53 / 102
第一章 後編
第52話 目覚めの時
しおりを挟む
私は宙を落ち行く中で既に気を失っていた。それでも掴んだ手にはリップがしっかりしがみついており、私と離れ離れにならないようリップは最後の力を振り絞り、私の腕をはってリュックの中へと入り込んだ。
私達の落ち行く下には十字運河が流れており、大きなしぶきをあげ着水した。
川に落ちた者は私たちだけじゃない、依然空をとんでいた竜が衝撃から身を守るために次々と川へと飛び込んできた。
体が沈みこむ中、リップがリュックから出て必死に私を水面へと運ぼうとする。サイレンの音も水の中ではいくらか軽減され、リップは体を自由に動かせた。
しかし他の竜たちが落ちるたびに川は荒波をつくり、小さなリップの体は流れに逆らえず、とうとう私たちは離ればなれになってしまった。
私は他の竜たちと共に、どこまでも深く沈んでいった、どこかにいざなわれるかのように。
そして川の底につくと、暗闇の意識の中で、私の名を呼ぶ声が聞こえてくる。それは女性の声でとても温かい。
「アサ、アサ」
何度も体を揺さぶられているようで、私が目を開くと、そこは部屋の一室で壁一面は真っ白で、私はベッドに横たわっていた。
体を起こし部屋を見渡すも誰もいる様子はない。
私の知らない場所、でも私は不思議と自分がそこにいることに疑問を持たなかった。まるで毎朝そこで目覚めているかのように。私の知らない記憶の断片なのか?
私は扉を開き部屋の外にでて廊下をはさみ広いロビーにでると、そこには大勢の竜達が私にひれ伏していた。
「なんで私に?」
すると背後から私の肩に手がかかり声が聞こえてきた。
「アサこれがあなたの本来目にする姿なのです」
私はすぐに後ろを振り返ったが、そこには誰もいない。私がもう一度竜達をみるとそこは青い世界、十字運河の底だった。
底に流れついた竜たちは体を縮こませ、まるで私にひれ伏しているようにみえた。
「これが私の本当の世界……」
その言葉を口した直後に、沢山の記憶が私の中に一斉に流れこんできた。物凄い量を駆け巡る記憶に頭がはちきれんばかりに痛む。しかしそれも一瞬の出来事で私はここ(記憶の白い世界)がどこなのかを思い出した。
「アサ全てを思い出したようね」
また女性の声がきこえてきたが依然姿はみえない。
「モニカおいでなさい。あなたのイヤリングをアサに」
モニカと呼ばれそこに現れたのはリップだった。
リップはイヤリングを外し、私の腕の中に飛び込んだ。
「そのイヤリングと共にモニカをこの世界に送ったのはこの私なのです。あなたを迎えいれるために」
「なら、あなたが私の本当の母親なのですか?それなら姿を見せてくだい」
「今のままではそれは叶いません。竜王様に認めてもらわなければ、約束の時間まであとわずかです。アサ急ぎなさい。そのイヤリングを身に付ければ本来のあなたの力を取り戻せるはずです」
私はイヤリングを見つめはしばし考えこんだ。するとお母さんが言った。
「大丈夫、まだ選択の時ではありません、今はあなたのためにその力を使いなさい」
その言葉を受け、私はリップからイヤリング受け取ろうしたがリップは私にイヤリングを渡すのを拒んだ。
そして寂しい顔をして私の名前を言った。
「アサ」
「リップ心配しないで、私が私じゃなくなる訳じゃない。リップにはまた会えるから」
「うん、待ってる」
リップが母から託されたイヤリングを私に手渡した。
「ありがとうリップ」
私はリップを抱きしめ感謝を述べ、受け取ったイヤリングを左耳に取り付けた。
そのイヤリングはどこまでも赤く、川の中にいても決して色あせることなく、赤く輝き続けた。
そして十字運河を切り裂き、バルセルラ上空に大きな赤い竜が降り立った。
私達の落ち行く下には十字運河が流れており、大きなしぶきをあげ着水した。
川に落ちた者は私たちだけじゃない、依然空をとんでいた竜が衝撃から身を守るために次々と川へと飛び込んできた。
体が沈みこむ中、リップがリュックから出て必死に私を水面へと運ぼうとする。サイレンの音も水の中ではいくらか軽減され、リップは体を自由に動かせた。
しかし他の竜たちが落ちるたびに川は荒波をつくり、小さなリップの体は流れに逆らえず、とうとう私たちは離ればなれになってしまった。
私は他の竜たちと共に、どこまでも深く沈んでいった、どこかにいざなわれるかのように。
そして川の底につくと、暗闇の意識の中で、私の名を呼ぶ声が聞こえてくる。それは女性の声でとても温かい。
「アサ、アサ」
何度も体を揺さぶられているようで、私が目を開くと、そこは部屋の一室で壁一面は真っ白で、私はベッドに横たわっていた。
体を起こし部屋を見渡すも誰もいる様子はない。
私の知らない場所、でも私は不思議と自分がそこにいることに疑問を持たなかった。まるで毎朝そこで目覚めているかのように。私の知らない記憶の断片なのか?
