73 / 475
偶には
しおりを挟む
その日はジークが休みだったため、偶にはと2人で外に出ていた。
と言っても、親子で散々世話になったあのお婆さんに会いに行ったのだが。
「こんにちは」
「あら、嬉しいお客さんだわ。こんにちは。お子さんは元気かしら?」
「はい。以前はお世話になりました」
偶然とは言え、獣人でも奴隷でも気にしない彼女に見つけてもらえたのはよかった。
「そのお礼と言ってはなんですが、贈り物を持ってきました」
「あらあら、まぁまぁ。そんなこと気にしなくてよかったのに。でも嬉しいわ、ありがとう」
彼女のすすめで家に上がらせてもらうと、椅子に座り鞄からシロップが入った瓶を取り出した。
「まぁ綺麗な色ね」
「シロップと言います。こちらがレモンで、こちらは木苺です。パンと食べても美味しいですし、暑い日なんかは水に溶かして飲んでもらえれば美味しいと思います」
「初めて見たわ。ありがとう」
嬉しそうに受け取る彼女は大切そうに瓶を受け取ると綺麗ねと笑い眺めていた。
「あと、これを」
来る途中、あの花畑で作った花冠と花束を取り出し渡す。
「こちらはお部屋にでも飾って下さい。こちらの花冠はご主人のお墓にでも」
「………」
こうして年配の女性1人で暮らすにはそう遠くに足は運べないだろう。
お墓に供える花を摘むことも難しいはずだ。
こちらではお墓に花を供える習慣があるかは分からなかったが、なくてもそっと置いておくくらい許されるだろう。
「………ありがとう。本当にありがとう」
本当に嬉しそうに微笑む彼女に縁も良かったと微笑むと、早速飾るわという彼女についていく。
「ねぇ、見て貴方。こんなに綺麗なお花を頂いたわ」
家の裏に作られたお墓は簡素ではあったが、綺麗に手入れされており彼女が欠かさず世話をしているのが分かる。
「貴方のためにエニシさんが作ってくれたんですって……とても、綺麗だわ。覚えてる?貴方もよくお花を摘んできてくれたでしょう?色々言ってたけど私のためだって知ってたわ。とても嬉しかった」
きっと気恥ずかしかったのだろう。
喜ぶ彼女にお前のためだと言えず、何かと言い訳して渡していたに違いない。
「貴方がいないのはとても寂しいけれど、こんなに素敵な方と出会えたわ。この前は可愛いらしい子とも会えた。本当に、本当に私は幸せ者ね」
泣き笑いながらも幸せだと微笑む彼女はとても綺麗だった。
「エニシさん、獣人さん、本当にありがとう。こうして彼を思ってくれる人がいてくれてとても嬉しいわ」
「喜んでいただけて良かったです。また偶にお花を持ってきてもいいですか?今度はうちの子と一緒に。あの子も花冠を作るのが上手なんですよ」
「それは嬉しい!楽しみに待ってるわね」
にこにこと微笑む彼女を残し家を後にすると、ジークと手を繋ぎ歩く。
ジークはずっと無言だったが縁は気にすることなくついていけば、来る途中立ち寄った花畑に再び着いた。
「「………」」
促されるまま地面に座るジークの膝に乗せられる。
ジークの広い胸に背を預けると、周りの花を摘み何とは無しに編んでいく。
子どもの頃に母親に無理矢理に教えられた以来だったが、こちらに来てからというもの何度も作ったためもう手慣れたものだった。
「なぁ」
「はい?」
手を止めることなく返事をすれば、ギュッと腰に回る腕に力が入る。
「お前も、いつか俺が死んだらあんなに悲しんでくれるか?」
「当たり前でしょう?」
大事な番が死んで何故悲しまないでいられようか。
「……そうか。そうか」
嬉しそうにそう呟くジークに、縁は出来たばかりの花冠を被せると後ろを振り向く。
「でも、そういう話しはあまり好きではないので出来れば長生きして下さい。私のために」
「そうだな。お前の…縁のために少しでも長く生きてやるよ。お前は放っておくと心配で仕方ないからな」
「そうですね。ジークがいないと私もポックリ逝くかもしれません」
「バカヤロウ。そこは否定するところだろうが」
笑いながら小突いてくるジークに縁も笑う。
「でも私ですからねぇ。自分ではそう思わないですけどみなさん危ない危ないって」
「実際危ないからな。はぁ……そうだな、お前を残して死ぬなんて不安でそう簡単に死んでられねぇわ」
何もそこまで心配せずともいいのでは?と思ったが黙っておく。
いらぬお説教を聞く必要はない。
「ですね。諦めて頑張って長生きて下さい」
他人事のようにそう答え再び花冠を作り出そうとする縁に、背後ではそんな縁を見てジークが笑っていることに気付かなかった。
「なら、ご褒美でももらわねぇと割りに合わねぇな」
「ーーえ?」
それまで縁の腰に回っていた腕が動いたと思えば、右手がするりと縁のズボンの中に入ってきた。
「ちょっ、まっ、まってジーク!」
「んん~?」
絶対に笑ってる!楽しんでいる!
抵抗しようとしたが、いつの間にか自由だった腕ごとジークの片腕で抑えられており動けない。
「待って!待って下さい!」
「なんで?」
「外!ここ外です!」
「だから?前にもここでしただろ?」
それはそうだが!
だからと言って一度したから次もいいだろとはならない!
「み、見られるは、イヤです」
「俺は気にしないが?」
ぐっ!
私は気にするんです!!
真っ赤になりながらも睨むがそれすら笑って受け流されてしまう。
絶対さっきの仕返しだ!
「か、帰ってからにしーーひゃっ!ジ、ジーク!」
クニクニと右手で揉まれれば反応してしまう下半身が恥ずかしい。
「そうだなぁ。まぁ俺も縁のこんな色っぽい姿誰かに見られるはイヤだからな。なら一つ俺のお願いを聞いてほしいんだが?」
「聞く!聞きますからっーーわっ!」
突然ジークが立ち上がったかと思えば横抱きにされた。
「じゃあ、さっさと帰るぞ」
そのいい笑顔に縁は「やっぱり無理!」と言いそうになるのを必死に堪えるのだった。
と言っても、親子で散々世話になったあのお婆さんに会いに行ったのだが。
「こんにちは」
「あら、嬉しいお客さんだわ。こんにちは。お子さんは元気かしら?」
「はい。以前はお世話になりました」
偶然とは言え、獣人でも奴隷でも気にしない彼女に見つけてもらえたのはよかった。
「そのお礼と言ってはなんですが、贈り物を持ってきました」
「あらあら、まぁまぁ。そんなこと気にしなくてよかったのに。でも嬉しいわ、ありがとう」
彼女のすすめで家に上がらせてもらうと、椅子に座り鞄からシロップが入った瓶を取り出した。
「まぁ綺麗な色ね」
「シロップと言います。こちらがレモンで、こちらは木苺です。パンと食べても美味しいですし、暑い日なんかは水に溶かして飲んでもらえれば美味しいと思います」
「初めて見たわ。ありがとう」
嬉しそうに受け取る彼女は大切そうに瓶を受け取ると綺麗ねと笑い眺めていた。
「あと、これを」
来る途中、あの花畑で作った花冠と花束を取り出し渡す。
「こちらはお部屋にでも飾って下さい。こちらの花冠はご主人のお墓にでも」
「………」
こうして年配の女性1人で暮らすにはそう遠くに足は運べないだろう。
お墓に供える花を摘むことも難しいはずだ。
こちらではお墓に花を供える習慣があるかは分からなかったが、なくてもそっと置いておくくらい許されるだろう。
「………ありがとう。本当にありがとう」
本当に嬉しそうに微笑む彼女に縁も良かったと微笑むと、早速飾るわという彼女についていく。
「ねぇ、見て貴方。こんなに綺麗なお花を頂いたわ」
家の裏に作られたお墓は簡素ではあったが、綺麗に手入れされており彼女が欠かさず世話をしているのが分かる。
「貴方のためにエニシさんが作ってくれたんですって……とても、綺麗だわ。覚えてる?貴方もよくお花を摘んできてくれたでしょう?色々言ってたけど私のためだって知ってたわ。とても嬉しかった」
きっと気恥ずかしかったのだろう。
喜ぶ彼女にお前のためだと言えず、何かと言い訳して渡していたに違いない。
「貴方がいないのはとても寂しいけれど、こんなに素敵な方と出会えたわ。この前は可愛いらしい子とも会えた。本当に、本当に私は幸せ者ね」
泣き笑いながらも幸せだと微笑む彼女はとても綺麗だった。
「エニシさん、獣人さん、本当にありがとう。こうして彼を思ってくれる人がいてくれてとても嬉しいわ」
「喜んでいただけて良かったです。また偶にお花を持ってきてもいいですか?今度はうちの子と一緒に。あの子も花冠を作るのが上手なんですよ」
「それは嬉しい!楽しみに待ってるわね」
にこにこと微笑む彼女を残し家を後にすると、ジークと手を繋ぎ歩く。
ジークはずっと無言だったが縁は気にすることなくついていけば、来る途中立ち寄った花畑に再び着いた。
「「………」」
促されるまま地面に座るジークの膝に乗せられる。
ジークの広い胸に背を預けると、周りの花を摘み何とは無しに編んでいく。
子どもの頃に母親に無理矢理に教えられた以来だったが、こちらに来てからというもの何度も作ったためもう手慣れたものだった。
「なぁ」
「はい?」
手を止めることなく返事をすれば、ギュッと腰に回る腕に力が入る。
「お前も、いつか俺が死んだらあんなに悲しんでくれるか?」
「当たり前でしょう?」
大事な番が死んで何故悲しまないでいられようか。
「……そうか。そうか」
嬉しそうにそう呟くジークに、縁は出来たばかりの花冠を被せると後ろを振り向く。
「でも、そういう話しはあまり好きではないので出来れば長生きして下さい。私のために」
「そうだな。お前の…縁のために少しでも長く生きてやるよ。お前は放っておくと心配で仕方ないからな」
「そうですね。ジークがいないと私もポックリ逝くかもしれません」
「バカヤロウ。そこは否定するところだろうが」
笑いながら小突いてくるジークに縁も笑う。
「でも私ですからねぇ。自分ではそう思わないですけどみなさん危ない危ないって」
「実際危ないからな。はぁ……そうだな、お前を残して死ぬなんて不安でそう簡単に死んでられねぇわ」
何もそこまで心配せずともいいのでは?と思ったが黙っておく。
いらぬお説教を聞く必要はない。
「ですね。諦めて頑張って長生きて下さい」
他人事のようにそう答え再び花冠を作り出そうとする縁に、背後ではそんな縁を見てジークが笑っていることに気付かなかった。
「なら、ご褒美でももらわねぇと割りに合わねぇな」
「ーーえ?」
それまで縁の腰に回っていた腕が動いたと思えば、右手がするりと縁のズボンの中に入ってきた。
「ちょっ、まっ、まってジーク!」
「んん~?」
絶対に笑ってる!楽しんでいる!
抵抗しようとしたが、いつの間にか自由だった腕ごとジークの片腕で抑えられており動けない。
「待って!待って下さい!」
「なんで?」
「外!ここ外です!」
「だから?前にもここでしただろ?」
それはそうだが!
だからと言って一度したから次もいいだろとはならない!
「み、見られるは、イヤです」
「俺は気にしないが?」
ぐっ!
私は気にするんです!!
真っ赤になりながらも睨むがそれすら笑って受け流されてしまう。
絶対さっきの仕返しだ!
