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仲間……かな?
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「どうして真たちが泣くの我慢してるって分かったの?」
「うん?」
ずっと不思議には思っていた。
エルたちがエニシを心配し泣きそうになっていたにもかかわらず双子は何を言うわけでも泣くこともせず、エニシのお願いを聞いていた。
「血塗れのエニシ見て泣かないからおかしいなとは思ってたんだ」
泣いたら泣いたで困ってはいたが、真はダメとばかりにエルたちを抑えていたし、愛依は動けないエニシに手を貸していた。
「我慢した理由は私にも分かりませんけど、我慢してるなぁというのは見てすぐ分かりましたよ」
それはなぜか?
「笑ってなかったでしょう?」
「あんな状況で笑うやつなんていないと思うけど」
あの状況で笑える奴など頭のいかれた猟奇的殺人者か自殺願望者ぐらいだろう。
「じゃなくて、顔。この子たち無表情になるんですよ。我慢してる時」
「あ……」
そう言われてみればずっと表情がなかった気がする。
助かった後も返事はいつも通りだったが、顔は笑いも怒りもしてなかった。
「声はいつも通り過ぎてジークも気付くのにかなり時間がかかってました」
エニシを心配するあまりエルも2人の顔をよく見てなかった。
声だけで大丈夫だと勝手に思っていた。
「オレ、お兄ちゃんなのに……」
気付いてあげられなかったと落ち込めば、父親であるジークも分かってなかったから大丈夫と笑って許してくれた。
「これから時々でいいので気にしてあげて下さい。で、この子たちは焼いたお肉を与えても大丈夫なものでしょうか?」
調理したものを与えてもいいのかと聞かれたが、エルもフェンリルを見るのはこれが初めてのため何とも言えない。
「ホントにそいつら助けるの?」
「ダメですか?」
「………」
ダメ……ではないがイヤだ。
「許せませんか?」
「…………うん」
今でもあの倒れ込むエニシの姿が脳裏に焼き付いている。
エニシ自身が回復魔法を使えたからよかったが、使えなかったら確実に死んでいただろう。
その原因であるフェンリルを側においておくことは納得が出来ない。
「きっともう襲ってきませんよ。それでも?」
「そんな保証どこにあんの?もしかしたらまた何かの拍子に襲いかかってくるかもしれないじゃん。それこそ従魔にでもしない限り無理だよ」
従魔として契約しているならば、その主人である相手に危害を加えることなんて出来ないが、じゃなければエニシにまたいつ危険が及ぶか分からない。
「じゅうまって何ですか?」
もう!もう!
「そのままの意味だよ。付き従う魔物。相手にもよるけど力を貸してもらう代わりに契約者はその対価を払わなきゃならない」
「対価、ですか?」
レベルが低いものならそう難しくはないが、フェンリルほどになればエルにも分からない。
「使役するのとちがって魔物が自分の意思で契約するんだ。だから契約者はそれに見合った対価を払う」
「対価というのは………お金でいいんですか?」
がくり。
それで納得してもらえるなら誰も苦労しないだろう。
「ちがうよ。まぁ中にはそんなヤツもいるかもしれないけどさ、大抵は魔力だね」
普通の獣と違い魔力を主食とする彼らはそれ故に強く頑丈だ。
「だからさ………って何してんの?」
「え?何ってご飯……」
嘘でしょ!?
狼に触れたかと思えば魔力の流れを感じ目を疑った。
美味しいですか?とにこやかに魔力を渡している姿に目眩がする。
もうホント!ホントこの人は!
呆れてものも言えないとはこのことだとエルは思うのだった。
エニシの魔力を腹一杯貰ったおかげか痩せこけていた身体はみるみる元の雄々しい姿を取り戻し、その毛はキラキラと光り輝くようにツヤが増している。
これこそ最強の魔獣フェンリルその姿だろう。
「とても綺麗ですね」
それだけで納得出来るエニシがエルは恐ろしい。
ここまできたら開き直るしかないのかもしれない。
「これなら契約してくれるんじゃない?ダメ元で頼んでみれば?」
もはやエニシに常識を求めるだけ無駄だろう。
これだけ懐いているならばもしかしたらと言ってみれば、案の定エニシはフェンリルにいいかと尋ねていた。
すごいっていうか、おかしくない?
なんでそう簡単に聞いてんの?そして何であのフェンリルは嬉しそうに頷いてんの?
オレ?オレの方がおかしいの?
