狂い咲き

狂い咲き34

　彼の利き手があがると、頬を力任せに打たれる。


　でも私は怯まない。


　ＳＭが異常な性行動だとは私は断言しない。


　でも、一年前のことは、あまりに卑劣だ。


　一年前の出来事に、どれほど私が、苦しみ悩んだか。


「あの時、隼人が素直に打ち明けていたら私は隼人に答えなかったと思う」


「今は」


「わからない。でも、再会してよくわかった。あれほどのことをされても、隼人のことが忘れられなかった。すべてを過去にすることができなかった。でもね、隼人のやったことは、卑劣としか言えない」


　彼は静かに目を閉じた。躊躇いを打ち消すようにケインを振りあげる。


「打ちなさい」


　絶対に負けられない。負けては駄目だ。


「隼人のすべてに答えられる女性は、少ないと思う」


　次に、言葉を続けようとしたとき、彼は激しく私の身体中をケインで打ちつけ始めた。


　必死に私はくちびるを噛みしめた。なんとかして堪えようとする。


　しかし、あまりの痛みに負けそうだ。


　彼にどう伝えたらいいのだろうか。


　縄が軋みあがるほどに、ケインで打ちつけられる。


　疼きを教えた隼人を恨みたい。


　こころは強く拒むのに、


　なぜか、身体だけが、答えていった。


　言葉にしてしまうと綺麗ごとになってしまう。


　でもここは素直に、打ち明けなければいけない。


　激しく打ちつけられる痛みに、声を荒げながらも私は彼の手が止まるのをまった。


「どうして私を自由にしたの？！　逃げだしたのは隼人、あなた自身よ！」


　止めを刺すような一撃が、乳房を大きく揺らす。


　叩きつける激しい愛情があってもいい。


「隼人のすべてに答えること。それが愛情なの？　それとも自分の性行を満たすことができたのなら、どんな女性でもよかったの？」


　彼の動きが止まる。次の痛みに思わず私は目を閉じた。


　下顎を軽く掴まれると、彼の舌が、私のくちびるを強引に押し開いた。


「愚問」


　すべてを捧げきるには、あまりにも無情な答えだ。


　世の中には、お金で軽々と人を殺す人だっている。


　かと思えば、海外では、自分の臓器の一部を平然と売ってしまう者さえいる。


　対価さえあれば、自らの命を捨てる。