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第一章 後編
第44話 軍艦を追え
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スタート地点であるルヴィーさんの部屋は、軍事棟の4階に位置している。飛行場はその下の階なので、一見するとすぐそばだと思われがちだがそんなことは全然ない。
各フロアは例外を除きその殆んどが構造自体は同じである。飛行場はルヴィーさんの部屋とは真逆のいりくんだ道の先にある。
幸運は何度も続かないということだろう。それでも私が同じ軍事棟のルヴィーさんの部屋に捕まっていたことは不幸中の幸いであった。
「階段を先に降りよう」
カイトが私に階段を先に降りるようすすめた。それには理由があって各フロアには2ヶ所しか階段が用意さらていない。そこを兵隊に押さえられると大変なので、追っ手がきてない今の内に降りてしまおうということだ。
でも階段を降りる時も油断をしてはいけなかった。知らず知らずの内に監視カメラが私達を捉えており、三階のフロアを走っている時には、赤い光りと共に警報音を鳴らし、通路にはミハエルさんの放送が流れてきた。
「脱走者を発見。軍事棟三階b通路を西に進行中、警備兵は速やかに向かって下さい」
走っている時リップが静かなことに気付きリュックに目線を送るとリップが苦しげに頭を抱えていた。
「リップどうしたの苦しいの?」
リップは私に言葉を返すことさえできないでいた。
「さっきもだったんだ。どうやらこの警報音が苦手らしい」
リップのことは私が一番詳しいと思っていたが、まさかカイトにリップのことを教えて貰うなんて夢にも思わなかった。
「リップ自分の耳押さえられる?」
リップは短い腕でなんとか自分の耳を押さえた。すると安堵の表情を浮かべたので私は安心した。
これで心起きなく走れると思ったが、前を走るカイトの背中を見たときに、なんだか急に彼に対して申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
私はそれをカイトに言うまいか悩んだが、もし私達が捕まってしまえば、もうこの気持ちを伝える機会はないかもしれないと思い、カイトに伝えることにした。
「カイトあなたにこんなことをさせてしまって本当にごめんなさい」
「なんだよ今更」
私の悲しげな顔をみてカイトは明るく振る舞った。
「でもカイトは軍人じゃない?その、大切な居場所をなくすようなことになってしまって、本当に申し訳なく思うの」
「気にするな、俺が勝手に足を突っ込んだことだ。お前が気を悪くすることはない。それになアサ、俺は今嬉しいんだよ」
「え?」
私はその言葉に一瞬足を止めてしまったことで、カイトと手を繋いでいたために転びそうになった。
でもカイトが足を緩め、倒れそうになった私の腕を引っ張ってくれて、私は転ばずに済んだ。
カイトはその事には一切触れず会話を進めた。
「俺は今まで命令で言われるままにしか動いてこなかった。それが悪だとは思わないが、今では自分の意思で行動を選択出来ていることが嬉しいんだよ」
カイトの言葉をきいて、私はこの旅に出掛け始めた時に感じたワクワクした気持ちを思い出した。カイトは今その感覚を噛み締めているかなと思った。
レールを外れることで初めて気付けることもある。見えない道を歩くために、必死にもがき考え、そこに信念や自身の価値観が育まれると私は思った。
「俺って軍人として失格かな?」
カイトは笑いながらそう言ったが、その表情にはどことなく切なさを感じた。
私も悲しんでたんじゃカイトが報われないと思い、私はカイトに励ましの言葉を送った。
「そうかもね。でもそれって人としてとても魅力的なことだと思う。カイト、本当にありがとう」
「おう」
カイトはいつものように1つ返事でそう返したが今度の「おう」は何一つ可笑しく思えなかった。むしろ彼の器の大きさをまがまがと私に感じさせた。
