5 / 7
本編
5.幸せの伝染
しおりを挟む
あの日以来、俺達は幽太君を大学へ連れていくようになった。幽太君が静かにしていてくれることが分かったし、ゼミ室にいるときは三葉や光希が幽太君の遊び相手になってくれたからだ。
ある日の夕方、講義が終わった俺は翼と幽太君に尋ねた。
葵「これからゼミ室に行って本を読もうと思ってるんだけど、二人はどうする?結構時間がかかると思うから先に帰っていてもいいけど。」
幽太「三葉にいちゃんと光希にいちゃんもいるかな?」
葵「どうだろう?でも、いるかもしれないね。もうすぐ課題の提出期限だから。」
幽太「じゃあ僕も行く!」
翼「それなら俺もついていく。」
葵「あれ?翼、課題終わったって言ってなかったっけ?」
翼「もし三葉や光希がいなくても、俺が幽太の遊び相手になってあげられるからな。…それに、少しでも葵や幽太と一緒にいたいんだよ。」
『少しでも葵と一緒にいたいんだよ。』
俺は同棲を始める時に翼が言ってくれた言葉を思い出した。
(一緒にいられる時間が増えた今でも、そう思ってくれているんだな。)
俺は翼の気持ちが嬉しかったし、自分も同じ気持ちでいることに気づかされた。
葵「…いつも一緒にいてくれてありがとう、翼。大好きだよ。」
翼「お、おう。急にどうしたんだ?」
葵「ふふ、伝えたくなっただけだよ。」
幽太「僕も翼にいちゃんのこと大好き!」
翼「…はは、モテる男はつらいなぁ。」
翼は満更でもなさそうに笑った。
(三人一緒にいられる時間を大切にしないとな。)
俺は改めてそう思った。
ゼミ室に光希の姿はなかったが、三葉は本を読んでいた。
三葉「あ、二人ともお疲れ様。今日も幽太君と一緒なんだね。」
葵・翼「お疲れ様ー。」
幽太「三葉にいちゃん、こんにちは。」
三葉「お、きちんと挨拶できたね。そんな幽太君にはお菓子をあげよう!」
幽太「わーい!」
初対面の時は恥ずかしがっていた幽太君も、すっかり三葉に懐いたようだった。俺はそんな幽太君の姿を嬉しく思う反面、少し寂しさも感じた。
三葉「…それにしてもいいなぁ、翼君も葵君も幸せそうで。」
葵「え、そうかな?」
三葉「うん。だって二人はお付き合いしてて、今はこんなに可愛い子供もいるんだもん。家族みたいで羨ましいよ。」
(そっか…。他の人達からも俺達は家族みたいに見えてるんだな。)
俺と翼が霊子さんの期待に少しずつ応えられているということを、三葉が教えてくれた。その嬉しさのせいで気づくのが少し遅れたが、俺は三葉に尋ねた。
葵「…なんで俺と翼が付き合ってるって知ってるんだ?」
三葉「ゼミの皆が知ってるよ?二人はいつも一緒にいるし、幽太君がゼミ室に来るようになってからはパパとママにしか見えないもん。」
翼「ま、これだけラブラブしてればバレるだろうな。」
(え、バレてないと思ってたの俺だけ?)
三葉「それでね、実はみんなにお願いがあるんだ。」
翼「お願い?」
三葉「僕、光希のことが好きなんだ。本当は伝えないままでいようと思ったんだけど、幸せそうなみんなを見てたらどうしても伝えたくなっちゃって。今度、遊園地に誘って告白しようと思ってるんだけど…。二人きりじゃ気まずいから、みんなもついてきてくれないかな?もちろん、遊園地のチケットは僕が買うから。」
(え、三葉は光希のことが好きだったのか!?)
翼「それは別にいいけど…。俺達がいると逆に告白しづらくならないか?」
(…動揺してないってことは翼は気づいてたんだよな?ひょっとして俺、鈍感?)
