神となった俺の世界で、信者たちが国を興す

のりつま

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第79話 咸陽陥落

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「勘弁してくれ…もうこれで精一杯なんだ」
 すっかり日が暮れた村の真ん中で、老人が膝をついていた。
「ふざけるなよ?俺たちは戦えないお前らの代わりに魔物を狩りに来てやってんだ。もてなしをするのは当然だろ?」
 冒険者風の男は持っていた皿を老人に投げつける。
「んなシケたもん食わせやがって」
「おい!何やってんだ!」
 エイジが老人のもとへ駆け寄る。
「爺さん平気か?」
「エイジ…」
「あぁ?なんだまた邪魔しに来たのかお前」
 冒険者風の男は腕を組んでエイジを見下ろす。
「お前らいい加減にしろ!どれだけ要求すりゃ気が済むんだ!」
「あぁ?何言ってんだコラ、俺らは魔物退治する為の最低限しか頼んでねぇだろうが!」
「お前ら、村全体の何日分の飯食ってると思ってんだ!」
「その村全体で掛かって魔物が倒せんのかぁ?あぁ!?過ぎた口には仕置が必要だなぁ!」
 男がエイジの胸ぐらを掴みあげる。
「ぐっ…」
「おお?まだそんな目すんのか、じゃあこれで…」
 男が拳を振り上げた時、マンジュが男の腕を掴んだ。
「この手を離すっス」
「あぁ?なんだ嬢ちゃん」
「マンジュ…」
「聞こえなかったっスか?この手を離せっつってるんスよ」
 男がニヤリと笑う。
「嫌だと言ったら?」
「二度とスプーン握れなくなるっスね」
「ははっ!おもしれぇ!やってみろ!」
 男が拳に力を入れると、マンジュは魔導鞄へ手を入れる。
「マンジュ、やめろ!」
 エイジの呼び掛けも虚しく、男の拳はエイジの顔面目掛けて、マンジュが取り出したテンタクルスコップはその男の拳目掛けて、動き出す。
「そこまでだァ」
 次の瞬間、拳とスコップの両方をシュテンが止めていた。
「ま、間に合いました!」
 後ろからメイとアンナが走ってくる。
 シュテンはアンナの機転により、『神出鬼没』にて急行し、戦闘が起こっていたら止めるよう言われていた。
「アニキ…」
「マンジュ、下がれェ」
「…はいっス」
 マンジュはシュテンに言われるまま、スコップを鞄に仕舞い後ろへ下がる。
「なに?アンタが晩飯用意してくれんの?」
「…あァ?」
 シュテンには男が何を言ってるのか理解する必要があった。
「お前ェ…」
「あん?なんだよ」
「腹減って暴れてたのかァ?」
「はぁ?なめてんの?」
 男がシュテンの胸ぐらを掴む。
「…ん、ん?」
 ビクともしないシュテンの体に戸惑う。
「おい、どうしたんだよ」
 後ろで見ていた男の仲間が怪訝な顔になる。
「い、いや…あれ、おかしいな」
 まるで大きなカブでも引っこ抜かんばかりに身体を捩る男を見て、アンナが動く。
「おい」
「あ?なんだよ今忙しいんだよ」
「まだ暴れるようなら、それなりの処罰を受けてもらうぞ」
「あ?」
 男がシュテンを離す。
「なに?この女、何様?」
 分かりやすくアンナへガンを飛ばす。
アンナは胸元からペンダントを取り出し男へ突き付ける。
「私はアンナ=ヴェイングロリアス。ゲンキ=ヴェイングロリアス白爵の娘だ」
 ペンダントには、ヴェイングロリアス家の家紋が刻まれている。アンナが貴族家であることの証拠だ。
「なっ…」
「これ以上続けるようなら、白爵令嬢への狼藉として拘束させてもらうが、どうするよ」
 男は少し考えた後、舌打ちをして踵を返した。このまま村から出ていくようだ。
「アンナ殿!大丈夫ですか?」
 メイが駆け寄ると、アンナは笑い返した。
「ああ平気だ、シュテンは?」
「どォもねェ」
「シュテン、ああいう時は殺さない程度に吹っ飛ばしていいんだぞ?」
「…あァ」
 難しい事を言うな、と思う。
「エイジ、爺さん、無事っスか?」
 後ろでマンジュが駆け寄る。
「ああ、俺は平気だ…」
「おお、マンジュか…よく戻ったな」
 爺さんがマンジュの頭を撫でる。
「ちょ、よすっス、もう子供じゃないっスよ」
「はっはっは、そうかそうか」
 撫で続ける爺さんを横目に、エイジが立ち上がる。
「アンナ…様、まさか白爵家の令嬢だったとは知らず…」
 エイジが頭を下げるのを、アンナが慌てて制する。
「よしてくれ堅いのは、アンナ様なんて領民にも言われた事ねえよ。今まで通りでいい」
「…そうか、恩に着る」
「エイジ殿、今のが先程話されていた…?」
 メイの問いにエイジは頷く。
「あんなのが連日やってくるんだ。もう半年近い」
「それは…災難でありますね…」
 アンナが大きくため息をつく。
「とにかく、この状況含めて明日ギルドを問い質すぞ」
 アンナとメイが顔を見合わせて頷く。
「あんな輩を放っておく訳にはいきませんよね、シュテン殿」
「あァ?ん…あァ、そうだな」
 肯定してみたものの、シュテンの頭には「?」が乱立していた。
 シュテン視点であの冒険者たちは「空腹に任せて暴れている人間」にしか見えなかったのだ。
 メイ達がここまで気合いを入れている理由は分からなかった。
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