私達が走り行く姿はモニターを通して全てルヴィーさんに見られていた。
「警備兵は一体何をしとるか」
バルバロスさんが机を叩き、苛立ちを隠せずにいた。
「不出来のお留守番要員ならこんな働きだろうよ」
ルヴィーさんが蔑むように言った。
「全く情けない奴らだ」
それでもバルバロスさんは納得いかないご様子。
「逃走者が極悪人だと思って怯えているのかもね」
モニターに王様が直々に兵隊に指示を出す姿が見えた。
「陛下が指揮をとっている。事情を知ってる陛下ならことは早く進むだろう」
「陛下に言われてからでは遅いのだ、それより奴らは一体どこを目指しているのだ」
ルヴィーさんはその答えを知っていたので、バルバロスさんに向けぼそりとこたえた。
「私の元だよ」
「なんだと」
てっきり逃走をはかってると思っていたバルバロスさんは驚いて言った。
対照的にルヴィーさんは全てを悟っているかのような表情を浮かばせ、誰にも聞こえないような声で呟いた。
「アサ、お前はどうやら全てを守れる気でいるようだな。しかし二頭を追う者は一頭得ずということを知っておくべきだ」
「発進準備完了致しました。いつでもいけます」
ミハエルさんがルヴィーさんにシステムチェックが完了したことを告げた。
そしてルヴィーさんがミハエルさんに指示を告げる。
「そのまま一時待機、奴らをぎりぎりまで引き付ける」
「どうするつもりだルヴィー?」
バルバロスさんが不思議そうにルヴィーさんに聞いた。
「軍用飛行場は行き止まりの一本道、奴らを袋小路誘い込む」
「流石はルヴィー、頭が回るな」
バルバロスさんが関心するように言った。
「ミハエル!!」
「はい」
ミハエルさんは大きな声で呼ばれたので、また怒られるのではないかと背筋を伸ばし、内心ドキドキとさせた。
「私の合図で発進する。いつでもいけるように準備しておけ」
「了解であります」
しかしそれは取り越し苦労で、ミハエルさんはルヴィーさんに最大限、応えられるよう務める決意を固めた。
「艦がまだある、なんとか間に合ったか」
私達はようやく飛行場に辿りついた。
「カイト後ろから兵隊が追ってきてる」
カイトに追っ手がきてることを知らせ、私達はとにかく艦を目指して走った。
二人が飛行場に、辿りついたことを確認するとルヴィーさんはミハエルさんに言った。
「よし、ミハエル!!コード断線、艦を発進させる」
「コード断線、リンドセル号これより発進します」
ミハエルさんが船に繋がれたコードを全て外し、リンドセル号を前進させた。
私達は艦が飛び立つ姿をみて焦った。
「艦が動き出しちまったぞ」
「とにかくいける所まで行きましょう。まだ追い付けるかもしれない」
私は最悪艦に飛び乗る覚悟も決めていたが艦のスピードは想像以上に早く、あっという間に私達を置いて、上空に上っていってしまった。
私達はついには飛行場の終着点まできてしまい、追っ手の兵隊が私達の目の前にまで押し寄せてきた。
その中には王様の姿もあり、王様は兵隊を払いのけ先頭に出てきた。
私達は手をあげ自分達が無抵抗であることを示した。
すると王様が私の手引きしたものがカイトだと気付き驚愕した。
「カイトお前帰って来てたのか?まさか貴様が裏切り者だったとはな、あれだけ目をかけてやったというのに」
王様はカイトに拳銃をむけて言った。
「国王陛下私は裏切りなどしてはおりません。陛下ならアサの話をきいて頂けたらお分かりになるはずです」
「ええい黙れ、私の意思に反した時点でそれは裏切りなのだ。軍人は個人の判断で動くものではない」
カイトは王様になら分かって貰えると僅かながら希望を抱いていたが、それはものの見事に打ち砕かれた。
「アサ投降しよう、俺達は出来るだけのことをしたんだ」
カイトが戦意を喪失したかのようにか細い声で言った。
でも私はまだ諦めていなかった。
「カイト諦めないでまだ道はある」
アサの目を見つめるとまだ希望はあると言わんばかりに目を輝かせていた。
そして俺に手を差し出していうのだ。
「カイト私を信じて」