もはや見ていることさえ疲れ、すぐ食べられるようにとご飯の準備をするのであった。
「エル!なってくれるそうです。やり方教えて下さい」
「……もう帰って寝たいよオレは」
今日、それもたった数時間の間にあった出来事にこれほど疲れるとは思ってもみなかったエルであった。
「あれもうフェンリルじゃなくて犬なんじゃね?」
そう疑問が残るのだった。
「うん?」
ずっと不思議には思っていた。
エルたちがエニシを心配し泣きそうになっていたにもかかわらず双子は何を言うわけでも泣くこともせず、エニシのお願いを聞いていた。
「血塗れのエニシ見て泣かないからおかしいなとは思ってたんだ」
泣いたら泣いたで困ってはいたが、真はダメとばかりにエルたちを抑えていたし、愛依は動けないエニシに手を貸していた。
「我慢した理由は私にも分かりませんけど、我慢してるなぁというのは見てすぐ分かりましたよ」
それはなぜか?
「笑ってなかったでしょう?」
「あんな状況で笑うやつなんていないと思うけど」
あの状況で笑える奴など頭のいかれた猟奇的殺人者か自殺願望者ぐらいだろう。
「じゃなくて、顔。この子たち無表情になるんですよ。我慢してる時」
「あ……」
そう言われてみればずっと表情がなかった気がする。
助かった後も返事はいつも通りだったが、顔は笑いも怒りもしてなかった。
「声はいつも通り過ぎてジークも気付くのにかなり時間がかかってました」
エニシを心配するあまりエルも2人の顔をよく見てなかった。
声だけで大丈夫だと勝手に思っていた。
「オレ、お兄ちゃんなのに……」
気付いてあげられなかったと落ち込めば、父親であるジークも分かってなかったから大丈夫と笑って許してくれた。
「これから時々でいいので気にしてあげて下さい。で、この子たちは焼いたお肉を与えても大丈夫なものでしょうか?」
調理したものを与えてもいいのかと聞かれたが、エルもフェンリルを見るのはこれが初めてのため何とも言えない。
「ホントにそいつら助けるの?」
「ダメですか?」
「………」
ダメ……ではないがイヤだ。
「許せませんか?」
「…………うん」
今でもあの倒れ込むエニシの姿が脳裏に焼き付いている。
エニシ自身が回復魔法を使えたからよかったが、使えなかったら確実に死んでいただろう。
その原因であるフェンリルを側においておくことは納得が出来ない。
「きっともう襲ってきませんよ。それでも?」
「そんな保証どこにあんの?もしかしたらまた何かの拍子に襲いかかってくるかもしれないじゃん。それこそ従魔にでもしない限り無理だよ」
従魔として契約しているならば、その主人である相手に危害を加えることなんて出来ないが、じゃなければエニシにまたいつ危険が及ぶか分からない。
「じゅうまって何ですか?」
もう!もう!
「そのままの意味だよ。付き従う魔物。相手にもよるけど力を貸してもらう代わりに契約者はその対価を払わなきゃならない」
「対価、ですか?」
レベルが低いものならそう難しくはないが、フェンリルほどになればエルにも分からない。
「使役するのとちがって魔物が自分の意思で契約するんだ。だから契約者はそれに見合った対価を払う」
「対価というのは………お金でいいんですか?」
がくり。
それで納得してもらえるなら誰も苦労しないだろう。
「ちがうよ。まぁ中にはそんなヤツもいるかもしれないけどさ、大抵は魔力だね」
普通の獣と違い魔力を主食とする彼らはそれ故に強く頑丈だ。
「だからさ………って何してんの?」
「え?何ってご飯……」
嘘でしょ!?
狼に触れたかと思えば魔力の流れを感じ目を疑った。
美味しいですか?とにこやかに魔力を渡している姿に目眩がする。
もうホント!ホントこの人は!
呆れてものも言えないとはこのことだとエルは思うのだった。
エニシの魔力を腹一杯貰ったおかげか痩せこけていた身体はみるみる元の雄々しい姿を取り戻し、その毛はキラキラと光り輝くようにツヤが増している。
これこそ最強の魔獣フェンリルその姿だろう。
「とても綺麗ですね」
それだけで納得出来るエニシがエルは恐ろしい。
ここまできたら開き直るしかないのかもしれない。
「これなら契約してくれるんじゃない?ダメ元で頼んでみれば?」
もはやエニシに常識を求めるだけ無駄だろう。
これだけ懐いているならばもしかしたらと言ってみれば、案の定エニシはフェンリルにいいかと尋ねていた。
すごいっていうか、おかしくない?
なんでそう簡単に聞いてんの?そして何であのフェンリルは嬉しそうに頷いてんの?
オレ?オレの方がおかしいの?
もはや見ていることさえ疲れ、すぐ食べられるようにとご飯の準備をするのであった。
「エル!なってくれるそうです。やり方教えて下さい」
「……もう帰って寝たいよオレは」
今日、それもたった数時間の間にあった出来事にこれほど疲れるとは思ってもみなかったエルであった。
「あれもうフェンリルじゃなくて犬なんじゃね?」
そう疑問が残るのだった。
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