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第2章 未来での再会
第14話A 戦い終えて~予感
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深呼吸をし落ち着かせてから待ち人の傍へ歩み寄る。うん?固まってる?
目を見開いて石像と化している彼女に「終わったよ。」とささやくこと数秒後、ビクッとした後、顔を赤くし何やら呟いた後にようやく再起動してくれた。
「あの・・・、そう・・・そうだ、“凄い”、ですね。そ、それに大丈夫・・・ですか?」
「そう・・・だな。力をほぼ全て使ったが体は問題ない。それに君も似たようなことが出来るようになるよ。」
「それは良かったです。・・・・えっ!本当ですか?想像つかないです。」
「出来るさ。君なら必ず。」
「はい。わかりました。・・・あっ!そうではなくて・・・ええと、でも、やっぱり・・・、そうです、あの八つ手の人、もう生きては・・・。」
「生きてはいない=殺してしまった」先ほどから彼女の挙動がおかしいのは、その不安からなのか?ならば取り除くだけだ。
「『殺した』は正確ではないかな。『壊した』が近い。これを見て欲しい。」
紅く輝く拳大の球体と、機械の部品のような物を差しだした。
「これって、何かの核?」
「ああ。これと同じものを昔、見たことがある。戦闘や事故あるいは病気で手足が不自由になった熟練の兵士用に開発された兵器だ。本来の体と意識や感覚、魂を繋げることで、限りなく本人の動きや魔法を再現することを可能にした代物だ。接続時、切断時ともに精神が崩壊する程の痛みが生じるため量産が見送られたはずだ。」
時折、驚愕した表情を見せながら真剣に聞く彼女、その目は「本当にあなたは何者ですか?」と訴えていたが、気づかないふりをして続けることにした。
「妙に頑丈だったのが気になっていたんだ。最初は蜘蛛型の鎧のせいと考えた。だが違っていた。生命の気配が感じられないことに気づいて確信した。“人”いや“生き物ではない”と・・・。」
「あっ、それで見た目が女の人なのに容赦しなかったんですね。」
「顔にも平気で攻撃していましたから・・・。」と最後に付け加える。
「えっ!ああ、そうだ。その通り、だ。」
はははっ、と肩をすくめて見せる。戦闘中、一度も“女性”として認識していなかったことは言わない方がいいような気がした。
「それで、この後・・・。」
リアが何か言いかけた時、彼女の足元が急に光出し淡い光が包み込む。その姿が虚ろになっていく。予期せぬ事態に一瞬慌てるが「心配しないで」と制された。
「どうやらもう時間切れのようです。結界が解けて、強制送還魔法が発動したみたいです。申請時間を過ぎてしまったので仕方ないですね。」
不明な点はあるが危険はないらしい。正直、説明して欲しいところだが時間もないようだ。害がないのであれば、それで良しとしよう。
「また、会えますよね!あの最後にお名前・・・。」
そう言い残して彼女は転移された。名前については言いそびれたところもあるが、どう名乗ろうか決めかねていたのも大きい。今の俺は長い銀色の髪に年齢は十代後半、今のリアより少し年上の“ルナウス”の姿をしている。この世界の“カズヤ”の姿ではない。
ある大がかりな秘術を応用して別の世界の“俺”とこの世界の“俺”が一つになった存在だ、と本当のことを口にしても信用されないだろう。一つになったと言っても吸収に近く、この世界を生きた自分の記憶と人格は今の俺にはほとんどない。この世界の“俺”は今日、息を引き取ったと聞く、尚更言えるわけがない。
次に出会った時、どう説明したらよいものか・・・。
★☆★
強制送還魔法が発動した後、簡単に手続きを済ませるとすぐに住みなれた街につきました。
色々なことがありました。名前を聞くことが出来なかったのが残念です。銀色の髪に白銀の鎧、光の剣と翼のあの人は一体、誰なのでしょう?
時々見せる表情や仕草そして声・・・、わたしはそれを知っているような気がします。でも、それは気のせい、ありえないこと。頭を振り更に思い出します。
『・・・俺の愛する人を傷つけた・・・。』
その言葉がふいによぎります。初対面の人のはずなのに、ずっと昔から知っている気が拭えません。頬が赤くなるのを誤魔化すように携帯電話を取り出します。少しでも早く連絡しないと・・・。落ち着いて・・・わたし。
収穫はありました。伝えたいことがたくさんあります。何から話そうか思案していると不意に電話が鳴りだした。
ヒカリちゃん、カズヤ君の妹さんからです。連絡をかけようとしていた中の一人でしたので頭のモヤモヤを取り払うかのように、その着信に飛びつきました。
『あっ!やっと繋がった!大変!大変なの!兄さんが、兄さんが・・・。』
「ヒカリちゃん、落ち着いて。カズヤ君がどうしたの?」
『ごめんなさい。えっと、消えたの!少し目を離した隙に兄さんが消えちゃったの!』
「カズヤ君が消えた?そんな・・・。とにかくわかったわ。わたしも今からそっちに行くから・・・。」
電話を切り、すぐに駆け出します。『カズヤ君が消えた』その報せに『もしかして銀色の髪のあの人はやはり・・・。』とよぎりますが、その考えをすぐに打ち消します。そんな都合の良いことはありえません。そう、ありえないのです。
「一体、何が起こっているの?これから何が起こるの?」
まだ終わらないそんな予感がするのでした。
目を見開いて石像と化している彼女に「終わったよ。」とささやくこと数秒後、ビクッとした後、顔を赤くし何やら呟いた後にようやく再起動してくれた。
「あの・・・、そう・・・そうだ、“凄い”、ですね。そ、それに大丈夫・・・ですか?」
「そう・・・だな。力をほぼ全て使ったが体は問題ない。それに君も似たようなことが出来るようになるよ。」
「それは良かったです。・・・・えっ!本当ですか?想像つかないです。」
「出来るさ。君なら必ず。」
「はい。わかりました。・・・あっ!そうではなくて・・・ええと、でも、やっぱり・・・、そうです、あの八つ手の人、もう生きては・・・。」
「生きてはいない=殺してしまった」先ほどから彼女の挙動がおかしいのは、その不安からなのか?ならば取り除くだけだ。
「『殺した』は正確ではないかな。『壊した』が近い。これを見て欲しい。」
紅く輝く拳大の球体と、機械の部品のような物を差しだした。
「これって、何かの核?」
「ああ。これと同じものを昔、見たことがある。戦闘や事故あるいは病気で手足が不自由になった熟練の兵士用に開発された兵器だ。本来の体と意識や感覚、魂を繋げることで、限りなく本人の動きや魔法を再現することを可能にした代物だ。接続時、切断時ともに精神が崩壊する程の痛みが生じるため量産が見送られたはずだ。」
時折、驚愕した表情を見せながら真剣に聞く彼女、その目は「本当にあなたは何者ですか?」と訴えていたが、気づかないふりをして続けることにした。
「妙に頑丈だったのが気になっていたんだ。最初は蜘蛛型の鎧のせいと考えた。だが違っていた。生命の気配が感じられないことに気づいて確信した。“人”いや“生き物ではない”と・・・。」
「あっ、それで見た目が女の人なのに容赦しなかったんですね。」
「顔にも平気で攻撃していましたから・・・。」と最後に付け加える。
「えっ!ああ、そうだ。その通り、だ。」
はははっ、と肩をすくめて見せる。戦闘中、一度も“女性”として認識していなかったことは言わない方がいいような気がした。
「それで、この後・・・。」
リアが何か言いかけた時、彼女の足元が急に光出し淡い光が包み込む。その姿が虚ろになっていく。予期せぬ事態に一瞬慌てるが「心配しないで」と制された。
「どうやらもう時間切れのようです。結界が解けて、強制送還魔法が発動したみたいです。申請時間を過ぎてしまったので仕方ないですね。」
不明な点はあるが危険はないらしい。正直、説明して欲しいところだが時間もないようだ。害がないのであれば、それで良しとしよう。
「また、会えますよね!あの最後にお名前・・・。」
そう言い残して彼女は転移された。名前については言いそびれたところもあるが、どう名乗ろうか決めかねていたのも大きい。今の俺は長い銀色の髪に年齢は十代後半、今のリアより少し年上の“ルナウス”の姿をしている。この世界の“カズヤ”の姿ではない。
ある大がかりな秘術を応用して別の世界の“俺”とこの世界の“俺”が一つになった存在だ、と本当のことを口にしても信用されないだろう。一つになったと言っても吸収に近く、この世界を生きた自分の記憶と人格は今の俺にはほとんどない。この世界の“俺”は今日、息を引き取ったと聞く、尚更言えるわけがない。
次に出会った時、どう説明したらよいものか・・・。
★☆★
強制送還魔法が発動した後、簡単に手続きを済ませるとすぐに住みなれた街につきました。
色々なことがありました。名前を聞くことが出来なかったのが残念です。銀色の髪に白銀の鎧、光の剣と翼のあの人は一体、誰なのでしょう?
時々見せる表情や仕草そして声・・・、わたしはそれを知っているような気がします。でも、それは気のせい、ありえないこと。頭を振り更に思い出します。
『・・・俺の愛する人を傷つけた・・・。』
その言葉がふいによぎります。初対面の人のはずなのに、ずっと昔から知っている気が拭えません。頬が赤くなるのを誤魔化すように携帯電話を取り出します。少しでも早く連絡しないと・・・。落ち着いて・・・わたし。
収穫はありました。伝えたいことがたくさんあります。何から話そうか思案していると不意に電話が鳴りだした。
ヒカリちゃん、カズヤ君の妹さんからです。連絡をかけようとしていた中の一人でしたので頭のモヤモヤを取り払うかのように、その着信に飛びつきました。
『あっ!やっと繋がった!大変!大変なの!兄さんが、兄さんが・・・。』
「ヒカリちゃん、落ち着いて。カズヤ君がどうしたの?」
『ごめんなさい。えっと、消えたの!少し目を離した隙に兄さんが消えちゃったの!』
「カズヤ君が消えた?そんな・・・。とにかくわかったわ。わたしも今からそっちに行くから・・・。」
電話を切り、すぐに駆け出します。『カズヤ君が消えた』その報せに『もしかして銀色の髪のあの人はやはり・・・。』とよぎりますが、その考えをすぐに打ち消します。そんな都合の良いことはありえません。そう、ありえないのです。
「一体、何が起こっているの?これから何が起こるの?」
まだ終わらないそんな予感がするのでした。
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