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そろりそろり。
バレないようジンの背中に隠れながら進む。
「そこまで用心する必要はないんじゃないかな?」
「いえ、油断は禁物です。毎回そうやって拉致されているので」
繋を抱え周りをキョロキョロ見る姿は警戒心の強い猫のようで可愛い。
頼りにされることに何も文句はないので好きにさせているが、そこまで警戒しなければいけないほどあのバカは何をしたんだと考えてしまう。
「確かにあいつの野生の勘は時々恐ろしいものがあるからね。にしても毎回拉致とは……一度じっくり説教してやらないといけないようだね」
「それは後にしましょう。先にご飯を食べてからじゃないと力が出ませんからね」
さすが私の孫だね。よく分かってる。
「……というのは冗談で、先延ばしにすると繋のご機嫌が悪くなっちゃうので」
そう言われエニシの腕の中を見れば、早くしてとばかりに口を尖らせる繋の姿があった。
「みたいだね。ならさっさと行くよ」
隣で見ていたマーガレットも繋の表情に笑いつつレオナルドの部屋に向かうのだった。
レオナルドには事前に連絡はしておいたためすんなりと通された。
「約束のお鍋作ってきましたよ」
「それは楽しみだな」
「「…………」」
まさかのレオナルドの反応にマーガレットと2人顔を合わせて驚いた。
あのレオナルドが、いつも不機嫌顔で中毒とばかりに仕事ばかりしているレオナルドが嬉しそうに笑っている。
今まで食事など仕事の邪魔とばかり言っていたのに。
「あとこの子が娘の繋です。ほら、ちゃんと挨拶できますね?」
「けいです。こんにちは」
「そうか。私はレオナルドと言う。よろしく頼む」
夢……かな?
レオナルドが挨拶したよ?子どもに。
しかもちゃんと膝を曲げ繋の目線に態々合わせて。
マーガレットもかなり衝撃だったようで驚き固まっている。
「ママ、ごはんは?」
だがそんなジンたちをよそに挨拶を終えると支度を始めたエニシを慌てて手伝う。
「今回は魚にしておきました。野菜も沢山入れておいたのでいっぱい食べて下さいね」
「美味そうだな」
ジンたちも初めての料理に戸惑ったが、いざ食べてみればその美味しさに手が止まらないのだった。
「これは本当に美味しいね」
「この貝や魚も邪魔にならずにいい具合だね」
「これアズにぃとったのよ」
すごいでしょとばかりに胸を張る繋がとても可愛い。
自慢のお兄ちゃんなんだということがとてもよく分かる。
「すごいね。とても美味しいよ」
一つの鍋を皆で囲んで食べるということはしたことがなかったが、こうして食べてみるとまるで家族のようなその距離感にとても楽しく、そしてとても美味しかった。
最後にはご飯を入れ、味の染みた柔らかいご飯はサラサラと喉に流れていく。
「………あ、そういえばアル爺呼ぶの忘れてました」
「あんなヤツ呼ばなくていいよ。どうせうるさく騒ぐんだから邪魔にしかならない」
「そうさ。繋だって嫌だろうに。あと一年後ぐらいに誘ってやりな」
かなりのお預けをくらうアルバトロスに同情……はしなかった。
憎たらしい友人より、ジンは可愛い孫たちを選ぶのだった。
それに変にアルバトロスのかたを持って繋やエニシに嫌われたくない。
「あいつはいつもーーん?繋ちゃん?」
いつの間にかエニシの膝から下りた繋が足元まで来ていた。
「ケイね、じーじとばーばがいい」
???
どういうことかとエニシを見れば苦笑いしている。
「アル爺よりお2人の方がいいみたいですよ。2人がいればそれでいいということだと思います」
なにそれ!?可愛いすぎか!!
思わず抱き上げ頬を擦り寄せてしまった。
次は私だと言わんばかりにマーガレットも手を伸ばしてきたので渡してやればギュッと抱きしめていた。
「………君たちは本当に血の繋がりがないのか?」
「残念ながら」
そんなものなくとも君たちは私たちの家族だ!と声を大にして言いたい。
「記念に抱っこしてみますか?」
何の記念だろうか?
どうするのかとレオナルドを見れば眉間に皺を寄せ黙りこ込んでいる。
「ふふっ、噛んだりしませんよ?」
完全に面白がられている。
先日から狼の子を飼い始めたと聞いたが、今までにないレオナルドの変化にジンたちは驚きっぱなしだ。
「………いいだろうか?」
伸ばされた手に驚きエニシを見れば笑って頷かれ、繋を見ればきょとんとしていた。
「繋が可愛いから抱っこしたいんですって」
「いいよー」
二つ返事で頷くとさあ!と言わんばかりに両手を上げていた。
え、大丈夫か?とハラハラと見守っていれば……
「……それは抱っこじゃなくて高い高いです。ちゃんと腕に乗せて…そう、そうです」
脇下辺りを持ち上げたかと思えばそのまま固まってしまったレオナルドにエニシが抱っこの仕方を教えていた。
そのあまりの真剣な顔に声を抑えて笑う。腹筋が痛い。
「君にそっくりだな」
「それは顔ですか?性格ですか?」
「両方だな」
「……それは褒められているんですかね?」
「さぁ、どうだろうな」
これほど親しげに話す2人に驚いたが、レオナルドの顔を見ればそれが良い方向へ向かっているのが分かりマーガレットと2人ホッと胸を撫で下ろすのだった。
バレないようジンの背中に隠れながら進む。
「そこまで用心する必要はないんじゃないかな?」
「いえ、油断は禁物です。毎回そうやって拉致されているので」
繋を抱え周りをキョロキョロ見る姿は警戒心の強い猫のようで可愛い。
頼りにされることに何も文句はないので好きにさせているが、そこまで警戒しなければいけないほどあのバカは何をしたんだと考えてしまう。
「確かにあいつの野生の勘は時々恐ろしいものがあるからね。にしても毎回拉致とは……一度じっくり説教してやらないといけないようだね」
「それは後にしましょう。先にご飯を食べてからじゃないと力が出ませんからね」
さすが私の孫だね。よく分かってる。
「……というのは冗談で、先延ばしにすると繋のご機嫌が悪くなっちゃうので」
そう言われエニシの腕の中を見れば、早くしてとばかりに口を尖らせる繋の姿があった。
「みたいだね。ならさっさと行くよ」
隣で見ていたマーガレットも繋の表情に笑いつつレオナルドの部屋に向かうのだった。
レオナルドには事前に連絡はしておいたためすんなりと通された。
「約束のお鍋作ってきましたよ」
「それは楽しみだな」
「「…………」」
まさかのレオナルドの反応にマーガレットと2人顔を合わせて驚いた。
あのレオナルドが、いつも不機嫌顔で中毒とばかりに仕事ばかりしているレオナルドが嬉しそうに笑っている。
今まで食事など仕事の邪魔とばかり言っていたのに。
「あとこの子が娘の繋です。ほら、ちゃんと挨拶できますね?」
「けいです。こんにちは」
「そうか。私はレオナルドと言う。よろしく頼む」
夢……かな?
レオナルドが挨拶したよ?子どもに。
しかもちゃんと膝を曲げ繋の目線に態々合わせて。
マーガレットもかなり衝撃だったようで驚き固まっている。
「ママ、ごはんは?」
だがそんなジンたちをよそに挨拶を終えると支度を始めたエニシを慌てて手伝う。
「今回は魚にしておきました。野菜も沢山入れておいたのでいっぱい食べて下さいね」
「美味そうだな」
ジンたちも初めての料理に戸惑ったが、いざ食べてみればその美味しさに手が止まらないのだった。
「これは本当に美味しいね」
「この貝や魚も邪魔にならずにいい具合だね」
「これアズにぃとったのよ」
すごいでしょとばかりに胸を張る繋がとても可愛い。
自慢のお兄ちゃんなんだということがとてもよく分かる。
「すごいね。とても美味しいよ」
一つの鍋を皆で囲んで食べるということはしたことがなかったが、こうして食べてみるとまるで家族のようなその距離感にとても楽しく、そしてとても美味しかった。
最後にはご飯を入れ、味の染みた柔らかいご飯はサラサラと喉に流れていく。
「………あ、そういえばアル爺呼ぶの忘れてました」
「あんなヤツ呼ばなくていいよ。どうせうるさく騒ぐんだから邪魔にしかならない」
「そうさ。繋だって嫌だろうに。あと一年後ぐらいに誘ってやりな」
かなりのお預けをくらうアルバトロスに同情……はしなかった。
憎たらしい友人より、ジンは可愛い孫たちを選ぶのだった。
それに変にアルバトロスのかたを持って繋やエニシに嫌われたくない。
「あいつはいつもーーん?繋ちゃん?」
いつの間にかエニシの膝から下りた繋が足元まで来ていた。
「ケイね、じーじとばーばがいい」
???
どういうことかとエニシを見れば苦笑いしている。
「アル爺よりお2人の方がいいみたいですよ。2人がいればそれでいいということだと思います」
なにそれ!?可愛いすぎか!!
思わず抱き上げ頬を擦り寄せてしまった。
次は私だと言わんばかりにマーガレットも手を伸ばしてきたので渡してやればギュッと抱きしめていた。
「………君たちは本当に血の繋がりがないのか?」
「残念ながら」
そんなものなくとも君たちは私たちの家族だ!と声を大にして言いたい。
「記念に抱っこしてみますか?」
何の記念だろうか?
どうするのかとレオナルドを見れば眉間に皺を寄せ黙りこ込んでいる。
「ふふっ、噛んだりしませんよ?」
完全に面白がられている。
先日から狼の子を飼い始めたと聞いたが、今までにないレオナルドの変化にジンたちは驚きっぱなしだ。
「………いいだろうか?」
伸ばされた手に驚きエニシを見れば笑って頷かれ、繋を見ればきょとんとしていた。
「繋が可愛いから抱っこしたいんですって」
「いいよー」
二つ返事で頷くとさあ!と言わんばかりに両手を上げていた。
え、大丈夫か?とハラハラと見守っていれば……
「……それは抱っこじゃなくて高い高いです。ちゃんと腕に乗せて…そう、そうです」
脇下辺りを持ち上げたかと思えばそのまま固まってしまったレオナルドにエニシが抱っこの仕方を教えていた。
そのあまりの真剣な顔に声を抑えて笑う。腹筋が痛い。
「君にそっくりだな」
「それは顔ですか?性格ですか?」
「両方だな」
「……それは褒められているんですかね?」
「さぁ、どうだろうな」
これほど親しげに話す2人に驚いたが、レオナルドの顔を見ればそれが良い方向へ向かっているのが分かりマーガレットと2人ホッと胸を撫で下ろすのだった。
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