二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

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茶飲み友達

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 案内されるままお宅にお邪魔すれば、簡易ではあるがそれなりに大きな作りの家だった。

 「急に現れるんだもの。どこの子が迷い込んできたのかと思ったわ」

 「それは大変失礼しました。どうも道に迷うのが癖らしく、1人で行動するのはもうやめておこうと思います」

 「そうしてくれ」

 案内された部屋で隣の席に座るジークに注意される。
 気持ちよく寝ていたものだから起こすのは可哀想だと思ったのだが、余計に心配させてしまったらしい。

 「ここは長いんですか?」

 出してもらったお茶をいただきながら、どうしてこんな場所で1人で暮らしているのか聞いてみる。

 「確かにいい場所とは言えないけど、町の人たちから隠れるにはちょうどいいのよ」

 「隠れる?」

 こんな優しい女性が町の人たちから嫌われているとは思えず首を傾げる。

 「ふふっ、私の夫はね狼の獣人だったのよ」

 「そうなんですか!え、でも……だった?」

 「亡くなったの。もう、10年前かしら」

 「………」
 「………」

 まさかこんな近くにも縁と同じように獣人を番にした人間がいるとは思ってなかった。
 ジークも驚いたように女性を見ている。

 「私も元は奴隷だったのよ。でも、歳をとるにつれて役立たずって森に捨てられたの。殴られ蹴られ怪我が酷くてね。ろくに動けもしなくてそのまま死ぬのかと思ったわ」

 その時彼に助けられたらしい。
 彼の必死の看病により命を取り留めた彼女は、人間たちから隠れて暮らす彼と暮らすようになった。
 命を救ってもらった彼に恋心を抱くのも時間の問題だったようで、優しく接してくれる彼に思いを告げたそうだ。

 「初めは断られたわ。そりゃそうよね、私はその時25だったけど彼は97歳だったもの。見た目は若かったから気づかなかったけど獣人は長生きなんだってその時知ったの。彼からしたら孫みたいなものだったでしょうね」

 「でも貴方は夫だと」

 そう言っていたということは夫婦だったはずだ。

 「えぇ、私が諦めず彼に迫ったから。根負けした彼がやっと頷いてくれた時は本当に嬉しくて嬉しくて踊り出しそうだった」

 その時を思い出しているのか、今はもう皺だらけの顔を少女のように綻ばせている。
 死して尚、彼を想う気持ちは変わらないのだろう。

 「それほど魅力的な方だったんですね」

 「もちろん。私にとって最愛の旦那様だったわ」

 獣人と人間なんて関係ない。
 寿命の違いなんて問題ではない。
 どれほど彼を愛し、彼に愛されていたか。
 一緒に過ごす時間が短くとも奴隷として過ごした時間とは比べられないぐらいの幸せをくれた彼を愛している。

 「けど死ぬ前にね、言われたのよ。自分が死んだら他に相手を探して欲しいって」

 「でも探さなかった?」

 「いいえ。彼との約束だったから探したわ。でも見つけられなかった。ただ彼以上の人なんていなかったのよ」

 そう微笑む彼女はとても綺麗で、どこか誇らし気な様子に縁は自身の2人の番を想うのだった。

 「後悔してないか?」

 それまで黙って話を聞いていたジークが真剣な目で彼女を見ていた。

 「後悔?何を?彼に出会えたことだけで私は幸せよ。その上彼の奥さんにしてもらってこれ以上の幸せはないわ」

 「……そうか」

 何か考えるように俯くジークを彼女はとても優しい表情で見ているのだった。

 「お婆ちゃんの長話に付き合わせてごめんなさいね。もう暗くなるけど帰り道は分かるかしら?」

 「あ、いえーー」
 「あぁ大丈夫だ」

 !?
 必死に帰り道を探そうとしていた縁には驚きの事実が!

 「分かってたんですか!?」

 「なんとなくな」

  「ふふふっ、これから1人歩きはやめた方が良さそうね」

  「だな」

 2人してそう言われてしまえば縁に返せる言葉はなかった。
 お土産にとたくさんの野菜たちを貰い、また遊びに来てもいいかと聞けば必ずジークと一緒にと言われ女性の家を後にするのであった。

 「それよりお前、スノーはどうした?」

 さっきから姿が見えないと言われれば、縁の着ているシャツの胸元からヌッとスノーが顔を出す。
 
 「驚かせちゃいけないと咄嗟に隠れたみたいです。賢い子でしょ?」

 「それはいいが、危ないと思ったら容赦なく喉笛噛み切ってやれ。いいな?」

 「キュァー」

 「こらこらこら」

 ウチの可愛い子になんてこと教えるんだ! と怒れば、お前は危機感がなさすぎると説教される。

 「今回はいいヤツだったかもしれないがいつもそうとは限らねぇんだよ。お前ができないならそばにいるやつがやるしかねぇだろ」

 「キュー」

 「いや、スノーもなんで納得してるんですか。いくら私でも危ないと思えば反撃しますよ」

 間に合えばいいけどなと言われてしまえば、自信がない縁は言い返すことができなかった。
 危機感ってどうして鍛えればいいんでしょう?

 「あ、あの方の名前聞くの忘れてました」

 「お前は……」

 呆れたようにこちらを見るジークにも慣れつつある縁であった。
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