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気づかない
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縁にとってそこはもう金がなる木、もしくは宝の山だった。
「だんじょんって素晴らしいですね。欲しいものをこんなにくれるなんて」
「「……………」」
キラキラと目を輝かせる縁に突っ込む者は誰一人いない。
ただ心の中で「違うからっ!」と叫んではいたが。
「これずっと欲しかったんですよ」
抱き抱える大瓶にそれを知らぬ皆は首を傾げていたが、縁はずっと探し求めていたものにニンマリだ。
「エニシが嬉しいならよかったけどさ。それなんなの?」
「醤油です。味噌と同じ調味料ですよ」
そう、縁がずっと求めていた醤油などが何故かダンジョンの宝箱から出てきたのだ。
これで色々美味しいものが出来ると喜ぶ縁をよそに、醤油を知らないエルたちはそんなものどうするんだとばかりに思っている。
「豆腐に油揚げも手に入りましたし繋もきっと喜んでくれますね」
ポンポンと叩く鞄の中には他にもたくさん縁が欲しかった食材たちが詰め込まれていた。
それは全てこのダンジョンの宝箱から出てきたものであり縁は感謝しかない。
訓練として入ったダンジョンであったが、その途中で見つけた食材は縁たちの好きにしていいと言われた。
だがお肉などは欲しくとも魔石や牙、毛皮など武器や防具などに使えそうなものをもらっても仕方ないため要らないと言えば、ならば宝箱から欲しい物が出れば持っていいと言われ有り難くそれらを頂戴していた。
何故か縁が開ける宝箱は殆どが食材であり、手に入れられず困っていたものばかりであった。
醤油に豆腐、油揚げにお酢にみりん、中濃ソースが出てきた時は心から喜んだ。
ただ一人縁だけが。
宝箱いっぱいに豆腐と油揚げが詰まっているのを見た時は流石に微妙だったが。
以前話していた味噌汁の具材も手に入り繋にいいお土産が出来たと喜ぶ。
これらの調味料もあればアレンたちにも色々作ってやることが出来る。
「…………ダンジョンでこれほど喜べるのはエニシさんぐらいですね」
「そんなことないですよ。色々手に入ったのでご飯美味しいものを作りますね」
「楽しみにしておきます」
この良さを知ればフレックたちもきっと探さずにはいられなくなるだろう。
だんじょんとは素晴らしいと心から感謝するのだった。
「では今日はこの辺りで休みます。食事の準備はエニシさんたちの手を借りて、隊員は周りの警戒を怠らないように」
やったご飯だと喜ぶ縁は早速宝箱からもらった(?)醤油を取り出した。
まずはスープでも作るかとお肉は隊員は任せようとしたのだが……
「……その大きさは……中まで火が通らないと思いますよ?」
隊員たちの大きい握り拳ほどの肉の塊は綺麗に中まで焼くにはかなりの技術が必要だと思う。
縁の指摘に、しかしいつもこうだと言われてしまえば隊の食事事情に同情するばかりであった。
だが生焼けの肉を食べてお腹を壊したくはない縁はきちんと食べやすい大きさに切り直してもらい、ついでにとダンジョン入り口で取れたきのこも串に刺し一緒に焼いてもらう。
「……ねぇ、鍋はダメだって言われてなかった?」
では!と鞄から鍋を取り出した縁にエルが呆れている。
「大丈夫です。鍋料理に使いはしないので」
「そういう問題?」
これはスープであって鍋ではないと屁理屈を言いつつ、よく食べるだろう隊員たちの分もたくさんの野菜や肉を入れてスープを作るのであった。
「具沢山のスープに焼いたお肉、持ってきたパンにきのこもあるのでたくさん食べて下さいね」
「………あの、このきのこは特に味付けはしてませんでしたが…」
不安そうな隊員にふふふと縁は笑うと焼けて香ばしい匂いのきのこに醤油を少量かけバターを乗せる。
どうぞと差し出せば、その匂いにつられたのか肉厚のきのこに齧り付くのをにこにこと見守った。
「うまっ!これ、めっちゃくちゃ旨いっす!」
喜んでもらえて何よりと人数分用意すれば皆喜んで食べてくれるのだった。
「すごいですね。まさかあのきのこが食べられるとは思ってませんでした。肉もきちんと中まで火が通っていて美味しいですし、汁物をダンジョンの中で食べられるとは思ってませんでした」
旅でもそうだが、ダンジョンなど冒険するに辺り困るのが水の存在だ。
少しでも荷物を減らしたいのは誰でも同じであり、貴重な水は少しでも残しておきたいだろう。
だが今回同行した縁にとってそれは問題ではなく、隊員のため自分のためにと魔法を使い水を出していた。
「こういう時だからこそお腹いっぱい美味しいものを食べて備えておかなくては。身体の不調は心にも負担になりますからね」
身体の疲れは心も消耗していく。
心が荒めば要らぬ争いも生まれることがあるので、出来るだけ満たしておくことが必要だ。
国のため、人のために働くというのであれば尚更だ。
「そうですね。今回同行してくれたのがエニシさんで本当によかった」
「私も来れて良かったです。子どもたちにもお土産が出来ましたし、ずっと欲しかった材料も手に入りました」
「なんだろう?ダンジョンに来て言う言葉じゃないよね」
何のことやら?
