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第38話 名鳥『騅(すい)』

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「大王様、ピット一行が参られました」

兵の報告を受け、レッドキャップは傲慢に告げる。

「ウサギ共め、やっと来おったか!」

持っていた酒を掲げ、玉座で大笑いをするレッドキャップ。

亜父はレッドキャップに耳打ちする。

「大王、あのものは必ずや大王の覇業の障害となります」

「必ずこの場で討ち取ってださい」

「わかっておる!ちゃんとやるので心配するな!」

レッドキャップはイライラしながらそう吐き捨てた。

暫くすると兵の案内を受けて、うさぎたちはレッドキャップのもとへ案内されてきた。

ウサギとカマキリたちは、レッドキャップの前に跪き挨拶を述べる。

「初めまして大王様」

「本日はお忙しい中、我々弱小動物の為に謁見のお時間を頂きましてありがとうございます」

頭を下げるラビット一行。

「おう、うちの狐から話は聞いて居る。首を長くして待っておったぞ!」

レッドキャップは笑いながら語る。

「申し訳ございません、王に献上するものの中で、なかなか手に負えぬものがありまして…」

「手に負えぬ?」

レッドキャップは何かと尋ねる。

「実は…少し前にクイの群れを率いる、ひときわ大きなクイがおりまして」

「その鳥のおかげで仲間のクイは取り逃がしましたが、そのクイだけは捕獲に成功しました」

「ほう」

レッドキャップはそれでそれでと話を促す。

「しかしこの鳥、あまりにも凶暴で我々には手が付けられませぬ」

「それで、もし宜しければこの鳥を献上品として大王にお渡しをと連れて参りました」

話を聞き終えた大王は玉座を立つ。

「よかろう!私が見てやるので案内いたせ!」

満面の笑みの大王を、亜父は苦虫をつぶしたような顔で見る。

「こちらでございます!」

カマキリが案内したその先には、見事な葦毛のクイが繋がれていた。

3mはあろう、その羽の色は白く光り、何処までも走り飛べそうな姿は神鳥を思わせる。

「これは素晴らしい…!」

そう呟くと、レッドキャップは部下が制止するのも聞かずに飛び乗る。

大暴れするクイをどうどう!といなし続け、ついにクイはおとなしくなる。

「これは…これはすごいぞ!これほど素晴らしいクイにははじめて逢った!」

「ピット殿、有難く受け取るぞ!」

「今日からお前の名前は『騅』だ!宜しく頼むぞ!」

大王は上機嫌だ。

「大王様、とても素晴らしい鳥に巡り合えましたな」

そう話しながら1匹のイタチが現れた。

「おお、留侯殿も来ておったか!」

「はい、私も噂のピット殿がこちらへ挨拶に来ると聞きまして」
「どのような方かと気になり伺わせて頂きました」

「そうであったか!私はこのウサギを気に入ったぞ!」

既にピットを殺す気持ちを忘れてしまっているレッドキャップ。

隣で聞いていた亜父が皆に話す。
「皆様、ここで立ち話も何ですし」
「宴席を設けておりますので、続きはそちらの方で行いましょう」

「おぉ、そうだった」
「今日はピット殿との記念すべき出会いに盛り上がろうぞ!」

こうして、「鴻門の間」によってピットたちの歓迎の宴が開かれることとなった。
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