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定番になりつつある異世界転生【学校編】ー1年目ー
16話 出逢っちゃいました。sideキャロル
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私はシエロ王国の王女として産まれた。
王女といっても小国だし、我が国の主な産業は畜産業。
国の人口より牛さんの数の方が多い。
豚や羊や鳥もそりゃ沢山いる。
王族、貴族といっても大国の平民と暮らしは変わらないと思う。
違いは家が大きい位かな?
大好きなお父様、お兄様2人にお姉様、可愛い妹に生意気な弟と仲良く暮らしている。
お母様は弟を産んだ後、亡くなってしまった。
寂しいけど沢山の家族を残してくれた。
そして、弟の乳母の娘でわが国の宰相の娘のアンナという私の親友で大好きな友達も居てくれた。
大好きな家族と大好きな友達、そんな幸せな日常が変わらず、ずっと続いていくと思っていた。
ある時、大国クリスタ国から使者が来た。
お父様達は凄く慌てていてそれを見てアンナと大笑いした。
クリスタ国は畜産業に興味があってぜひ我が国で学ばせて欲しいとの事だった。
その代わりお金や農作物などを提供すると…
凄い丁寧にお願いしていた。
大国で豊かで有名なクリスタ国が牛さんの事を私達に学ぶってなんだか可笑しかった。
派遣された人達はとても丁寧で、一生懸命牛さん、豚の世話を毎日頑張っていた。
その人達の中に凄い偉い人が居たと思う。
だって醸し出す空気が私達と全然違うもの。
それに牛小屋で毎日チェロを弾いているの。
可笑しくて、でもとっても上手くて良くアンナと聴きに行った。
そもそも何で我が国に牛さんや家畜の世話やミルクの加工の仕方などを学びにきたのか聞いたら…
「我が国の王女の為です。」
凄い爽やかな笑顔で、そう予想偉い人は言っていた。
なんか凄い嬉しそうだったけど全然意味が分からなかった。
それ以上は聞いても笑って教えてくれなかった。
クリスタ国の王女といえば確か…いや、知らなかったのでお父様に聞いた。
なんでも2歳の王女がいるらしい。
なるほど…2歳の王女に美味しいミルク粥を食べさせたいから頑張ってるのか…
凄い熱意だわ。
さすが大国は考える事が違うのね。
そんな事を思っていると約1年間毎日、本当に一生懸命頑張ってお世話をしてた人達がクリスタ国に帰る事になった。
もうミルク粥を食べる歳ではなくなっているんじゃないかな?っと心配になった。
あんなに一生懸命頑張ったのに…
私はその時知らなかった。
この出来事が私達、我が国の今後を大きく変える出来事だった事を………。
お父様達がとても大変な思いをしていた事を……。
クリスタ国の人達が居た時から変化は起きていた。
私が知らなかっただけなのだ。
甘く美味しく、前より沢山とれるミルク、柔らかく味の濃くなった豚肉、香りのいい脂のきめ細かい牛肉。
クリスタ国の人達は、まずは少数から餌の中に我が国で雑草の様に生えているハーブを入れたらしい。
まずは我が国ですぐお金をかけずに使える物で試したらしい。
条件は今後の為、現地で元手がかからない物で半永久に取れそうな物。
続いて、大陸の端の海の近くだったので沢山とれるこんぶ。
森に沢山ある凄い酸っぱいオレンジ。
全て王女からの指示だったそうだ。
もしこの計画が失敗した場合、損害賠償はクリスタ国が全て負う事を事前条件にして最初は小規模、その後は大規模な実験をしていたらしい。
チェロを聴かせた牛、聞かせてない牛の違い。
我が国の農作物とクリスタ国の農作物の違い。
海の近くだとミネナルなる物が入っていて違うらしい。
クリスタ国の新しい農作物もこちらで育てて牛さん達にあげる場合は違いが出るらしい。
これの20倍は長い研究結果がお父様の机の上に《ブランド化計画》と書かれてまとめて置かれていた。
国の畜産業の人達は今までと同じ作業量とそれにちょっとプラスしただけで収益は5倍になった。
国の収益も5倍になった。
ずっと壊れていた橋を直したり、国境の検問所の小屋を直したり、贅沢の為ではなく、より良い暮らしになる様にそのお金は使われた。
音楽隊も出来て、祭りの時以外も何処からかヴァイオリンやチェロの音楽が聴こえてくる。
前より笑顔が増えた気がする。
牛さん達も前より嬉しいそうだ。
