二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

文字の大きさ
上 下
178 / 475

類は友を呼ぶ

しおりを挟む
 気まずい。それはもうかなり。

 「ふぅむ」

 「……おかわり入れましょうか?」

 「すまないね。お願いするよ」

 お茶のお代わりを入れようと席を立つが、その視線が縁から外れることはない。
 この人物が部屋に現れてからというもの、ジッと観察するようにを見てくる。
 まるで動物園の動物にでもなったようだ。
 あまりに見てくるため、もしや不審人物にでも思われているのかとも思ったが、終始にこやかに笑っている上に縁が出したお茶もケーキも警戒することなく手をつけていることからそれはないだろう。

 「エニシくんだったかな?以前は依頼を受けてくれてありがとう。とても助かったよ。挨拶が遅れたが私がーー」

 「その気持ち悪い喋り方やめなさい。全身鳥肌が立つ」

 「そういうお前もだろ。ま、いいわ、アルバトロスじゃ。アルでも、ジジイでもなんでもいいわい」

 一気にガラが悪くなった。
 物語りに出てくる魔法使いのローブようなものを着た白髪白髭のお爺さんはにこにこと笑っていればとても素敵な老紳士なのだが、マーガレットたちの影響なのかとんでもなく顔に似合わない話し方だった。

 「よろしくお願いします。おじ…ジンさんたちにはいつもよくしてもらってます」

 「こいつらが誰かをこれだけ可愛いがるとはな。お前さんどんな魔法使ったんじゃ?」

 使ってない。断じて使ってない。

 「よく分かりませんが、お2人共とても優しいですよ。マーガレットさんは照れると怒るのが可愛いらしいですし、ジンさんは……少々暴走気味ですがうちの子をとても可愛いがってくれてます」

 「お前さん本当に十代か?」

 十代です。外見は。
 とは言えず、にっこり笑って頷いておく。

 「にしても話しを聞いた時は耳を疑ったが、本当にお前さんがその坊を産んだんか?」

 未だぐっすりと眠りにつく繋にアルバトロスが信じられないというように見てくるため、ならば見やすいようにと隣に座るジンに繋を頼めば、これまたニコニコとダラシな…嬉しそうに抱っこしアルバトロスに見せている。
 アルバトロスはそんなジンを何だコイツとばかりに気持ち悪そうに見ていたが。

 「見たところ普通の赤子じゃな。名は?」

 「繋と名付けました」

 「こやつが人の子を抱く日が来るとはな。どれ、私にも抱っこさせてくれ」

 「断る!!」

 ジンは即座にそう返すと一気にアルバトロスから距離をとった。

 「ケチなジジイじゃい」

 「ジジイがジジイ言うな!」

 「おうおう、酷いジジイじゃて。こんなジジイやめて儂の孫にならんか?」

 何の話しだ。
 逸れていく話しについていけない。

 「えーーと?あ、そういえばここに来る前に薬草を摘んで来たんです。以前のお詫び、と言っては何ですが良ければどうーー」

 「やはり儂の孫にならんか!!」

 合間を見ては採取していたので量はそれなりにあった。
 以前依頼を断ったことへのお詫びにとそれを渡せば、喜んでくれたのか大興奮のアルバトロスにガシッと腕を掴まれた。

 「私らの孫だって言ってんだろ!」

 「それはズルいじゃろ!儂にも分けろ!」

 「誰が渡すか!」

 もう何が何やら。
 言い合う3人を放置し、治まるまでエルと仲良くお茶をしておくことにする。

 「みなさん元気ですねぇ」

 「元気過ぎでしょ。ってか、あの人何なの?あの2人相手に言い合うって中々ーーちょ、マジ!?ムチ!ムチ持ってる!」

 いつの間に取り出したのか片手に武器を構えるジンとマーガレットに、アルバトロスも対抗するように鞭を取り出していた。
 いやいや、本当に何者ですか!?

