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定番になりつつある異世界転生【学校編】ー3年目ー

空を仰いじゃいました。 side story

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side ジャン

俺達はみんな傲慢だと思う。

この世界は自分達、人族こそがこの世界の支配者だと思っている。

俺達は俺達以外の存在を認識しない。

自分達、人族以外に心を砕かない。

むしろ同じ人族でも誰かに心を傾けるのが下手くそだと思う。

まして他種族なんて…

アーサーとテトが獣人族なのを知った時は他種族だと全然実感が無かった。

一緒に居るうちに2人の凄さを知っていってこれが人族とは違う他種族なのかと驚いた。

でも俺があの地獄から抜け出してからもっと驚いているのは…
他種族とかじゃなく…

レイチェル様にだ。

あの人は、人族とか王族とか女の子とかの枠に嵌められず、〝レイチェル〟という勇逸無二の種の様に思う。

その勇逸無二は、とても優しく、とても強く、とても寂しがり屋で、とても愛しい。

常に誰かの為に動いていて、それが自分の為だと優しく笑う。

まるで、天国があるならこんな場所なんじゃないかと思ってしまう今の俺の居場所は、勝手に用意される場所ではなく努力して自分で作らなければいけないのだとその人に教わった。

母が笑ってる。

ラインハルトが笑ってる。

俺が笑ってる。

たまに何かが込み上げてきて俺の頬を濡らす。

でも、その涙は今まで流していた涙と違っていてとても温かい。

俺の罪ややってしまった事は永遠に消えない。

レイチェル様はそんな俺に手を差し出してくれる。

間違わない人間なんていないと優しく笑いながら。

昔の自分を思い出すと恥ずかしいし、なんとも言えない気持ちになって眠れなくなる。

でも、そんな夜も明けて必ず朝がくる。

母におはようと言う。

ラインハルトにおはようと言う。

2人がおはようと返してくれる。

レイチェル様に挨拶する。

笑顔の後、何も言わないのに頭を撫でられる。

頑張りすぎずに頑張ってっと。

レイチェル様は毎日寝る時間もなく色んな事をしている。

毎日そんなレイチェル様に付き合って行動したいが止められている。

アーサーとテトだけが毎日付き合う事を許されていてそれがとても羨ましい。

テトはたまに留守番しているのを見るが、アーサーが置いて行かれた所を見た事がない。

でも、この前バベルの時にアーサーが留守番というより置いていかれたらしく、それから以前に増して2人は過保護になっているみたいに見える。

レイチェル様はバベルにとても甘く、とても優しく接しているように見える。

バベルもレイチェル様にだけ心を許している様だ。

今だにレイチェル様以外には一切自分から話しかけないし、話しかけられても一言、二言返ってきたら良い方だ。

人と目を合わす事もなく、まだ俺も一度も目が合った事が無い。

バベルの犯した罪は重過ぎて…どんな償いが必要かで揉めていた時にレイチェル様が言っていた。

「私の元居た世界でも罪を犯した人の償いに、正しい答えなんて無かったよ。死刑っていう制度もあったけどそれについても色んな議論があったし。」

罪を犯した時の償い、代償を決めるのはとても難しいと改めて思った。

罪を犯してその人を裁けば全て解決かと言えばそうではないからだ。

今だに後遺症に苦しむ人や、死亡した人数は完全には把握出来ていない。

レイチェル様自身も怪我をしたのにその事は全く気にしないでっと言っていた。

なんだか、アーサーとテトが過保護になるのがよく分かる。

とても強くて、とても優しい、とても愛しいその人は自分が傷つく事には本当に無頓着で…。

それがとても歯痒い。

俺や他の誰かにとってレイチェル様は世界の全てなんだと自覚して欲しい。

レイチェル様の瞳の色と同じ空を見上げながら彼女の事を思った。

晴れ渡る青い空が俺の瞳に映る。

いつもどんな時でも顔をあげればその空は俺の瞳に映る。


sideラインハルト

空を仰ぎながら隣に寝転がっているジャンを横目に盗み見る。

3年前では考えられない今の生活の中でいつも隣に居てくれる大事な友人の顔が全く知らない人に見える時がある。

そんな時は決まってジャンはレイチェル様の事を考えていると思う。

パンデミックが起こってやっと落ち着いた今日この頃は学園の事に多くの時間を使っている。

でもそんな時間の合間にこんな風にジャンと庭園の芝生に寝そべる時間もある。

こんな時間を過ごせるなんて以前なら想像すらできなかった。

気持ちよく風を感じているとその風に運ばれてどこからともなく歌声が聞こえてくる。

今年からは専門的な授業や学園自体の活動も幅が広がり色んな活動に手をつけている。

前から劇団などの運営もしていたが、それ以外でもクラブ活動で音楽部が出来たり、娯楽としてのクラブの幅も広がっている様に思う。

レイチェル様は、音楽や書物という文化は自分が死んだ後も残り半永久的な物なのでこれからもっと充実させていきたいと言っていた。

耳に心地よい歌声が子守唄の様で目を閉じるとそのまま寝てしまいそうな誘惑に誘われる。

くっついてしまいそうな瞼をこじ開けるとレイチェル様の瞳と同じ色の空が広がっている。

歌声が先程よりはっきり聴こえてくる。


【進もう】

【たとえ恐怖に立ち止まってもまた歩き出す】

【背中を押されて】

【前を歩く人の背中を見つめて】

【前を歩く人の背中を追いかけて】

【足取りが止まる】

【足取りが軽くなる】

【全てが嫌になる時もある】

【最高に嬉しい時もある】

【目を閉じて】

【目を開く】

【目の前の君を見つめ為に】

聴こえてるくる歌声も素敵だがレイチェル様の歌をまた聴きたいと思いながらまた瞳を閉じた。


【夜は明ける】

【全ての人に平等に夜と朝がくる】

【夢に旅立とう】

【瞳を閉じて】













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