「か、帰ってからにしーーひゃっ!ジ、ジーク!」
クニクニと右手で揉まれれば反応してしまう下半身が恥ずかしい。
「そうだなぁ。まぁ俺も縁のこんな色っぽい姿誰かに見られるはイヤだからな。なら一つ俺のお願いを聞いてほしいんだが?」
「聞く!聞きますからっーーわっ!」
突然ジークが立ち上がったかと思えば横抱きにされた。
「じゃあ、さっさと帰るぞ」
そのいい笑顔に縁は「やっぱり無理!」と言いそうになるのを必死に堪えるのだった。
23
お気に入りに追加
3,691
あなたにおすすめの小説
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
虐げられ聖女(男)なので辺境に逃げたら溺愛系イケメン辺境伯が待ち構えていました【本編完結】(異世界恋愛オメガバース)
美咲アリス
BL
虐待を受けていたオメガ聖女のアレクシアは必死で辺境の地に逃げた。そこで出会ったのは逞しくてイケメンのアルファ辺境伯。「身バレしたら大変だ」と思ったアレクシアは芝居小屋で見た『悪役令息キャラ』の真似をしてみるが、どうやらそれが辺境伯の心を掴んでしまったようで、ものすごい溺愛がスタートしてしまう。けれども実は、辺境伯にはある考えがあるらしくて⋯⋯? オメガ聖女とアルファ辺境伯のキュンキュン異世界恋愛です、よろしくお願いします^_^ 本編完結しました、特別編を連載中です!
雪狐 氷の王子は番の黒豹騎士に溺愛される
Noah
BL
【祝・書籍化!!!】令和3年5月11日(木)
読者の皆様のおかげです。ありがとうございます!!
黒猫を庇って派手に死んだら、白いふわもこに転生していた。
死を望むほど過酷な奴隷からスタートの異世界生活。
闇オークションで競り落とされてから獣人の国の王族の養子に。
そこから都合良く幸せになれるはずも無く、様々な問題がショタ(のちに美青年)に降り注ぐ。
BLよりもファンタジー色の方が濃くなってしまいましたが、最後に何とかBLできました(?)…
連載は令和2年12月13日(日)に完結致しました。
拙い部分の目立つ作品ですが、楽しんで頂けたなら幸いです。
Noah
偽物の番は溺愛に怯える
にわとりこ
BL
『ごめんね、君は偽物だったんだ』
最悪な記憶を最後に自らの命を絶ったはずのシェリクスは、全く同じ姿かたち境遇で生まれ変わりを遂げる。
まだ自分を《本物》だと思っている愛する人を前にシェリクスは───?
侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
*
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃんでした。
実際に逢ってみたら、え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこいー伴侶がいますので!
おじいちゃんと孫じゃないよ!
婚約者の浮気相手が子を授かったので
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ファンヌはリヴァス王国王太子クラウスの婚約者である。
ある日、クラウスが想いを寄せている女性――アデラが子を授かったと言う。
アデラと一緒になりたいクラウスは、ファンヌに婚約解消を迫る。
ファンヌはそれを受け入れ、さっさと手続きを済ませてしまった。
自由になった彼女は学校へと戻り、大好きな薬草や茶葉の『研究』に没頭する予定だった。
しかし、師であるエルランドが学校を辞めて自国へ戻ると言い出す。
彼は自然豊かな国ベロテニア王国の出身であった。
ベロテニア王国は、薬草や茶葉の生育に力を入れているし、何よりも獣人の血を引く者も数多くいるという魅力的な国である。
まだまだエルランドと共に茶葉や薬草の『研究』を続けたいファンヌは、エルランドと共にベロテニア王国へと向かうのだが――。
※表紙イラストはタイトルから「お絵描きばりぐっどくん」に作成してもらいました。
※完結しました
愛などもう求めない
白兪
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。
「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」
「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」
目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。
本当に自分を愛してくれる人と生きたい。
ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。
ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。
最後まで読んでいただけると嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる