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第一章 前編

第4話 私を呼ぶ声

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 私は机に俯き、淡い黄色い光を放つランタンを眺めていた。 

 「お母さんが知らない、まさかね。今日はもう寝よう」
 私がランプの光を消したその時だった。突然光の線が外の窓にむけ、光を指した。

 「何?これ。イヤリングからだわ」
 私はすかさず耳につけていたイヤリングを外した。
 窓を開けて光が指す方角をみつめると、風が荒れるようにふきすっと静まった。

 「助けて?私を呼んでるの?」
 声が聞こえた訳じゃない、でもなぜだが風の印象から、自然とそんな気持ちになった。
 私はイヤリングと手持ちのランプを持って外へと出た。

 光はまっすぐと森の方角をさし、進むにつれ光が強まっていくのを感じた。光に導かれていくままに進んでいくと穴蔵のような場所に出た。
 するとイヤリングから発せられていた光がすっと消えていった。

 「ここからだわ」
 私は生唾をごくりと飲みこんだ。
 視界の悪い道をゆっくりと歩みを進めるとすぐに道はなくなり、そこは行き止まりだった。

 「あれ?」
 これ以上はいけないと周りを照らしていくと、そこには小刻みに震える小動物のようなものがこちらを見つめていた。
 近づいてようく見てみると、体の大きさは体長50cm程で、体色は深みの強い紺色をしている。体は丸みを帯びており、顔と胴体の境目が曖昧だ。その見た目から私は恐怖を覚えることはなかった。
 未発達の小さな翼のようなものが生えており、口からは小さくのぞかせた立派な犬歯も伺えた。

「子供の竜?」 

 私が声を上げると竜の子供は後退りをし、そそくさと逃げようとした。
 すかさず優しい声で「大丈夫、大丈夫」と何度も繰り返し語りかけると、安心したのか竜の方から私に歩み寄ってきた。

 「あなたが私を呼んだの?」
 竜の子供は小さく頷く。

 「あなたお母さんは?一人なの?」
 同じく小さく頷いた。

 「よしよし、寂かったね、もう大丈夫だから、何も心配いらないよ」
 私は顔近づけ、優しく頭を撫でてあげた。するとゴロゴロと猫のように鳴き顔を私に擦りつけてきた。
 そうしてじゃれていると子供の竜は安心しきってしまったのか、私の腕の中で寝りについてしまった。
 私もそれにつられてしまい、気付くとそこで眠りについてしまっていた。
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