22 / 102
第一章 前編
第21話 残された者達へ
しおりを挟む
私とリップは旅を再会させ、ジョセが言っていた山道へと足を踏み入れた。
先程とはうって変わって、登り傾斜がある道なので、荷物の重さも相まって、頬から汗が滴り落ちる。
ここの山はまだやさしい方だが、ルドワンの先の山脈は、これより傾斜があるのでジョセの言った通り、出来るだけ身軽な格好でないと通過は厳しいかもしれない。
少し休憩のつもりで、大木を背にもたれ私とリップは御飯を食べることにした。御飯といっても非常用の缶詰ではあるがルドワンに着くまでは我慢。
缶詰を食べ、お腹が膨れると眠気に襲れ気付けばそのまま眠ってしまった。
さすがに今夜は色々ありすぎて疲れてしまった。私は深い眠りについた。
夜はふけていたので数時間後には刻々と日がのぼりはじめ、私の家にも今日という朝を迎えようとしていた。それはいつもの朝とは違くて一家にとって大事件だったであろう。
始めに目を覚ましたのはお母さんだ。お父さんをベッドに残し、キッチンへと向かった。
お母さんは朝の支度があるのでいつも誰よりも早く起きる。
キッチンに向かう途中、お母さんは少し開いた扉を目にした。私の部屋だ。
「アサ起きてる?入るわよ。」
扉の隙間からお母さんが部屋を除き混むが、もちろんそこには誰もいるはずもない。
「もう出たのかしら?」
この時はまだ異変に気付く様子はなく、お母さんは一階へと降り、リビングを出てキッチンへ向かった。
リビングの机には手紙を置いてあったがお母さんは素通りしてしまった。
コンロの火つけ、いつものようにスープを煮立て時折味見をする。
味に満足いったようで鍋ごと持ち上げ、リビングへ向かった。
テーブルのなべじきにスープをおくとようやくお母さんの視線に便箋が目に入った。
「こんなものあったかしら?」
不思議そうに便箋を手に取り、裏返すと私の名前が書いてあり、送り主が私だと理解した。
「お父さん起きてちょうだい」
中身をみたお母さんが慌ててお父さんを起こした。
「どうした母さん」
お父さんは眠たい目を擦り、まだ事の重要さに気付いていない。
「アサがーー」
お母さんの緊迫な表情をみて、お父さんがはアサに何かあった事が分かった。
「これがテーブルにあってんです」
お父さんが手紙を受け取り中身をみて、ことの重大さを理解した。
「なんて事だ。アサの部屋を調べてみよう」
急いで私の部屋へといき、扉を開くとそこは物が散乱してまるで空き巣が入ったかのような光景が広がっていた。
「もしかしたら誘拐かもしれんな」
お父さんが部屋の状態からそう思うのも無理もないが、本当は私がただ散らかしたまま出て行っちゃっただけなんだけど。
「でもあれは確かにアサの字ですよ」
「脅されて書いたかもしれん」
「脅されて書いたとしたら、ここまで力強くは書けないでしょう」
そう言われお父さんは他に痕跡がないか部屋を見渡した。すると1つ目立つ赤い本を見つける。
それは竜の本だ。開いたまま落ちていた本を持ち上げ父母が目にしたのは、私宛の謎のメッセージだ。
「こんなもの一体どこで。アサがこれをみたということはもう私達のことを?」
お母さんが心配しきった顔でお父さんに聞き、お父さんは最悪のケースも考えお母さんには何も言えなかった。するとお母さん腰が抜けたように崩れ、今にも泣き出しそうだ。
「今はその心配よりアサが無事かどうかだ。これも運命のいたづらかもしれんな、私達の口からいう前にアサに知られてしまうとは……」
お父さんが何かに気付き、お母さんに本を見せる。
「この最後のページのを見ろ、まるで未来を予言してるようだ。
これが誰かが仕組んだ事だとしたらアサの身が危ないかもしれん」
「お父さんこれからどうしましょう」
「私はこれからアサを探しにいく。リップを母親の元に返しに行ったのだとしたら、アサはバルセルラに向かっているはずだ」
「私も行きます」
「お前はここに残るんだ。もしアサが帰って来たとき誰がこの家に迎えいれるんだ」
「でも……」
「私は一人でも大丈夫だ。母さんあの装備をもってきてくれ、すぐに支度だ」
「よもやまたこれを身につける事になろうとはな。しかし私の自慢の愛娘のためだ。今一度騎士に戻ろう」
「でもあなた今の体では」
