二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

文字の大きさ
上 下
65 / 475

喜んでもらえて何より

しおりを挟む
 みんなの頑張りにより出来上がった料理を食堂へ運びこんで行けば、すでにシンクが机に待機していた。

 「お仕事大丈夫なんですか?」

 「もち!ソッコーで終わらしてきたッス!」

 いい笑顔だ。
 余程楽しみにしていたらしい。

 「待ってて下さいね。全て運んだらみなさんで食べましょう」

 あと少しだと言えばシンクも率先して運ぶのを手伝ってくれた。
 
 「これが塩胡椒で味付けして素揚げしたもので他にも胡麻をまぶして揚げたものもあります。こちらは生のものを薄切りにしてサラダにのせてありますので一緒に食べて見てください。ご飯は昆布と一緒に炊いて焼いてほぐした魚の身を混ぜてありますし、スープには魚の他にあさりも入っているので美味しい出汁がでていると思いますよ。もちろん焼いたものもあるので色々食べてみて下さい」

 普段なら一人前ずつ皿に盛って出しているのだが、今回は新しいものばかりで皆の好みが分からなかったため大皿に各料理を盛り付けて食べたい料理を自分で好きなだけ盛ってもらうことにしていた。

 「やばっ、やばい!もうやばい!うまいッス~~」

 叫ぶシンクのテンションがおかしい。
 大きな声でそう叫んだかと思えば、それからは話すのも惜しいとばかりに黙々とご飯をかきこんでいた。

 「なんだアイツ?」
 「あれは…大丈夫なのか?」
 「うっせぇなぁ」
 「おいしい!」

 唯一アズだけがそんなシンクを無視し、美味しい魚料理を味わっていた。

 「こっちにはアズが獲ってくれた貝も入ってますからね」

 「うん!」

 やはり自分で獲ったのが嬉しかったのかスープをおかわりしていた。
 一応お肉も用意しておいたのだが、思いの外みんな魚料理を気に入ってくれたらしく殆どの料理が完売していた。
 その上最後に残っていたものはシンクが全て綺麗に平らげてくれ、あの細身の身体のどこにそれほど入っているのか摩訶不思議である。

 「すっーーーーげーーーーうまかったッス!また作って欲しいッス!」

 全て食べ終え若干お腹をポッコリさせながらそう言うシンクに笑ってしまったが、喜んでもらえてなによりとまた機会があればと約束するのであった。

 「うまかった!」

 「初めて食べたものばかりだったが美味かった」

 「お前すげぇな」

 3人もとても喜んでくれ、みんなで頑張ったかいがあったというものである。
 アズも普段しないおかわりをしていることから喜んでくれているのは分かった。
 それから後片付けを済ませると風呂に入りアズを寝かしつける。
 お腹いっぱい食べ、温かい風呂に入ったせいかいつもより寝つきが早かった。
 アレンたちとベッドの上で寛いでいると、自然膝に乗せられるのは何故だろう。
 風呂上がりのホカホカのセインの胸に背を預ければ、正面に座るアレンに足を抱えられ撫でられる。

 「みなさんに喜んでもらえて良かったです。私は簡単なものしか作れないので上手く出来るか不安だったんですけどみなさんのおかげですね」

 縁1人ではきっと無理だった作業も、みんなが手伝ってくれたおかげであんなに喜んでもらえた。
 感謝しかない。
 
 「それもそうだが、縁が提案してくれなければそもそも出来てなかった料理だろ?もっと自信をーー?」

 「セイン?」

 いきなり言葉が途切れたセインにどうしたかと振り向けば、しばらくジッと自身の手を見つめた後なんでもないと笑っていた。

 「どこか具合が?」

 「いや……大丈夫だ」

 笑う顔はいつものセインなのだが、どこかぎこちなく感じるのは縁の気のせいだろうか?

 「すまないが、ジークに用があったのを思い出したから縁たちは先に寝ててくれ」

 それだけ言うと縁たちの返事も待たずセインは部屋を出て行ってしまった。

 「………」

 「大丈夫だ。言われた通り俺たちは先に寝よう」

 いつにないセインの態度に不安になった縁は立ち上がると、アレンにアズを任せ部屋を出る。
 アレンの引きとめる声は聞こえてはいたが無視した。
 ジークに用があると言っていたのを思い出し部屋を訪ねるが、セインは来てないと言われてしまう。

 「どうかしたか?」

 「……分かりません。セインが急に部屋を出ていってしまって……」

 「お前を残してか?それは……あーー、もしかしてきたか?」

 きた?何が?
 顔に出ていたのだろう。ジークがすぐさま教えてくれる。

 「発情期だよ」

 「ーーあっ」

 言われて初めて気づいた。
 そう言われればずっと言っていたではないか。
 もうすぐだと。近いんだと。
 だが何故?

 「そうだとしてセインは何故部屋を出て行ったんですか?私がいるのに。私はセインのーー」

 「番、だからだろ?」

 「え?」

 どういう意味だろう?
 
 「お前のことを考えてギリギリまで粘ろうとしてるんじゃねぇか?普段でさえあれだ。発情期の獣人相手にお前がそう保たないと思ってギリギリまで我慢しようとしてんだろ。お前が…縁のことがそんだけ大事だってことだ」

 「………なんですかそれ」

 意味が分からない。
 本当になんだそれ。
 そんなバカなことセインは考えてたのか。
 だが、そんなバカなことと言いながらそんなに縁を思ってくれていたのが嬉しくて仕方がなく、泣きそうになるのを必死に耐える。

 「アイツがいるとしたら隔離部屋だろう。…行ってやれ」

 「はい!後をお願いします」

 それから一度部屋に戻り用意しておいた鞄を引っ掴むと隔離部屋に向かい走るのだった。



 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

BLゲームのモブとして転生したはずが、推し王子からの溺愛が止まらない~俺、壁になりたいって言いましたよね!~

志波咲良
BL
主人公――子爵家三男ノエル・フィニアンは、不慮の事故をきっかけに生前大好きだったBLゲームの世界に転生してしまう。 舞台は、高等学園。夢だった、美男子らの恋愛模様を壁となって見つめる日々。 そんなある日、推し――エヴァン第二王子の破局シーンに立ち会う。 次々に展開される名シーンに感極まっていたノエルだったが、偶然推しの裏の顔を知ってしまい――? 「さて。知ってしまったからには、俺に協力してもらおう」 ずっと壁(モブ)でいたかったノエルは、突然ゲーム内で勃発する色恋沙汰に巻き込まれてしまう!? □ ・感想があると作者が喜びやすいです ・お気に入り登録お願いします!

俺の悪役チートは獣人殿下には通じない

空飛ぶひよこ
BL
【女神の愛の呪い】  この世界の根源となる物語の悪役を割り当てられたエドワードに、女神が与えた独自スキル。  鍛錬を怠らなければ人類最強になれる剣術・魔法の才、運命を改変するにあたって優位になりそうな前世の記憶を思い出すことができる能力が、生まれながらに備わっている。(ただし前世の記憶をどこまで思い出せるかは、女神の判断による)  しかし、どれほど強くなっても、どれだけ前世の記憶を駆使しても、アストルディア・セネバを倒すことはできない。  性別・種族を問わず孕ませられるが故に、獣人が人間から忌み嫌われている世界。  獣人国セネーバとの国境に位置する辺境伯領嫡男エドワードは、八歳のある日、自分が生きる世界が近親相姦好き暗黒腐女子の前世妹が書いたBL小説の世界だと思い出す。  このままでは自分は戦争に敗れて[回避したい未来その①]性奴隷化後に闇堕ち[回避したい未来その②]、実子の主人公(受け)に性的虐待を加えて暗殺者として育てた末[回避したい未来その③]、かつての友でもある獣人王アストルディア(攻)に殺される[回避したい未来その④]虐待悪役親父と化してしまう……!  悲惨な未来を回避しようと、なぜか備わっている【女神の愛の呪い】スキルを駆使して戦争回避のために奔走した結果、受けが生まれる前に原作攻め様の番になる話。 ※悪役転生 男性妊娠 獣人 幼少期からの領政チートが書きたくて始めた話 ※近親相姦は原作のみで本編には回避要素としてしか出てきません(ブラコンはいる) 

