175 / 475
はて?
しおりを挟む
「そこの貴方!」
「かなり間が合いてしまいましたね。ジンさんたちが卒倒していなければいいんですが……」
新たな住居の作成などでギルドへ来るのにかなり時間が空いてしまっていた。
「ちょっと!そーー」
「あの人たちって何なの?ロンなんか斧持って追いかけられたって言ってたけど、鬼ババアなの?」
頰を引きつらせながら言っていたロンにエルはもうあの2人が分からないと唸っている。
「だから待ちなさいといーー」
「元冒険者ですからね。色々な攻撃手段があるのはすごいことです」
安全な依頼しかこなしたことがない縁たちとは違い、ギルドマスターにまで上り詰めるほどの依頼をこなしてきたマーガレットたちを縁はすごいと感心する。
「いや、そういうことを言ってるんじゃなく…」
「待ちなさいと言っているでしょう!!そこの2人!」
「「?」」
先程から何やら後ろが騒がしいとは思っていたが、まさか自分たちに言っていたとは思わず、無視する形になってしまっていたらしい。
もちろんエルは気付いていた。わざとだ。
「先程からずっと話しかけていましたのに随分だこと。まぁ、いいわ。それより最近お兄様に纏わり付いているというエニシという男のことを探していたのだけど、貴方のことよね?」
「違いますよ」
「え?」
さらりと笑顔で嘘をついた縁は、驚くお嬢様(?)に挨拶するとそそくさとその場を離れた。
「突然ですがリックって妹さんとかいます?」
「?、はい。2つ違いですが妹が1人」
久しぶりの再会にも関わらず挨拶もそこそこに質問すれば、リックも戸惑いながらも素直に答えてくれる。
「ってことはコイツの妹だね。めんどくさ」
「えーと、もしかして会いましたか?」
「さっきそこで絡まれたんだよ。オニイサマに纏わりつくエニシさんをオサガシなんだって」
エルの嫌な言い回しにリックが平謝りしてくる。
確かに絡まれはしたが、何かされたわけではないので大丈夫だとリックに頭を上げさせる。
「仲が良いんですか?」
「いえ全く。同じ城にいますが昔は会うのは年に1、2回程度で、会っても嫌味しか言ってこないので殆ど無視してました」
本当に気にしてないのだろう。
けろりとした顔で首を振っている。
ならば何故だろう?
「……ただ最近は何かと見かけるというか、目につくといいますか…あまりに見かけるので理由を聞こうと話しかけても急に怒りだして走って逃げていく感じで」
ストーカーではないことを祈ろう。
兄妹でそんなことはないと思うが。
「っていうか纏わり付くってかなり失礼じゃない?実際は逆じゃん」
確かに。縁はリックに頼まれて依頼を受けている立場なのであって、リックに頼んで依頼を出してもらっているわけでも付き纏っているわけでもない。
だがそれを何も知らないリックに言うのも酷だろう。
「まぁまぁ、特に何かされたわけでもありませんから。それより会わない内に随分身長が伸びましたね。身体もガッシリしてますし」
縁に対する態度は全くと言っていいほど変わってないが、その体格は以前会った時より大人びている。
凄いですねと褒めれば嬉しそうに笑って今までのことを話してくれる。
「その、言われたことを私なりに考えてみたんです。それで自分に出来ることをとりあえず頑張ってみようと思って。剣も前より上達しましたし、勉強は今でも苦手ですけど少しずつ頑張って最近は珍しく宰相から褒めの言葉ももらいました」
どうやらこの国の王様はあまりのようで、殆どが宰相が仕切っているらしい。
それほどキレ者ならば周りからよく思われていないだろうと思えばかなりの実力者らしく、使えないと判断したものは片っ端から破棄し、弱味を握ろうにもそんな隙がなく、そんなこと考えた馬鹿たちはいつの間にかいなくなるという怪談話になっているようだ。
怖っ!!
「良かったですね。貴方の頑張りを見ていてくれた人がいたってことです。ギルドの方でも依頼を受けているんでしょう?ランクが上がったと聞きました」
「Eですけど。あの、ランクが違ってもまた一緒に依頼に付いて行ってもいいですか?」
それで特にリックに旨味があるとは思えないが、ただ単に縁といたいだけだと分かっているので付いてくるのには問題ない。
「もちろん。今日はどうしますか?依頼を受けてもいいですけど、久しぶりなので少しお話しでもしますか?」
「はい!ぜひ!」
まさかギルド内で依頼も受けずに話すのはどうかと思い、では外でお茶でもしようということになったのだが。
「あ、あのその前に実は渡しーー」
「「ちょーーっと待った!!」」
「待ちなさーーい!!」
そんな大声がギルド内に響き渡ったかと思えば、見知った顔の2人と先程見かけた少女が縁らに駆け寄ってくるのであった。
「………とりあえず、みなさん驚かれてるので謝りましょうか」
「「ごめんなさい!」」
にっこりと笑いそう言えば、何故か縁に対してすごい勢いで頭を下げてくるジンとマーガレットであった。
相手が違いますよ?
「かなり間が合いてしまいましたね。ジンさんたちが卒倒していなければいいんですが……」
新たな住居の作成などでギルドへ来るのにかなり時間が空いてしまっていた。
「ちょっと!そーー」
「あの人たちって何なの?ロンなんか斧持って追いかけられたって言ってたけど、鬼ババアなの?」
頰を引きつらせながら言っていたロンにエルはもうあの2人が分からないと唸っている。
「だから待ちなさいといーー」
「元冒険者ですからね。色々な攻撃手段があるのはすごいことです」
安全な依頼しかこなしたことがない縁たちとは違い、ギルドマスターにまで上り詰めるほどの依頼をこなしてきたマーガレットたちを縁はすごいと感心する。
「いや、そういうことを言ってるんじゃなく…」
「待ちなさいと言っているでしょう!!そこの2人!」
「「?」」
先程から何やら後ろが騒がしいとは思っていたが、まさか自分たちに言っていたとは思わず、無視する形になってしまっていたらしい。
もちろんエルは気付いていた。わざとだ。
「先程からずっと話しかけていましたのに随分だこと。まぁ、いいわ。それより最近お兄様に纏わり付いているというエニシという男のことを探していたのだけど、貴方のことよね?」
「違いますよ」
「え?」
さらりと笑顔で嘘をついた縁は、驚くお嬢様(?)に挨拶するとそそくさとその場を離れた。
「突然ですがリックって妹さんとかいます?」
「?、はい。2つ違いですが妹が1人」
久しぶりの再会にも関わらず挨拶もそこそこに質問すれば、リックも戸惑いながらも素直に答えてくれる。
「ってことはコイツの妹だね。めんどくさ」
「えーと、もしかして会いましたか?」
「さっきそこで絡まれたんだよ。オニイサマに纏わりつくエニシさんをオサガシなんだって」
エルの嫌な言い回しにリックが平謝りしてくる。
確かに絡まれはしたが、何かされたわけではないので大丈夫だとリックに頭を上げさせる。
「仲が良いんですか?」
「いえ全く。同じ城にいますが昔は会うのは年に1、2回程度で、会っても嫌味しか言ってこないので殆ど無視してました」
本当に気にしてないのだろう。
けろりとした顔で首を振っている。
ならば何故だろう?
「……ただ最近は何かと見かけるというか、目につくといいますか…あまりに見かけるので理由を聞こうと話しかけても急に怒りだして走って逃げていく感じで」
ストーカーではないことを祈ろう。
兄妹でそんなことはないと思うが。
「っていうか纏わり付くってかなり失礼じゃない?実際は逆じゃん」
確かに。縁はリックに頼まれて依頼を受けている立場なのであって、リックに頼んで依頼を出してもらっているわけでも付き纏っているわけでもない。
だがそれを何も知らないリックに言うのも酷だろう。
「まぁまぁ、特に何かされたわけでもありませんから。それより会わない内に随分身長が伸びましたね。身体もガッシリしてますし」
縁に対する態度は全くと言っていいほど変わってないが、その体格は以前会った時より大人びている。
凄いですねと褒めれば嬉しそうに笑って今までのことを話してくれる。
「その、言われたことを私なりに考えてみたんです。それで自分に出来ることをとりあえず頑張ってみようと思って。剣も前より上達しましたし、勉強は今でも苦手ですけど少しずつ頑張って最近は珍しく宰相から褒めの言葉ももらいました」
どうやらこの国の王様はあまりのようで、殆どが宰相が仕切っているらしい。
それほどキレ者ならば周りからよく思われていないだろうと思えばかなりの実力者らしく、使えないと判断したものは片っ端から破棄し、弱味を握ろうにもそんな隙がなく、そんなこと考えた馬鹿たちはいつの間にかいなくなるという怪談話になっているようだ。
怖っ!!
「良かったですね。貴方の頑張りを見ていてくれた人がいたってことです。ギルドの方でも依頼を受けているんでしょう?ランクが上がったと聞きました」
「Eですけど。あの、ランクが違ってもまた一緒に依頼に付いて行ってもいいですか?」
それで特にリックに旨味があるとは思えないが、ただ単に縁といたいだけだと分かっているので付いてくるのには問題ない。
「もちろん。今日はどうしますか?依頼を受けてもいいですけど、久しぶりなので少しお話しでもしますか?」
「はい!ぜひ!」
まさかギルド内で依頼も受けずに話すのはどうかと思い、では外でお茶でもしようということになったのだが。
「あ、あのその前に実は渡しーー」
「「ちょーーっと待った!!」」
「待ちなさーーい!!」
そんな大声がギルド内に響き渡ったかと思えば、見知った顔の2人と先程見かけた少女が縁らに駆け寄ってくるのであった。
「………とりあえず、みなさん驚かれてるので謝りましょうか」
「「ごめんなさい!」」
にっこりと笑いそう言えば、何故か縁に対してすごい勢いで頭を下げてくるジンとマーガレットであった。
相手が違いますよ?
21
お気に入りに追加
3,691
あなたにおすすめの小説
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
【完結】虐げられオメガ聖女なので辺境に逃げたら溺愛系イケメン辺境伯が待ち構えていました(異世界恋愛オメガバース)
美咲アリス
BL
虐待を受けていたオメガ聖女のアレクシアは必死で辺境の地に逃げた。そこで出会ったのは逞しくてイケメンのアルファ辺境伯。「身バレしたら大変だ」と思ったアレクシアは芝居小屋で見た『悪役令息キャラ』の真似をしてみるが、どうやらそれが辺境伯の心を掴んでしまったようで、ものすごい溺愛がスタートしてしまう。けれども実は、辺境伯にはある考えがあるらしくて⋯⋯? オメガ聖女とアルファ辺境伯のキュンキュン異世界恋愛です、よろしくお願いします^_^ 本編完結しました、特別編を連載中です!
愛などもう求めない
白兪
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。
「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」
「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」
目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。
本当に自分を愛してくれる人と生きたい。
ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。
ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。
最後まで読んでいただけると嬉しいです。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる