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第一章 前編

第3話 隣町タンパ

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 ここエルモから隣町タンパまではそう遠くない上、道も複雑じゃない。それに中間地点には現在地がしるされた案内板があるくらいだ、迷うなんてことはまずない。

 そうこうしてるうちに早くも中間地点へたどり着いた。
 ベンチで少し休憩をとることにした私は、バッグから飲み物を取り出した。冷たい飲み物、澄んだ風、そしてこの汗も気持ちよく感じられた。
 タオルで汗を拭き取り、念のため案内板に目を通してから私は再びタンパに向けて出発した。
 
 タンパは採掘事業を成り合いとしてる村だ。エルモでは通称隣町でその名が通っている。
 採掘されるその8割が石炭で、それを火にかけコークスと呼ばれる燃料を作り出している。
 コークスは冬の暖房、調理コンロ、お風呂を沸かす燃料として使われるため生活の必需品となっている。
 そのため、さぞかし儲けていきそうなものだが、王都のバルセルラがそんなおいしい話を放っておく訳もなく、稼ぎの半分は税金として納めるようタンパに要請しているらしい。
 なので村長達は躍起になって自分達の村だけじゃなく外からも鉱員達を呼び込み、明くる日も明くる日もせっせと炭鉱を掘り続けている。
 うちのポストにも年に何回か募集のチラシが送られてくる。お父さんが1度応募したことがあったが、お金はいいが本当に重労働らしく、二度とやりたくないと愚痴をこぼしていたのを覚えてる。

 タンパの町並はエルモとは違い自然は極力排除されており、地面は除草対策の砂利が敷き詰められているが、鉱員が泥の付いた履物で町中を歩き回るため、一面に広がる砂利も所々泥がこびれついており、お世辞にも綺麗な町並みとは言えない。加えて町歩く人も採掘帰りなのか、汚れが落ちないのか、泥んこの付いた服をきてる人をよく見かける。



 ようやく町につくと町の中は妙にざわついている。この前に訪れた時とは明らかに違っていた。

 「なんだろあの人だかり?」
 私は不思議に思いながらも、目的である薬屋を探すことにした。
 町を歩いていると一際大きな声が耳に入った。

 「あーなんだって言うんだよ。これじゃあたしの計画が台無しじゃないか」
 後ろの通りにいた3人組の人が何か嘆いているようだ。手に持ってる道具から察するに大道芸の人達かな。

 「気を落とさないでジョセちゃん、タイミング少し悪かったのよ」
 もう一人の女性が嘆く彼女を励ました。
 
 「よしやるだけやってやるかー、いくぞポルン」

 「ポポーン」
 3人目の大男がおかしな雄叫びをあげると3人組はどこかへ行ってしまった。

 事情はわからないけど上手くといいな、私はそう願いをこめ薬屋を見つけると店内へと入った。

 「いらっしゃい」

 「あのこれください」
 お母さんからもらったメモ書きを店員にわたす。

 「はいはい、ちょっと待っててね」
 お店の人はお婆さんで腰が曲がっており、明らかにお父さんより悪いように思えた。
 杖をつきながら棚から棚へと覗きこみ、塗り薬を見つけ戻ってきた。

 「はいお代は800ミラだよ」 
 私は母から預かった財布を取り出し代金を支払う。その際、お婆さんと目があったので思いきって疑問をぶつけてみた。

 「あの、町でなにかあったんですか?」
 その質問に驚いたような表情をするお婆さんであったが、直ぐに質問の意図を理解したのか口を開いた。
 
 「あーアレね。みんな掲示板に群がってるのさ。なんでも竜をみかけたとかそんな記事だったね」

 「竜ですか?」
 
 「あんたも伝承には聞いたことあるだろ?その竜を政府が写真におさめたとかで、騒ぎになってたけどうさん臭いもんさ」
 おばぁさんは椅子に腰をおろし話を続ける。
 「きっと政府が関心をあつめるためにやったに違いない。最近は失態をさらしてばかりで、国民からの信用もないからね」

 竜……確かに昔、龍がいたという話は母から聞いたことがある。でもそんなのは都市伝説や、おとぎ話の世界だけだと私は思っていた。
 私が口に手をあて考えていると、お婆さんが私に言った。「興味があるなら掲示板に寄ってみるといい」

 「そうしてみます。ありがとうございました」
 私は一礼をしてから店を出て、町の中央にある掲示板へ向かう事にした。

 人だかりは収まる事を知らず、さっきよりさらに人が集まったように感じる。

 「ほらほら皆さん世にも珍しいものだよ」
 あっ視線を真横に向けるとさっきの人達がいた。人を集めていたのはこの人達だったんだ。 

 掲示板の記事を確認したら、少し覗いてみるのもいいかもしれない。そうしよう。
 私はその人ごみをかきわけなんとか記事が見えた。
 人込みにもまれながらで記事をしっかりと読むことはできなかったが、写真に写った竜の姿はちゃんと見ることができた。
 どうやら王都バルセルラ近くで目撃されたというのだ。
 真実かどうかはわからないけど、竜の写真をみた時、なぜだか懐かしいという感覚を覚えた。
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