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慣れ
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ふと目が覚めた。
あれからどれくらい時間が経ったか分からないが、布団を被っていたにもかかわらず肌寒さを感じる。
身体は睡眠を求めているのに心が落ち着かず、頑張って寝ようとはするが中々寝付けない。
それを何度か繰り返し、申し訳ないとは思ったがエルに連絡をとり来てもらうことにした。
「どうしたの?」
それほど待つことなく現れたエルは心配そうに近寄ってくると、横になっていた縁の顔を覗き込んできた。
「ごめんなさい」
自分の代わりに頑張ってくれているのに呼び出して申し訳ないと謝れば、気にするなと笑われた。
「あの、こんなこと言うと小さい子みたいで恥ずかしいんですが…その、1人で寝るのが、なんだか落ち着かなくて……」
こちらの世界に来てからというもの、早々にアレンに出会い、間も無くしてアズとセインとも暮らし始めたため1人で寝るということが殆どなかった。
寝られないわけではないが、どことなく落ち着かない。
我儘だとは思ったが一緒に寝てほしいと頼めば、意外にもあっさりと頷かれた。
「オレで良かったの?アイツ呼んでこようか?」
エルが言うアイツとはルーのことだろう。
認めていないわけではないだろうが、まだ完全には受け入れられてないらしい。
「いえ、エルがいいです」
ルーでは他の意味で落ち着かない。縁ではなくルーが。
アレンたちのように抱きしめてもらうわけにはいかないので、手を繋いでもらうことにした。
先程までのそわそわしたものがなくなっていく。
「ほら、ちゃんと肩まで掛けて。繋たちなら大丈夫だよ。よく分からないけど繋はランに懐いてたし、真と愛依はあのジジババが頑張ってくれてるから」
ルーの存在がなくなっている。
「私は幸せ者、ですね。エル、ありが、とう。だい…す……き…」
ふわふわと訪れる眠気にそのまま身を委ねるのだった。
スゥスゥと隣で寝息をたてるエニシにホッとする。
疲れているのには気づいていた。
それでもエルがエニシにしてやれることは少なく、自分のことになると手伝ってほしいと言わないエニシにヤキモキしていたのだ。
「大好き、か……」
その言葉だけでどれだけ頑張れることか。
連絡が来た時は何かあったのかと駆けつけたが、聞いてみれば寂しくて1人で眠れないという何とも可愛らしい理由だった。
普段がしっかりしているエニシだけに驚きはしたが、それでも自分を頼ってくれたのが嬉しい。
握られた手から伝わってくる体温に心まで温まってくる気がする。
「ずっと一緒にいられたらいいのに……」
エニシが人間であることが悔やまれる。
明らかに違いがある寿命に残された時間は後どれくらいかと考えてしまう。
少ないと分かっているからこそ大切で、少しでもいいから何かしてやりたいと思う。
「ねぇ、もっと頼ってよ」
もっとオレを必要として。
もっとそばにいさせて。
番になりたいわけではない。
それでも家族として愛してくれているエニシに自分もそれを返したい。
人間や獣人に比べ魔族はそれほど情が厚いとは言い難い。
けれどそれはあくまで魔族間でのことだ。
こうして大切にしてくれるエニシに、アズライトだけでなくエルも家族としてエニシを愛している。
「アズライトがさ、強くなりたいって」
ママを守るにはどうしたらいいかと聞いてきたアズライトに、ならばとエルは暇を見つけては魔法を教えていた。
属性が違うため上手く出来ているかは謎だが、アズライトも子どもながらに頑張っている。
「分かる?みんな、エニシを中心に回ってるんだよ」
番たちも、あの世話焼きのジジババも、あの元バカ王子も、自分たち兄弟も。
だから生きてほしい。少しでも長く。
以前約束した通り彼の子どもたちを見守ることはするつもりだ。
しかし、やはり自分にとってエニシが一番なのだ。
弟であるアズライトとは別に、自分を大切に思ってくれている彼が。
彼の子ではなく、エニシと少しでもいいから一緒にいられればいい。
「今はゆっくり休んで」
あまり表情に出さないエニシだが、最近いつもの余裕がなくなっていた。
ここへ来る前に絡んできた男たちにも珍しくイライラしているのが目に見えて分かった。
だからこうして休める内に少しでも休んでほしく、自分がその手助けが出来るならば喜んでしよう。
一緒に寝るのも、手を繋ぐのもエルには喜びしかないのだから。
「オレも大好きだよ」