若い頃にありがちな、ありふれた根拠のない自信かもしれない。
でも俺にとってそれが正解か不正解かなど些細な問題でしかなかった。だからこそその選択に迷いはなかった。
俺は彼女の手を強く掴んだ。この中で俺だけは彼女の味方でいたかったんだ。
アサは自分を信じてくれた事を嬉しく思ったのか一瞬微笑むと眉を閉じた。俺もそれにならい目を閉じアサに体を委ねた。
次の瞬間アサが俺の手を引っ張り俺達の体は宙に投げ出されてしまった。
これはどう考えても無謀な賭けだ。城の3階から落ちて助かる見込みなど殆ど無かった。
俺の心配をよそに、瞳を閉じた暗闇の中でアサの叫び声が聞こえてきた。
「リップおねがい!!」
すると目を閉じた中でも温かな光を感じることが出来た。俺は不思議な力で体が浮いているのではないかと思い目を開いてみた。しかし全然そんなことはなく絶賛落下中であった。
目を開いて分かったことといえば、頭の重さから頭を下に向け落下していたことぐらいだ。
俺は恐怖からまた目を閉じることになるのだが、その時には体に何かが当たる感触がした。それからのことは自分でもあまりよく覚えていない。
ものすごい衝撃とともにアサが「しがみついて」と言ったのでがむしゃらに体に力を込めた。
目を開くとそこはあの時の大きな龍の背中の上だった。
「リィズさんありがとうございます。必ず来てくれると信じていました」
「まったく無茶なことをする。所で何故自分で助けを呼ばなかったのだ?もう使い方は分かっているだろうに」
「だって息子からのSOS方が急いで駆け付けてくれると思ったから」
「ははは、こずるいとこあるじゃないか」
俺には竜の言葉は分からなかったが、アサがあの龍と打ち解けていることは分かった。
アサには人を明るくさせる力がある。だからみんなアサに手を貸してくれるんだ。お前は太陽のような存在だよアサ。
リィズさんは上空に飛び立ち、飛行場にいた兵隊達が銃弾を撃ち込んできたが、王様がすぐに止めさせた。
「やめんか、カイトに当たったらどうする?」
「すみません」
兵隊がライフルを下ろし王様に謝った。
「後のことはルヴィー達に任せる他あるまい」
王様はそう言い残し、大勢の兵隊を引き連れ城に戻っていった。
各フロアは例外を除きその殆んどが構造自体は同じである。飛行場はルヴィーさんの部屋とは真逆のいりくんだ道の先にある。
幸運は何度も続かないということだろう。それでも私が同じ軍事棟のルヴィーさんの部屋に捕まっていたことは不幸中の幸いであった。
「階段を先に降りよう」
カイトが私に階段を先に降りるようすすめた。それには理由があって各フロアには2ヶ所しか階段が用意さらていない。そこを兵隊に押さえられると大変なので、追っ手がきてない今の内に降りてしまおうということだ。
でも階段を降りる時も油断をしてはいけなかった。知らず知らずの内に監視カメラが私達を捉えており、三階のフロアを走っている時には、赤い光りと共に警報音を鳴らし、通路にはミハエルさんの放送が流れてきた。
「脱走者を発見。軍事棟三階b通路を西に進行中、警備兵は速やかに向かって下さい」
走っている時リップが静かなことに気付きリュックに目線を送るとリップが苦しげに頭を抱えていた。
「リップどうしたの苦しいの?」
リップは私に言葉を返すことさえできないでいた。
「さっきもだったんだ。どうやらこの警報音が苦手らしい」
リップのことは私が一番詳しいと思っていたが、まさかカイトにリップのことを教えて貰うなんて夢にも思わなかった。
「リップ自分の耳押さえられる?」
リップは短い腕でなんとか自分の耳を押さえた。すると安堵の表情を浮かべたので私は安心した。
これで心起きなく走れると思ったが、前を走るカイトの背中を見たときに、なんだか急に彼に対して申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
私はそれをカイトに言うまいか悩んだが、もし私達が捕まってしまえば、もうこの気持ちを伝える機会はないかもしれないと思い、カイトに伝えることにした。
「カイトあなたにこんなことをさせてしまって本当にごめんなさい」
「なんだよ今更」
私の悲しげな顔をみてカイトは明るく振る舞った。
「でもカイトは軍人じゃない?その、大切な居場所をなくすようなことになってしまって、本当に申し訳なく思うの」
「気にするな、俺が勝手に足を突っ込んだことだ。お前が気を悪くすることはない。それになアサ、俺は今嬉しいんだよ」
「え?」
私はその言葉に一瞬足を止めてしまったことで、カイトと手を繋いでいたために転びそうになった。
でもカイトが足を緩め、倒れそうになった私の腕を引っ張ってくれて、私は転ばずに済んだ。
カイトはその事には一切触れず会話を進めた。
「俺は今まで命令で言われるままにしか動いてこなかった。それが悪だとは思わないが、今では自分の意思で行動を選択出来ていることが嬉しいんだよ」
カイトの言葉をきいて、私はこの旅に出掛け始めた時に感じたワクワクした気持ちを思い出した。カイトは今その感覚を噛み締めているかなと思った。
レールを外れることで初めて気付けることもある。見えない道を歩くために、必死にもがき考え、そこに信念や自身の価値観が育まれると私は思った。
「俺って軍人として失格かな?」
カイトは笑いながらそう言ったが、その表情にはどことなく切なさを感じた。
私も悲しんでたんじゃカイトが報われないと思い、私はカイトに励ましの言葉を送った。
「そうかもね。でもそれって人としてとても魅力的なことだと思う。カイト、本当にありがとう」
「おう」
カイトはいつものように1つ返事でそう返したが今度の「おう」は何一つ可笑しく思えなかった。むしろ彼の器の大きさをまがまがと私に感じさせた。
私達が走り行く姿はモニターを通して全てルヴィーさんに見られていた。
「警備兵は一体何をしとるか」
バルバロスさんが机を叩き、苛立ちを隠せずにいた。
「不出来のお留守番要員ならこんな働きだろうよ」
ルヴィーさんが蔑むように言った。
「全く情けない奴らだ」
それでもバルバロスさんは納得いかないご様子。
「逃走者が極悪人だと思って怯えているのかもね」
モニターに王様が直々に兵隊に指示を出す姿が見えた。
「陛下が指揮をとっている。事情を知ってる陛下ならことは早く進むだろう」
「陛下に言われてからでは遅いのだ、それより奴らは一体どこを目指しているのだ」
ルヴィーさんはその答えを知っていたので、バルバロスさんに向けぼそりとこたえた。
「私の元だよ」
「なんだと」
てっきり逃走をはかってると思っていたバルバロスさんは驚いて言った。
対照的にルヴィーさんは全てを悟っているかのような表情を浮かばせ、誰にも聞こえないような声で呟いた。
「アサ、お前はどうやら全てを守れる気でいるようだな。しかし二頭を追う者は一頭得ずということを知っておくべきだ」
「発進準備完了致しました。いつでもいけます」
ミハエルさんがルヴィーさんにシステムチェックが完了したことを告げた。
そしてルヴィーさんがミハエルさんに指示を告げる。
「そのまま一時待機、奴らをぎりぎりまで引き付ける」
「どうするつもりだルヴィー?」
バルバロスさんが不思議そうにルヴィーさんに聞いた。
「軍用飛行場は行き止まりの一本道、奴らを袋小路誘い込む」
「流石はルヴィー、頭が回るな」
バルバロスさんが関心するように言った。
「ミハエル!!」
「はい」
ミハエルさんは大きな声で呼ばれたので、また怒られるのではないかと背筋を伸ばし、内心ドキドキとさせた。
「私の合図で発進する。いつでもいけるように準備しておけ」
「了解であります」
しかしそれは取り越し苦労で、ミハエルさんはルヴィーさんに最大限、応えられるよう務める決意を固めた。
「艦がまだある、なんとか間に合ったか」
私達はようやく飛行場に辿りついた。
「カイト後ろから兵隊が追ってきてる」
カイトに追っ手がきてることを知らせ、私達はとにかく艦を目指して走った。
二人が飛行場に、辿りついたことを確認するとルヴィーさんはミハエルさんに言った。
