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う〜ん
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人間こんなによく喋れるものだと感心する。
「お兄様は将来お父様の跡を継いで国王となるの。貴方みたいな庶民と一緒にいるだなんて変な噂立てられたら大変だわ」
「「「「「………」」」」」
そうですか。
「大体お兄様がお優しいからって調子に乗らないでほしいものだわ。貴方みたいな痩せ細ってみすぼらしい男誰が一緒に好き好んでいたいと思うの」
ほうほう。
成る程成る程と頷きのほほんと聞く縁に対し、周りの空気は少女が話す度に冷たく、重くなっていく。
エルなど今にも呪い殺さんばかりに睨みつけていた。
「貴方が言いたいことは大体分かりました。で、私に何を求めているんでしょうか?」
長々と約30分ほどかけてお兄様の素晴らしさと、そんなお兄様に貴方は相応しくないと言う話を聞かされたのだが、結局のところ彼女が縁に対して何を求めているのかが分からない。
縁には只のお兄様大好きアピールにしか聞こえていなかった。
「え?えーと、だから、そう!今すぐここから出て行きなさいってことよ!」
「まさかこのギルドからというわけではありませんよね?つまり私にこの町とは言わず、この国からいなくなって欲しいと?」
「そうよ!よく分かってるじゃない」
ふむ。
自信満々に胸を張る姿はとても可愛いらしいのだが、いっていることは全くと言っていいほど可愛いげがなく、傲慢な態度に皆の怒りを買っている。
「リッーーいえ、王太子殿下。今までの数々のご無礼お許し下さい。王女様もこう仰っておいでですので、御命令通り私は今すぐこの国から離れましょう。エル、行きますよ」
こうして仲良くしてくれた人たちがいるこの町を離れるのはとても寂しいが、何もこれから一生会えなくなるわけでもない。
リックにしてもあの時は町の外だったことと、カッとなり説教はしたが、今現在縁たちは彼女たち王族が治めている町の中にいるため逆らうことはあまり良くないだろう。
下手に反感を買って周りの人たちに迷惑がかかる方が困る。
納得いかないという顔のエルの手を引き出て行こうとするがーー
「待ちなっ」
「待って下さい!」
静かに、しかし室内に響き渡るようなマーガレットの声と、リックに腕を掴まれ立ち止まる。
「アンタが出ていく必要なんかないよ」
「そうです!エニシさんは何も悪くない!」
確かに縁は何も悪いことはしていない。
してはいないが、だからと言って立場の上の者からの命令は時には嫌でも聞かなければいけない時がある。
たとえそれが理不尽なものであってもだ。
それにこう言っては薄情者だと言われるかもしれないが、縁は家族であるエルやアズ、アレンたちさえいるのであればこの国を離れることに何ら問題はない。
新しい住処の目処も立っているためそこまで心配するようなこともなく、今の隠れ家にしても早々バレることはないだろう。
ランたちのことは気になるが、それぐらいならいつでも逢いに来れる。
なので結構あっさりしたものであったのだが、縁は良くても周りはそれを許してくれはしなかったのであった。
「なっ、お兄様!こんな者と関わってはいけません!この男はお兄様にとって悪影響でしかなーー」
「黙れっ!」
「っ!?」
それ以上は許さないとばかりにリックに睨みつけられ少女はびくりと身体を震わせた。
「お前は一体何様だ?自分が気に入らないというだけで人の大切な人に勝手に国から出て行けとは呆れてものも言えない」
「そうさね。それにこの子たちは私たちにとっても家族同然の大切な子たちなんだよ。それを何もしていないのに出ていけとは、どうやら王女様は私たち冒険者ギルドにケンカを売りたいらしい」
そこで皆の視線に気づいたのか、戸惑う少女にしかし手を差し伸べる者は誰一人としていない。
「な、なんですの!私はただお兄様に近づくなと言っているだーー」
「だから何故お前にそんなことを言われなければならない?私は私が好きでこの人といるんだ。それをお前がどうこう言う必要もなければ、言って欲しくもない。むしろ迷惑でしかない」
「………(汗)」
どど、どうしよう。何かすごい大事になっている気がする!
少女の言葉に少々イラっとはしたが、縁的には「はい、そうですか。分かりました」ぐらいの軽い気持ちだったのだ。
まさかこんなことになるとは思っておらず、戸惑いずっと握ったままだったエルの手をギュッと握ればーー
「(いつでも殺れるよ)」
力強い頷きと共にそんな物騒な言葉を小声でいただいた。
ぶんぶんと首を振れば、それを拒否するとばかりにエルも首を振る。
傍目から見ればかなり珍妙な2人組だろう。
そんな2人をニコニコとジンが見ていたのだが、首を振るのに忙しく2人がそれに気付くことはなかったのだった。
ニコニコとはしていたが、先程から一言も言葉を発していないジンは実はかなりお怒りなのだと気付くものはいない。
「(王様シメるか)」
ボソッと呟いたジンの言葉を知る者はいない。
世の中には敵に回すと困る者がいるのだ。
「お兄様は将来お父様の跡を継いで国王となるの。貴方みたいな庶民と一緒にいるだなんて変な噂立てられたら大変だわ」
「「「「「………」」」」」
そうですか。
「大体お兄様がお優しいからって調子に乗らないでほしいものだわ。貴方みたいな痩せ細ってみすぼらしい男誰が一緒に好き好んでいたいと思うの」
ほうほう。
成る程成る程と頷きのほほんと聞く縁に対し、周りの空気は少女が話す度に冷たく、重くなっていく。
エルなど今にも呪い殺さんばかりに睨みつけていた。
「貴方が言いたいことは大体分かりました。で、私に何を求めているんでしょうか?」
長々と約30分ほどかけてお兄様の素晴らしさと、そんなお兄様に貴方は相応しくないと言う話を聞かされたのだが、結局のところ彼女が縁に対して何を求めているのかが分からない。
縁には只のお兄様大好きアピールにしか聞こえていなかった。
「え?えーと、だから、そう!今すぐここから出て行きなさいってことよ!」
「まさかこのギルドからというわけではありませんよね?つまり私にこの町とは言わず、この国からいなくなって欲しいと?」
「そうよ!よく分かってるじゃない」
ふむ。
自信満々に胸を張る姿はとても可愛いらしいのだが、いっていることは全くと言っていいほど可愛いげがなく、傲慢な態度に皆の怒りを買っている。
「リッーーいえ、王太子殿下。今までの数々のご無礼お許し下さい。王女様もこう仰っておいでですので、御命令通り私は今すぐこの国から離れましょう。エル、行きますよ」
こうして仲良くしてくれた人たちがいるこの町を離れるのはとても寂しいが、何もこれから一生会えなくなるわけでもない。
リックにしてもあの時は町の外だったことと、カッとなり説教はしたが、今現在縁たちは彼女たち王族が治めている町の中にいるため逆らうことはあまり良くないだろう。
下手に反感を買って周りの人たちに迷惑がかかる方が困る。
納得いかないという顔のエルの手を引き出て行こうとするがーー
「待ちなっ」
「待って下さい!」
静かに、しかし室内に響き渡るようなマーガレットの声と、リックに腕を掴まれ立ち止まる。
「アンタが出ていく必要なんかないよ」
「そうです!エニシさんは何も悪くない!」
確かに縁は何も悪いことはしていない。
してはいないが、だからと言って立場の上の者からの命令は時には嫌でも聞かなければいけない時がある。
たとえそれが理不尽なものであってもだ。
それにこう言っては薄情者だと言われるかもしれないが、縁は家族であるエルやアズ、アレンたちさえいるのであればこの国を離れることに何ら問題はない。
新しい住処の目処も立っているためそこまで心配するようなこともなく、今の隠れ家にしても早々バレることはないだろう。
ランたちのことは気になるが、それぐらいならいつでも逢いに来れる。
なので結構あっさりしたものであったのだが、縁は良くても周りはそれを許してくれはしなかったのであった。
「なっ、お兄様!こんな者と関わってはいけません!この男はお兄様にとって悪影響でしかなーー」
「黙れっ!」
「っ!?」
それ以上は許さないとばかりにリックに睨みつけられ少女はびくりと身体を震わせた。
「お前は一体何様だ?自分が気に入らないというだけで人の大切な人に勝手に国から出て行けとは呆れてものも言えない」
「そうさね。それにこの子たちは私たちにとっても家族同然の大切な子たちなんだよ。それを何もしていないのに出ていけとは、どうやら王女様は私たち冒険者ギルドにケンカを売りたいらしい」
そこで皆の視線に気づいたのか、戸惑う少女にしかし手を差し伸べる者は誰一人としていない。
「な、なんですの!私はただお兄様に近づくなと言っているだーー」
「だから何故お前にそんなことを言われなければならない?私は私が好きでこの人といるんだ。それをお前がどうこう言う必要もなければ、言って欲しくもない。むしろ迷惑でしかない」
「………(汗)」
どど、どうしよう。何かすごい大事になっている気がする!
少女の言葉に少々イラっとはしたが、縁的には「はい、そうですか。分かりました」ぐらいの軽い気持ちだったのだ。
まさかこんなことになるとは思っておらず、戸惑いずっと握ったままだったエルの手をギュッと握ればーー
「(いつでも殺れるよ)」
力強い頷きと共にそんな物騒な言葉を小声でいただいた。
ぶんぶんと首を振れば、それを拒否するとばかりにエルも首を振る。
傍目から見ればかなり珍妙な2人組だろう。
そんな2人をニコニコとジンが見ていたのだが、首を振るのに忙しく2人がそれに気付くことはなかったのだった。
ニコニコとはしていたが、先程から一言も言葉を発していないジンは実はかなりお怒りなのだと気付くものはいない。
「(王様シメるか)」
ボソッと呟いたジンの言葉を知る者はいない。
世の中には敵に回すと困る者がいるのだ。
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