言葉を伝えるのは苦手ではあるが、寝ている今ならばと口にすれば繋いでいた手に微かだが力が込められたような気がするのであった。
あれからどれくらい時間が経ったか分からないが、布団を被っていたにもかかわらず肌寒さを感じる。
身体は睡眠を求めているのに心が落ち着かず、頑張って寝ようとはするが中々寝付けない。
それを何度か繰り返し、申し訳ないとは思ったがエルに連絡をとり来てもらうことにした。
「どうしたの?」
それほど待つことなく現れたエルは心配そうに近寄ってくると、横になっていた縁の顔を覗き込んできた。
「ごめんなさい」
自分の代わりに頑張ってくれているのに呼び出して申し訳ないと謝れば、気にするなと笑われた。
「あの、こんなこと言うと小さい子みたいで恥ずかしいんですが…その、1人で寝るのが、なんだか落ち着かなくて……」
こちらの世界に来てからというもの、早々にアレンに出会い、間も無くしてアズとセインとも暮らし始めたため1人で寝るということが殆どなかった。
寝られないわけではないが、どことなく落ち着かない。
我儘だとは思ったが一緒に寝てほしいと頼めば、意外にもあっさりと頷かれた。
「オレで良かったの?アイツ呼んでこようか?」
エルが言うアイツとはルーのことだろう。
認めていないわけではないだろうが、まだ完全には受け入れられてないらしい。
「いえ、エルがいいです」
ルーでは他の意味で落ち着かない。縁ではなくルーが。
アレンたちのように抱きしめてもらうわけにはいかないので、手を繋いでもらうことにした。
先程までのそわそわしたものがなくなっていく。
「ほら、ちゃんと肩まで掛けて。繋たちなら大丈夫だよ。よく分からないけど繋はランに懐いてたし、真と愛依はあのジジババが頑張ってくれてるから」
ルーの存在がなくなっている。
「私は幸せ者、ですね。エル、ありが、とう。だい…す……き…」
ふわふわと訪れる眠気にそのまま身を委ねるのだった。
スゥスゥと隣で寝息をたてるエニシにホッとする。
疲れているのには気づいていた。
それでもエルがエニシにしてやれることは少なく、自分のことになると手伝ってほしいと言わないエニシにヤキモキしていたのだ。
「大好き、か……」
その言葉だけでどれだけ頑張れることか。
連絡が来た時は何かあったのかと駆けつけたが、聞いてみれば寂しくて1人で眠れないという何とも可愛らしい理由だった。
普段がしっかりしているエニシだけに驚きはしたが、それでも自分を頼ってくれたのが嬉しい。
握られた手から伝わってくる体温に心まで温まってくる気がする。
「ずっと一緒にいられたらいいのに……」
エニシが人間であることが悔やまれる。
明らかに違いがある寿命に残された時間は後どれくらいかと考えてしまう。
少ないと分かっているからこそ大切で、少しでもいいから何かしてやりたいと思う。
「ねぇ、もっと頼ってよ」
もっとオレを必要として。
もっとそばにいさせて。
番になりたいわけではない。
それでも家族として愛してくれているエニシに自分もそれを返したい。
人間や獣人に比べ魔族はそれほど情が厚いとは言い難い。
けれどそれはあくまで魔族間でのことだ。
こうして大切にしてくれるエニシに、アズライトだけでなくエルも家族としてエニシを愛している。
「アズライトがさ、強くなりたいって」
ママを守るにはどうしたらいいかと聞いてきたアズライトに、ならばとエルは暇を見つけては魔法を教えていた。
属性が違うため上手く出来ているかは謎だが、アズライトも子どもながらに頑張っている。
「分かる?みんな、エニシを中心に回ってるんだよ」
番たちも、あの世話焼きのジジババも、あの元バカ王子も、自分たち兄弟も。
だから生きてほしい。少しでも長く。
以前約束した通り彼の子どもたちを見守ることはするつもりだ。
しかし、やはり自分にとってエニシが一番なのだ。
弟であるアズライトとは別に、自分を大切に思ってくれている彼が。
彼の子ではなく、エニシと少しでもいいから一緒にいられればいい。
「今はゆっくり休んで」
あまり表情に出さないエニシだが、最近いつもの余裕がなくなっていた。
ここへ来る前に絡んできた男たちにも珍しくイライラしているのが目に見えて分かった。
だからこうして休める内に少しでも休んでほしく、自分がその手助けが出来るならば喜んでしよう。
一緒に寝るのも、手を繋ぐのもエルには喜びしかないのだから。
「オレも大好きだよ」
言葉を伝えるのは苦手ではあるが、寝ている今ならばと口にすれば繋いでいた手に微かだが力が込められたような気がするのであった。
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