欲しいものたちが次々と手に入り縁には嬉しいことしかないのだった。
だんじょんとはとても良いところと縁はインプットするのであった。
「だんじょんって素晴らしいですね。欲しいものをこんなにくれるなんて」
「「……………」」
キラキラと目を輝かせる縁に突っ込む者は誰一人いない。
ただ心の中で「違うからっ!」と叫んではいたが。
「これずっと欲しかったんですよ」
抱き抱える大瓶にそれを知らぬ皆は首を傾げていたが、縁はずっと探し求めていたものにニンマリだ。
「エニシが嬉しいならよかったけどさ。それなんなの?」
「醤油です。味噌と同じ調味料ですよ」
そう、縁がずっと求めていた醤油などが何故かダンジョンの宝箱から出てきたのだ。
これで色々美味しいものが出来ると喜ぶ縁をよそに、醤油を知らないエルたちはそんなものどうするんだとばかりに思っている。
「豆腐に油揚げも手に入りましたし繋もきっと喜んでくれますね」
ポンポンと叩く鞄の中には他にもたくさん縁が欲しかった食材たちが詰め込まれていた。
それは全てこのダンジョンの宝箱から出てきたものであり縁は感謝しかない。
訓練として入ったダンジョンであったが、その途中で見つけた食材は縁たちの好きにしていいと言われた。
だがお肉などは欲しくとも魔石や牙、毛皮など武器や防具などに使えそうなものをもらっても仕方ないため要らないと言えば、ならば宝箱から欲しい物が出れば持っていいと言われ有り難くそれらを頂戴していた。
何故か縁が開ける宝箱は殆どが食材であり、手に入れられず困っていたものばかりであった。
醤油に豆腐、油揚げにお酢にみりん、中濃ソースが出てきた時は心から喜んだ。
ただ一人縁だけが。
宝箱いっぱいに豆腐と油揚げが詰まっているのを見た時は流石に微妙だったが。
以前話していた味噌汁の具材も手に入り繋にいいお土産が出来たと喜ぶ。
これらの調味料もあればアレンたちにも色々作ってやることが出来る。
「…………ダンジョンでこれほど喜べるのはエニシさんぐらいですね」
「そんなことないですよ。色々手に入ったのでご飯美味しいものを作りますね」
「楽しみにしておきます」
この良さを知ればフレックたちもきっと探さずにはいられなくなるだろう。
だんじょんとは素晴らしいと心から感謝するのだった。
「では今日はこの辺りで休みます。食事の準備はエニシさんたちの手を借りて、隊員は周りの警戒を怠らないように」
やったご飯だと喜ぶ縁は早速宝箱からもらった(?)醤油を取り出した。
まずはスープでも作るかとお肉は隊員は任せようとしたのだが……
「……その大きさは……中まで火が通らないと思いますよ?」
隊員たちの大きい握り拳ほどの肉の塊は綺麗に中まで焼くにはかなりの技術が必要だと思う。
縁の指摘に、しかしいつもこうだと言われてしまえば隊の食事事情に同情するばかりであった。
だが生焼けの肉を食べてお腹を壊したくはない縁はきちんと食べやすい大きさに切り直してもらい、ついでにとダンジョン入り口で取れたきのこも串に刺し一緒に焼いてもらう。
「……ねぇ、鍋はダメだって言われてなかった?」
では!と鞄から鍋を取り出した縁にエルが呆れている。
「大丈夫です。鍋料理に使いはしないので」
「そういう問題?」
これはスープであって鍋ではないと屁理屈を言いつつ、よく食べるだろう隊員たちの分もたくさんの野菜や肉を入れてスープを作るのであった。
「具沢山のスープに焼いたお肉、持ってきたパンにきのこもあるのでたくさん食べて下さいね」
「………あの、このきのこは特に味付けはしてませんでしたが…」
不安そうな隊員にふふふと縁は笑うと焼けて香ばしい匂いのきのこに醤油を少量かけバターを乗せる。
どうぞと差し出せば、その匂いにつられたのか肉厚のきのこに齧り付くのをにこにこと見守った。
「うまっ!これ、めっちゃくちゃ旨いっす!」
喜んでもらえて何よりと人数分用意すれば皆喜んで食べてくれるのだった。
「すごいですね。まさかあのきのこが食べられるとは思ってませんでした。肉もきちんと中まで火が通っていて美味しいですし、汁物をダンジョンの中で食べられるとは思ってませんでした」
旅でもそうだが、ダンジョンなど冒険するに辺り困るのが水の存在だ。
少しでも荷物を減らしたいのは誰でも同じであり、貴重な水は少しでも残しておきたいだろう。
だが今回同行した縁にとってそれは問題ではなく、隊員のため自分のためにと魔法を使い水を出していた。
「こういう時だからこそお腹いっぱい美味しいものを食べて備えておかなくては。身体の不調は心にも負担になりますからね」
身体の疲れは心も消耗していく。
心が荒めば要らぬ争いも生まれることがあるので、出来るだけ満たしておくことが必要だ。
国のため、人のために働くというのであれば尚更だ。
「そうですね。今回同行してくれたのがエニシさんで本当によかった」
「私も来れて良かったです。子どもたちにもお土産が出来ましたし、ずっと欲しかった材料も手に入りました」
「なんだろう?ダンジョンに来て言う言葉じゃないよね」
何のことやら?
欲しいものたちが次々と手に入り縁には嬉しいことしかないのだった。
だんじょんとはとても良いところと縁はインプットするのであった。
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