「私は今でも鍛練をおこたったことは一度もない」
「あなた」
「アサが昔危険な目にあっただろ。それから先は、ワシはまたいつか家族に危険がおこるのではないかと不安が消えることはなかった。平穏な日々が続く中で無駄な努力のように思えていたが、全てはこの時のためだったんだ」
お父さんは装備をつけ、外にでると知り合いの友人から馬を借りたいとお願いしにいった。
「こんな早い時間にすまないな。馬は必ず返すよ」
「あんたにはいつも世話になってるからな。代金はいつでもいいぜ。気を付けてな」
事情を汲んで友人は快くお父さんに馬を貸してくれた。
「じゃー母さん行ってくるよ」
「あなた気を付けて下さいね」
「ああ、必ずアサを連れて戻ってくるさ」
お父さんは馬をロープでたたき王都バルセルラを目指し馬を走らせた。
先程とはうって変わって、登り傾斜がある道なので、荷物の重さも相まって、頬から汗が滴り落ちる。
ここの山はまだやさしい方だが、ルドワンの先の山脈は、これより傾斜があるのでジョセの言った通り、出来るだけ身軽な格好でないと通過は厳しいかもしれない。
少し休憩のつもりで、大木を背にもたれ私とリップは御飯を食べることにした。御飯といっても非常用の缶詰ではあるがルドワンに着くまでは我慢。
缶詰を食べ、お腹が膨れると眠気に襲れ気付けばそのまま眠ってしまった。
さすがに今夜は色々ありすぎて疲れてしまった。私は深い眠りについた。
夜はふけていたので数時間後には刻々と日がのぼりはじめ、私の家にも今日という朝を迎えようとしていた。それはいつもの朝とは違くて一家にとって大事件だったであろう。
始めに目を覚ましたのはお母さんだ。お父さんをベッドに残し、キッチンへと向かった。
お母さんは朝の支度があるのでいつも誰よりも早く起きる。
キッチンに向かう途中、お母さんは少し開いた扉を目にした。私の部屋だ。
「アサ起きてる?入るわよ。」
扉の隙間からお母さんが部屋を除き混むが、もちろんそこには誰もいるはずもない。
「もう出たのかしら?」
この時はまだ異変に気付く様子はなく、お母さんは一階へと降り、リビングを出てキッチンへ向かった。
リビングの机には手紙を置いてあったがお母さんは素通りしてしまった。
コンロの火つけ、いつものようにスープを煮立て時折味見をする。
味に満足いったようで鍋ごと持ち上げ、リビングへ向かった。
テーブルのなべじきにスープをおくとようやくお母さんの視線に便箋が目に入った。
「こんなものあったかしら?」
不思議そうに便箋を手に取り、裏返すと私の名前が書いてあり、送り主が私だと理解した。
「お父さん起きてちょうだい」
中身をみたお母さんが慌ててお父さんを起こした。
「どうした母さん」
お父さんは眠たい目を擦り、まだ事の重要さに気付いていない。
「アサがーー」
お母さんの緊迫な表情をみて、お父さんがはアサに何かあった事が分かった。
「これがテーブルにあってんです」
お父さんが手紙を受け取り中身をみて、ことの重大さを理解した。
「なんて事だ。アサの部屋を調べてみよう」
急いで私の部屋へといき、扉を開くとそこは物が散乱してまるで空き巣が入ったかのような光景が広がっていた。
「もしかしたら誘拐かもしれんな」
お父さんが部屋の状態からそう思うのも無理もないが、本当は私がただ散らかしたまま出て行っちゃっただけなんだけど。
「でもあれは確かにアサの字ですよ」
「脅されて書いたかもしれん」
「脅されて書いたとしたら、ここまで力強くは書けないでしょう」
そう言われお父さんは他に痕跡がないか部屋を見渡した。すると1つ目立つ赤い本を見つける。
それは竜の本だ。開いたまま落ちていた本を持ち上げ父母が目にしたのは、私宛の謎のメッセージだ。
「こんなもの一体どこで。アサがこれをみたということはもう私達のことを?」
お母さんが心配しきった顔でお父さんに聞き、お父さんは最悪のケースも考えお母さんには何も言えなかった。するとお母さん腰が抜けたように崩れ、今にも泣き出しそうだ。
「今はその心配よりアサが無事かどうかだ。これも運命のいたづらかもしれんな、私達の口からいう前にアサに知られてしまうとは……」
お父さんが何かに気付き、お母さんに本を見せる。
