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なんですか?
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早速ジークと森に向かうことにした。
だが今日はアズもスノーもいない。2人きりだ。
実は2人も連れて行こうとしたのだがアズはお昼寝に入ってしまい、しかし部屋に1人残すのも可哀想だろうとスノーも置いてきた。
アズは後で寂しがるだろうが縁がジャムの話しをしてしまった手前、ソワソワと待ち続けているみんなの期待を裏切れない。
「ジークはパンで飽きたりしないんですか?」
「飽きるなんて考えたこともなかった。パンはあれが普通だったしな。むしろ手を加えようなんて思ったこともなかった」
やはりこちらの世界では食材はあれど、それを使ってアレコレ手を加えるということをしないらしい。
可愛いアズのためにも頑張ろう。
それから道中食べられそうな木の実などジャムに出来そうなものもジークに確認しながら採っていく。
人間学ぶ生き物なのです。
分からないのなら分かる人に聞けばいいじゃないか作戦。
「お前……覚える気ないだろ」
「そんなこと……ありますね」
「あんのかよ!」
素晴らしいツッコミ。
と、ジークで遊びながらも以前来た花畑に到着した。
「少し休憩しましょう」
「疲れたのか?弱っちぃなぁ」
一言余計です。
少し腹が立ったのでジークを無視すると花の中でゴロンと横になる。
花の背が高いため横になる縁はジークから見れば隠れてしまっているかもしれない。
「花に囲まれて日向ぼっこ。ここだけなら平和なものです」
まるで御伽噺の中の世界のようだ。
「………なぁ」
「はい、何ですか?」
ジークには珍しく歯切れの悪い声にどうしたのかと上半身を起こせば、こちらに近づいてくるジークの姿が。
そのまま縁のすぐ横に腰を下ろすとこちらをジッと見つめてくる。
「………前に、また番を増やすのか聞いたことがあっただろ?」
蛇の獣人を紹介してもらった時のことだ。
「それは、今も…変わらねぇのか?」
「さぁどうでしょう」
「………」
あの2人が番になったのも突然だったのだ、もしかしたらまた突然増えることもあるかもしれない。
何となくはジークが言いたいことを縁は察している。
だが言葉にしないのはそれを決めるにはジークの覚悟が必要だからだ。
「……俺は、お前のことが好きだ」
「それは、ありがとうございます」
「あぁ…いや、ちがう。礼を言ってほしいわけじゃなくてな………その、お前は……」
それを言うにはかなりの勇気が必要だろう。
だがそれを縁が手伝うことはではない。
「いや、お前がもし、許してくれんなら…俺をお前の番にしてくれないか?」
そう言いい逸らされることのない目線に縁もそんなことせずジークを見つめる。
「ジークは、エリーさんとの約束をどこまで守りますか?」
「あ?」
ジークには縁が言いたことが分からないのだろう。
「みんなを守ってほしい。それがエリーさんとの約束ですね。守るというのにも色々ありますが、言葉通りならジークは一生あそこから離れられない。けど、私たちはたぶんいつかあそこから出ていきます。その時、ジークはどうしますか?」
「………」
ジークを番にしたとして縁たちがあの隠れ家から出て行く時、ジークはどちらに付くだろう。
残るというのであれば、再び番を失うという悲しみをジークには味わってほしくなく、中途半端に番にすることなんてできない。
「悲しいですがセインたちにはそんな場所がありませんでした。けど、だからこそ彼らは自由であり、どこへでも行くことができる。ジーク貴方は?私と彼ら、どちらを選びますか?」
言い方は悪いが選ぶ覚悟をしてもらわなければならない。
アレンやセイン、縁はこのままでいいかもしれないが、アズやこれから大きく成長していくであろうスノーのためにも住む場所を探す必要があるのだ。
「……俺は……」
「困らせてごめんなさい。でも、もう貴方に傷付いてほしくないんです」
愛する人を亡くし、死んでしまいたいと思っただろうジークにこれ以上悲しんでほしくない。
愛情深い獣人であるが故の苦しさ。
「お前は……エニシは、俺と番になるのはいやじゃないのか?」
「ジークが悲しむことがないのなら」
ジークが自分を選んでくれたのは純粋に嬉しい。
縁の憧れのような広く大きい体躯。
みんなのことを誰より考えることができる優しさ。
何より縁が甘えることを許してくれる。
別にアレンたちに甘えてないわけではない。
甘えていないわけではないが、どちらかというとアレンたちは甘やかしたいのだ。
大好き、愛してると尻尾を振る彼らが可愛くて仕方ない。
だが、ジークは縁が落ち込んだ時は背中を撫でて慰めてくれ、間違ったことをしようとすればちゃと叱ってくれる。
アレンたちとは違った優しさがあり、頼もしかった。
そんな彼を愛しくは思うが苦しませたいわけではない。
「なぁ、抱いていいか?」
「それで決めようとするのはオススメしません」
抱けば情が湧き縁しか選べなくなるかもというのなら駄目だ。
ちゃんと自分の意思で選び決めてほしい。
「分かってる。じゃなくて、もう答えは決まってんだよ」
ジークに抱き上げられたと思えば向かい合わせに胡座をかいた膝に乗せられる。
「エニシのことを愛してる。でも……たぶん一生エリーを忘れることもできねぇ。それでもお前が許してくれんなら俺はこれからの人生お前と一緒に生きていきてぇ」
ジークがエリーを忘れられないのは当たり前だ。
縁はそれを責める気もないし、そんなこと許さないと言う気もない。
「あの場所があったから私たちはこうしていられるんですよ?あの場所を作ろうと言ってくれたエリーさんに、自分が死ねばジークが悲しむと分かっていても生きろと言ってくれたエリーさんに、感謝こそすれ忘れろなんて言いません。それにーー」
「それに?」
「私もそんなジークを愛してしまいましたからね。その責任をとってもらわなくては」
冗談混じりにそう言えば、ジークは声を出して笑った後噛み付くようなキスを縁にしてきたのだった。
だが今日はアズもスノーもいない。2人きりだ。
実は2人も連れて行こうとしたのだがアズはお昼寝に入ってしまい、しかし部屋に1人残すのも可哀想だろうとスノーも置いてきた。
アズは後で寂しがるだろうが縁がジャムの話しをしてしまった手前、ソワソワと待ち続けているみんなの期待を裏切れない。
「ジークはパンで飽きたりしないんですか?」
「飽きるなんて考えたこともなかった。パンはあれが普通だったしな。むしろ手を加えようなんて思ったこともなかった」
やはりこちらの世界では食材はあれど、それを使ってアレコレ手を加えるということをしないらしい。
可愛いアズのためにも頑張ろう。
それから道中食べられそうな木の実などジャムに出来そうなものもジークに確認しながら採っていく。
人間学ぶ生き物なのです。
分からないのなら分かる人に聞けばいいじゃないか作戦。
「お前……覚える気ないだろ」
「そんなこと……ありますね」
「あんのかよ!」
素晴らしいツッコミ。
と、ジークで遊びながらも以前来た花畑に到着した。
「少し休憩しましょう」
「疲れたのか?弱っちぃなぁ」
一言余計です。
少し腹が立ったのでジークを無視すると花の中でゴロンと横になる。
花の背が高いため横になる縁はジークから見れば隠れてしまっているかもしれない。
「花に囲まれて日向ぼっこ。ここだけなら平和なものです」
まるで御伽噺の中の世界のようだ。
「………なぁ」
「はい、何ですか?」
ジークには珍しく歯切れの悪い声にどうしたのかと上半身を起こせば、こちらに近づいてくるジークの姿が。
そのまま縁のすぐ横に腰を下ろすとこちらをジッと見つめてくる。
「………前に、また番を増やすのか聞いたことがあっただろ?」
蛇の獣人を紹介してもらった時のことだ。
「それは、今も…変わらねぇのか?」
「さぁどうでしょう」
「………」
あの2人が番になったのも突然だったのだ、もしかしたらまた突然増えることもあるかもしれない。
