143 / 475
困惑
しおりを挟む
「久しぶりですね。無事産まれましたよ」
そう言って現れたエニシに驚き、あれほど膨らんでいたはずのお腹が元に戻っているのに驚き、その後ろから現れたギルマスたちに驚き、しかもその腕に赤ん坊がいることに驚いた。
混乱のあまり焦りに焦り変な叫び声を上げると、せっかく来てくれたエニシたちをその場に残し叔父さんを呼びに行ってしまった。
「おじゃ、おじ、叔父さん!叔父さん叔父さん叔父さん!」
慌て過ぎて噛んだ。
「んだよ、そんな慌てて」
あまりの慌てように不審に思ったガンズが部屋から出てきた。
だが何と言って説明していいか分からず、見てもらった方が早いと何も言わず引きずっていく。
何だ何だと文句をいいながらも連れていけば、訪問者たちを見てガンズも固まった。
「…………いらっしゃいませ。今日は何の御用でしょうか?」
ギルドマスターとサブギルドマスターの姿に我に返ったガンズが頭を下げるのに、そういえば挨拶してなかった!とランも慌てて頭を下げる。
「なに、今日は都合があったから来ただけで、本命はこっちさ」
こっちと言われエニシを見れば、にこにこと楽しそうにこちらを見ている。
「元気そうで安心しました」
走り去る後ろ姿に元気なのは伝わったようだ。
「は、はい!あ、いえ、いや、う、うん。げ、元気だよ」
「よかったです。いきなり来てすいません。今日はランに私の新しい家族を紹介しに来ました」
「え?新しい…え?なに?」
おいでと手招きされ近寄っていけば、ハイと手渡される。
どうしていいか分からず戸惑っていれば手を取られ、少々強引に腕に乗せられた。
「ど、どうしたらいい?」
赤ん坊など今まで抱いたことがなく、エニシの子だと思えば余計に怪我などさせたら大変だと持つ手が震える。
「大丈夫、大丈夫ですよ。見て下さい、泣いてないでしょう?」
言われてみれば、こんな安定感のない自分が抱っこしているにも関わらず泣き声が聞こえず、恐る恐る見てみればパッチリした大きな瞳がこちらをジッと見ていた。
「あ…可愛い」
「でしょ?」
エニシ譲りの金色の瞳はとても綺麗だった。
「ケイと言います。女の子です」
「ケイちゃん…」
そっと触れてみればとても柔らかく、ぷにぷにの頰はずっと触っていたくなる。
「すごいね。ちっちゃいけどちゃんと生きてる」
「これが人のお腹の中に入っていたんですから驚きですよね。ほらケイ、ランですよ。私の大切な友達ですから仲良くして下さいね」
「おいおい、まだ分かんねぇだろ」
ガンズのツッコミにランも笑うと、隣にいるガンズに交代する。
「ランが産まれた時思い出すな。コイツもこれくらいちっちゃかったっけなぁ」
慣れたように抱っこする姿に、自分も昔はこうして抱っこしてもらったのかと少し面映ゆかった。
「ランなら昔もとても可愛いかったんでしょうね。私も見てみたかったです」
「そ、そんなことないよ!ぼ、僕なんかそんな…ケイちゃんの方が何倍も可愛いから!」
ブンブンと首を振れば何故か皆に頭を撫でられた。
「ガンズさんと仲良くできているようですね。中々様子を見に来れなくて心配してたんですよ」
こんなによくしてくれた上、ずっと心配してくれていたと知り泣きそうになった。
「ご、ごめんね。ありがとう。叔父さん優しくて、た、頼ってばっかりだけど、すごく嬉しいんだ」
「それが一番です。ケイも産まれたのでまたちょくちょく遊びに来ますね。一緒にご飯食べましょう?」
「うん!」
エニシが作るご飯はとても美味しく、それをみんなで一緒に食べられるというのは嬉しかった。
「ゴホ、ゴホ。あー、そろそろ私と交代ーーぐはっ」
「ちょーっと、虫がいたみたいだね。大丈夫そうだし、私らは帰るよ。あー、あとまた会いに来るんだよ。その…ケイを連れて。わ、わかったね!」
え?
見たことのないギルドマスターの姿に唖然とするが、エニシが普通に返事をしていることから彼には普通のことなのだろう。
驚いたが、恥ずかしそうに帰っていく後ろ姿は可愛いく思えた。
「面白い、人だね。もっと怖い人だと思ってた」
時々様子見としてジンが来てはいたが、マーガレットが来ることは少なく緊張から会話らしい会話をしたことがなかった。
「とても優しい方ですよ。あと、恥ずかしがり屋ですね」
あのギルドマスターを恥ずかしがり屋と言い切れるエニシに感心するのであった。
そう言って現れたエニシに驚き、あれほど膨らんでいたはずのお腹が元に戻っているのに驚き、その後ろから現れたギルマスたちに驚き、しかもその腕に赤ん坊がいることに驚いた。
混乱のあまり焦りに焦り変な叫び声を上げると、せっかく来てくれたエニシたちをその場に残し叔父さんを呼びに行ってしまった。
「おじゃ、おじ、叔父さん!叔父さん叔父さん叔父さん!」
慌て過ぎて噛んだ。
「んだよ、そんな慌てて」
あまりの慌てように不審に思ったガンズが部屋から出てきた。
だが何と言って説明していいか分からず、見てもらった方が早いと何も言わず引きずっていく。
何だ何だと文句をいいながらも連れていけば、訪問者たちを見てガンズも固まった。
「…………いらっしゃいませ。今日は何の御用でしょうか?」
ギルドマスターとサブギルドマスターの姿に我に返ったガンズが頭を下げるのに、そういえば挨拶してなかった!とランも慌てて頭を下げる。
「なに、今日は都合があったから来ただけで、本命はこっちさ」
こっちと言われエニシを見れば、にこにこと楽しそうにこちらを見ている。
「元気そうで安心しました」
走り去る後ろ姿に元気なのは伝わったようだ。
「は、はい!あ、いえ、いや、う、うん。げ、元気だよ」
「よかったです。いきなり来てすいません。今日はランに私の新しい家族を紹介しに来ました」
「え?新しい…え?なに?」
おいでと手招きされ近寄っていけば、ハイと手渡される。
どうしていいか分からず戸惑っていれば手を取られ、少々強引に腕に乗せられた。
「ど、どうしたらいい?」
赤ん坊など今まで抱いたことがなく、エニシの子だと思えば余計に怪我などさせたら大変だと持つ手が震える。
「大丈夫、大丈夫ですよ。見て下さい、泣いてないでしょう?」
言われてみれば、こんな安定感のない自分が抱っこしているにも関わらず泣き声が聞こえず、恐る恐る見てみればパッチリした大きな瞳がこちらをジッと見ていた。
「あ…可愛い」
「でしょ?」
エニシ譲りの金色の瞳はとても綺麗だった。
「ケイと言います。女の子です」
「ケイちゃん…」
そっと触れてみればとても柔らかく、ぷにぷにの頰はずっと触っていたくなる。
「すごいね。ちっちゃいけどちゃんと生きてる」
「これが人のお腹の中に入っていたんですから驚きですよね。ほらケイ、ランですよ。私の大切な友達ですから仲良くして下さいね」
「おいおい、まだ分かんねぇだろ」
ガンズのツッコミにランも笑うと、隣にいるガンズに交代する。
「ランが産まれた時思い出すな。コイツもこれくらいちっちゃかったっけなぁ」
慣れたように抱っこする姿に、自分も昔はこうして抱っこしてもらったのかと少し面映ゆかった。
「ランなら昔もとても可愛いかったんでしょうね。私も見てみたかったです」
「そ、そんなことないよ!ぼ、僕なんかそんな…ケイちゃんの方が何倍も可愛いから!」
ブンブンと首を振れば何故か皆に頭を撫でられた。
「ガンズさんと仲良くできているようですね。中々様子を見に来れなくて心配してたんですよ」
こんなによくしてくれた上、ずっと心配してくれていたと知り泣きそうになった。
「ご、ごめんね。ありがとう。叔父さん優しくて、た、頼ってばっかりだけど、すごく嬉しいんだ」
「それが一番です。ケイも産まれたのでまたちょくちょく遊びに来ますね。一緒にご飯食べましょう?」
「うん!」
エニシが作るご飯はとても美味しく、それをみんなで一緒に食べられるというのは嬉しかった。
「ゴホ、ゴホ。あー、そろそろ私と交代ーーぐはっ」
「ちょーっと、虫がいたみたいだね。大丈夫そうだし、私らは帰るよ。あー、あとまた会いに来るんだよ。その…ケイを連れて。わ、わかったね!」
え?
見たことのないギルドマスターの姿に唖然とするが、エニシが普通に返事をしていることから彼には普通のことなのだろう。
驚いたが、恥ずかしそうに帰っていく後ろ姿は可愛いく思えた。
「面白い、人だね。もっと怖い人だと思ってた」
時々様子見としてジンが来てはいたが、マーガレットが来ることは少なく緊張から会話らしい会話をしたことがなかった。
「とても優しい方ですよ。あと、恥ずかしがり屋ですね」
あのギルドマスターを恥ずかしがり屋と言い切れるエニシに感心するのであった。
27
お気に入りに追加
3,691
あなたにおすすめの小説
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
虐げられ聖女(男)なので辺境に逃げたら溺愛系イケメン辺境伯が待ち構えていました【本編完結】(異世界恋愛オメガバース)
美咲アリス
BL
虐待を受けていたオメガ聖女のアレクシアは必死で辺境の地に逃げた。そこで出会ったのは逞しくてイケメンのアルファ辺境伯。「身バレしたら大変だ」と思ったアレクシアは芝居小屋で見た『悪役令息キャラ』の真似をしてみるが、どうやらそれが辺境伯の心を掴んでしまったようで、ものすごい溺愛がスタートしてしまう。けれども実は、辺境伯にはある考えがあるらしくて⋯⋯? オメガ聖女とアルファ辺境伯のキュンキュン異世界恋愛です、よろしくお願いします^_^ 本編完結しました、特別編を連載中です!
偽物の番は溺愛に怯える
にわとりこ
BL
『ごめんね、君は偽物だったんだ』
最悪な記憶を最後に自らの命を絶ったはずのシェリクスは、全く同じ姿かたち境遇で生まれ変わりを遂げる。
まだ自分を《本物》だと思っている愛する人を前にシェリクスは───?
雪狐 氷の王子は番の黒豹騎士に溺愛される
Noah
BL
【祝・書籍化!!!】令和3年5月11日(木)
読者の皆様のおかげです。ありがとうございます!!
黒猫を庇って派手に死んだら、白いふわもこに転生していた。
死を望むほど過酷な奴隷からスタートの異世界生活。
闇オークションで競り落とされてから獣人の国の王族の養子に。
そこから都合良く幸せになれるはずも無く、様々な問題がショタ(のちに美青年)に降り注ぐ。
BLよりもファンタジー色の方が濃くなってしまいましたが、最後に何とかBLできました(?)…
連載は令和2年12月13日(日)に完結致しました。
拙い部分の目立つ作品ですが、楽しんで頂けたなら幸いです。
Noah
伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
*
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃんでした。
実際に逢ってみたら、え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこいー伴侶がいますので!
おじいちゃんと孫じゃないよ!
侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
貴方の事を心から愛していました。ありがとう。
天海みつき
BL
穏やかな晴天のある日の事。僕は最愛の番の後宮で、ぼんやりと紅茶を手に己の生きざまを振り返っていた。ゆったり流れるその時を楽しんだ僕は、そのままカップを傾け、紅茶を喉へと流し込んだ。
――混じり込んだ××と共に。
オメガバースの世界観です。運命の番でありながら、仮想敵国の王子同士に生まれた二人が辿る数奇な運命。勢いで書いたら真っ暗に。ピリリと主張する苦さをアクセントにどうぞ。
追記。本編完結済み。後程「彼」視点を追加投稿する……かも?
俺のこと、冷遇してるんだから離婚してくれますよね?〜王妃は国王の隠れた溺愛に気付いてない〜
明太子
BL
伯爵令息のエスメラルダは幼い頃から恋心を抱いていたレオンスタリア王国の国王であるキースと結婚し、王妃となった。
しかし、当のキースからは冷遇され、1人寂しく別居生活を送っている。
それでもキースへの想いを捨てきれないエスメラルダ。
だが、その思いも虚しく、エスメラルダはキースが別の令嬢を新しい妃を迎えようとしている場面に遭遇してしまう。
流石に心が折れてしまったエスメラルダは離婚を決意するが…?
エスメラルダの一途な初恋はキースに届くのか?
そして、キースの本当の気持ちは?
分かりづらい伏線とそこそこのどんでん返しありな喜怒哀楽激しめ王妃のシリアス?コメディ?こじらせ初恋BLです!
※R指定は保険です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる