拗らせ彼氏

あたか

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拗らせ彼氏2

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「トイレ?俺も行くよ」
「いい、ついてくるな」
「やだ、だってこの前知らない奴にちんこ見られたって言ってたじゃん」
「でかい声で言うなアホ」

 言い合いながら教室を出ると、七瀬は木戸を睨み付けてやれやれとため息を吐いた。

「心配してくれるのはありがたいけど、用足してるとき覗き込まないでよね」
「もちろん」

 アイドル顔負けの微笑みで頷く木戸。胡散臭い笑顔だが周りの生徒は「イケメンすぎ!」「今ので死んだ」と口々に言っている。彼の中身を知っている七瀬としては不安でしかない笑顔である。

「相変わらず可愛いちんこ」
「見るなって言ったよね?」
「彼氏なんだしいいじゃん」
「よくない」

 互いに用を足し終えて手を洗う。七瀬の隣に知らない生徒が来て手を洗い始めると、木戸がその生徒の真後ろに立った。

「お前よく七瀬がトイレ行くと一緒についてくるよな?何なの?連れション気取り?死にたいの?」
「っし、死にたくないです!」
「じゃあついてくるな、七瀬をストーカーしていいのは俺だけなんだよ」
「はい!すみませんでした!!」

 叫ぶように謝るとトイレを飛び出して行く。
 言ってやったぞ!と胸を張る木戸を置いてトイレを出る七瀬。すぐ走って追いかけてきたお馬鹿な恋人は、褒めてと言わんばかりである。
 まあ連れション気取り男には困っていたし礼くらい言ってやるかと七瀬が小さな声で「ありがと……」と言うと、木戸は一度足を止めてからガバッっと七瀬に抱き付いた。

「可愛い~!!可愛い可愛い!!マジで可愛い!!ありがと、だって!!」
「うるさい」
「ねぇ今日七瀬ん家行ってもいい?」
「ダメ」
「え~じゃあ俺ん家寄ってよ」
「……それなら、まぁいいけど」
「よっしゃ!ゴム買って帰ろっと」
「だからいちいち声がでかいってば」


3
「君可愛いね~、って男の子?女の子だと思ったわ」
「すみません、急いでるので」
「連れないこと言わないでよ~、助けてあげようとしてるのに」
「はい?」
「君さっきからストーキングされてるよ、ほら、あそこのパン屋の前にいる男、客のフリしてるけどあれは絶対不審者だよ」

 見知らぬ男性に言われてパン屋を振り返ると確かに男が一人いる。七瀬はそれが誰かすぐに分かり「大丈夫です、あれは俺の彼氏なので」と驚いている男性をそのままにパン屋に向かった。

「何してんの」
「あれ、バレちゃった」
「バレちゃったじゃない、知らない人にストーキングされてるよって言われたんだけど」
「ごめんつい、一人で商店街を歩いてる七瀬が可愛いくてさ、後ろ姿なんかヒヨコみたいで……写真撮ったけど見る?」
「……見ない」
「え~可愛いのに」
「木戸が怪しまれてるの俺やだ」
「はぁ?可愛い過ぎか?俺を殺しにきてるな七瀬」
「どっかカフェ入ろうよ」
「カフェデートか、いいな!よし行っていいぞ、俺は七瀬の後ついてくから」
「……ホントバカ、もう帰る!」
「プリプリしてる七瀬も魅力的だ!!」

 近所の商店街で大声で言うことじゃないだろバカ、そう思いながら七瀬は怒る気力もなくなり走って商店街を抜けた。もちろん後ろからは木戸が走ってついてきていた。
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