何となくはジークが言いたいことを縁は察している。
だが言葉にしないのはそれを決めるにはジークの覚悟が必要だからだ。
「……俺は、お前のことが好きだ」
「それは、ありがとうございます」
「あぁ…いや、ちがう。礼を言ってほしいわけじゃなくてな………その、お前は……」
それを言うにはかなりの勇気が必要だろう。
だがそれを縁が手伝うことはではない。
「いや、お前がもし、許してくれんなら…俺をお前の番にしてくれないか?」
そう言いい逸らされることのない目線に縁もそんなことせずジークを見つめる。
「ジークは、エリーさんとの約束をどこまで守りますか?」
「あ?」
ジークには縁が言いたことが分からないのだろう。
「みんなを守ってほしい。それがエリーさんとの約束ですね。守るというのにも色々ありますが、言葉通りならジークは一生あそこから離れられない。けど、私たちはたぶんいつかあそこから出ていきます。その時、ジークはどうしますか?」
「………」
ジークを番にしたとして縁たちがあの隠れ家から出て行く時、ジークはどちらに付くだろう。
残るというのであれば、再び番を失うという悲しみをジークには味わってほしくなく、中途半端に番にすることなんてできない。
「悲しいですがセインたちにはそんな場所がありませんでした。けど、だからこそ彼らは自由であり、どこへでも行くことができる。ジーク貴方は?私と彼ら、どちらを選びますか?」
言い方は悪いが選ぶ覚悟をしてもらわなければならない。
アレンやセイン、縁はこのままでいいかもしれないが、アズやこれから大きく成長していくであろうスノーのためにも住む場所を探す必要があるのだ。
「……俺は……」
「困らせてごめんなさい。でも、もう貴方に傷付いてほしくないんです」
愛する人を亡くし、死んでしまいたいと思っただろうジークにこれ以上悲しんでほしくない。
愛情深い獣人であるが故の苦しさ。
「お前は……エニシは、俺と番になるのはいやじゃないのか?」
「ジークが悲しむことがないのなら」
ジークが自分を選んでくれたのは純粋に嬉しい。
縁の憧れのような広く大きい体躯。
みんなのことを誰より考えることができる優しさ。
何より縁が甘えることを許してくれる。
別にアレンたちに甘えてないわけではない。
甘えていないわけではないが、どちらかというとアレンたちは甘やかしたいのだ。
大好き、愛してると尻尾を振る彼らが可愛くて仕方ない。
だが、ジークは縁が落ち込んだ時は背中を撫でて慰めてくれ、間違ったことをしようとすればちゃと叱ってくれる。
アレンたちとは違った優しさがあり、頼もしかった。
そんな彼を愛しくは思うが苦しませたいわけではない。
「なぁ、抱いていいか?」
「それで決めようとするのはオススメしません」
抱けば情が湧き縁しか選べなくなるかもというのなら駄目だ。
ちゃんと自分の意思で選び決めてほしい。
「分かってる。じゃなくて、もう答えは決まってんだよ」
ジークに抱き上げられたと思えば向かい合わせに胡座をかいた膝に乗せられる。
「エニシのことを愛してる。でも……たぶん一生エリーを忘れることもできねぇ。それでもお前が許してくれんなら俺はこれからの人生お前と一緒に生きていきてぇ」
ジークがエリーを忘れられないのは当たり前だ。
縁はそれを責める気もないし、そんなこと許さないと言う気もない。
「あの場所があったから私たちはこうしていられるんですよ?あの場所を作ろうと言ってくれたエリーさんに、自分が死ねばジークが悲しむと分かっていても生きろと言ってくれたエリーさんに、感謝こそすれ忘れろなんて言いません。それにーー」
「それに?」
「私もそんなジークを愛してしまいましたからね。その責任をとってもらわなくては」
冗談混じりにそう言えば、ジークは声を出して笑った後噛み付くようなキスを縁にしてきたのだった。
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