お父様達は最初は胃潰瘍や髪の毛が抜け落ちるほど心配や気苦労があったらしいが今はちょっと前より忙しく働きながら笑っている。
みんなが笑顔になるなんて《ブランド化計画》はなんて素晴らしいだろう。っとアンナと良く話していた。
そして、この《ブランド化計画》を考えたのは当時2歳のクリスタ国の王女らしい。
宝玉と言われる程、素晴らしい才能を3歳にして発揮しているらしい。
王子の方も既に王の杖と呼ばれて色んな政策を考えているらしい。
私達と同じ王族でもまるで違う……
お姉様は最近は男の人の事ばかり考えているみたいだし、お兄様の1人はお父様のお仕事を頑張って手伝っているけど、もう1人のお兄様はヴァイオリンばかり弾いてフラフラしている。
前より豊かで笑いが増えた1年が過ぎた時またクリスタ国から正式な使者がお父様の元を訪れた。
私達も呼ばれてアンナと手を繋ぎながら使者の話を聞いた。
なんでも今度クリスタ国は国営で学校という教育機関を作るらしい。
そこは年齢、身分など関係なく誰でも通えるらしい。
王族と貴族の方はそれ相応の警備がつく事、勉学や警備の差の為大まかに平民と貴族用で二つの学校を作る予定だという事だった。
それ以外にも学校についての説明を色々してくれた。
話を聞きながら鼻の穴が興奮で膨れるのが分かった。
アンナと繋いでる手は汗でべちょべちょになっていた。
2人とも興奮したからだろう。
アンナと顔を見合わせて笑い合った。
お父様達にお願いして2人で学校に通う許可を貰った。
お兄様達とお姉様は興味ない様だった。
妹と弟は行きたがったが、もう少し大きくなってから。っと止められていた。
使者から詳しく説明されてもお父様達は、拭いきれない不安があるみたいだった。
遠く離れた大国クリスタ国。
国も出た事がない14歳の娘達。
大陸でも小国の名ばかりの王族と貴族。
実際にかかる費用など…
でも2年前の事があったのでクリスタ国を信用してお父様達は不安でも私達を送り出してくれた。
私達は貴賓宮という王宮の素敵な白亜の宮でアンナと続き部屋を用意された。
一緒に連れてきた侍女なんて居なくて王族として恥ずかしかったけど、全然そんな事感じない様に配慮してくれていた。
専属の侍女がついて優しく世話を焼いてくれた。
クリスタに来て嫌な気持ちや悲しい気持ちになった事は一度もなかった。
お父様達が心配しないように手紙も高速で届く様にしてくれていた。
クリスタに着いて1週間アンナと毎日楽しく過ごした時、歓迎の宴が行われる事になった。
到着の時に王様と王妃様には挨拶をしていたが、まだ王女と王子にはお会い出来てなかった。
遠くから庭などで見かける事があっても学校開校前もあってか凄い忙しく動き回ってる様だった。
でも、お二人共歓迎の宴には参加されるらしい。
アンナと嬉しくて、その日の寝る前のお喋りは盛り上がった。
でも着ていく服が持っている服だと失礼にならないか不安になった。
すると、王妃様と王女から貴賓宮にいる学校入学予定者にドレスが贈られた。
ドレス以外の装飾品なども用意されていた。
これには、アンナと浮かれて鏡で合わせてくるくる踊ってしまった。
私は薄いオレンジ色のドレスでアンナは薄い緑色のドレスでどちらのドレスもデザインが違うけど、とっっっても素敵だった。
合わせてみて、自分達の体型にぴったりだった。
採寸もしてないのに…これが噂の魔法なのかしら?っと思った。
お父様に喜びの手紙を走り書きで書いた。
男子にも王様と王子からウエストコートなどが贈られたらしい。
侍女が教えてくれた。
王族として、マナーやダンスを習っていて良かった。
アンナも一緒に習っていたので問題ない。
もし不安なら講師の先生も用意してくれるそうだ。
本当に痒いところに手が届くというか、言わなくても配慮してくれるし、不安を言うとすぐ解決してくれる。
本当にクリスタ国に来れた事に感謝した。
アンナと毎日、眠る前に感謝の祈りを捧げた。
歓迎の宴は、クリスタ国内の貴族の方も招かれ成人前の学生達に配慮して、お昼に開催された。
薔薇の咲き乱れる庭園で行われた歓迎の宴は、まるで最近読んだ絵本の中の様だった。
見た事のない色とりどりの食べ物、綺麗に飾られたリボンやレース。
そして、とても綺麗に咲き乱れる白い薔薇。
綺麗に着飾る大人や子供達。
素敵過ぎてアンナと繋いだ手が、今度は緊張でビチャビチャになった。
落ち着け私。とりあえず主催者の王族の方々が来たら挨拶を順番にして、後はご飯を楽しめば良いって侍女さんが言っていた。
「あなた達見かけない方だけど。どちらの方ですか?」
真っ赤なドレスにキツネの目の迫力のある同い年位の美少女が、女の子を引き連れて私達に話しかけてきた。
「初めまして。私達シエロ王国から来ました。キャロル・テスタロッサと申します。」
腰を折りカーテシーをする。
「同じくシエロ王国から来ました。アンナ・ボーデンと申します。」
アンナも腰を折ってカーテシーをする。
「ふっ。ぁあ、田舎の家畜しかいない小国の方々でしたか。だから田舎臭いんですね。」
顔をすぐあげれなかった。
クスクスと馬鹿にした笑い声が聞こえてくる。
「確かに私の国は小国で家畜が沢山いますけど、笑われる様な事ではないと思いますが…」
「あら、ごめんなさい。手なんか繋いで子供みたいだし、可笑しくて笑ってしまいましたわ。」
初めてクリスタ国に来て嫌な気持ちになった。
そにしても、初対面でこの子失礼過ぎじゃないかしら。
「あの、失礼ですが、あなたは?誰ですか?」
横目で見るとアンナが俯いて手を組み顔を真っ赤にしていた。
アンナが泣きそうだ。
アンナの方は私より気弱だし何も言い返せない様だった。
アンナにこんな顔させるなんて…怒りが沸々沸き起こる。
アンナに手を差し出すが首を横に振られてしまった。
先程の彼女の言葉で恥ずかしくなっている様だった。
「私の事も分からないなんて本当、田舎者ですわね。私は我がクリスタ国の宰相の娘でヴァネッサ・クレインと申します。良く覚えておく事ですわね。」
凄い自信満々なんだか言ってる事が所々可笑しくないだろうか?
普通、他国同士なら名乗り合わない限り、名前なんて王族以外分かる訳ないだろうに。
それにこれでも小国の王族。
彼女は大国でも宰相の娘であるなら私の方が身分が高い。
なんか彼女の態度が段々可笑しく思えてしまって私は笑ってしまった。
「ふふふっ。ヴァネッサ様よろしくお願いします。ヴァネッサ様も学校に通われるのですか?」
すると目をもっと吊り上げて彼女は私を睨んだ。
「よくも私を笑ったわね。あなた何様なの?失礼だわ。」
え。さっきあなたも笑ってたし会話に全くなっていない。後ろの女の子も
「そーよ、そーよ!」っと言っている。
なにかしらこれ。
凄い状況になってしまっている気がする。
「気分を害しましたわ。謝ってくださらない?」
「そーよ、そーよ!」っと言っている。
これって謝る必要あるのかな?さっき失礼な事言ったのは彼女だし…。
それに、彼女は気づいてないけど身分の高い私の方が謝るのは障りがある。
でもわざわざ私が王族だ。なんて言うのもなんか嫌だなっと考えあぐねていると騒めきが静かになりみんなの視点が一点に集まった。
そこには、眩い赤髪を靡かせ、赤いマントを翻し、金の薔薇の刺繍された白いテールコートとシャツを身に纏い、胸に白い薔薇を刺したアレクサンダー国王様と…白い透ける幾重にも重なるレースに金の薔薇の刺繍が腰まで伸び、重さなんてきっとないと思える柔らかなウェーブの金髪を半分おろし、残り半分を金の飾り紐で纏めてあげている王妃様が見えた。
挨拶の時も綺麗だと思ったが、庭園に居て外の光を受けたお二人は本っっっ当に本っっっっ当に綺麗で素敵過ぎる。
アンナも顔を上げてわぁっと微笑んでいる。
その光り輝くお二人の少し後ろには、軽やかなウェーブのかかる金髪に、空色のウエストコートと白いシャツに金の薔薇の刺繍、胸元に白い薔薇の王子と、同じくウェーブがかかった金髪に金の刺繍がされた白いリボンをつけて、王妃様と同じデザインの白いレースが重なったドレスに金の薔薇の刺繍、腰元には王子と同じ空色のレースのリボンを巻いた王女が歩いていた。
凄っっっっい可愛い。
もうお人形だ。
綺麗さもありつつ可愛い。
なんてなんて可愛いんだろう。
うちの妹も可愛いと思っていたが王女の可愛さは規格外だった。
思わずアンナに手を伸ばす。
アンナも今度は握り返してくれた。
顔を見合わせて同じ事を思ってる事が分かる。
綺麗過ぎる。素敵過ぎる。
みんなが自然に腰を折った。会場まで来るとアレクサンダー国王が話し始める。
「本日は晴天でヘリオスも我々を祝福してくれているのだろう。今日は自国を離れて我が国に来てくれた、他国の方々への歓迎の宴だ。みな、子供達は同じ学校に通う学友としてぜひ交流を深めて貰いたい。みな、楽しい時間を、過ごして欲しい。忙しい中時間を作ってくれた全ての者達に感謝を。」
アレクサンダー国王が話して間に配膳の方達が全ての人に飲み物を配っていた。
アレクサンダー国王も飲み物を受け取り空に掲げる。
「乾杯」
みんなも飲み物を掲げてそれに答えた。
ヴァネッサさんがすぐさま慌てた用に私達の前から去ろうとする。
ぇ?さっきまであんな事言ってたのにいったいどーしたのかと思ったら私達のすぐ目の前に王女が立っていた。
「初めましてレイチェル・サン・ヴィクトリアと申します。キャロル王女とアンナ様にはぜひお会いしたいと思っていました。不躾にお声かけして申し訳ありません。」
完璧なカーテシーをしてレイチェル王女は天使の様に微笑んだ。
レイチェル様に声をかけようとする人の壁に阻まれて去れなかったのか、まだ横にいたヴァネッサさんに振り向くと。
「何やら、ヴァネッサ様とお話し中みたいでしたが、何を話されていたんですか?私もぜひ仲間に入れてください。」
ヴァネッサさんは諦めた様にこちらを振り向くと先程迄とは全く違う苦笑いを浮かべていた。
「これはレイチェル様。お久しぶりです。挨拶をさせて頂いていただけですわ。ねぇ?」
私に同意しろと目で訴えていた。
「そうなんですか?そうですよね。私の耳には貴族の令嬢が言うなんて信じられない、ましてや王女に言うのは余計信じられない田舎者っていう言葉が聞こえてきた気がしたんですが…やっぱり気のせいですよね?」
「まぁそんな言葉をおっしゃる方が居たんですが?信じられませんね。」
「シエロ王国は素晴らしい国です。その素晴らしい国を侮辱する言葉を吐くと言う事は自分の無知を教えている様なものだとお分かりになった方が宜しいですよ。」
それまで微笑んでいたレイチェル様がヴァネッサさんに笑顔なしで厳しい目つきで言い放った。
ヴァネッサさんは顔を赤くして失礼します。っと言って人垣を強引に割って去って行った。
「嫌な気持ちにさせてしまって本当にすみません。アンナ様も本当にすみません。彼女は……ちょっと変わっていて。」
「レイチェル様が謝られる事ではありませんわ。」
「いえ、我が国の貴族としてあの様な振る舞いは許されません。学校で少しでも学んでくれたら嬉しいのですが…。」
苦笑いで笑いかけてくれる。
目の前のレイチェル様は背こそ私達より低いが話す事はまるで大人だ。
とても4歳だと言われても信じられない。
でもレイチェル様の雰囲気がそれを違和感なく見せている。
「キャロル様とアンナ様には本当にぜひお会いしたかったので、我が国に来てくださって嬉しいです。」
「私達もレイチェル様とお会いしたかったです。」
「はい!お話ししたかったです。」
アンナも笑顔でレイチェル様に話しかける。自己紹介をしようとしたら大丈夫ですと笑ってくれた。
「本当ですか?そう言って頂けると嬉しいです。今日はゆっくり話せませんが学校が始まったらその機会もあると思います。ぜひその時お話しさせてください。」
そう言って斜め後ろの紳士に話しかけるとレイチェル様はまた微笑んだ。
「色々自国と勝手も違って大変だと思うので、彼を2人のエスコートにお連れください。料理の説明など聞きながらゆっくり楽しんでいってください。」
そう紹介されて膝を折ってくれたのは我が国でチェロを引いていた予想偉い人だった。
「お久しぶりです。キャロル様、アンナ様。エスコート役を拝命しましたルイ・フェルナルトです。宜しくお願いします。」
「彼から素敵なお二人のお話しを良く聞いていたんですよ。何か困った事があったら彼に言ってください。」
去り際に、お二人ともドレスとてもお似合いです。っと言ってくれた。
先にドレスのお礼を言わなければいけないのは私達なのに…マナーが全然なっていなかったと後悔した。
その後は、美味しい見た事ない料理をルイさんの詳しい説明を聞きながら楽しんだり、同い年や歳の近いクリスタ国の貴族の令嬢にルイさんが紹介してくれて楽しくお喋りしながら過ごせた。
王様、王妃様への挨拶もルイさんがエスコートしてくれて無事にこなせた。
カイル王子にも挨拶したが緊張して良く覚えていない。
でも優しく歓迎の言葉を言ってくれたのは覚えている。
夢の様な時間はあっという間に終わり、その日の夜のおしゃべりはアンナと終わらなかった。
ヴァネッサさんには、嫌な気持ちにさせられたがレイチェル様が早速と助けてくれてまるで王子様みたいだった。
