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心配
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サッズとシンクに頼まれ木苺を探しにきたのはいいのだが、目を離したはしからエニシが危険物ばかりとってくるのにジークは呆れはてていた。
自信満々に差し出してくる姿はめちゃくちゃかわい……おもしろいが心配で仕方がない。
「美味しいかと思ったんですが……」
どこをどう見たら美味そうに見えたのか。
一見して毒々しいとしか言えないものをそれはそれは楽しそうに摘もうとする。
目が離せない。
「それにしてもアズは随分ジークに懐きましたね」
先程から抱っこしてやりながら歩く2人にエニシは嬉しそうだった。
確かに最初は怯えられていたが、今では違和感なく抱っこされているアズに嬉しくなり頭を撫でてやる。
血は繋がっていないと言ってはいたが、その懐きようにアズがエニシを慕っているのは分かっていた。
叶うことがなかった子どもの存在に自然と顔が弛む。
仲間の子どもたちを抱っこしたこともあったが、何かが違う気がするのは何故だろう。
自分の感情を持て余しながらも、木苺がなる場所に案内してやれば目の前に広がる色とりどりの花畑にエニシは綺麗と呟きながら歩きだそうとしてーー
バタンッ!
転けた。それも顔面から。綺麗に。
「……お前は、どれだけ俺の予想を裏切れば気が済むんだ?」
目の前に広がる花畑に足下をしっかり見てなかったのだろう。
顔面から花畑に突っ込んでいったエニシは、しかし花が下敷きになったおかげかさほど怪我らしい怪我はなく、少々鼻を擦りむいたくらいだ。
「少し赤くなってんな。まぁ、すぐ治んだろ」
花まみれになったエニシを救出してやると、少し赤くなっている鼻を撫でてやる。
「すいません。花に見惚れてました。それにしても綺麗な場所ですね」
「っ!そ、そうか?まぁ、女共はよく来てるみたいだがな」
綺麗だと目の前で微笑むエニシにドキッとした。
怪我を確かめるのに近づいた顔にわけもなく心が騒めく。
このままでは危ないと素早く離れると、心配顔だったアズをエニシのそばに下ろしてやる。
「ママいたい?」
「大丈夫、少し擦っただけですよ。こんなのすぐ治ります。ジークも言っていたでしょう?」
ね?とこちらを見る2人に、戸惑う心を隠しながらも頷いてやる。
安心したのか笑うアズを、エニシは地べたに座る自分の膝に乗せてやると花を何本か摘みだした。
なにをしているんだと近づき、手元を覗き込めばなにやら器用に花を潰さぬよう茎の部分を編み込んでいた。
「器用なもんだな」
「昔、母に覚えさせられました」
覚えたではなく、覚えさせられたというエニシに笑ってしまった。
その手際の良さにアズと2人で魅入っていれば、完成です!と言葉と共にアズの頭に乗せられた。
「花冠です。可愛いでしょう?」
「あぁ、似合ってるな」
アズの白い髪に色とりどりの花はとても似合っており、アズの可愛いさを引き立たせていた。
頭に乗っているため見えないアズは不思議そうだったが、似合うと言われて嬉しいのか自分も作りたいと言い出した。
ならば3人で作ろうとエニシに教えられながら作ってみるが、体格もさることながら手も大きいジークには上手く編み込むことはできなかった。
逆にアズは器用なもので、小さい手を駆使しながら一生懸命編んでいく。
自分のは早々に諦め2人のものを眺めていると、できた!とアズが嬉しそうに縁に見せていた。
「これママにあげる」
力作を頭に乗せれば、エニシも嬉しそうにありがとうとアズを抱きしめてやる。
血が繋がっておらずともどこの誰より家族らしく見えた。
「では、これはジークに。お揃いです」
乗せられた花冠に似合いませんねと笑われ、外そうと思ったがお揃いという言葉に手を止めた。
周りからはどう見える分からない。
それでもジークにはそれが家族のようだと聞こえて、中途半端に上げていた手を下ろすのだった。
それからお土産にとエニシが少し花を摘むと、周りに生えていた木苺も手早く取っていく。
「これだけあれば大丈夫ですかね?」
「大丈夫だろ。足りないっつったらまたくればいいしな」
森にいる他の動物たちのためにも全てを取ることはせず、取ったものを貰った籠に詰めていく。
「お前ら町で暮らしてのか?家は?なんならもうしばらくあそこにいてもいいぞ」
気付けばそう言っていた。
「………」
沈黙が痛い。
「ま、まぁ、嫌ならべつにいいけどなっ。ベッドは固いし、メシだって町の方が美味いだろーー」
「いいんですか!」
前のめりに聞いてくるエニシに驚いたが、その目はキラキラと輝いていた。
「よかった。どうやって頼もうかと考えてたんです。町には色々あって便利ですけど、やはりアズたちには辛いだろうと思って。なにより私があの場所を気に入っています」
あんな場所に住んでみたかっと言われれば、頑張って改造して良かったと思える。
確かにエニシにはいいかもしれないが、アレンやセイン、アズには町は生きづらかろう。
その主人であり、家族でもあるエニシがいいというなら彼らも問題はないだろう。
なんとなく言ったことだったが、こうしてまだエニシたちと過ごすことができるのだと思えば言った自分を褒めてやりたいと思うジークなのであった。
自信満々に差し出してくる姿はめちゃくちゃかわい……おもしろいが心配で仕方がない。
「美味しいかと思ったんですが……」
どこをどう見たら美味そうに見えたのか。
一見して毒々しいとしか言えないものをそれはそれは楽しそうに摘もうとする。
目が離せない。
「それにしてもアズは随分ジークに懐きましたね」
先程から抱っこしてやりながら歩く2人にエニシは嬉しそうだった。
確かに最初は怯えられていたが、今では違和感なく抱っこされているアズに嬉しくなり頭を撫でてやる。
血は繋がっていないと言ってはいたが、その懐きようにアズがエニシを慕っているのは分かっていた。
叶うことがなかった子どもの存在に自然と顔が弛む。
仲間の子どもたちを抱っこしたこともあったが、何かが違う気がするのは何故だろう。
自分の感情を持て余しながらも、木苺がなる場所に案内してやれば目の前に広がる色とりどりの花畑にエニシは綺麗と呟きながら歩きだそうとしてーー
バタンッ!
転けた。それも顔面から。綺麗に。
「……お前は、どれだけ俺の予想を裏切れば気が済むんだ?」
目の前に広がる花畑に足下をしっかり見てなかったのだろう。
顔面から花畑に突っ込んでいったエニシは、しかし花が下敷きになったおかげかさほど怪我らしい怪我はなく、少々鼻を擦りむいたくらいだ。
「少し赤くなってんな。まぁ、すぐ治んだろ」
花まみれになったエニシを救出してやると、少し赤くなっている鼻を撫でてやる。
「すいません。花に見惚れてました。それにしても綺麗な場所ですね」
「っ!そ、そうか?まぁ、女共はよく来てるみたいだがな」
綺麗だと目の前で微笑むエニシにドキッとした。
怪我を確かめるのに近づいた顔にわけもなく心が騒めく。
このままでは危ないと素早く離れると、心配顔だったアズをエニシのそばに下ろしてやる。
「ママいたい?」
「大丈夫、少し擦っただけですよ。こんなのすぐ治ります。ジークも言っていたでしょう?」
ね?とこちらを見る2人に、戸惑う心を隠しながらも頷いてやる。
安心したのか笑うアズを、エニシは地べたに座る自分の膝に乗せてやると花を何本か摘みだした。
なにをしているんだと近づき、手元を覗き込めばなにやら器用に花を潰さぬよう茎の部分を編み込んでいた。
「器用なもんだな」
「昔、母に覚えさせられました」
覚えたではなく、覚えさせられたというエニシに笑ってしまった。
その手際の良さにアズと2人で魅入っていれば、完成です!と言葉と共にアズの頭に乗せられた。
「花冠です。可愛いでしょう?」
「あぁ、似合ってるな」
アズの白い髪に色とりどりの花はとても似合っており、アズの可愛いさを引き立たせていた。
頭に乗っているため見えないアズは不思議そうだったが、似合うと言われて嬉しいのか自分も作りたいと言い出した。
ならば3人で作ろうとエニシに教えられながら作ってみるが、体格もさることながら手も大きいジークには上手く編み込むことはできなかった。
逆にアズは器用なもので、小さい手を駆使しながら一生懸命編んでいく。
自分のは早々に諦め2人のものを眺めていると、できた!とアズが嬉しそうに縁に見せていた。
「これママにあげる」
力作を頭に乗せれば、エニシも嬉しそうにありがとうとアズを抱きしめてやる。
血が繋がっておらずともどこの誰より家族らしく見えた。
「では、これはジークに。お揃いです」
乗せられた花冠に似合いませんねと笑われ、外そうと思ったがお揃いという言葉に手を止めた。
周りからはどう見える分からない。
それでもジークにはそれが家族のようだと聞こえて、中途半端に上げていた手を下ろすのだった。
それからお土産にとエニシが少し花を摘むと、周りに生えていた木苺も手早く取っていく。
「これだけあれば大丈夫ですかね?」
「大丈夫だろ。足りないっつったらまたくればいいしな」
森にいる他の動物たちのためにも全てを取ることはせず、取ったものを貰った籠に詰めていく。
「お前ら町で暮らしてのか?家は?なんならもうしばらくあそこにいてもいいぞ」
気付けばそう言っていた。
「………」
沈黙が痛い。
「ま、まぁ、嫌ならべつにいいけどなっ。ベッドは固いし、メシだって町の方が美味いだろーー」
「いいんですか!」
前のめりに聞いてくるエニシに驚いたが、その目はキラキラと輝いていた。
「よかった。どうやって頼もうかと考えてたんです。町には色々あって便利ですけど、やはりアズたちには辛いだろうと思って。なにより私があの場所を気に入っています」
あんな場所に住んでみたかっと言われれば、頑張って改造して良かったと思える。
確かにエニシにはいいかもしれないが、アレンやセイン、アズには町は生きづらかろう。
その主人であり、家族でもあるエニシがいいというなら彼らも問題はないだろう。
なんとなく言ったことだったが、こうしてまだエニシたちと過ごすことができるのだと思えば言った自分を褒めてやりたいと思うジークなのであった。
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