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第二章
第36話 ニベラさんから託されたもの
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朝の8時に起き、私達は村長さんから軽いパンの朝食を頂いた。
朝食時にはセドリック村長の奥さんも目を覚ましており、食後に奥さんの部屋を3人で訪れ、村長さんに私達の紹介をしてもらった。
「おはようニベラ、よく眠れたかい?」
セドリック村長が奥さんに言うと奥さんのニベラさんは、紅茶を飲みながら窓から見えるグレースの花壇に植えられた美しい花々を鑑賞していた。
「ええあなた、今日も気持ちのいい朝ですね」
「君に紹介したい人達がいるんだ。アサさんにカイトさん。それと驚かないほしいんだが竜のリップ君だ」
「あら珍しいお客さんだこと」
おばさんはくすりと笑い言ったが、リップを見てもそこまでびっくりする様子はなかった。
「昨日こちらの村にきたばかりで、村長さんのはからいで昨日は泊めて頂いたんです」
私はお礼をし頭を下げた。
「そうですか、グレースを気に入ってもらえたのなら、どなたでも歓迎致しますよ」
「おばあちゃんアサ姉ちゃんがアイリスの花を見つけてくれるんだって」
メイちゃんもおばさんの部屋に入ってきて、ベッドをよじ登りおばさんの腕を掴んで言った。
「メイちゃんったら何を言ってるの?アイリスの花はあなたにあげたのが最後の一輪なのよ」
「おばあちゃんのしおりは今アサ姉ちゃんが持ってるよ」
どうやら昨日メイちゃんから借りたしおりは、おばさんがメイちゃんのために作ったものだったみたい。
「メイちゃんからしおりをお借りしてます。
この花の香りを頼りにすればもしかしたらとアイリスの花を見つけることが出来るかもしれません。うちのリップの鼻は利きますからアイリスあれば必ず嗅ぎつけることが出来るはずです」
その言葉におばさんは黙ったまま、私が本気なのかを見定めるように瞳の奥をそっと覗き込んだ。そして超茶を一口飲んでから私に言った。
「あなたの言葉を本当に信じていいものか、今の私には分かりません。
でもあなたが私にもう一度夢を見させてくれるというのならば、私はあなたに賭けてみましょう。そのしおりを私に」
しおりをおばさんに手渡すと、おばさんはペン立てからハサミを取り出し、しおりの上のビニール部分を切り取り、白い紙の上にしおりを何度か叩きつけ押し花を取り出そうとした。
アイリスの押し花は途中で折れてしまい粉々に崩れてしまった。
「あーおばあちゃんから貰ったしおりが」
メイちゃんは、大切にしていたしおりが壊れてしまって深く悲しんだが、おばあちゃんはすぐにメイちゃんを励まして言った。
「大丈夫よ。アサお姉ちゃんがアイリスの花を見つけてくれたら、すぐにまた作ってあげるから」
おばさんはこうなることがはじめから分かってて、自らその役を買ってでたように私には思えた。
「アサさんあなたにこれを預けるわ」
私はおばさんから紙に包まれたアイリスの欠片を受け取った。
「そろそろ行くかアサ」
カイトにそう言われ私は「そうね」と返事を返し部屋を跡にした。
「村長コートを貸して頂けますか?」
「勿論どうぞ、山頂は冷えますので自由にお使いください」
村長に手袋、コート、長靴と一式を借りて、私はおばさんから受け取ったアイリスの包み紙を開いた。
外ではアイリス欠片が風に飛ばされしまう恐れがあってので建物の中でリップにアイリスの香りを覚えてもらった。
「クワァークワァー」
リップが香り覚えると私も鼻を近づけてアイリスの香りをかいでみると、仄かな花の良い香りがした。
玄関の扉を開けると村長が私達を引き止めるように言った。
「アサさん、カイトさん私達は今でも十分幸せだと思っています、このグレースの花々に囲まれて。
ですからもしアイリスを見つけられなくてもガッカリしないで、また笑顔で帰って来てください。ニベラもメイもアイリスがなくてもあなた方を歓迎してくれますよ」
「セドリック村長ありがとうございます。でもまだ諦めないであげて下さい。可能性はまだ0%じゃありませんから」
私そう言い残し玄関の扉を閉めると、もう一度近くの山にアイリスの花を探しにリップの背中にまたがって飛びだった。
朝食時にはセドリック村長の奥さんも目を覚ましており、食後に奥さんの部屋を3人で訪れ、村長さんに私達の紹介をしてもらった。
「おはようニベラ、よく眠れたかい?」
セドリック村長が奥さんに言うと奥さんのニベラさんは、紅茶を飲みながら窓から見えるグレースの花壇に植えられた美しい花々を鑑賞していた。
「ええあなた、今日も気持ちのいい朝ですね」
「君に紹介したい人達がいるんだ。アサさんにカイトさん。それと驚かないほしいんだが竜のリップ君だ」
「あら珍しいお客さんだこと」
おばさんはくすりと笑い言ったが、リップを見てもそこまでびっくりする様子はなかった。
「昨日こちらの村にきたばかりで、村長さんのはからいで昨日は泊めて頂いたんです」
私はお礼をし頭を下げた。
「そうですか、グレースを気に入ってもらえたのなら、どなたでも歓迎致しますよ」
「おばあちゃんアサ姉ちゃんがアイリスの花を見つけてくれるんだって」
メイちゃんもおばさんの部屋に入ってきて、ベッドをよじ登りおばさんの腕を掴んで言った。
「メイちゃんったら何を言ってるの?アイリスの花はあなたにあげたのが最後の一輪なのよ」
「おばあちゃんのしおりは今アサ姉ちゃんが持ってるよ」
どうやら昨日メイちゃんから借りたしおりは、おばさんがメイちゃんのために作ったものだったみたい。
「メイちゃんからしおりをお借りしてます。
この花の香りを頼りにすればもしかしたらとアイリスの花を見つけることが出来るかもしれません。うちのリップの鼻は利きますからアイリスあれば必ず嗅ぎつけることが出来るはずです」
その言葉におばさんは黙ったまま、私が本気なのかを見定めるように瞳の奥をそっと覗き込んだ。そして超茶を一口飲んでから私に言った。
「あなたの言葉を本当に信じていいものか、今の私には分かりません。
でもあなたが私にもう一度夢を見させてくれるというのならば、私はあなたに賭けてみましょう。そのしおりを私に」
しおりをおばさんに手渡すと、おばさんはペン立てからハサミを取り出し、しおりの上のビニール部分を切り取り、白い紙の上にしおりを何度か叩きつけ押し花を取り出そうとした。
アイリスの押し花は途中で折れてしまい粉々に崩れてしまった。
「あーおばあちゃんから貰ったしおりが」
メイちゃんは、大切にしていたしおりが壊れてしまって深く悲しんだが、おばあちゃんはすぐにメイちゃんを励まして言った。
「大丈夫よ。アサお姉ちゃんがアイリスの花を見つけてくれたら、すぐにまた作ってあげるから」
おばさんはこうなることがはじめから分かってて、自らその役を買ってでたように私には思えた。
「アサさんあなたにこれを預けるわ」
私はおばさんから紙に包まれたアイリスの欠片を受け取った。
「そろそろ行くかアサ」
カイトにそう言われ私は「そうね」と返事を返し部屋を跡にした。
「村長コートを貸して頂けますか?」
「勿論どうぞ、山頂は冷えますので自由にお使いください」
村長に手袋、コート、長靴と一式を借りて、私はおばさんから受け取ったアイリスの包み紙を開いた。
外ではアイリス欠片が風に飛ばされしまう恐れがあってので建物の中でリップにアイリスの香りを覚えてもらった。
「クワァークワァー」
リップが香り覚えると私も鼻を近づけてアイリスの香りをかいでみると、仄かな花の良い香りがした。
玄関の扉を開けると村長が私達を引き止めるように言った。
「アサさん、カイトさん私達は今でも十分幸せだと思っています、このグレースの花々に囲まれて。
ですからもしアイリスを見つけられなくてもガッカリしないで、また笑顔で帰って来てください。ニベラもメイもアイリスがなくてもあなた方を歓迎してくれますよ」
「セドリック村長ありがとうございます。でもまだ諦めないであげて下さい。可能性はまだ0%じゃありませんから」
私そう言い残し玄関の扉を閉めると、もう一度近くの山にアイリスの花を探しにリップの背中にまたがって飛びだった。
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