二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

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ちょっとそこまで

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 その日は珍しくセインの提案により森深くに来ていた。
 というのも、アレンの発情期対策として少しだが抑制できるという薬草を摘みにきたのだ。
 ならばアズとスノーもと言ったのだが、何があったのかアズは行かないといいスノーもアズと一緒にお留守番になった。
 これが親離れかと縁はショックだったが、それを見た数人の子持ちの男性たちがポンポンと肩を叩いて励ましてくれた。
 
 「やはり筋肉ですか?筋肉がないからアズは私のことママとは認められないってことですか?」

 もう自分でも何を言っているのか分からなくなっていた。

 「落ち着け。獣人ならばまだしも人間で一般的にママと呼ばれている人物にそんなに筋肉は必要ない」

 「でも!でもアズが筋肉がないママはイヤだとーー」

 「言ってないからな。いいから落ち着け。アズは縁が嫌いなんて一言も言ってなかっただろ?」

 言って…………なかったか?
 あれ?と首を傾げる縁にセインが苦笑いする。
 脱力した縁がセインの首元にコテンと頭を預ければ、優しく頭を撫でてくれる。

 「ショックなのは分かるが、今日は俺が縁を独り占めしていいんだろ?」

 そういえばそうかと頷けば、隠れ家のみんなが時々水浴びしにくるという川に着いた。
 抱えられたまま腰を下ろせば、縁の頭にセインがスリスリと頰を擦り寄せてくる。

 「綺麗な所ですね。魚とかいますかね?」

 「どうだろうな。食いたいのか?」

 綺麗な景色より食い気かと笑われたが、正直そう思っていたので否定はしない。

 「まぁ食べてくれるならそれぐらいしてやる。前ほどではないにしろ食べれてないだろう?」

 もうすぐ妊娠4ヵ月目に入ろうとしており、つわりで吐くほどではないにしろ明らかに食欲が落ちている縁にセイン含め皆が心配している。
 とはいえ、我慢して食べても吐いてしまうだろうとなるべく食べやすい果物などはとるようにしていた。

 「他のママさんたちにも聞いてみましたが、みんな症状が違うみたいです。私より酷かった人もいるみたいですからまだいい方ですよ」

 「それは分かるが心配は心配なんだ。眠る時間が増えて大人しくしてくれてるのは嬉しいが」

 増えたとセインは言っているが、実際はそうでもなかったりする。
 確かに増えてはいるのだが、それはセインが側にいる時に限ってなのだ。
 ホッとするというか、安心していいと誰かに言われているようで身体が軽くなり眠たくなってしまう。
 実際今も会話しながらふよふよと眠気が襲ってきていたりする。

 「眠いか?いいぞ、無理せず寝てろ」

 「いや、です。せっかくセインと…一緒に出かけられたのに…」

 閉じかける瞼に力を入れつつ、眠気覚ましにと川に足だけ入れれば冷たさに驚き目が覚めた。

 「すごいですね。木々で覆われているせいか水が冷たくて気持ちいい」

 「だな。獣人は体温が高いから平気で水浴びもするが、縁は風邪引くからやめとけよ」

 確かに少し涼むにはいいが、水浴びするには寒いだろう。
 素直に頷くとセインの胸元に擦り寄る。
 前にセインが言っていた運命の番は匂いで分かるという言葉が今はよく分かる。
 セインから出るいい匂いに満たされ、心地良く気持ちいい。

 「セインは男の子と女の子どちらがいいですか?」

 「どっちでも。元気に産まれてくれさえすればそれでいい」

 「では人間がいいですか?それとも獣人?」

 「どっちでもいいが……そうだな、俺たちみたいな思いをしないように出来れば人間がいいな」

 意外にもセインはそこまで希望はないらしい。
 だからといって決して子どもを望んでないわけではなく、本当に無事に産まれてくれさえすればいいという感じだ。
 優しくお腹を撫でてくるセインに嬉しくなり、触れるだけのキスをすれば笑って返してくれる。
 
 「きっとセイン似の可愛い子ですね」

 「それをいうなら縁似だろ。俺に似ても目つきの悪い無愛想なガキになるぞ」

 「あはははっ」

 目つきが悪いのを気にしていたらしい。
 とても整った顔立ちであるがゆえに、少々キツめの鋭い目は逆に迫力があり目を惹くのだが本人は嫌らしい。

 「私は好きですよ。セインがその綺麗な瞳で私に笑いかけてくれるのがとても嬉しいです」

 「………そんなこと言うのは縁だけだ」

 「勿体ないですね。でもセインの良さを知っているのが私だけというのも特別感があっていいですね」

 そう言う縁にセインは驚くと、嬉しかったのかギュッと抱きしめられた。

 「3人も番がいれば時には不平不満もあると思いますが、3人が3人とも私を愛してくれているように私も3人を、セインを愛しているんです。運命の番だからとかではなく、そんなこときっかけにすぎないくらい私はセインという人を愛してる」

 彼らが縁を愛してくれているのは分かっているが、自分がそれを返せているかは分からない。
 だからこそ大切だと、側にいてほしいという願いをこめて言葉にする。

 「俺も愛してる」

 誰がなんて言おうが縁がセインたちを愛していることは変わらない。
 この世界に来られたのも偶然であり、彼らに出会えたことはもはや奇跡だ。
 あれほど求めていたものを3人も与えたくれた神さまに縁は感謝するのであった。
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