二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

文字の大きさ
上 下
68 / 475

復活

しおりを挟む
 それから数日。
 最初の宣言通りセインの発情期は3日間続き、しかし考えていたよりも休憩時間を設けてもらうことができ、少しではあっが仮眠や食事、お風呂と縁のことを考えてくれていたため無事乗り切ることができた。
 もちろん身体は乗り切れなかったが。
 毎度お馴染みベッドの住人となった縁は身体を休めることに専念し、みんなに世話してもらいながら何とか回復することができた。
 そんな縁にアレンが一言。

 「なんでポーション使わないんだ?」

 「「「……あ!」」」

 その手があった!と縁にセイン、ジークが驚いたようにアレンを見る。
 使ったことのないものに、そんなこと思いもつかなかった縁たちであった。
 
 「まさかアレンがそれ気がつくとは……まぁ、それは置いといて私って妊娠したんですかね?」

 「おい待て、俺が気づいちゃおかしーー」

 「いや、たぶんしてない…はずだ。確かに男でも妊娠出来るとは言ったが男の場合妊娠する可能性は元々かなり低いんだ。身体が多少作り変わるわけだから縁に負担はかかると思うが何か異常があったらすぐに教えてくれ」

 どうやら妊娠も100%ではないらしい。
 アレン?知りません。
 言われてみればそんな簡単にポコポコ妊娠して出産していたら大変だろう。
 どれほどの確率かは分からないがこればかりは仕方がない。

 「分かりました。では、今日は身体を慣らしがてら薬草採取にでも行ってきます」

 「なら俺!俺が一緒に行く!」

 アレンは今日休みらしい。
 ならばいいかと準備をし部屋を出ようとする。

 「ママー、アズジュースつくーー」

 ゴンッ!

 「「「「………」」」」

 凄い音と共に中身をぶちまけたコップが床を滑っていく。
 タイミング悪く開けた戸の向こうにアズがいたようで、顔面を戸にぶつけてしまったようだ。

 「……いたい。いたい、ゔぇ~ん、いだい~」

 一瞬何があったか分かってなかったようだが、自分の顔に触れ痛みでアズが泣き出す。

 「あぁアズごめんなさい!」

 慌てて駆け寄れば泣いて抱きついてくるアズを抱き上げてやる。
 まさかぶつかるとは。
 自分のようだと苦笑いすれば、3人も同じようなことを思ったのか「親子だな」と言われた。
 何度か縁も戸に激突していたのを見られていたのだ。
 出来ればそんなところ似てほしくなかったが。
 
 「ごめんね。ほら顔を見せて。おまじないをしましょうか」

 「ゔぅ…おまやない?」

 「おまじない。アズのお顔がいたいのいたいのお空にとんでけ~」

 子どもだましではあるが縁も昔はよくしてもらった。
 顔を優しく撫でてやると痛みを飛ばすように手を上げればアズがキョトンとしていた。

 「どうですか?アズの痛いのが飛んでくようにお願いしたんですが」

 「……いたくない」

 良かった。
 この時無意識にソレを使っていたため、縁はまた魔法の存在に気付くことはなかったのである。
 縁のためにジュースを作ってきてくれたらしいアズが空のコップを見て再び泣きそうになったが、また作って欲しいとお願いすれば喜んで作ってくれるのであった。





 アレンとアズ、スノーを連れ薬草採取にきた縁はショックを受けていた。

 「……可愛くない」

 目に前にいるのは数匹の兎。
 兎……なのだが縁が知る兎とはか・な・り違っていた。
 大体の大きさは同じなのだが、何故かその頭には角がある。
 それだけならまだしも、こちらを見る瞳はかなりのツリ目で口元から覗く前歯は明らかに何かに噛みつくためにできているんじゃないかというほど鋭かった。
 ……あえて何とは言わないが。

 「魔物が可愛いわけないだろ。ほら危ないから離れてろ」

 言われた通り後ろへ下がれば、ものの数分で兎は全滅していた。
 
 「すごいですね。さすがアレンです」

 「へへっ、だろ?」

 見事に全て倒したアレンを褒めれば本人もかなり嬉しそうだ。
 身を守る為とはいえ武器を持たせておいて良かった。

 「ところで、この子たちって倒して良かったんでしょうか?」

 今更だが襲われそうだったからとはいえアレンが簡単に倒してしまったが、保護動物だったりしたら大変なのでは?と思った。
 こちらに動物愛護団体があるかは分からないが。

 「魔物なんだから大丈夫だ。というか倒すしかない」

 「魔物って何ですか?」

 「………」

 根本的なところの問題だった。
 先程からずっとアレンが魔物魔物と言っていたが、動物とは何か違うのだろうか?

 「魔物ってのは……こう、悪そうな…いや、黒々とした………あー、なんだ?あれだ。俺たちを襲おうとしてくるのが魔物だ」

 「………なるほど?」

 分からない。
 だが明らかに可愛くない容姿とこちらを襲おうと臨戦態勢だったのを思えば確かにあれらは縁が思う動物ではない。

 「この子たちはどうすればいいですかね?」

 兎のお肉は美味しいと聞いたことはあったが、さてこの子たちにもそれが当てはまるかは分からない。
 縁は解体もできなく、このまま放置するのも気がひける。

 「隠れ家に持っていっていいけど……どうせならギルドに持ってくか?依頼が出てるなら受ければいいだろ」

 なんと、意外にもアレンの機転がきいている。

 「そうですね。ダメなら持って帰ればいいですもんね。では薬草も取れましたしギルドに行きましょ………アズ?」

 さっきまで隣にいたはずのアズの姿がない。
 慌てて周りを見回すが、どこにもアズの姿が見当たらず困惑する縁であった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

虐げられ聖女(男)なので辺境に逃げたら溺愛系イケメン辺境伯が待ち構えていました【本編完結】(異世界恋愛オメガバース)

美咲アリス
BL
虐待を受けていたオメガ聖女のアレクシアは必死で辺境の地に逃げた。そこで出会ったのは逞しくてイケメンのアルファ辺境伯。「身バレしたら大変だ」と思ったアレクシアは芝居小屋で見た『悪役令息キャラ』の真似をしてみるが、どうやらそれが辺境伯の心を掴んでしまったようで、ものすごい溺愛がスタートしてしまう。けれども実は、辺境伯にはある考えがあるらしくて⋯⋯? オメガ聖女とアルファ辺境伯のキュンキュン異世界恋愛です、よろしくお願いします^_^ 本編完結しました、特別編を連載中です!

雪狐 氷の王子は番の黒豹騎士に溺愛される

Noah
BL
【祝・書籍化!!!】令和3年5月11日(木) 読者の皆様のおかげです。ありがとうございます!! 黒猫を庇って派手に死んだら、白いふわもこに転生していた。 死を望むほど過酷な奴隷からスタートの異世界生活。 闇オークションで競り落とされてから獣人の国の王族の養子に。 そこから都合良く幸せになれるはずも無く、様々な問題がショタ(のちに美青年)に降り注ぐ。 BLよりもファンタジー色の方が濃くなってしまいましたが、最後に何とかBLできました(?)… 連載は令和2年12月13日(日)に完結致しました。 拙い部分の目立つ作品ですが、楽しんで頂けたなら幸いです。 Noah

偽物の番は溺愛に怯える

にわとりこ
BL
『ごめんね、君は偽物だったんだ』 最悪な記憶を最後に自らの命を絶ったはずのシェリクスは、全く同じ姿かたち境遇で生まれ変わりを遂げる。 まだ自分を《本物》だと思っている愛する人を前にシェリクスは───?

侯爵令息セドリックの憂鬱な日

めちゅう
BL
 第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける——— ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。

伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃんでした。 実際に逢ってみたら、え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこいー伴侶がいますので! おじいちゃんと孫じゃないよ!

婚約者の浮気相手が子を授かったので

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ファンヌはリヴァス王国王太子クラウスの婚約者である。 ある日、クラウスが想いを寄せている女性――アデラが子を授かったと言う。 アデラと一緒になりたいクラウスは、ファンヌに婚約解消を迫る。 ファンヌはそれを受け入れ、さっさと手続きを済ませてしまった。 自由になった彼女は学校へと戻り、大好きな薬草や茶葉の『研究』に没頭する予定だった。 しかし、師であるエルランドが学校を辞めて自国へ戻ると言い出す。 彼は自然豊かな国ベロテニア王国の出身であった。 ベロテニア王国は、薬草や茶葉の生育に力を入れているし、何よりも獣人の血を引く者も数多くいるという魅力的な国である。 まだまだエルランドと共に茶葉や薬草の『研究』を続けたいファンヌは、エルランドと共にベロテニア王国へと向かうのだが――。 ※表紙イラストはタイトルから「お絵描きばりぐっどくん」に作成してもらいました。 ※完結しました

愛などもう求めない

白兪
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。 「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」 「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」 目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。 本当に自分を愛してくれる人と生きたい。 ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。  ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。 最後まで読んでいただけると嬉しいです。

処理中です...