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黎明
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魔鳥が居座る大石橋。その橋が遠目に見通せる大河の岸でうごめく一対の影があった。
一つは小人、もう一つはたまごのシルエットをしている。卵型は音もなく浮いており、小人はその上に楽々と座っていた。
その二つの影は生い茂る草と木々の間から魔術灯で照らされた魔鳥をじっと見つめる。そして何かを決心し夜明け前の暗闇に消えていった。
日の沈んだ反対方向の空が白めきだしてくる。ユウトが眠る部屋まではその様子は伝わってこない。しかし木の板の上を歩いて近づく振動は板とベッドの足を伝いユウトの体を刺激した。
ユウトは目を覚ます。気配の方向に顔を向けてみればそれはディゼルだった。
「ディゼルか。もう時間かな」
「ああ、そうだ。体力と魔力の回復はどうだい?」
「うん・・・大丈夫だ。万全とは言えないけど十分回復している。これなら丸薬を使わなくても今のところ行けそうだよ」
ユウトは体の内側を覗き見るように手足の先まで意識を集中すると今現在の自身の魔力量を把握する。ディゼルの魔術具への魔力供給を行ったことでその感覚をより鮮明に実感できるようになっていた。
「わかった。では準備を始めよう」
レナの姿はなくユウトが寝た後すぐに出て行ったそうだとユウトはセブルから聞いた。
ディゼルはユウト用に装備を用意してくれている。魔術盾の魔力充填を行った机の上には革製の防具が置かれていた。ユウトはディゼルに手助けしてもらいながらそれを装備する。最も寸法の小さい物を用意してくれたということだったが細身の今のユウトの体には少し余裕がるぐらいだったが見た目ほど固さもなく柔軟なおかげで体になじみ動きやすいとユウトは感じた。
装備が終わるとディゼルは朝食の代わりにと湯を沸かして飲み物を作ってくれる。チョコという名称にユウトは非常に心躍らされた。正確にはユウトの知るチョコではなく香辛料の効いた滋養強壮剤といった飲み物だったが味は確かにチョコレートも含まれている。久々の甘みも感じることができユウトは非常に満足だった。
そして橋への門の扉の前に向かうと砦の中を通る街道沿いに人だかりがあり街道の中央にはクロノワ、ガラルド、ヨーレン、レナの姿がある。歩いてきたユウトに気づくとユウトとディゼルを輪に加えた。
「よし。そろったな」
ディゼル、ユウト、セブルを確認してクロノワが語りだす。
「最後の事前説明を行う。破壊目標は橋上の魔鳥だ。日の出とともに対岸の砦より魔鳥に対して陽動をかける。それを確認して私が襲撃の合図を出し、門が開かれディゼルの魔術盾で防御をしつつ魔鳥へ接近。ユウトの魔術剣で攻撃を行う。
注意してもらいことがある。
一つは橋への損傷をできる限り少なくして欲しい。これは中央への配慮だ。しかしできる限りでかまわん。魔鳥の討伐が最優先だ。
もう一つ、攻撃する部位について魔鳥の首元にはレナの槍によってできた傷がまだ確認できる。そこなら致命的な損傷を与えることができるはずだ。
最後に・・・」
クロノワの表情が険しくなる。
「絶対に死ぬなよ。手に負えないと思えばすぐに河に飛び込め。そこまではヤツも追ってこない。今回でダメでも次がある。人的資源を失ってまで倒さなければならない相手ではない。無理をするなよ」
「了解しました」
「わかった」
ディゼル、ユウトともクロノワへ返事を返す。クロノワの最後の言葉の重さにユウトは悲痛な感情の波を感じ取っていた。
「よし。準備を開始してくれ。作戦開始はもうすぐだ」
クロノワはそういうと河側の城壁の上へ向かっていく。入れ替わりにガラルド、ヨーレン、レナがユウトのもとに集まってきた。
「気分はどう?緊張してない?」
最初に声をかけてきたのはレナだった。
「緊張はちょっとしてるかな。でも魔獣と戦った時と比べれば今回は一人じゃない。随分と気持ちは楽だ」
ユウトは作戦前の緊張より目の前のレナによっておこる緊張の方が問題の比重が重かったが黙っていた。もしかしたらディゼル一緒に飲んだチョコのせいでいつも以上に敏感かもしれないと思う。
続いてヨーレン。
「重大な役目だけど無理はしないでくれ」
「ああ、わかってる。できることをやってくるよ」
最後にガラルド。
「能力に不足はない」
「が、がんばるよ」
それぞれと言葉を交わして別れた。
ディゼルの元には何やら小さな人々が集まっている。ユウトより少し背が低く横幅があり屈強そうな体つきに髭を蓄えていた。
その人たちがディゼルへ何かお願いしている。話し終わるとその人々はディゼルから離れていった。気になったユウトはディゼルに話しかける。
「今のは?」
「彼らが大石橋の整備担当員のドワーフ達だ。あの大橋は彼らが作った。だから彼らにとっては作品でもあるし、子供みたいなものなんだと思う」
「守ってくれって?」
「いや、壊れても自分たちがすぐに直して見せるから存分にやって欲しいそうだ。心配しないでくれと」
「そっか・・・」
ユウトは自身の気持ちを言い表す言葉が思いつかない。ただどうしても、命がかかるこの作戦を成功させたいと思った。
一つは小人、もう一つはたまごのシルエットをしている。卵型は音もなく浮いており、小人はその上に楽々と座っていた。
その二つの影は生い茂る草と木々の間から魔術灯で照らされた魔鳥をじっと見つめる。そして何かを決心し夜明け前の暗闇に消えていった。
日の沈んだ反対方向の空が白めきだしてくる。ユウトが眠る部屋まではその様子は伝わってこない。しかし木の板の上を歩いて近づく振動は板とベッドの足を伝いユウトの体を刺激した。
ユウトは目を覚ます。気配の方向に顔を向けてみればそれはディゼルだった。
「ディゼルか。もう時間かな」
「ああ、そうだ。体力と魔力の回復はどうだい?」
「うん・・・大丈夫だ。万全とは言えないけど十分回復している。これなら丸薬を使わなくても今のところ行けそうだよ」
ユウトは体の内側を覗き見るように手足の先まで意識を集中すると今現在の自身の魔力量を把握する。ディゼルの魔術具への魔力供給を行ったことでその感覚をより鮮明に実感できるようになっていた。
「わかった。では準備を始めよう」
レナの姿はなくユウトが寝た後すぐに出て行ったそうだとユウトはセブルから聞いた。
ディゼルはユウト用に装備を用意してくれている。魔術盾の魔力充填を行った机の上には革製の防具が置かれていた。ユウトはディゼルに手助けしてもらいながらそれを装備する。最も寸法の小さい物を用意してくれたということだったが細身の今のユウトの体には少し余裕がるぐらいだったが見た目ほど固さもなく柔軟なおかげで体になじみ動きやすいとユウトは感じた。
装備が終わるとディゼルは朝食の代わりにと湯を沸かして飲み物を作ってくれる。チョコという名称にユウトは非常に心躍らされた。正確にはユウトの知るチョコではなく香辛料の効いた滋養強壮剤といった飲み物だったが味は確かにチョコレートも含まれている。久々の甘みも感じることができユウトは非常に満足だった。
そして橋への門の扉の前に向かうと砦の中を通る街道沿いに人だかりがあり街道の中央にはクロノワ、ガラルド、ヨーレン、レナの姿がある。歩いてきたユウトに気づくとユウトとディゼルを輪に加えた。
「よし。そろったな」
ディゼル、ユウト、セブルを確認してクロノワが語りだす。
「最後の事前説明を行う。破壊目標は橋上の魔鳥だ。日の出とともに対岸の砦より魔鳥に対して陽動をかける。それを確認して私が襲撃の合図を出し、門が開かれディゼルの魔術盾で防御をしつつ魔鳥へ接近。ユウトの魔術剣で攻撃を行う。
注意してもらいことがある。
一つは橋への損傷をできる限り少なくして欲しい。これは中央への配慮だ。しかしできる限りでかまわん。魔鳥の討伐が最優先だ。
もう一つ、攻撃する部位について魔鳥の首元にはレナの槍によってできた傷がまだ確認できる。そこなら致命的な損傷を与えることができるはずだ。
最後に・・・」
クロノワの表情が険しくなる。
「絶対に死ぬなよ。手に負えないと思えばすぐに河に飛び込め。そこまではヤツも追ってこない。今回でダメでも次がある。人的資源を失ってまで倒さなければならない相手ではない。無理をするなよ」
「了解しました」
「わかった」
ディゼル、ユウトともクロノワへ返事を返す。クロノワの最後の言葉の重さにユウトは悲痛な感情の波を感じ取っていた。
「よし。準備を開始してくれ。作戦開始はもうすぐだ」
クロノワはそういうと河側の城壁の上へ向かっていく。入れ替わりにガラルド、ヨーレン、レナがユウトのもとに集まってきた。
「気分はどう?緊張してない?」
最初に声をかけてきたのはレナだった。
「緊張はちょっとしてるかな。でも魔獣と戦った時と比べれば今回は一人じゃない。随分と気持ちは楽だ」
ユウトは作戦前の緊張より目の前のレナによっておこる緊張の方が問題の比重が重かったが黙っていた。もしかしたらディゼル一緒に飲んだチョコのせいでいつも以上に敏感かもしれないと思う。
続いてヨーレン。
「重大な役目だけど無理はしないでくれ」
「ああ、わかってる。できることをやってくるよ」
最後にガラルド。
「能力に不足はない」
「が、がんばるよ」
それぞれと言葉を交わして別れた。
ディゼルの元には何やら小さな人々が集まっている。ユウトより少し背が低く横幅があり屈強そうな体つきに髭を蓄えていた。
その人たちがディゼルへ何かお願いしている。話し終わるとその人々はディゼルから離れていった。気になったユウトはディゼルに話しかける。
「今のは?」
「彼らが大石橋の整備担当員のドワーフ達だ。あの大橋は彼らが作った。だから彼らにとっては作品でもあるし、子供みたいなものなんだと思う」
「守ってくれって?」
「いや、壊れても自分たちがすぐに直して見せるから存分にやって欲しいそうだ。心配しないでくれと」
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ユウトは自身の気持ちを言い表す言葉が思いつかない。ただどうしても、命がかかるこの作戦を成功させたいと思った。
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