二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

文字の大きさ
上 下
195 / 475

ドッキリ成功

しおりを挟む
 なんともあっさりしたものだった。
 深夜におかしいなと目が覚めた縁はそのまま陣痛に入ったかと思えば早朝にはもう産まれていた。
 ただ予想外だったのが、子が1人ではなく2人だったことだ。
 1人産んで安心していたところに再びきた痛みに初めは慌てたが、双子持ちの奥様がなんともあっさり「こりゃもう1人いるわ」との一言により手を繋いでいたジークと2人固まったものだ。
 え?…………え?
 真っ白になる頭に、しかし出せとばかりに襲う痛みに我に返り言われるがまま力めば待ってましたとばかりに2人目が産まれた。

 「…………そら腹も普通より膨らむわな」

 「双子ですからね。可愛いですけど」

 「驚いたな。可愛いが」

 「「……………」」

 あまりにも短時間に色々起こり過ぎて縁もジークも無言になった。
 オギャーオギャーと元気に泣く子どもたちは2人共に可愛い熊耳があり、まさか縁たちの希望を聞いていたのではとばかりに男女1人ずつだった。
 顔立ちは縁似の気もするが所々ジークにも似ており、その髪色はジークと同じこげ茶色だったりする。
 
 「ですが待望の男の子と女の子ですよ。可愛い耳もあるので私は大満足です」

 「まぁな。けど一気に不安も増したな」

 双子は喜びも2倍だが、苦労も2倍である。
 だがそれも我が子だと思えば些細なことだろう。
 泣き続ける2人を抱えると求めるままミルクをやるのだった。





 「お爺ちゃん?こんな所で何ーー」

 「エニシくーーーーーーん!!」

 ぐぇっ!
 ジンの熱い抱擁に圧死されかけた。
 久しぶりに来た冒険者ギルドに挨拶がてら寄ってみたのだが、入り口に何故か仁王立ちしていたジンに声をかけた途端これである。

 「死にたくないので離して下さい」

 「ご、ごめん。嬉しくてつい」

 ついで殺されたらたまったものではない。
 しかし連絡もなく長いこと来ていなかった縁も悪いので今回は許すことにした。

 「今日はお婆ちゃんはいますか?」

 「いるよ!さぁさぁ一緒にお茶にしよう」

 逃がさないとばかりに手を掴まれマーガレットの部屋まで連れていかれる。
 挨拶に来たのだから逃げる気はないのだが。

 「まぁーたアンタは叫んで何やっーーっ!?」

 「あ、お久しぶりです。お元気でした、かっ!?」

 部屋に入り挨拶した途端、今度はマーガレットによって熱い抱擁を受けた。
 
 「何がお久しぶりだい!長いこと来ないからどれだけ心配したか。あぁ、もう無事で良かったよ」

 良かった良かったと頭を撫でてくるマーガレットに苦笑いする。

 「リックには伝えておいたと思うんですが……もしかして聞いてませんでした?」

 「「いや、聞いた」」

 ならば何故こうも心配されているのだろうか?

 「アンタねぇ、いくら話しを聞いてたって言っても実際に顔見ないことには安心できないんだよ。それに話しを聞いたのも本当に最近なんだよ。そりゃ心配にもなるさ」

 どうやらリックも最近はお城で忙しくしているらしい。
 そのためギルドに来ることもかなり減ったらしく、最近になって漸く顔を出したところを捕まえて聞き出したらしい。
 なんか………ごめんなさいリック。さぞ恐ろしかっただろう。

 「すいませんでした。様子を見てたらあっという間にお腹が大きくなってしまって」

 「初めてのことなら仕方ないさ。そうだ、私らも魔道具を買っておいたから今度からまた長く来ないことがあればちゃんと連絡しな。他にも何かあったらすぐ!すぐに連絡するんだよ」

 「はい」

 縁のために買ってくれたのだろう。
 自分のためだけに買わせてしまったのは申し訳ないが、その気持ちがとても嬉しい。

 「じゃあ紹介しますね。今回は双子でした。男がシン、女が愛依アイです。可愛いでしょう?」

 自身が抱えていたシンと、エルに任せていた愛依アイを見せればマーガレットたちは驚いたように口を開けていた。

 「ア……アンタ、そんな……双子だなんて…大変だっただろう?」

 「そうでもないですよ。つわりはかなり辛かったですけど、それ以外は繋を産んだ時より全然楽でした」

 痛みがあることに変わりはないが、期間も陣痛から出産までの時間も繋を産んだ時に比べ短く楽だった。

 「もし嫌でなければ抱っこしてあげて下さい」

 いくら縁を可愛いがってくれているとはいえ、双子は獣人である。
 もし嫌ならそれでも構わないと言えば、しかしマーガレットたちは嬉しそうに2人に手を伸ばしてくれた。

 「可愛いねぇ。繋より随分小さいんじゃないかい?」

 「そうだね。耳もピクピクしていてとても可愛いよ」

 ある程度育ってから産まれた繋に比べ、獣人である双子は育ちきる前に産まれるためかなり小さい。
 人間ならば未熟児と言われるだろう大きさにマーガレットたちも驚いていたが、その可愛いさにメロメロだった。

 「今日は連れて来てませんが繋も大きくなりましたよ。掴まり立ちも出来るようになって、少しですが話すことも出来るようになったので今度連れてきますね」

 それは楽しみだと微笑むマーガレットに来て良かったと縁も笑うのだった。
  

 
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

虐げられ聖女(男)なので辺境に逃げたら溺愛系イケメン辺境伯が待ち構えていました【本編完結】(異世界恋愛オメガバース)

美咲アリス
BL
虐待を受けていたオメガ聖女のアレクシアは必死で辺境の地に逃げた。そこで出会ったのは逞しくてイケメンのアルファ辺境伯。「身バレしたら大変だ」と思ったアレクシアは芝居小屋で見た『悪役令息キャラ』の真似をしてみるが、どうやらそれが辺境伯の心を掴んでしまったようで、ものすごい溺愛がスタートしてしまう。けれども実は、辺境伯にはある考えがあるらしくて⋯⋯? オメガ聖女とアルファ辺境伯のキュンキュン異世界恋愛です、よろしくお願いします^_^ 本編完結しました、特別編を連載中です!

雪狐 氷の王子は番の黒豹騎士に溺愛される

Noah
BL
【祝・書籍化!!!】令和3年5月11日(木) 読者の皆様のおかげです。ありがとうございます!! 黒猫を庇って派手に死んだら、白いふわもこに転生していた。 死を望むほど過酷な奴隷からスタートの異世界生活。 闇オークションで競り落とされてから獣人の国の王族の養子に。 そこから都合良く幸せになれるはずも無く、様々な問題がショタ(のちに美青年)に降り注ぐ。 BLよりもファンタジー色の方が濃くなってしまいましたが、最後に何とかBLできました(?)… 連載は令和2年12月13日(日)に完結致しました。 拙い部分の目立つ作品ですが、楽しんで頂けたなら幸いです。 Noah

偽物の番は溺愛に怯える

にわとりこ
BL
『ごめんね、君は偽物だったんだ』 最悪な記憶を最後に自らの命を絶ったはずのシェリクスは、全く同じ姿かたち境遇で生まれ変わりを遂げる。 まだ自分を《本物》だと思っている愛する人を前にシェリクスは───?

侯爵令息セドリックの憂鬱な日

めちゅう
BL
 第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける——— ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。

伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃんでした。 実際に逢ってみたら、え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこいー伴侶がいますので! おじいちゃんと孫じゃないよ!

婚約者の浮気相手が子を授かったので

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ファンヌはリヴァス王国王太子クラウスの婚約者である。 ある日、クラウスが想いを寄せている女性――アデラが子を授かったと言う。 アデラと一緒になりたいクラウスは、ファンヌに婚約解消を迫る。 ファンヌはそれを受け入れ、さっさと手続きを済ませてしまった。 自由になった彼女は学校へと戻り、大好きな薬草や茶葉の『研究』に没頭する予定だった。 しかし、師であるエルランドが学校を辞めて自国へ戻ると言い出す。 彼は自然豊かな国ベロテニア王国の出身であった。 ベロテニア王国は、薬草や茶葉の生育に力を入れているし、何よりも獣人の血を引く者も数多くいるという魅力的な国である。 まだまだエルランドと共に茶葉や薬草の『研究』を続けたいファンヌは、エルランドと共にベロテニア王国へと向かうのだが――。 ※表紙イラストはタイトルから「お絵描きばりぐっどくん」に作成してもらいました。 ※完結しました

俺のこと、冷遇してるんだから離婚してくれますよね?〜王妃は国王の隠れた溺愛に気付いてない〜

明太子
BL
伯爵令息のエスメラルダは幼い頃から恋心を抱いていたレオンスタリア王国の国王であるキースと結婚し、王妃となった。 しかし、当のキースからは冷遇され、1人寂しく別居生活を送っている。 それでもキースへの想いを捨てきれないエスメラルダ。 だが、その思いも虚しく、エスメラルダはキースが別の令嬢を新しい妃を迎えようとしている場面に遭遇してしまう。 流石に心が折れてしまったエスメラルダは離婚を決意するが…? エスメラルダの一途な初恋はキースに届くのか? そして、キースの本当の気持ちは? 分かりづらい伏線とそこそこのどんでん返しありな喜怒哀楽激しめ王妃のシリアス?コメディ?こじらせ初恋BLです! ※R指定は保険です。

処理中です...