三葉「…実は観覧車の中で告白しようと思ってて。その時だけは僕と光希を二人きりにしてくれると嬉しいんだけど。」
翼「なるほどな、了解。」
三葉「その時以外は普通に遊んでいてくれれば大丈夫だよ。…葵君、聞いてる?」
葵「…ああ、うん。」
三葉「幽太君も巻き込んじゃってごめんね。でも、遊園地で遊んでてくれるだけでいいからね。」
幽太「…遊園地って楽しいところ?」
三葉「うん、いろんなアトラクションがあるからきっと楽しいよ!」
幽太「わーい、僕も行きたい!」
三葉「ふふ、喜んでくれてよかった。」
幽太「でも、なんで僕たちも連れていってくれるの?光希にいちゃんに好きって言うだけなのに。」
葵「…幽太君はまだ分からないかもしれないけど、誰かに好きって伝えることは難しいことなんだよ。緊張しちゃうし、相手も自分のことを好きでいてくれてるとは限らないからね。」
(実際、俺もそうだったからな。)
幽太「そっか…僕、応援するね!」
三葉「それは心強いね。ありがとう、幽太君!」
三葉「…じゃあ、遊園地に行くのは次の土曜日でいいかな?光希も大丈夫って言ってるし。」
翼「俺達もそれで大丈夫だ。」
葵「…悪いけど、俺達の集合時間は午後でも大丈夫かな?午前中からだと幽太君が疲れちゃうだろうから。」
(それに、そんなに長時間変化していられないだろうし。)
三葉「あ、そういえばそうだったね。じゃあそうしようか。」
(…なんか気になる言い方だな。)
三葉「じゃあ今度の土曜日はよろしくね!あ、葵君、課題の邪魔してごめんね。」
(忘れてたー!)
俺は課題に気をとられ、三葉の発言に感じた違和感のことは忘れてしまった。
ある日の夕方、講義が終わった俺は翼と幽太君に尋ねた。
葵「これからゼミ室に行って本を読もうと思ってるんだけど、二人はどうする?結構時間がかかると思うから先に帰っていてもいいけど。」
幽太「三葉にいちゃんと光希にいちゃんもいるかな?」
葵「どうだろう?でも、いるかもしれないね。もうすぐ課題の提出期限だから。」
幽太「じゃあ僕も行く!」
翼「それなら俺もついていく。」
葵「あれ?翼、課題終わったって言ってなかったっけ?」
翼「もし三葉や光希がいなくても、俺が幽太の遊び相手になってあげられるからな。…それに、少しでも葵や幽太と一緒にいたいんだよ。」
『少しでも葵と一緒にいたいんだよ。』
俺は同棲を始める時に翼が言ってくれた言葉を思い出した。
(一緒にいられる時間が増えた今でも、そう思ってくれているんだな。)
俺は翼の気持ちが嬉しかったし、自分も同じ気持ちでいることに気づかされた。
葵「…いつも一緒にいてくれてありがとう、翼。大好きだよ。」
翼「お、おう。急にどうしたんだ?」
葵「ふふ、伝えたくなっただけだよ。」
幽太「僕も翼にいちゃんのこと大好き!」
翼「…はは、モテる男はつらいなぁ。」
翼は満更でもなさそうに笑った。
(三人一緒にいられる時間を大切にしないとな。)
俺は改めてそう思った。
ゼミ室に光希の姿はなかったが、三葉は本を読んでいた。
三葉「あ、二人ともお疲れ様。今日も幽太君と一緒なんだね。」
葵・翼「お疲れ様ー。」
幽太「三葉にいちゃん、こんにちは。」
三葉「お、きちんと挨拶できたね。そんな幽太君にはお菓子をあげよう!」
幽太「わーい!」
初対面の時は恥ずかしがっていた幽太君も、すっかり三葉に懐いたようだった。俺はそんな幽太君の姿を嬉しく思う反面、少し寂しさも感じた。
三葉「…それにしてもいいなぁ、翼君も葵君も幸せそうで。」
葵「え、そうかな?」
三葉「うん。だって二人はお付き合いしてて、今はこんなに可愛い子供もいるんだもん。家族みたいで羨ましいよ。」
(そっか…。他の人達からも俺達は家族みたいに見えてるんだな。)
俺と翼が霊子さんの期待に少しずつ応えられているということを、三葉が教えてくれた。その嬉しさのせいで気づくのが少し遅れたが、俺は三葉に尋ねた。
葵「…なんで俺と翼が付き合ってるって知ってるんだ?」
三葉「ゼミの皆が知ってるよ?二人はいつも一緒にいるし、幽太君がゼミ室に来るようになってからはパパとママにしか見えないもん。」
翼「ま、これだけラブラブしてればバレるだろうな。」
(え、バレてないと思ってたの俺だけ?)
三葉「それでね、実はみんなにお願いがあるんだ。」
翼「お願い?」
三葉「僕、光希のことが好きなんだ。本当は伝えないままでいようと思ったんだけど、幸せそうなみんなを見てたらどうしても伝えたくなっちゃって。今度、遊園地に誘って告白しようと思ってるんだけど…。二人きりじゃ気まずいから、みんなもついてきてくれないかな?もちろん、遊園地のチケットは僕が買うから。」
(え、三葉は光希のことが好きだったのか!?)
翼「それは別にいいけど…。俺達がいると逆に告白しづらくならないか?」
(…動揺してないってことは翼は気づいてたんだよな?ひょっとして俺、鈍感?)
三葉「…実は観覧車の中で告白しようと思ってて。その時だけは僕と光希を二人きりにしてくれると嬉しいんだけど。」
翼「なるほどな、了解。」
三葉「その時以外は普通に遊んでいてくれれば大丈夫だよ。…葵君、聞いてる?」
葵「…ああ、うん。」
三葉「幽太君も巻き込んじゃってごめんね。でも、遊園地で遊んでてくれるだけでいいからね。」
幽太「…遊園地って楽しいところ?」
三葉「うん、いろんなアトラクションがあるからきっと楽しいよ!」
幽太「わーい、僕も行きたい!」
三葉「ふふ、喜んでくれてよかった。」
幽太「でも、なんで僕たちも連れていってくれるの?光希にいちゃんに好きって言うだけなのに。」
葵「…幽太君はまだ分からないかもしれないけど、誰かに好きって伝えることは難しいことなんだよ。緊張しちゃうし、相手も自分のことを好きでいてくれてるとは限らないからね。」
(実際、俺もそうだったからな。)
幽太「そっか…僕、応援するね!」
三葉「それは心強いね。ありがとう、幽太君!」
三葉「…じゃあ、遊園地に行くのは次の土曜日でいいかな?光希も大丈夫って言ってるし。」
翼「俺達もそれで大丈夫だ。」
葵「…悪いけど、俺達の集合時間は午後でも大丈夫かな?午前中からだと幽太君が疲れちゃうだろうから。」
(それに、そんなに長時間変化していられないだろうし。)
三葉「あ、そういえばそうだったね。じゃあそうしようか。」
(…なんか気になる言い方だな。)
三葉「じゃあ今度の土曜日はよろしくね!あ、葵君、課題の邪魔してごめんね。」
(忘れてたー!)
俺は課題に気をとられ、三葉の発言に感じた違和感のことは忘れてしまった。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
肌が白くて女の子みたいに綺麗な先輩。本当におしっこするのか気になり過ぎて…?
こじらせた処女
BL
槍本シュン(やりもとしゅん)の所属している部活、機器操作部は2つ上の先輩、白井瑞稀(しらいみずき)しか居ない。
自分より身長の高い大男のはずなのに、足の先まで綺麗な先輩。彼が近くに来ると、何故か落ち着かない槍本は、これが何なのか分からないでいた。
ある日の冬、大雪で帰れなくなった槍本は、一人暮らしをしている白井の家に泊まることになる。帰り道、おしっこしたいと呟く白井に、本当にトイレするのかと何故か疑問に思ってしまい…?
部室強制監獄
裕光
BL
夜8時に毎日更新します!
高校2年生サッカー部所属の祐介。
先輩・後輩・同級生みんなから親しく人望がとても厚い。
ある日の夜。
剣道部の同級生 蓮と夜飯に行った所途中からプチッと記憶が途切れてしまう
気づいたら剣道部の部室に拘束されて身動きは取れなくなっていた
現れたのは蓮ともう1人。
1個上の剣道部蓮の先輩の大野だ。
そして大野は裕介に向かって言った。
大野「お前も肉便器に改造してやる」
大野は蓮に裕介のサッカーの練習着を渡すと中を開けて―…
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる