間違いなくお前の子だ」
誰がどう見ても彼の子だと自信を持って言えるだろう。
ちがうところがあるとすれば、その瞳の色が母親であるエニシに似たところぐらいだろう。
「パパあそぼ」
「いいよ」
にこりと笑った子どもはパパと呼ぶとルイの手を引く。
「おーちゃんも」
「お、おーちゃん?俺、のことか?」
差し出された小さな手は明らかに自分に向けられているが、おーちゃんと呼ばれる意味が分からなかった。
「おじちゃんだからおーちゃんなんじゃない?でしょ?」
「おーちゃんいこ」
そう!と頷き握られた手は思ったより温かく、そしてとても小さかった。
謎の発想にああ本当にこの子はルイの子なんだなと実感した。
機嫌がいいのかフフフフフ~ン♪と鼻歌を歌う子どもに手を引かれながらも待っていたエニシの元に向かえば、これまた楽しそうに笑う表情にどうやら先程までの会話を聞かれていたらしいと恥ずかしくなった。
「言った通りだったでしょ?」
「……ああ」
まんまと罠にハマってしまったような複雑な心境だった。
「慌ててる兄貴面白かった」
余計なことは言わなくていい。
「誰だって驚くだろこれは!」
「ええ。私も初めて見た時はロンとそう変わりない反応をしてしまいました」
あっさり肯定されてしまえばこれ以上怒るにも怒れない。
それから皆で追いかけっこをし遊ぶと、先に疲れて休んでいたエニシの隣にロンも腰かける。
「可愛いでしょ?」
「中身までアイツに似てくれなければいいがな」
突然のおーちゃん呼びにその兆しはあったが。
可愛いか可愛くないか聞かれれば勿論可愛いのだが、それではルイのことを可愛いとも言っているようで恥ずかしく素直に言えなかった。
「ーー前に弟のことを頼むとロンは言っていましたね。私が生きている限り頑張ります。なのでロンにはあの子のことをお願いできますか?」
なにやら不穏な言い方に聞こえ、何かあったのかと聞けば何もないと笑われた。
「私が産みましたけど私は人間なのであの子の苦労を、竜族である貴方たちの苦労を全てを分かってあげることはできません。だからこそロンやルーにそこを支えてあげてほしいんです」
「………当たり前だ」
今こうして触れあえてはいるが、実際卵が孵化しあの子に会えるのはもう少し先だ。
産まれてみないことには分からないが、今この瞬間のことも記憶に残っているかは分からない。
分からないことがあるならば、自分が何かあの子にしてやれることがあるのだとすれば喜んで手を貸そう。
「ありがとな」
「ん?」
ずっと言えなかった言葉。
「ありがとう、ルイを番にしてくれて。ありがとう、ルイの子を産んでくれて。ありがとう………家族になってくれて」
両親が仲間が生き絶えていく中、弟と2人不安がなかったと言えば嘘になる。
長男として、ルイの兄貴としてしっかりしなければと頑張ってきたが、何をするのにも空回りばかりで上手くいかなかった。
そんな中エニシに出会い、ルイが番になり、その上子まで授かった。
もう感謝しかない。
懐かしくも新しい家族にルイ以上にロンも嬉しかった。
「こちらこそ。ロンにはいつも子どもたちがお世話になってますからね。この前は一緒に追いかけっこをしてもらったと真と愛依が喜んでました」
あの双子は獣人だけあって体力が有り余るほどある。
そんな2人に人間であるエニシがついていけるはずもなく、その代わり付き合わされるのが父親であるジークやエルにロンだったりする。
「あの子はルーの子です」
「?、そうだな」
何を当たり前のことを言うのかと首を傾げる。
「で、ルーにそっくりだと言いましたけどそれってロンにも似てるってことでもあるんですよ。ふとした時にああこの2人兄弟なんだなって2人を見ていて思うことがありますから」
「………」
「可愛さが増すでしょ?」
ふふふと楽しそうに笑うエニシに恥ずかしくも嬉しく感じてしまうのだった。
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