「この最後のページのを見ろ、まるで未来を予言してるようだ。
これが誰かが仕組んだ事だとしたらアサの身が危ないかもしれん」
「お父さんこれからどうしましょう」
「私はこれからアサを探しにいく。リップを母親の元に返しに行ったのだとしたら、アサはバルセルラに向かっているはずだ」
「私も行きます」
「お前はここに残るんだ。もしアサが帰って来たとき誰がこの家に迎えいれるんだ」
「でも……」
「私は一人でも大丈夫だ。母さんあの装備をもってきてくれ、すぐに支度だ」
「よもやまたこれを身につける事になろうとはな。しかし私の自慢の愛娘のためだ。今一度騎士に戻ろう」
「でもあなた今の体では」
「私は今でも鍛練をおこたったことは一度もない」
「あなた」
「アサが昔危険な目にあっただろ。それから先は、ワシはまたいつか家族に危険がおこるのではないかと不安が消えることはなかった。平穏な日々が続く中で無駄な努力のように思えていたが、全てはこの時のためだったんだ」
お父さんは装備をつけ、外にでると知り合いの友人から馬を借りたいとお願いしにいった。
「こんな早い時間にすまないな。馬は必ず返すよ」
「あんたにはいつも世話になってるからな。代金はいつでもいいぜ。気を付けてな」
事情を汲んで友人は快くお父さんに馬を貸してくれた。
「じゃー母さん行ってくるよ」
「あなた気を付けて下さいね」
「ああ、必ずアサを連れて戻ってくるさ」
お父さんは馬をロープでたたき王都バルセルラを目指し馬を走らせた。
0
お気に入りに追加
28
あなたにおすすめの小説
アルゴノートのおんがえし
朝食ダンゴ
ファンタジー
『完結済!』【続編製作中!】
『アルゴノート』
そう呼ばれる者達が台頭し始めたのは、半世紀以上前のことである。
元来アルゴノートとは、自然や古代遺跡、ダンジョンと呼ばれる迷宮で採集や狩猟を行う者達の総称である。
彼らを侵略戦争の尖兵として登用したロードルシアは、その勢力を急速に拡大。
二度に渡る大侵略を経て、ロードルシアは大陸に覇を唱える一大帝国となった。
かつて英雄として名を馳せたアルゴノート。その名が持つ価値は、いつしか劣化の一途辿ることになる。
時は、記念すべき帝国歴五十年の佳節。
アルゴノートは、今や荒くれ者の代名詞と成り下がっていた。
『アルゴノート』の少年セスは、ひょんなことから貴族令嬢シルキィの護衛任務を引き受けることに。
典型的な貴族の例に漏れず大のアルゴノート嫌いであるシルキィはセスを邪険に扱うが、そんな彼女をセスは命懸けで守る決意をする。
シルキィのメイド、ティアを伴い帝都を目指す一行は、その道中で国家を巻き込んだ陰謀に巻き込まれてしまう。
セスとシルキィに秘められた過去。
歴史の闇に葬られた亡国の怨恨。
容赦なく襲いかかる戦火。
ーー苦難に立ち向かえ。生きることは、戦いだ。
それぞれの運命が絡み合う本格派ファンタジー開幕。
苦難のなかには生きる人にこそ読んで頂きたい一作。
○表紙イラスト:119 様
※本作は他サイトにも投稿しております。
海岸でタコ助けたらスーパーヒーローになっていた。 ~正義の味方活動日記~
はらくろ
ファンタジー
時は二十一世紀。心優しい少年八重寺一八(やえでらかずや)は、潮だまりで難儀しているタコをみつけ、『きみたち、うちくる?』的に助けたわけだが、そのタコがなんと、異星人だったのだ。ひょんなことから異星人の眷属となり、強大な力を手に入れた一八、正義の味方になるべく頑張る、彼の成長をタコ星人の夫妻が見守る。青春ハートフルタコストーリー。
こちらの作品は、他のプラットフォームでも公開されています。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
異世界着ぐるみ転生
こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生
どこにでもいる、普通のOLだった。
会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。
ある日気が付くと、森の中だった。
誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ!
自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。
幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り!
冒険者?そんな怖い事はしません!
目指せ、自給自足!
*小説家になろう様でも掲載中です
魔力無し転生者の最強異世界物語 ~なぜ、こうなる!!~
月見酒
ファンタジー
俺の名前は鬼瓦仁(おにがわらじん)。どこにでもある普通の家庭で育ち、漫画、アニメ、ゲームが大好きな会社員。今年で32歳の俺は交通事故で死んだ。
そして気がつくと白い空間に居た。そこで創造の女神と名乗る女を怒らせてしまうが、どうにか幾つかのスキルを貰う事に成功した。
しかし転生した場所は高原でも野原でも森の中でもなく、なにも無い荒野のど真ん中に異世界転生していた。
「ここはどこだよ!」
夢であった異世界転生。無双してハーレム作って大富豪になって一生遊んで暮らせる!って思っていたのに荒野にとばされる始末。
あげくにステータスを見ると魔力は皆無。
仕方なくアイテムボックスを探ると入っていたのは何故か石ころだけ。
「え、なに、俺の所持品石ころだけなの? てか、なんで石ころ?」
それどころか、創造の女神ののせいで武器すら持てない始末。もうこれ詰んでね?最初からゲームオーバーじゃね?
それから五年後。
どうにか化物たちが群雄割拠する無人島から脱出することに成功した俺だったが、空腹で倒れてしまったところを一人の少女に助けてもらう。
魔力無し、チート能力無し、武器も使えない、だけど最強!!!
見た目は青年、中身はおっさんの自由気ままな物語が今、始まる!
「いや、俺はあの最低女神に直で文句を言いたいだけなんだが……」
================================
月見酒です。
正直、タイトルがこれだ!ってのが思い付きません。なにか良いのがあれば感想に下さい。
転生5回目!? こ、今世は楽しく長生きします!
実川えむ
ファンタジー
猫獣人のロジータ、10歳。
冒険者登録して初めての仕事で、ダンジョンのポーターを務めることになったのに、
なぜか同行したパーティーメンバーによって、ダンジョンの中の真っ暗闇の竪穴に落とされてしまった。
「なーんーでーっ!」
落下しながら、ロジータは前世の記憶というのを思い出した。
ただそれが……前世だけではなく、前々々々世……4回前? の記憶までも思い出してしまった。
ここから、ロジータのスローなライフを目指す、波乱万丈な冒険が始まります。
ご都合主義なので、スルーと流して読んで頂ければありがたいです。
セルフレイティングは念のため。
二度も親を失った俺は、今日も最強を目指す
SO/N
ファンタジー
主人公、ウルスはあるどこにでもある小さな町で、両親や幼馴染と平和に過ごしていた。
だがある日、町は襲われ、命からがら逃げたウルスは突如、前世の記憶を思い出す。
前世の記憶を思い出したウルスは、自分を拾ってくれた人類最強の英雄・グラン=ローレスに業を教わり、妹弟子のミルとともに日々修行に明け暮れた。
そして数年後、ウルスとミルはある理由から魔導学院へ入学する。そこでは天真爛漫なローナ・能天気なニイダ・元幼馴染のライナ・謎多き少女フィーリィアなど、様々な人物と出会いと再会を果たす。
二度も全てを失ったウルスは、それでも何かを守るために戦う。
たとえそれが間違いでも、意味が無くても。
誰かを守る……そのために。
【???????????????】
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
*この小説は「小説家になろう」で投稿されている『二度も親を失った俺は、今日も最強を目指す』とほぼ同じ物です。こちらは不定期投稿になりますが、基本的に「小説家になろう」で投稿された部分まで投稿する予定です。
また、現在カクヨム・ノベルアップ+でも活動しております。
各サイトによる、内容の差異はほとんどありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる