二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

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ご乱心

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 ジンに不審人物捕獲作戦を任せ、マーガレットとお茶をしながら待っていた縁たち。

 「ギルマス助けて下さいっ!」

 というギルド職員による叫びにより終わりを告げた。
 何事だとみんなで向えばーー

 「お前か!それともお前か!ウチの孫に手を出す不届き者はお前かー!」

 「「「………」」」

 うーん。
 手当たり次第に声をかけ、犯人はお前かと叫ぶジンの姿にマーガレットも縁さえも声をかけられなかった。

 「ギルマス!助けーー」

 「お前かーー!」

 「ギャー!」

 阿鼻叫喚。
 何故助けを求めた職員が犯人になり得るのか。
 とち狂ったジンに呆れるばかりであった。

 「ジン!アンタ何しーー」

 「あんな乱暴な方には繋は触らせられませんね」

 ボソリと呟いた縁の言葉に、職員に掴みかかっていた手がピタリと止まる。

 「産まれたばかりの繋はとても繊細なんです。そんな乱暴な人に繋を任せたら繋が怪我してしまいます」

  「……わ、私は……」

 「私はと言ったはずですが?彼は貴方のギルドの職員でしょう?何故こんなことになってるんですか」

 隣で大きな溜め息つくマーガレットに苦笑いすると、こんなことになってしまい申し訳ないと謝る。

 「アイツが(孫)バカだっただけさ。アンタが謝ることはないよ」

 確かに縁もこんなことになるとは思ってなかったが、きっかけは自分だっただけに申し訳なかった。

 「私たちのことを想ってしてくれたのは分かりましたから離してあげて下さい。それより一緒にお茶にでもしましょう?」

 早く離してやれと言えば慌てて駆け寄ってくる。

 「こ、これは、その…君たちに何かあってはと!」

 「はいはい、分かりました。ちゃんとみなさんに謝って下さいね」

 何故そこまで暴走できるのか。
 落ち込むジンの手を引き部屋に戻れば、まるで本当のおじいちゃんみたいだとエルに笑われた。

 「ちゃんと説明しなかった私も悪いですが、聞かずに突っ走っていったジンさんもよくないです。ただ私たちのことを考えてくれてのことなので今回は喧嘩両成敗ということで…はい、どうぞ」

 もうしないようにと約束させると繋を渡してやる。

 「私たちを孫だと思ってくれているのなら危ないことはしないで下さい。あんなことで怪我でもして倒れたらどうするんですか。繋を抱けないどころか会えなくなるかもしれないんですよ。繋のためにも長生きして下さい」

 「うん、ごめんね。ケイちゃんも驚かせてごめんね」

 「……なんかもうエニシは孫なのか、親なのかよく分かんなくなってきたんだけど」

 「私もさ。どっちが年上か分かったもんじゃないね」

 なんて言われようだろうか。
 
 「大切な人に長生きして欲しいというのは当然のことでしょう?」

 「「「………」」」

 恥ずかしさに視線を彷徨わせる者2名、全力でニコニコと笑っている者1名。
 
 「エニシくんはやはりいいね。とてもいい」

 「はいはい。私はお茶を用意します」

 うんうん頷くジンを軽く流し、お茶とエルには約束のケーキを出してやれば、羨ましがったマーガレットたちにも渡してやる。

 「そういえばずっと2人に聞きたいと思ってたことがあるんです」

 「なんだい?」
 「何かな?」

 エルがそっと視線を逸らした。

 「筋肉ってどうすればつきますか?」

 「「………」」

 どうしたのだろう?
 優しい2人のことだ、親切に教えてくれるだろうと思っていた縁は黙り込む2人に首を傾げる。

 「あぁ、すいません。私どうにも筋肉がつきにくいみたいで、できればいい鍛え方があれば教えて欲しいのですが」

 「「「………」」」

 何故2回も言った!?という空気の中、縁は単純に聴こえてなかったのだろうと言っただけに過ぎない。

 「腹筋背筋と頑張ってはみたんですが、次の日筋肉痛で動けなくなりました」

 「「「………」」」

 あれはかなり辛かったと洩らす縁に、その姿を見ていたエルは溜め息をついていた。
 生まれたての子鹿よろしく前屈みで腰を抑えて歩く姿はとても情けなく、セインたちが呆れながらも抱き抱えて運んでいた。
 これで諦めてくれたらと洩らしていたが、当の本人は自分には合わなかったようだったと開き直り別の方法を模索していたりする。

 「走りこみも考えたんですが、周りのみんなに止められてしまって……」

 セインたちに限らず、エルにサッズ、他の面々にも止められ諦めるしかなかった。
 ならば元冒険者の2人なら何かいい方法を知っているかもしれないと聞いてみたが、先程から黙り込んでしまっている。

 「繋のためにもムキムキになーー」

 「オギャー、オギャー」

 「あ~、ほら泣いてるよ。お腹空いてるんじゃない?」

 「だね。ほら早くしておやり」

 「そうそう、待たせては可哀想だ」

 それまでの黙りが嘘かのように動きます出す3人に若干話しを逸らされた気がしたが、またあとで話せばいいと繋にミルクを飲ませてやるのだった。
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