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「ここです」
駅を通り過ぎて十五分ほど歩くと文人の住む築四十年の木造アパートに到着した。洗濯機が外に設置してある古いタイプのアパートに、木暮は表情ひとつ変えずにニコニコしながら「ボロいね」と一言。直球すぎる感想に文人は苦笑いを浮かべるしかなかった。
「古いですけど結構良い所ですよ、駅もそんなに遠くないですし、隣は住んでいないからちょっとうるさくしても怒られることもないですしね」
さぁどうぞと鍵を開けてドアを開く。おじゃましますと後から木暮は付いてきて、必要最低限のものしか置いていないワンルームを見渡して「ふーん」と呟いた。
「あの、何か飲みます?水か緑茶しかないですけど……」
「ありがとう、でも今はいいや」
「そうですか……」
部屋の角や天井、風呂、トイレにベランダ。全て見た後に木暮は「うん、ここ何人か亡くなってるね」と言った。笑顔で言い放たれた言葉に文人は絶句する。まさか、いやそんな、とみるみるうちに青褪めていく。
「は、祓ってください……!!」
そんな家に住んでいたなんて。大家さんは何も言わなかったぞ!
「大丈夫だよ、亡くなってるのは事実だけどこの部屋に住み着いてる死霊はいないから」
「……本当ですか?」
「本当本当。それよりも問題は君に憑いてる男の霊だ。さっきから俺を睨んでる」
「えッ!?」
「はは、怒ってるみたい」
霊に睨まれてるというのに楽しそうな木暮。文人はどうしていいか分からずオロオロするばかり。
「よし、じゃあさっさと祓っちゃおっか。えいっ」
「は……?」
トン、と両肩を押されて体が後ろに倒れる。ちょうど布団の上に仰向けに倒れた文人の上に木暮が馬乗りになった。
「な、何ですかこの状況は……」
目の前のハンサムがにんまりと笑う。
「今からお清めセックスするよ」
「は……?」
言葉を理解するのに時間がかかっていると木暮は愉快そうに言う。
「大丈夫、俺にまかせて」
「はぁッ!?ちょっ!待ってください!セックスって!どういうことですか!?お祓いは!?」
既に服の裾から手を突っ込んで脱がしにかかっている木暮に全力で問う。
「だからお清めだよ、君が夜な夜なされてる淫らな行為は夢なんかじゃないってこと」
「な、なんでそれを……っ」
「視れば分かるよ、だって君精液塗れだもん」
「うえ……っま、マジで……?」
「うん。だから霊力の強い俺が君に上書きすれば解決ってわけ。それじゃあ分かってもらったところで始めよっか」
ひんやりと冷たい手が腹を撫でる。
「ひぅっ!だっだめ!待って待って!」
「何?」
乳首に触れている手を掴み「待ってってば!」と文人は声を張った。
「これって本当に正しいお祓いなんですか!?」
文人は更に語気を強めながら「なんか可笑しくないですか!?」と木暮の手首をグッと掴んで服から引きずり出した。そして木暮の下からくるんと体を回して抜け出すとキッと睨みつける。
「出て行ってください……!!」
こんな怪しい人を信用した自分が馬鹿だった。お祓いと称して襲うような人間を自宅にあげてしまった自分の危機管理能力の低さに呆れてしまう。
木暮は困ったように眉を下げた。はぁ~と長い溜め息を吐きながら頭を搔く祓い屋に玄関を指差す。
「出て行ってください!」
もう一度言うと木暮は何も無い部屋の角を見てから玄関に足を向けた。そして文人を振り返り「なんかあったら連絡して」と言って帰って行った。
「はぁ……怖かった……」
あれが新手の詐欺?でもなんで夢の中で知らない男に色々されてるって分かったんだろう……。まぁ何にせよ男だからって油断しちゃ駄目だな。今日あった事は教訓にしよう。文人は戸締まりをしっかりしてからポケットに入れていた名刺をゴミ箱に捨てた。
駅を通り過ぎて十五分ほど歩くと文人の住む築四十年の木造アパートに到着した。洗濯機が外に設置してある古いタイプのアパートに、木暮は表情ひとつ変えずにニコニコしながら「ボロいね」と一言。直球すぎる感想に文人は苦笑いを浮かべるしかなかった。
「古いですけど結構良い所ですよ、駅もそんなに遠くないですし、隣は住んでいないからちょっとうるさくしても怒られることもないですしね」
さぁどうぞと鍵を開けてドアを開く。おじゃましますと後から木暮は付いてきて、必要最低限のものしか置いていないワンルームを見渡して「ふーん」と呟いた。
「あの、何か飲みます?水か緑茶しかないですけど……」
「ありがとう、でも今はいいや」
「そうですか……」
部屋の角や天井、風呂、トイレにベランダ。全て見た後に木暮は「うん、ここ何人か亡くなってるね」と言った。笑顔で言い放たれた言葉に文人は絶句する。まさか、いやそんな、とみるみるうちに青褪めていく。
「は、祓ってください……!!」
そんな家に住んでいたなんて。大家さんは何も言わなかったぞ!
「大丈夫だよ、亡くなってるのは事実だけどこの部屋に住み着いてる死霊はいないから」
「……本当ですか?」
「本当本当。それよりも問題は君に憑いてる男の霊だ。さっきから俺を睨んでる」
「えッ!?」
「はは、怒ってるみたい」
霊に睨まれてるというのに楽しそうな木暮。文人はどうしていいか分からずオロオロするばかり。
「よし、じゃあさっさと祓っちゃおっか。えいっ」
「は……?」
トン、と両肩を押されて体が後ろに倒れる。ちょうど布団の上に仰向けに倒れた文人の上に木暮が馬乗りになった。
「な、何ですかこの状況は……」
目の前のハンサムがにんまりと笑う。
「今からお清めセックスするよ」
「は……?」
言葉を理解するのに時間がかかっていると木暮は愉快そうに言う。
「大丈夫、俺にまかせて」
「はぁッ!?ちょっ!待ってください!セックスって!どういうことですか!?お祓いは!?」
既に服の裾から手を突っ込んで脱がしにかかっている木暮に全力で問う。
「だからお清めだよ、君が夜な夜なされてる淫らな行為は夢なんかじゃないってこと」
「な、なんでそれを……っ」
「視れば分かるよ、だって君精液塗れだもん」
「うえ……っま、マジで……?」
「うん。だから霊力の強い俺が君に上書きすれば解決ってわけ。それじゃあ分かってもらったところで始めよっか」
ひんやりと冷たい手が腹を撫でる。
「ひぅっ!だっだめ!待って待って!」
「何?」
乳首に触れている手を掴み「待ってってば!」と文人は声を張った。
「これって本当に正しいお祓いなんですか!?」
文人は更に語気を強めながら「なんか可笑しくないですか!?」と木暮の手首をグッと掴んで服から引きずり出した。そして木暮の下からくるんと体を回して抜け出すとキッと睨みつける。
「出て行ってください……!!」
こんな怪しい人を信用した自分が馬鹿だった。お祓いと称して襲うような人間を自宅にあげてしまった自分の危機管理能力の低さに呆れてしまう。
木暮は困ったように眉を下げた。はぁ~と長い溜め息を吐きながら頭を搔く祓い屋に玄関を指差す。
「出て行ってください!」
もう一度言うと木暮は何も無い部屋の角を見てから玄関に足を向けた。そして文人を振り返り「なんかあったら連絡して」と言って帰って行った。
「はぁ……怖かった……」
あれが新手の詐欺?でもなんで夢の中で知らない男に色々されてるって分かったんだろう……。まぁ何にせよ男だからって油断しちゃ駄目だな。今日あった事は教訓にしよう。文人は戸締まりをしっかりしてからポケットに入れていた名刺をゴミ箱に捨てた。
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