私は扉を開き部屋の外にでて廊下をはさみ広いロビーにでると、そこには大勢の竜達が私にひれ伏していた。
「なんで私に?」
すると背後から私の肩に手がかかり声が聞こえてきた。
「アサこれがあなたの本来目にする姿なのです」
私はすぐに後ろを振り返ったが、そこには誰もいない。私がもう一度竜達をみるとそこは青い世界、十字運河の底だった。
底に流れついた竜たちは体を縮こませ、まるで私にひれ伏しているようにみえた。
「これが私の本当の世界……」
その言葉を口した直後に、沢山の記憶が私の中に一斉に流れこんできた。物凄い量を駆け巡る記憶に頭がはちきれんばかりに痛む。しかしそれも一瞬の出来事で私はここ(記憶の白い世界)がどこなのかを思い出した。
「アサ全てを思い出したようね」
また女性の声がきこえてきたが依然姿はみえない。
「モニカおいでなさい。あなたのイヤリングをアサに」
モニカと呼ばれそこに現れたのはリップだった。
リップはイヤリングを外し、私の腕の中に飛び込んだ。
「そのイヤリングと共にモニカをこの世界に送ったのはこの私なのです。あなたを迎えいれるために」
「なら、あなたが私の本当の母親なのですか?それなら姿を見せてくだい」
「今のままではそれは叶いません。竜王様に認めてもらわなければ、約束の時間まであとわずかです。アサ急ぎなさい。そのイヤリングを身に付ければ本来のあなたの力を取り戻せるはずです」
私はイヤリングを見つめはしばし考えこんだ。するとお母さんが言った。
「大丈夫、まだ選択の時ではありません、今はあなたのためにその力を使いなさい」
その言葉を受け、私はリップからイヤリング受け取ろうしたがリップは私にイヤリングを渡すのを拒んだ。
そして寂しい顔をして私の名前を言った。
「アサ」
「リップ心配しないで、私が私じゃなくなる訳じゃない。リップにはまた会えるから」
「うん、待ってる」
リップが母から託されたイヤリングを私に手渡した。
「ありがとうリップ」
私はリップを抱きしめ感謝を述べ、受け取ったイヤリングを左耳に取り付けた。
そのイヤリングはどこまでも赤く、川の中にいても決して色あせることなく、赤く輝き続けた。
そして十字運河を切り裂き、バルセルラ上空に大きな赤い竜が降り立った。
0
お気に入りに追加
28
あなたにおすすめの小説
RiCE CAkE ODySSEy
心絵マシテ
ファンタジー
月舘萌知には、決して誰にも知られてならない秘密がある。
それは、魔術師の家系生まれであることと魔力を有する身でありながらも魔術師としての才覚がまったくないという、ちょっぴり残念な秘密。
特別な事情もあいまって学生生活という日常すらどこか危うく、周囲との交友関係を上手くきずけない。
そんな日々を悶々と過ごす彼女だが、ある事がきっかけで窮地に立たされてしまう。
間一髪のところで救ってくれたのは、現役の学生アイドルであり憧れのクラスメイト、小鳩篠。
そのことで夢見心地になる萌知に篠は自身の正体を打ち明かす。
【魔道具の天秤を使い、この世界の裏に存在する隠世に行って欲しい】
そう、仄めかす篠に萌知は首を横に振るう。
しかし、一度動きだした運命の輪は止まらず、篠を守ろうとした彼女は凶弾に倒れてしまう。
起動した天秤の力により隠世に飛ばされ、記憶の大半を失ってしまった萌知。
右も左も分からない絶望的な状況化であるも突如、魔法の開花に至る。
魔術師としてではなく魔導士としての覚醒。
記憶と帰路を探す為、少女の旅程冒険譚が今、開幕する。
白紙の冒険譚 ~パーティーに裏切られた底辺冒険者は魔界から逃げてきた最弱魔王と共に成り上がる~
草乃葉オウル
ファンタジー
誰もが自分の魔法を記した魔本を持っている世界。
無能の証明である『白紙の魔本』を持つ冒険者エンデは、生活のため報酬の良い魔境調査のパーティーに参加するも、そこで捨て駒のように扱われ命の危機に晒される。
死の直前、彼を助けたのは今にも命が尽きようかという竜だった。
竜は残った命を魔力に変えてエンデの魔本に呪文を記す。
ただ一つ、『白紙の魔本』を持つ魔王の少女を守ることを条件に……。
エンデは竜の魔法と意思を受け継ぎ、覇権を争う他の魔王や迫りくる勇者に立ち向かう。
やがて二人のもとには仲間が集まり、世界にとって見逃せない存在へと成長していく。
これは種族は違えど不遇の人生を送ってきた二人の空白を埋める物語!
※完結済みの自作『PASTEL POISON ~パーティに毒の池に沈められた男、Sランクモンスターに転生し魔王少女とダンジョンで暮らす~』に多くの新要素を加えストーリーを再構成したフルリメイク作品です。本編は最初からすべて新規書き下ろしなので、前作を知ってる人も知らない人も楽しめます!
男装の皇族姫
shishamo346
ファンタジー
辺境の食糧庫と呼ばれる領地の領主の息子として誕生したアーサーは、実の父、平民の義母、腹違いの義兄と義妹に嫌われていた。
領地では、妖精憑きを嫌う文化があるため、妖精憑きに愛されるアーサーは、領地民からも嫌われていた。
しかし、領地の借金返済のために、アーサーの母は持参金をもって嫁ぎ、アーサーを次期領主とすることを母の生家である男爵家と契約で約束させられていた。
だが、誕生したアーサーは女の子であった。帝国では、跡継ぎは男のみ。そのため、アーサーは男として育てられた。
そして、十年に一度、王都で行われる舞踏会で、アーサーの復讐劇が始まることとなる。
なろうで妖精憑きシリーズの一つとして書いていたものをこちらで投稿しました。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
異世界でのんびり暮らしたいけど、なかなか難しいです。
kakuyuki
ファンタジー
交通事故で死んでしまった、三日月 桜(みかづき さくら)は、何故か異世界に行くことになる。
桜は、目立たず生きることを決意したが・・・
初めての投稿なのでよろしくお願いします。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
異世界着ぐるみ転生
こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生
どこにでもいる、普通のOLだった。
会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。
ある日気が付くと、森の中だった。
誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ!
自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。
幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り!
冒険者?そんな怖い事はしません!
目指せ、自給自足!
*小説家になろう様でも掲載中です
二度も親を失った俺は、今日も最強を目指す
SO/N
ファンタジー
主人公、ウルスはあるどこにでもある小さな町で、両親や幼馴染と平和に過ごしていた。
だがある日、町は襲われ、命からがら逃げたウルスは突如、前世の記憶を思い出す。
前世の記憶を思い出したウルスは、自分を拾ってくれた人類最強の英雄・グラン=ローレスに業を教わり、妹弟子のミルとともに日々修行に明け暮れた。
そして数年後、ウルスとミルはある理由から魔導学院へ入学する。そこでは天真爛漫なローナ・能天気なニイダ・元幼馴染のライナ・謎多き少女フィーリィアなど、様々な人物と出会いと再会を果たす。
二度も全てを失ったウルスは、それでも何かを守るために戦う。
たとえそれが間違いでも、意味が無くても。
誰かを守る……そのために。
【???????????????】
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
*この小説は「小説家になろう」で投稿されている『二度も親を失った俺は、今日も最強を目指す』とほぼ同じ物です。こちらは不定期投稿になりますが、基本的に「小説家になろう」で投稿された部分まで投稿する予定です。
また、現在カクヨム・ノベルアップ+でも活動しております。
各サイトによる、内容の差異はほとんどありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる