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第一章 前編
第15話 お店をさがして
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周りのお店を見渡してみたが、屋台ばかりでお酒のつまみになるようなものばかり、座って話せそうなお店はなさそうだ。村人は地べたに座って飲み食いを平気でしてるけど、私は真似する気にはなれなかった。
「ここの通りにはなさそうね。他の場所を探してみよう」
私は道なりに進み西地区へと向かった。
するとあたりはどんどん静まりかえっていき、何本もあった外灯も気付けばなくなり、光は月明かりのみとなってしまった。
「困ったな、ジョセが言ってた住宅地の方に来ちゃったかな? 」
「クプー」
リップがカバンから顔を出した。
「リップ隠れてなきゃダメでしょ」
私が声を荒げると、リップは人の気配がないから大丈夫とごねた。
「いつ鉢合わせるかわからないんだからそういう勘に頼っちゃダメ」
なんとか説得しようと試みたが納得しない様子。リップもカルーモ村が気になってたみたい。確かにカルーモ村なら視界のないリュックの中でも、太鼓の陽気なメロディが聴こえるから、気になる気持ちも分からないことはない。
「もう、ちょっとだけだからね」
私はちょっとだけならとリップのまがままを許した。
しかし残念だったね、こんな静まりかえった場所じゃ、他の村となにも変わりはしない。退屈だとわかればリップもすぐに頭を引っ込めるだろうと私は考えた。
「これ以上行ってもお店は無さそうね。一旦戻ろっか?」
リップにそう問いかけると、リップが私の耳を引っ張った。目をやると鼻をピクピクさせている。どうやら食べ物の匂いを嗅ぎ付けたようだ。
そのままリップに案内してもらうと三階建ての立派な宿屋に出た。
「リップ残念だけど、あそこは泊まる所でご飯だけを食べる訳にはいかないのよ」
私は元きた道を引き返していくと不意に物陰から人影が現れた。
「あっ隠れて」
わたしは咄嗟にリップに合図した。
「あらあらこんな時間にどうしました?何かお困りですか?」
背の高い背広姿の男性が両手を合わせすりすりと擦り、ニッコリと笑いこちらに歩み寄る。
そのたたずまいは、いかにも商売人といった感じだが、いかんせんでかい。こんな暗がりなこともあり少し怖かったが、あの時のカトリーヌさんの言葉を思い出した。「カルーモの人はいい人ばかりよ」
「あのー……」
「ごほん、あのここで食事を取れるような場所ってありますか?」
緊張して言葉につまってしまった。
「えー……」
向こうも詰まってる様子だ。迷惑だったかな。
「もちろんだよ、なんでもあるよ。こっちです案内します」
私は軽く会釈をしその男性に着いて行った。
「ここです」
「あれここって?」
そこは先程リップが見つけたあの宿屋だった。
「安心してください、私が経営してる店です。さぁ外は冷えますので中へ」
「でもここって宿屋ですよね?私泊まるつもりは」
「大丈夫です、食事だけでも承ってますので」
「はぁわかりました」
「さぁさぁどうぞ」
店主は扉を開け私をお店に通した。
宿内を見渡すと落ち着いた雰囲気で、一般的な宿屋といった感じだ。一階部分は食事スペースのようでテーブルとイスがズラリと並んではいる。しかし時間が深夜を回ってるためか食事をしてるお客の姿は誰一人みえない。
宿屋でこんな時間にご飯だけでいいなんて珍しい。リップの勘も侮れないかも。
店主は私をテーブルに案内し、メニュー表を渡してくれた。
メニューを開くと中々本格的な料理がずらりと載っている。キッチンの方に目を向けるとコックのような人は見当たらないけど、この人が作るんだろうか?
