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今日は運が悪いよう
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マーガレットたちとの話しを終え、依頼も達成した縁たちがでは帰ろうか話し合っているところに事件は起きた。
慌ただしく開かれた出入り口の扉に、中にいた全員の視線が集まる。
「み、みつけたっ!」
げっ。
その時の縁の心情を表すとしたらその一言につきる。
見たくないものを見たなぁ、会いたくないヤツに会っちゃった、そんな気持ちを色々詰め込んだ一言だ。
「……こんにちは」
言いたくはなかったが明らかに相手の視線が縁に向いている上、バッチリと目が合ってしまったため今さら逸らすこともできず挨拶する。
社会人として苦手な相手でも笑顔で挨拶を心がけていた前世の習慣から無意識にそうしていた。
「こ、こんにちは」
「………」
「………」
何も言わんのかい!
明らかに縁を探していたんだとばかりだったのに挨拶した途端黙り込む相手に縁も何も言わない。
というか言いたくない。
下手に話を振って捕まったらたまったものではないからだ。
「では私たちはこれで。また来た時にはよろしくお願いします」
逃げるが勝ち。
受付してくれた職員に挨拶すると、誰も止める間もなくアズとエルを連れギルドを後にした。
……後にしたのだが。
「ねぇ、アレどうする?」
「うーん、どうしましょうかねぇ」
出来れば放っておきたいのだが、このままでは隠れ家までバレてしまう危険性がある。
先程から後をつけられているのは分かっていた。
というかあれで隠れているつもりなのかと呆れるくらいに彼は尾行が下手だった。
気配を消せてないどころか、足音も消せていない。
それどころか慣れない森に手間取っているのかガサゴソと後ろで音を立てられればいやでも気がつく。
もはや気が付いてくれと言わんばかりのそれに、だが気が付きたくない縁たちであった。
「ママ、アレたおす?」
アズまでもがそんな物騒なことを言い始めてしまった。
どうしようかと考えながらも隠れ家に帰ることもできず、大丈夫だとアズの背を撫でてやる。
後をつけられてはいるが、とくに何をしてくるわけでもなく、何かしてやろうという気配もない。
それだけだと言えばそれだけだが、だからこそ気持ち悪く鬱陶しい。
巻くという手もあるが、それで下手に森の中を探されても仲間の命が危ない。
「はぁ。エルは周りを注意しておいてもらえますか?」
「殺すの?」
殺しません。
仮にも一国の王子を亡き者にしたらどうなることやら。
「オレ隠すの上手いよ」
「何を!?」
本気でエルがやばくなってきた。
縁を心配してくれてるとはいえ、言っていることが物騒すぎる。
仕方ないと歩みを止めると後ろを振り向く。
「人の後をついて回るのはどうかと思いますよ」
隠れきれず木の後ろからはみ出ているその人物に声をかければ、驚いたのかビクッと震えた後漸く顔を出した。
「す、すいません」
何故敬語?
明らかに身分が上である王子が何故縁に敬語を使っているのか。
「謝れるようになったのはいいことですが、理由は何ですか?」
大体は察しているが。
「あ、あの、その……」
縁が怖いのか先程からビクビクしているが、せっかく待ってあげているのに一向に話が進まないことに少々疲れてきた。
「話すことが決まってから来て下さい。待ってるだけなど時間の無駄です。それでは」
「まっ、待ってください!」
話しは終わりとばかりに踵を返そうとしたが、腕を掴まれ驚いて振り向く。
「あの…すいません。でも、その……」
埒があかない。
仕方ないと大きな溜息を溢せば、聞こえたであろう肩がビクリと揺れた。
「このまま付いてこられても迷惑なので話しを聞きましょう。座って下さい」
「え?」
「聞こえませんでしたか?その場に座って下さいと言ったんです。服が汚れるなんて気にするくらいならさっさとお城にでも帰りなさい」
「す、座ります!」
意外にも素直に座った王子に、縁も正面に腰を下ろせば両隣にアズたちも座った。
普通に考えて王子を草の上とはいえ地べたに座らせるのはどうかと思ったが、鬱陶しい思いをさせられたのだからと開き直る。
「それで?私に言いたいことがあったんでしょう?以前言ったことへの文句ですか?そんなこと黙って聞いてあげるほど私は暇でも良い人でもありませんけどね」
はっきり言って王子様に対する態度ではないが、縁自身この国の出身でもなければ敬える相手でもないので問題はない。
何か言われても国を出ていけばいいだけなので気を使う必要はないだろう。
「ち、ちがいます!あの…お、お願いがあって……」
やはりか……
嫌な予感が当たってうんざりする。
「………」
「………」
あれほど言ってまだ黙るとは。
「……ギルドの依頼は貴方ですね?」
言いたいことも言えないならば何故依頼など出すのか。
頷く王子に、もっとしっかりしろと言いたい。
「それで?依頼はお断りさせてもらいました。貴方もそれほど私を見て怯えるくらいならば依頼など出さなければいいでしょう?」
「え?ち、ちが、ちがいますっ」
慌てたように首を振る姿は王子というより、1人の少年の姿だった。
「ならば人を見てビクビクするのはやめなさい。まるで私が貴方を脅しているみたいでしょう」
「す、すいません!」
だからそれをやめろと言うのに何故できないのか。
もう帰りたいと思う縁であった。
慌ただしく開かれた出入り口の扉に、中にいた全員の視線が集まる。
「み、みつけたっ!」
げっ。
その時の縁の心情を表すとしたらその一言につきる。
見たくないものを見たなぁ、会いたくないヤツに会っちゃった、そんな気持ちを色々詰め込んだ一言だ。
「……こんにちは」
言いたくはなかったが明らかに相手の視線が縁に向いている上、バッチリと目が合ってしまったため今さら逸らすこともできず挨拶する。
社会人として苦手な相手でも笑顔で挨拶を心がけていた前世の習慣から無意識にそうしていた。
「こ、こんにちは」
「………」
「………」
何も言わんのかい!