宰相閣下の執愛は、平民の俺だけに向いている

飛鷹
BL
旧題:平民のはずの俺が、規格外の獣人に絡め取られて番になるまでの話 アホな貴族の両親から生まれた『俺』。色々あって、俺の身分は平民だけど、まぁそんな人生も悪くない。 無事に成長して、仕事に就くこともできたのに。 ここ最近、夢に魘されている。もう一ヶ月もの間、毎晩毎晩………。 朝起きたときには忘れてしまっている夢に疲弊している平民『レイ』と、彼を手に入れたくてウズウズしている獣人のお話。 連載の形にしていますが、攻め視点もUPするためなので、多分全2〜3話で完結予定です。 ※6/20追記。 少しレイの過去と気持ちを追加したくて、『連載中』に戻しました。 今迄のお話で完結はしています。なので以降はレイの心情深堀の形となりますので、章を分けて表示します。 1話目はちょっと暗めですが………。 宜しかったらお付き合い下さいませ。 多分、10話前後で終わる予定。軽く読めるように、私としては1話ずつを短めにしております。 ストックが切れるまで、毎日更新予定です。

病弱な悪役令息兄様のバッドエンドは僕が全力で回避します!

松原硝子
BL
三枝貴人は総合病院で働くゲーム大好きの医者。 ある日貴人は乙女ゲームの制作会社で働いている同居中の妹から依頼されて開発中のBLゲーム『シークレット・ラバー』をプレイする。 ゲームは「レイ・ヴァイオレット」という公爵令息をさまざまなキャラクターが攻略するというもので、攻略対象が1人だけという斬新なゲームだった。 プレイヤーは複数のキャラクターから気に入った主人公を選んでプレイし、レイを攻略する。 一緒に渡された設定資料には、主人公のライバル役として登場し、最後には断罪されるレイの婚約者「アシュリー・クロフォード」についての裏設定も書かれていた。 ゲームでは主人公をいじめ倒すアシュリー。だが実は体が弱く、さらに顔と手足を除く体のあちこちに謎の湿疹ができており、常に体調が悪かった。 両親やごく親しい周囲の人間以外には病弱であることを隠していたため、レイの目にはいつも不機嫌でわがままな婚約者としてしか映っていなかったのだ。 設定資料を読んだ三枝は「アシュリーが可哀想すぎる!」とアシュリー推しになる。 「もしも俺がアシュリーの兄弟や親友だったらこんな結末にさせないのに!」 そんな中、通勤途中の事故で死んだ三枝は名前しか出てこないアシュリーの義弟、「ルイス・クロフォードに転生する。前世の記憶を取り戻したルイスは推しであり兄のアシュリーを幸せにする為、全力でバッドエンド回避計画を実行するのだが――!?

転生したら乙女ゲームの世界で攻略キャラを虜にしちゃいました?!

まかろに(仮)
BL
事故で死んで転生した事を思い出したらここは乙女ゲームの世界で、しかも自分は攻略キャラの暗い過去の原因のモブの男!? まぁ原因を作らなきゃ大丈夫やろと思って普通に暮らそうとするが…? ※r18は"今のところ"ありません

悪役令息の従者に転職しました

  *  
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。 依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました! スパダリ(本人の希望)な従者と、ちっちゃくて可愛い悪役令息の、溺愛無双なお話です。 ハードな境遇も利用して元気にほのぼのコメディです! たぶん!(笑)

モブに転生したはずが、推しに熱烈に愛されています

奈織
BL
腐男子だった僕は、大好きだったBLゲームの世界に転生した。 生まれ変わったのは『王子ルートの悪役令嬢の取り巻き、の婚約者』 ゲームでは名前すら登場しない、明らかなモブである。 顔も地味な僕が主人公たちに関わることはないだろうと思ってたのに、なぜか推しだった公爵子息から熱烈に愛されてしまって…? 自分は地味モブだと思い込んでる上品お色気お兄さん(攻)×クーデレで隠れМな武闘派後輩(受)のお話。 ※エロは後半です ※ムーンライトノベルにも掲載しています

BLゲームの世界に転生!~って、あれ。もしかして僕は嫌われ者の闇属性!?~

七海咲良
BL
「おぎゃー!」と泣きながら生まれてきた僕。手足はうまく動かせないのに妙に頭がさえているなと思っていたが、今世の兄の名前を聞いてようやく気付いた。  あ、ここBLゲームの世界だ……!! しかも僕は5歳でお役御免の弟!? 僕、がんばって死なないように動きます!

処理中です...