 「いいだろう。久々に相手してやるよ。表に出なっ!」

 「エニシくんもケイちゃんも渡さねぇ。潰す!」

 「ほほほ、まだまだお前さんらに負ける儂じゃあるまいて。どれ、ちょっくら指導してやろうかの」

 元とはいえ、冒険者というのはどうしてこうも喧嘩っ早い生き物なのだろうか。
 自分には到底無理だと呆れてしまう。

 「諍いするのは構いませんが、それなら私たちは帰らせてもらいますからね」

 「ダメに決まってんだろ!」
 「それはダメだよ!」
 「主役がいなくなったらダメじゃろ」

 だったら喧嘩はやめなさい。
 未だ繋を抱えたままのジンに手を伸ばせば、さすがにマズかったと気付いたのか素直に渡してくれた。

 「別にいいんですよ?私は特にここにいる理由もありませんし、3人が仲良くしたいというのであれば止めはしませんから」

 「「………」」

 「この2人相手に何とも剛毅じゃな」

 「迷惑料として薬草を返してもらっても?」

 「すまなんだ」

 もう何でここにいるのか本気で分からなくなってきた。
 いくら時間があったとは言え、態々マーガレットたちが縁をアルバトロスと会わせたのだから何か意味があるのだろうと思っていた。
 なのにそんな話しをするどころか、縁を置き去りにして言い争う3人に少々腹立たしくもあった。

 「それで?アルバトロスさん……ああ、アル爺でいいですか?それで、アル爺に会わせたのには何か理由があるんですよね?」

 あるなら早く話せと机を叩けば、3人は慌てて席に着くのであった。


 

 
 

 

 
 

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

虐げられ聖女(男)なので辺境に逃げたら溺愛系イケメン辺境伯が待ち構えていました【本編完結】(異世界恋愛オメガバース)

美咲アリス
BL
虐待を受けていたオメガ聖女のアレクシアは必死で辺境の地に逃げた。そこで出会ったのは逞しくてイケメンのアルファ辺境伯。「身バレしたら大変だ」と思ったアレクシアは芝居小屋で見た『悪役令息キャラ』の真似をしてみるが、どうやらそれが辺境伯の心を掴んでしまったようで、ものすごい溺愛がスタートしてしまう。けれども実は、辺境伯にはある考えがあるらしくて⋯⋯? オメガ聖女とアルファ辺境伯のキュンキュン異世界恋愛です、よろしくお願いします^_^ 本編完結しました、特別編を連載中です!

偽物の番は溺愛に怯える

にわとりこ
BL
『ごめんね、君は偽物だったんだ』 最悪な記憶を最後に自らの命を絶ったはずのシェリクスは、全く同じ姿かたち境遇で生まれ変わりを遂げる。 まだ自分を《本物》だと思っている愛する人を前にシェリクスは───?

俺のこと、冷遇してるんだから離婚してくれますよね?〜王妃は国王の隠れた溺愛に気付いてない〜

明太子
BL
伯爵令息のエスメラルダは幼い頃から恋心を抱いていたレオンスタリア王国の国王であるキースと結婚し、王妃となった。 しかし、当のキースからは冷遇され、1人寂しく別居生活を送っている。 それでもキースへの想いを捨てきれないエスメラルダ。 だが、その思いも虚しく、エスメラルダはキースが別の令嬢を新しい妃を迎えようとしている場面に遭遇してしまう。 流石に心が折れてしまったエスメラルダは離婚を決意するが…? エスメラルダの一途な初恋はキースに届くのか? そして、キースの本当の気持ちは? 分かりづらい伏線とそこそこのどんでん返しありな喜怒哀楽激しめ王妃のシリアス?コメディ?こじらせ初恋BLです! ※R指定は保険です。

王太子殿下は悪役令息のいいなり

白兪
BL
「王太子殿下は公爵令息に誑かされている」 そんな噂が立ち出したのはいつからだろう。 しかし、当の王太子は噂など気にせず公爵令息を溺愛していて…!? スパダリ王太子とまったり令息が周囲の勘違いを自然と解いていきながら、甘々な日々を送る話です。 ハッピーエンドが大好きな私が気ままに書きます。最後まで応援していただけると嬉しいです。 書き終わっているので完結保証です。

雪狐 氷の王子は番の黒豹騎士に溺愛される

Noah
BL
【祝・書籍化!!!】令和3年5月11日(木) 読者の皆様のおかげです。ありがとうございます!! 黒猫を庇って派手に死んだら、白いふわもこに転生していた。 死を望むほど過酷な奴隷からスタートの異世界生活。 闇オークションで競り落とされてから獣人の国の王族の養子に。 そこから都合良く幸せになれるはずも無く、様々な問題がショタ(のちに美青年)に降り注ぐ。 BLよりもファンタジー色の方が濃くなってしまいましたが、最後に何とかBLできました(?)… 連載は令和2年12月13日(日)に完結致しました。 拙い部分の目立つ作品ですが、楽しんで頂けたなら幸いです。 Noah

伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃんでした。 実際に逢ってみたら、え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこいー伴侶がいますので! おじいちゃんと孫じゃないよ!

侯爵令息セドリックの憂鬱な日

めちゅう
BL
 第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける——— ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。

処理中です...