「さぁどれでも好きなものを選んで」
「あのすみません。私、他に連れが三人いまして、その人達が着いてからでもいいですか?」
「あー全然構いませんよ」
「じゃー呼びにいってきますね」
「あー大丈夫大丈夫、カルーモでこの時間に開いてるレストランは私の店くらいなもんでね。彼らも時期にくると思うよ」
店主は少し慌てた様子で早口にそう言った。
「そうですか」
「お茶を飲んで待ってなよ」
それから10分待ったがジョセが訪れる様子はない。
「連れの方は少し遅れてるようだね。そうだここで只待ってるのも退屈でしょうし、お部屋見て回らないかい?」
「部屋ですか?」
「うちの自慢な部屋なんだ。きっと見てるだけでも楽しいと思うよ」
「ならそうしましょうか」
私は席を立ち抱いていたリュックを椅子の上へとおいた。リップをおいていくのは少し不安だけど、部屋をみて変にリップが興奮したら大変。
その時ジョセ一行はーーー
「アサ待たせた、待たせた。ついついこずかい稼ぎしちまってよ」
ジョセがその後ろ姿の肩に手をやると、彼女は振り返った。
彼女は目を点にして驚いた様子、それはジョセも同じだった。
「あ、すまん、人違いだった。足止めして悪かったな」
「ジョセちゃんそんなに走らないで」
遅れてカトリーヌさんとポルンさんが息を切らしながら戻ってきた。
「姉貴、アサを見失っちゃった。まだ店探せてないのかな」
「でもこの時間席ならお店って限られてるんじゃないかしら?」
ジョセは屋台のおっちゃんに話を聞いてみる事にした。
「今の時間に入れる店といったら東大通りを抜けたとこにある大釜亭だな。人一倍でかい建物だからすぐわかると思うよ」
「おじさんサンキュー」
「おいおい聞くだけ聞いて何にも買ってかないつもりかよ」
「わーたよ、焼鳥もも三本」
「はい毎度アリ」
ジョセは屋台から遠ざかるとその場で焼鳥をほうばりカトリーヌさんに言った。
「姉貴本当にカルーモの人達はいい人なのか?店をきくだけで見返りを要求されたぜ。アサにも同じこと言ったみたいじゃないか」
「あれーおかしーな、カルーモじゃなかったかしら?」
「もう。アサの奴バカだから信じきっちゃってるぜ。今ごろ変な奴に騙されてなきゃいいが」
「ここの通りにはなさそうね。他の場所を探してみよう」
私は道なりに進み西地区へと向かった。
するとあたりはどんどん静まりかえっていき、何本もあった外灯も気付けばなくなり、光は月明かりのみとなってしまった。
「困ったな、ジョセが言ってた住宅地の方に来ちゃったかな? 」
「クプー」
リップがカバンから顔を出した。
「リップ隠れてなきゃダメでしょ」
私が声を荒げると、リップは人の気配がないから大丈夫とごねた。
「いつ鉢合わせるかわからないんだからそういう勘に頼っちゃダメ」
なんとか説得しようと試みたが納得しない様子。リップもカルーモ村が気になってたみたい。確かにカルーモ村なら視界のないリュックの中でも、太鼓の陽気なメロディが聴こえるから、気になる気持ちも分からないことはない。
「もう、ちょっとだけだからね」
私はちょっとだけならとリップのまがままを許した。
しかし残念だったね、こんな静まりかえった場所じゃ、他の村となにも変わりはしない。退屈だとわかればリップもすぐに頭を引っ込めるだろうと私は考えた。
「これ以上行ってもお店は無さそうね。一旦戻ろっか?」
リップにそう問いかけると、リップが私の耳を引っ張った。目をやると鼻をピクピクさせている。どうやら食べ物の匂いを嗅ぎ付けたようだ。
そのままリップに案内してもらうと三階建ての立派な宿屋に出た。
「リップ残念だけど、あそこは泊まる所でご飯だけを食べる訳にはいかないのよ」
私は元きた道を引き返していくと不意に物陰から人影が現れた。
「あっ隠れて」
わたしは咄嗟にリップに合図した。
「あらあらこんな時間にどうしました?何かお困りですか?」
背の高い背広姿の男性が両手を合わせすりすりと擦り、ニッコリと笑いこちらに歩み寄る。
そのたたずまいは、いかにも商売人といった感じだが、いかんせんでかい。こんな暗がりなこともあり少し怖かったが、あの時のカトリーヌさんの言葉を思い出した。「カルーモの人はいい人ばかりよ」
「あのー……」
「ごほん、あのここで食事を取れるような場所ってありますか?」
緊張して言葉につまってしまった。
「えー……」
向こうも詰まってる様子だ。迷惑だったかな。
「もちろんだよ、なんでもあるよ。こっちです案内します」
私は軽く会釈をしその男性に着いて行った。
「ここです」
「あれここって?」
そこは先程リップが見つけたあの宿屋だった。
「安心してください、私が経営してる店です。さぁ外は冷えますので中へ」
「でもここって宿屋ですよね?私泊まるつもりは」
「大丈夫です、食事だけでも承ってますので」
「はぁわかりました」
「さぁさぁどうぞ」
店主は扉を開け私をお店に通した。
宿内を見渡すと落ち着いた雰囲気で、一般的な宿屋といった感じだ。一階部分は食事スペースのようでテーブルとイスがズラリと並んではいる。しかし時間が深夜を回ってるためか食事をしてるお客の姿は誰一人みえない。
宿屋でこんな時間にご飯だけでいいなんて珍しい。リップの勘も侮れないかも。
店主は私をテーブルに案内し、メニュー表を渡してくれた。
メニューを開くと中々本格的な料理がずらりと載っている。キッチンの方に目を向けるとコックのような人は見当たらないけど、この人が作るんだろうか?
「さぁどれでも好きなものを選んで」
「あのすみません。私、他に連れが三人いまして、その人達が着いてからでもいいですか?」
「あー全然構いませんよ」
「じゃー呼びにいってきますね」
「あー大丈夫大丈夫、カルーモでこの時間に開いてるレストランは私の店くらいなもんでね。彼らも時期にくると思うよ」
店主は少し慌てた様子で早口にそう言った。
「そうですか」
「お茶を飲んで待ってなよ」
それから10分待ったがジョセが訪れる様子はない。
「連れの方は少し遅れてるようだね。そうだここで只待ってるのも退屈でしょうし、お部屋見て回らないかい?」
「部屋ですか?」
「うちの自慢な部屋なんだ。きっと見てるだけでも楽しいと思うよ」
「ならそうしましょうか」
私は席を立ち抱いていたリュックを椅子の上へとおいた。リップをおいていくのは少し不安だけど、部屋をみて変にリップが興奮したら大変。
その時ジョセ一行はーーー
「アサ待たせた、待たせた。ついついこずかい稼ぎしちまってよ」
ジョセがその後ろ姿の肩に手をやると、彼女は振り返った。
彼女は目を点にして驚いた様子、それはジョセも同じだった。
「あ、すまん、人違いだった。足止めして悪かったな」
「ジョセちゃんそんなに走らないで」
遅れてカトリーヌさんとポルンさんが息を切らしながら戻ってきた。
「姉貴、アサを見失っちゃった。まだ店探せてないのかな」
「でもこの時間席ならお店って限られてるんじゃないかしら?」
ジョセは屋台のおっちゃんに話を聞いてみる事にした。
「今の時間に入れる店といったら東大通りを抜けたとこにある大釜亭だな。人一倍でかい建物だからすぐわかると思うよ」
「おじさんサンキュー」
「おいおい聞くだけ聞いて何にも買ってかないつもりかよ」
「わーたよ、焼鳥もも三本」
「はい毎度アリ」
ジョセは屋台から遠ざかるとその場で焼鳥をほうばりカトリーヌさんに言った。
「姉貴本当にカルーモの人達はいい人なのか?店をきくだけで見返りを要求されたぜ。アサにも同じこと言ったみたいじゃないか」
「あれーおかしーな、カルーモじゃなかったかしら?」
「もう。アサの奴バカだから信じきっちゃってるぜ。今ごろ変な奴に騙されてなきゃいいが」
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