「よし、ミハエル!!コード断線、艦を発進させる」
「コード断線、リンドセル号これより発進します」
ミハエルさんが船に繋がれたコードを全て外し、リンドセル号を前進させた。
私達は艦が飛び立つ姿をみて焦った。
「艦が動き出しちまったぞ」
「とにかくいける所まで行きましょう。まだ追い付けるかもしれない」
私は最悪艦に飛び乗る覚悟も決めていたが艦のスピードは想像以上に早く、あっという間に私達を置いて、上空に上っていってしまった。
私達はついには飛行場の終着点まできてしまい、追っ手の兵隊が私達の目の前にまで押し寄せてきた。
その中には王様の姿もあり、王様は兵隊を払いのけ先頭に出てきた。
私達は手をあげ自分達が無抵抗であることを示した。
すると王様が私の手引きしたものがカイトだと気付き驚愕した。
「カイトお前帰って来てたのか?まさか貴様が裏切り者だったとはな、あれだけ目をかけてやったというのに」
王様はカイトに拳銃をむけて言った。
「国王陛下私は裏切りなどしてはおりません。陛下ならアサの話をきいて頂けたらお分かりになるはずです」
「ええい黙れ、私の意思に反した時点でそれは裏切りなのだ。軍人は個人の判断で動くものではない」
カイトは王様になら分かって貰えると僅かながら希望を抱いていたが、それはものの見事に打ち砕かれた。
「アサ投降しよう、俺達は出来るだけのことをしたんだ」
カイトが戦意を喪失したかのようにか細い声で言った。
でも私はまだ諦めていなかった。
「カイト諦めないでまだ道はある」
アサの目を見つめるとまだ希望はあると言わんばかりに目を輝かせていた。
そして俺に手を差し出していうのだ。
「カイト私を信じて」
若い頃にありがちな、ありふれた根拠のない自信かもしれない。
でも俺にとってそれが正解か不正解かなど些細な問題でしかなかった。だからこそその選択に迷いはなかった。
俺は彼女の手を強く掴んだ。この中で俺だけは彼女の味方でいたかったんだ。
アサは自分を信じてくれた事を嬉しく思ったのか一瞬微笑むと眉を閉じた。俺もそれにならい目を閉じアサに体を委ねた。
次の瞬間アサが俺の手を引っ張り俺達の体は宙に投げ出されてしまった。
これはどう考えても無謀な賭けだ。城の3階から落ちて助かる見込みなど殆ど無かった。
俺の心配をよそに、瞳を閉じた暗闇の中でアサの叫び声が聞こえてきた。
「リップおねがい!!」
すると目を閉じた中でも温かな光を感じることが出来た。俺は不思議な力で体が浮いているのではないかと思い目を開いてみた。しかし全然そんなことはなく絶賛落下中であった。
目を開いて分かったことといえば、頭の重さから頭を下に向け落下していたことぐらいだ。
俺は恐怖からまた目を閉じることになるのだが、その時には体に何かが当たる感触がした。それからのことは自分でもあまりよく覚えていない。
ものすごい衝撃とともにアサが「しがみついて」と言ったのでがむしゃらに体に力を込めた。
目を開くとそこはあの時の大きな龍の背中の上だった。
「リィズさんありがとうございます。必ず来てくれると信じていました」
「まったく無茶なことをする。所で何故自分で助けを呼ばなかったのだ?もう使い方は分かっているだろうに」
「だって息子からのSOS方が急いで駆け付けてくれると思ったから」
「ははは、こずるいとこあるじゃないか」
俺には竜の言葉は分からなかったが、アサがあの龍と打ち解けていることは分かった。
アサには人を明るくさせる力がある。だからみんなアサに手を貸してくれるんだ。お前は太陽のような存在だよアサ。
リィズさんは上空に飛び立ち、飛行場にいた兵隊達が銃弾を撃ち込んできたが、王様がすぐに止めさせた。
「やめんか、カイトに当たったらどうする?」
「すみません」
兵隊がライフルを下ろし王様に謝った。
「後のことはルヴィー達に任せる他あるまい」
王様はそう言い残し、大勢の兵隊を引き連れ城に戻っていった。
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