二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

文字の大きさ
上 下
120 / 475

入手

しおりを挟む
 店員vs.エルの戦いはエルの勝利に終わった。
 げっそりとした顔色に「悪いことしようとするからですね」と言えば流石に反省したのか謝る店員に笑って許した。

 「指輪型、腕輪型、耳飾り、首飾り、手鏡などもありますがどうされますか?」

 「意外にあるんですね。(手鏡とか何かの変身道具みたい)」

 ボソッと呟いた縁の言葉に店員が首を捻っていたが、何んでもないと言いリックに好きなものを選ばせる。

 「なるべく肌身離さず持てるものにして下さい。誰かの手に渡ると危ないので」

 魔道具事態高価なものであるが、下手に誰かの手に渡り隠れ家の仲間に何かあっては問題だ。
 
 「腕か耳がいいです。あとはエニシさんが選んで下さい」

 「では耳飾りで。この感じなら男性でも違和感ありませんし、腕輪は……大きさが合いませんから」

 すでに大きさが決まっている腕輪では縁にはサイズが合わず、少し手を動かしただけですっぽ抜けていった。

 「ではこれを3つお願いします」

 当たり前に払おうとする縁にリックから慌てて止めが入る。

 「わ、私が出します。私の我儘でこうなったのに……」

 「全然問題ありませんよ。それにそれは貴方ではなく、国のお金でしょう?皆さんが汗水流して頑張って稼いだお金をここで使うのは感心しません」

 王子であるエリックならば簡単であろうが、それは王子としての務めを果たしていればの話しだ。
 ただ欲しいからと、町の人たちが頑張って納めたものを使うのはおかしい。

 「………なら、やっぱりやめーー」

 「貴方が本当にそれでもいいなら構いませんが、そうは思っていないんでしょう?もし、値段を気にしているようならば自分で稼げるようになった時にでも返して下さい」

 「自分で?」

 「ギルドで登録したでしょう?今は私たちと一緒に低ランクを受けていますが、強くなればもっと上の依頼も受けられます。それが嫌なのであれば王子としての務めを頑張ってみればいいです。両親がなんです、自分は才能があると見せてやれば彼方から擦り寄ってきますよ。その時は思いっきり鼻で笑ってやりなさい」

 やりたいことは今からでも決めていけばいい。
 冒険者としてランクを上げていくことも出来れば、王子として国のために尽くし利益を上げることも出来る。
 何かを始める時は何かしらの努力は必要だ。
 それが冒険者としか、王子としてかはさておき頑張ってみるのも悪くはないだろう。
 
 「………私に出来ますかね?」

 「さあ?そんなこと私には分かりません」

 「え?」

 自分で言っておいて何だが、それは縁の知るところではない。
 頑張り方も、どれだけ頑張れるかもリック次第なのだ。

 「結果はやってみないことには分かりませんよ。私は預言者ではないので。貴方が何を選ぶかも分かりませんし、どれだけ出来るのかも知らないですから」

 「………」

 俯き考えるリックに近寄ると優しく頭を撫でてやる。

 「ですが、そんな難しく考える必要はありません。どちらにせよ頑張らなければいけませんが、思い詰めるほどではないです。もし無理だと感じたら違う道を歩けばいいんですから」

 逃げ場がない状況では人は追い詰められ、良い結果を残す者もいれば、挫折し再起不能になる者もいる。
 リックがどちらかは分からないが、もし片方が駄目でももう片方を頑張ればいい。

 「だから力を付けなさい。身体的なことだけでなく、精神的にも。親に期待されてないのならそれを利用しなさい。期待がなければそれを重荷に感じることなく、好きに学べる。好きなことを、得意なものを極めるのもいいでしょう。王子である貴方にはその手段も時間も揃っているんですから」

 お金も時間も方法も知っているリックならば学びたいだけ学べる。
 庶民ならば家族のため、生活のためと諦めなければいけないことも出来るのだ。

 「教えてもらうことに躊躇してはいけません。それが悪いことでも良いことでも情報として得られたんですから。才能を伸ばしてくれた方には感謝を。悪事は何かあった時役に立つこともあるでしょうから胸に秘めておきましょう。いつかのためにね(叩き潰す時とか)」

 ふふふと笑う縁にエルが隣で引いていたことに気付くことはなかった。

 「とまぁ、偉そうなことを言いましたが選ぶのは貴方です。とりあえずここは私が出しておきますので考えがまとまったら教えて下さいね」

 「……はい、ありがとうございます」

 買ったばかりのものを一つはリックに手渡してやり、一つはエルに渡す。

 「え?オレ?」

 驚き固まるエルに微笑むとささっと着けてやる。

 「アズにはまだいらないだろうし、アレンたちに関しては魔力がないので意味がないでしょう?」

 リックは縁たちに比べれば微々たるものだが、魔道具に少し流すぐらいならば問題ないらしい。
 
 「あの日エルにはかなり心配をかけてしまいましたからね。これで万全とは言いませんが、連絡できる方法があるのとないのでは安心感が違うでしょう?」

 姿を見れるのが一番だが、それが無理な時は声だけでも届けられれば安心するのではないかと思ったのだ。
 アズと縁を置いていくのはかなりの不安だっただろう。
 あの日、助けを呼びに行くのは必然だったが、それでも声をかけられる方法があればと良かったのにと考えていた。

 「うん。ありがとう」

 イヤーカフス型の通信魔道具は笑うエルにとても似合っていた。

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

虐げられ聖女(男)なので辺境に逃げたら溺愛系イケメン辺境伯が待ち構えていました【本編完結】(異世界恋愛オメガバース)

美咲アリス
BL
虐待を受けていたオメガ聖女のアレクシアは必死で辺境の地に逃げた。そこで出会ったのは逞しくてイケメンのアルファ辺境伯。「身バレしたら大変だ」と思ったアレクシアは芝居小屋で見た『悪役令息キャラ』の真似をしてみるが、どうやらそれが辺境伯の心を掴んでしまったようで、ものすごい溺愛がスタートしてしまう。けれども実は、辺境伯にはある考えがあるらしくて⋯⋯? オメガ聖女とアルファ辺境伯のキュンキュン異世界恋愛です、よろしくお願いします^_^ 本編完結しました、特別編を連載中です!

偽物の番は溺愛に怯える

にわとりこ
BL
『ごめんね、君は偽物だったんだ』 最悪な記憶を最後に自らの命を絶ったはずのシェリクスは、全く同じ姿かたち境遇で生まれ変わりを遂げる。 まだ自分を《本物》だと思っている愛する人を前にシェリクスは───?

雪狐 氷の王子は番の黒豹騎士に溺愛される

Noah
BL
【祝・書籍化!!!】令和3年5月11日(木) 読者の皆様のおかげです。ありがとうございます!! 黒猫を庇って派手に死んだら、白いふわもこに転生していた。 死を望むほど過酷な奴隷からスタートの異世界生活。 闇オークションで競り落とされてから獣人の国の王族の養子に。 そこから都合良く幸せになれるはずも無く、様々な問題がショタ(のちに美青年)に降り注ぐ。 BLよりもファンタジー色の方が濃くなってしまいましたが、最後に何とかBLできました(?)… 連載は令和2年12月13日(日)に完結致しました。 拙い部分の目立つ作品ですが、楽しんで頂けたなら幸いです。 Noah

伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃんでした。 実際に逢ってみたら、え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこいー伴侶がいますので! おじいちゃんと孫じゃないよ!

侯爵令息セドリックの憂鬱な日

めちゅう
BL
 第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける——— ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。

俺のこと、冷遇してるんだから離婚してくれますよね?〜王妃は国王の隠れた溺愛に気付いてない〜

明太子
BL
伯爵令息のエスメラルダは幼い頃から恋心を抱いていたレオンスタリア王国の国王であるキースと結婚し、王妃となった。 しかし、当のキースからは冷遇され、1人寂しく別居生活を送っている。 それでもキースへの想いを捨てきれないエスメラルダ。 だが、その思いも虚しく、エスメラルダはキースが別の令嬢を新しい妃を迎えようとしている場面に遭遇してしまう。 流石に心が折れてしまったエスメラルダは離婚を決意するが…? エスメラルダの一途な初恋はキースに届くのか? そして、キースの本当の気持ちは? 分かりづらい伏線とそこそこのどんでん返しありな喜怒哀楽激しめ王妃のシリアス?コメディ?こじらせ初恋BLです! ※R指定は保険です。

王太子殿下は悪役令息のいいなり

白兪
BL
「王太子殿下は公爵令息に誑かされている」 そんな噂が立ち出したのはいつからだろう。 しかし、当の王太子は噂など気にせず公爵令息を溺愛していて…!? スパダリ王太子とまったり令息が周囲の勘違いを自然と解いていきながら、甘々な日々を送る話です。 ハッピーエンドが大好きな私が気ままに書きます。最後まで応援していただけると嬉しいです。 書き終わっているので完結保証です。

処理中です...