明らかに縁を探していたんだとばかりだったのに挨拶した途端黙り込む相手に縁も何も言わない。
というか言いたくない。
下手に話を振って捕まったらたまったものではないからだ。
「では私たちはこれで。また来た時にはよろしくお願いします」
逃げるが勝ち。
受付してくれた職員に挨拶すると、誰も止める間もなくアズとエルを連れギルドを後にした。
……後にしたのだが。
「ねぇ、アレどうする?」
「うーん、どうしましょうかねぇ」
出来れば放っておきたいのだが、このままでは隠れ家までバレてしまう危険性がある。
先程から後をつけられているのは分かっていた。
というかあれで隠れているつもりなのかと呆れるくらいに彼は尾行が下手だった。
気配を消せてないどころか、足音も消せていない。
それどころか慣れない森に手間取っているのかガサゴソと後ろで音を立てられればいやでも気がつく。
もはや気が付いてくれと言わんばかりのそれに、だが気が付きたくない縁たちであった。
「ママ、アレたおす?」
アズまでもがそんな物騒なことを言い始めてしまった。
どうしようかと考えながらも隠れ家に帰ることもできず、大丈夫だとアズの背を撫でてやる。
後をつけられてはいるが、とくに何をしてくるわけでもなく、何かしてやろうという気配もない。
それだけだと言えばそれだけだが、だからこそ気持ち悪く鬱陶しい。
巻くという手もあるが、それで下手に森の中を探されても仲間の命が危ない。
「はぁ。エルは周りを注意しておいてもらえますか?」
「殺すの?」
殺しません。
仮にも一国の王子を亡き者にしたらどうなることやら。
「オレ隠すの上手いよ」
「何を!?」
本気でエルがやばくなってきた。
縁を心配してくれてるとはいえ、言っていることが物騒すぎる。
仕方ないと歩みを止めると後ろを振り向く。
「人の後をついて回るのはどうかと思いますよ」
隠れきれず木の後ろからはみ出ているその人物に声をかければ、驚いたのかビクッと震えた後漸く顔を出した。
「す、すいません」
何故敬語?
明らかに身分が上である王子が何故縁に敬語を使っているのか。
「謝れるようになったのはいいことですが、理由は何ですか?」
大体は察しているが。
「あ、あの、その……」
縁が怖いのか先程からビクビクしているが、せっかく待ってあげているのに一向に話が進まないことに少々疲れてきた。
「話すことが決まってから来て下さい。待ってるだけなど時間の無駄です。それでは」
「まっ、待ってください!」
話しは終わりとばかりに踵を返そうとしたが、腕を掴まれ驚いて振り向く。
「あの…すいません。でも、その……」
埒があかない。
仕方ないと大きな溜息を溢せば、聞こえたであろう肩がビクリと揺れた。
「このまま付いてこられても迷惑なので話しを聞きましょう。座って下さい」
「え?」
「聞こえませんでしたか?その場に座って下さいと言ったんです。服が汚れるなんて気にするくらいならさっさとお城にでも帰りなさい」
「す、座ります!」
意外にも素直に座った王子に、縁も正面に腰を下ろせば両隣にアズたちも座った。
普通に考えて王子を草の上とはいえ地べたに座らせるのはどうかと思ったが、鬱陶しい思いをさせられたのだからと開き直る。
「それで?私に言いたいことがあったんでしょう?以前言ったことへの文句ですか?そんなこと黙って聞いてあげるほど私は暇でも良い人でもありませんけどね」
はっきり言って王子様に対する態度ではないが、縁自身この国の出身でもなければ敬える相手でもないので問題はない。
何か言われても国を出ていけばいいだけなので気を使う必要はないだろう。
「ち、ちがいます!あの…お、お願いがあって……」
やはりか……
嫌な予感が当たってうんざりする。
「………」
「………」
あれほど言ってまだ黙るとは。
「……ギルドの依頼は貴方ですね?」
言いたいことも言えないならば何故依頼など出すのか。
頷く王子に、もっとしっかりしろと言いたい。
「それで?依頼はお断りさせてもらいました。貴方もそれほど私を見て怯えるくらいならば依頼など出さなければいいでしょう?」
「え?ち、ちが、ちがいますっ」
慌てたように首を振る姿は王子というより、1人の少年の姿だった。
「ならば人を見てビクビクするのはやめなさい。まるで私が貴方を脅しているみたいでしょう」
「す、すいません!」
だからそれをやめろと言うのに何故できないのか。
もう帰りたいと思う縁であった。
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