聞こえてるはずない会話を、どうやってレイチェル様は知ったのかアンナと謎解きに熱中した。
ヴァネッサさんは、国で見た事がある怯えてる子犬がよく吠えるのと一緒に感じて、全然気にならなかった。
また何か言われても大丈夫だ。
それにお話した他の貴族の令嬢達はみんなとっても優しく、話しやすかったし素敵な方々だった。
疲れてるはずなのに、話が止まらず真っ黒な空が薄く白くなってからアンナと同じベットで気を失う様に寝てしまった。
学校が始まる朝、とっても素敵な白と金を基調とした制服に着替えて貴賓宮の正面玄関に行くと馬車が渋滞していた。
歓迎の宴では同性の方ばかりとお話ししていたが貴賓宮にいるのは男性の方が多い様だ。
私とアンナは最後で良いと正面玄関のすぐ横に順番待ちの為なのか開放されている客間に入ろうとする。
すると、栗色の髪に金の目の端正な顔立ちの男子に声かけられた。
制服がまるでその人の為にしつらえた様に完璧に着こなしている。
レディ達は先にとエスコートしてくれた。完璧な紳士だ。
初めてレディと言われて胸がドキドキした。
授業は楽しくてあっという間に過ぎた。
楽しすぎてはしゃいだせいなのかお腹がペコペコになりながら食堂というご飯を食べる場所に行った。
何から何まで知らない事、新しい事で目まぐるしいがとっても楽しい。
アンナと笑顔で顔を合わせて笑う。
アンナも凄い楽しんでいる事がわかった。
私はオムライス。アンナはトルティーヤという食べ物を注文して綺麗なテラス席に座る。
すると、レイチェル様が声をかけてくれた。
歓迎の宴でゆっくり話そうって言っていた事を社交辞令じゃなくて、気にしてくれていたのかと嬉しくなる。
興奮気味に楽しく色んな話をした。
アンナもあまり普段は私以外には話題を振ったりしないのに沢山質問したり感想を言ったりしていた。
やはり、じっくり話しをしてみても4歳とは感じなかった。
同い年…いや年上にすら感じる事が度々あった。
それから学校生活は驚きと、楽しみの連続で私は2週間に一度書こうと決めていたお父様への手紙は、毎回10枚は書きたい出来事が出来た。
それは卒業まで変わらない私の習慣になった。
アンナも書く手紙がいつも私より厚くなっている。
定期的にレイチェル様は私達に声をかけてくれてお昼ご飯をご一緒した。
貴賓宮でもみんなで食べる食堂みたいな場所があってそこにもレイチェル様は定期的に参加されていた。
よく観察しているとレイチェル様の側には銀髪の青年と黒髪の少年がよく居る事が分かった。
午後のカリキュラムで一緒になった時は必ずどちらかの方と一緒に居た。
私達や他のご令嬢、御子息ともよく話して仲良くしてくれたが、彼らの前ではレイチェル様は全く違う顔をしていた。
彼らと私達の違いはいったいなんなのか…
ある時、その銀髪の青年アーサーと黒髪の少年テトとお昼ご飯を外で一緒にする機会があった。
私は思い切って聞いてみた。
私達とその2人との違いはなんなんですか?っと。
他にもサルーン様達が居たけど我慢できずに聞いてしまった。
レイチェル様は少し困った後に建前なしで正直に聞きたいですか?っと言った。
勿論っと、その場に居た全員が声を揃えて返事をした。
「皆さんは心から大切な友達です。でも違いがあるとすれば…それは……私はみなさんを守らなければいけない存在だと思っています。でも、アーサーとテトは守る必要を感じてなくて、肩を並べた相棒だと思っているんだと思います。
もし、キャロルが違いを感じているとしたらそこかもしれません。
でもだからって、皆さんが大事じゃないとかそうじゃないですよ!大好きですから!!」
レイチェル様は焦りながら、私達をどれだけ大切に思っているか話してくれた。
レイチェル様が言う事はもっともだった。
私達は何度もレイチェル様に助けて貰っている。
悔しかった。
私もレイチェル様と肩を並べたかった。
私達の日常を変えた人。
私達を何度も助けてくれた人。
私達に笑う時間を増やしてくれた人。
私達に驚きと喜びをくれる人。
私達の世界を変えてくれた人。
初めて憧れて、認められたいと思った人。
レイチェル・サン・ヴィクトリア
私はその人に出逢った。
王女といっても小国だし、我が国の主な産業は畜産業。
国の人口より牛さんの数の方が多い。
豚や羊や鳥もそりゃ沢山いる。
王族、貴族といっても大国の平民と暮らしは変わらないと思う。
違いは家が大きい位かな?
大好きなお父様、お兄様2人にお姉様、可愛い妹に生意気な弟と仲良く暮らしている。
お母様は弟を産んだ後、亡くなってしまった。
寂しいけど沢山の家族を残してくれた。
そして、弟の乳母の娘でわが国の宰相の娘のアンナという私の親友で大好きな友達も居てくれた。
大好きな家族と大好きな友達、そんな幸せな日常が変わらず、ずっと続いていくと思っていた。
ある時、大国クリスタ国から使者が来た。
お父様達は凄く慌てていてそれを見てアンナと大笑いした。
クリスタ国は畜産業に興味があってぜひ我が国で学ばせて欲しいとの事だった。
その代わりお金や農作物などを提供すると…
凄い丁寧にお願いしていた。
大国で豊かで有名なクリスタ国が牛さんの事を私達に学ぶってなんだか可笑しかった。
派遣された人達はとても丁寧で、一生懸命牛さん、豚の世話を毎日頑張っていた。
その人達の中に凄い偉い人が居たと思う。
だって醸し出す空気が私達と全然違うもの。
それに牛小屋で毎日チェロを弾いているの。
可笑しくて、でもとっても上手くて良くアンナと聴きに行った。
そもそも何で我が国に牛さんや家畜の世話やミルクの加工の仕方などを学びにきたのか聞いたら…
「我が国の王女の為です。」
凄い爽やかな笑顔で、そう予想偉い人は言っていた。
なんか凄い嬉しそうだったけど全然意味が分からなかった。
それ以上は聞いても笑って教えてくれなかった。
クリスタ国の王女といえば確か…いや、知らなかったのでお父様に聞いた。
なんでも2歳の王女がいるらしい。
なるほど…2歳の王女に美味しいミルク粥を食べさせたいから頑張ってるのか…
凄い熱意だわ。
さすが大国は考える事が違うのね。
そんな事を思っていると約1年間毎日、本当に一生懸命頑張ってお世話をしてた人達がクリスタ国に帰る事になった。
もうミルク粥を食べる歳ではなくなっているんじゃないかな?っと心配になった。
あんなに一生懸命頑張ったのに…
私はその時知らなかった。
この出来事が私達、我が国の今後を大きく変える出来事だった事を………。
お父様達がとても大変な思いをしていた事を……。
クリスタ国の人達が居た時から変化は起きていた。
私が知らなかっただけなのだ。
甘く美味しく、前より沢山とれるミルク、柔らかく味の濃くなった豚肉、香りのいい脂のきめ細かい牛肉。
クリスタ国の人達は、まずは少数から餌の中に我が国で雑草の様に生えているハーブを入れたらしい。
まずは我が国ですぐお金をかけずに使える物で試したらしい。
条件は今後の為、現地で元手がかからない物で半永久に取れそうな物。
続いて、大陸の端の海の近くだったので沢山とれるこんぶ。
森に沢山ある凄い酸っぱいオレンジ。
全て王女からの指示だったそうだ。
もしこの計画が失敗した場合、損害賠償はクリスタ国が全て負う事を事前条件にして最初は小規模、その後は大規模な実験をしていたらしい。
チェロを聴かせた牛、聞かせてない牛の違い。
我が国の農作物とクリスタ国の農作物の違い。
海の近くだとミネナルなる物が入っていて違うらしい。
クリスタ国の新しい農作物もこちらで育てて牛さん達にあげる場合は違いが出るらしい。
これの20倍は長い研究結果がお父様の机の上に《ブランド化計画》と書かれてまとめて置かれていた。
国の畜産業の人達は今までと同じ作業量とそれにちょっとプラスしただけで収益は5倍になった。
国の収益も5倍になった。
ずっと壊れていた橋を直したり、国境の検問所の小屋を直したり、贅沢の為ではなく、より良い暮らしになる様にそのお金は使われた。
音楽隊も出来て、祭りの時以外も何処からかヴァイオリンやチェロの音楽が聴こえてくる。
前より笑顔が増えた気がする。
牛さん達も前より嬉しいそうだ。
お父様達は最初は胃潰瘍や髪の毛が抜け落ちるほど心配や気苦労があったらしいが今はちょっと前より忙しく働きながら笑っている。
みんなが笑顔になるなんて《ブランド化計画》はなんて素晴らしいだろう。っとアンナと良く話していた。
そして、この《ブランド化計画》を考えたのは当時2歳のクリスタ国の王女らしい。
宝玉と言われる程、素晴らしい才能を3歳にして発揮しているらしい。
王子の方も既に王の杖と呼ばれて色んな政策を考えているらしい。
私達と同じ王族でもまるで違う……
お姉様は最近は男の人の事ばかり考えているみたいだし、お兄様の1人はお父様のお仕事を頑張って手伝っているけど、もう1人のお兄様はヴァイオリンばかり弾いてフラフラしている。
前より豊かで笑いが増えた1年が過ぎた時またクリスタ国から正式な使者がお父様の元を訪れた。
私達も呼ばれてアンナと手を繋ぎながら使者の話を聞いた。
なんでも今度クリスタ国は国営で学校という教育機関を作るらしい。
そこは年齢、身分など関係なく誰でも通えるらしい。
王族と貴族の方はそれ相応の警備がつく事、勉学や警備の差の為大まかに平民と貴族用で二つの学校を作る予定だという事だった。
それ以外にも学校についての説明を色々してくれた。
話を聞きながら鼻の穴が興奮で膨れるのが分かった。
アンナと繋いでる手は汗でべちょべちょになっていた。
2人とも興奮したからだろう。
アンナと顔を見合わせて笑い合った。
お父様達にお願いして2人で学校に通う許可を貰った。
お兄様達とお姉様は興味ない様だった。
妹と弟は行きたがったが、もう少し大きくなってから。っと止められていた。
使者から詳しく説明されてもお父様達は、拭いきれない不安があるみたいだった。
遠く離れた大国クリスタ国。
国も出た事がない14歳の娘達。
大陸でも小国の名ばかりの王族と貴族。
実際にかかる費用など…
でも2年前の事があったのでクリスタ国を信用してお父様達は不安でも私達を送り出してくれた。
私達は貴賓宮という王宮の素敵な白亜の宮でアンナと続き部屋を用意された。
一緒に連れてきた侍女なんて居なくて王族として恥ずかしかったけど、全然そんな事感じない様に配慮してくれていた。
専属の侍女がついて優しく世話を焼いてくれた。
クリスタに来て嫌な気持ちや悲しい気持ちになった事は一度もなかった。
お父様達が心配しないように手紙も高速で届く様にしてくれていた。
クリスタに着いて1週間アンナと毎日楽しく過ごした時、歓迎の宴が行われる事になった。
到着の時に王様と王妃様には挨拶をしていたが、まだ王女と王子にはお会い出来てなかった。
遠くから庭などで見かける事があっても学校開校前もあってか凄い忙しく動き回ってる様だった。
でも、お二人共歓迎の宴には参加されるらしい。
アンナと嬉しくて、その日の寝る前のお喋りは盛り上がった。
でも着ていく服が持っている服だと失礼にならないか不安になった。
すると、王妃様と王女から貴賓宮にいる学校入学予定者にドレスが贈られた。
ドレス以外の装飾品なども用意されていた。
これには、アンナと浮かれて鏡で合わせてくるくる踊ってしまった。
私は薄いオレンジ色のドレスでアンナは薄い緑色のドレスでどちらのドレスもデザインが違うけど、とっっっても素敵だった。
合わせてみて、自分達の体型にぴったりだった。
採寸もしてないのに…これが噂の魔法なのかしら?っと思った。
お父様に喜びの手紙を走り書きで書いた。
男子にも王様と王子からウエストコートなどが贈られたらしい。
侍女が教えてくれた。
王族として、マナーやダンスを習っていて良かった。
アンナも一緒に習っていたので問題ない。
もし不安なら講師の先生も用意してくれるそうだ。
本当に痒いところに手が届くというか、言わなくても配慮してくれるし、不安を言うとすぐ解決してくれる。
本当にクリスタ国に来れた事に感謝した。
アンナと毎日、眠る前に感謝の祈りを捧げた。
歓迎の宴は、クリスタ国内の貴族の方も招かれ成人前の学生達に配慮して、お昼に開催された。
薔薇の咲き乱れる庭園で行われた歓迎の宴は、まるで最近読んだ絵本の中の様だった。
見た事のない色とりどりの食べ物、綺麗に飾られたリボンやレース。
そして、とても綺麗に咲き乱れる白い薔薇。
綺麗に着飾る大人や子供達。
素敵過ぎてアンナと繋いだ手が、今度は緊張でビチャビチャになった。
落ち着け私。とりあえず主催者の王族の方々が来たら挨拶を順番にして、後はご飯を楽しめば良いって侍女さんが言っていた。
「あなた達見かけない方だけど。どちらの方ですか?」
真っ赤なドレスにキツネの目の迫力のある同い年位の美少女が、女の子を引き連れて私達に話しかけてきた。
「初めまして。私達シエロ王国から来ました。キャロル・テスタロッサと申します。」
腰を折りカーテシーをする。
「同じくシエロ王国から来ました。アンナ・ボーデンと申します。」
アンナも腰を折ってカーテシーをする。
「ふっ。ぁあ、田舎の家畜しかいない小国の方々でしたか。だから田舎臭いんですね。」
顔をすぐあげれなかった。
クスクスと馬鹿にした笑い声が聞こえてくる。
「確かに私の国は小国で家畜が沢山いますけど、笑われる様な事ではないと思いますが…」
「あら、ごめんなさい。手なんか繋いで子供みたいだし、可笑しくて笑ってしまいましたわ。」
初めてクリスタ国に来て嫌な気持ちになった。
そにしても、初対面でこの子失礼過ぎじゃないかしら。
「あの、失礼ですが、あなたは?誰ですか?」
横目で見るとアンナが俯いて手を組み顔を真っ赤にしていた。
アンナが泣きそうだ。
アンナの方は私より気弱だし何も言い返せない様だった。
アンナにこんな顔させるなんて…怒りが沸々沸き起こる。
アンナに手を差し出すが首を横に振られてしまった。
先程の彼女の言葉で恥ずかしくなっている様だった。
「私の事も分からないなんて本当、田舎者ですわね。私は我がクリスタ国の宰相の娘でヴァネッサ・クレインと申します。良く覚えておく事ですわね。」
凄い自信満々なんだか言ってる事が所々可笑しくないだろうか?
普通、他国同士なら名乗り合わない限り、名前なんて王族以外分かる訳ないだろうに。
それにこれでも小国の王族。
彼女は大国でも宰相の娘であるなら私の方が身分が高い。
なんか彼女の態度が段々可笑しく思えてしまって私は笑ってしまった。
「ふふふっ。ヴァネッサ様よろしくお願いします。ヴァネッサ様も学校に通われるのですか?」
すると目をもっと吊り上げて彼女は私を睨んだ。
「よくも私を笑ったわね。あなた何様なの?失礼だわ。」
え。さっきあなたも笑ってたし会話に全くなっていない。後ろの女の子も
「そーよ、そーよ!」っと言っている。
なにかしらこれ。
凄い状況になってしまっている気がする。
「気分を害しましたわ。謝ってくださらない?」
「そーよ、そーよ!」っと言っている。
これって謝る必要あるのかな?さっき失礼な事言ったのは彼女だし…。
それに、彼女は気づいてないけど身分の高い私の方が謝るのは障りがある。
でもわざわざ私が王族だ。なんて言うのもなんか嫌だなっと考えあぐねていると騒めきが静かになりみんなの視点が一点に集まった。
そこには、眩い赤髪を靡かせ、赤いマントを翻し、金の薔薇の刺繍された白いテールコートとシャツを身に纏い、胸に白い薔薇を刺したアレクサンダー国王様と…白い透ける幾重にも重なるレースに金の薔薇の刺繍が腰まで伸び、重さなんてきっとないと思える柔らかなウェーブの金髪を半分おろし、残り半分を金の飾り紐で纏めてあげている王妃様が見えた。
挨拶の時も綺麗だと思ったが、庭園に居て外の光を受けたお二人は本っっっ当に本っっっっ当に綺麗で素敵過ぎる。
アンナも顔を上げてわぁっと微笑んでいる。
その光り輝くお二人の少し後ろには、軽やかなウェーブのかかる金髪に、空色のウエストコートと白いシャツに金の薔薇の刺繍、胸元に白い薔薇の王子と、同じくウェーブがかかった金髪に金の刺繍がされた白いリボンをつけて、王妃様と同じデザインの白いレースが重なったドレスに金の薔薇の刺繍、腰元には王子と同じ空色のレースのリボンを巻いた王女が歩いていた。
凄っっっっい可愛い。
もうお人形だ。
綺麗さもありつつ可愛い。
なんてなんて可愛いんだろう。
うちの妹も可愛いと思っていたが王女の可愛さは規格外だった。
思わずアンナに手を伸ばす。
アンナも今度は握り返してくれた。
顔を見合わせて同じ事を思ってる事が分かる。
綺麗過ぎる。素敵過ぎる。
みんなが自然に腰を折った。会場まで来るとアレクサンダー国王が話し始める。
「本日は晴天でヘリオスも我々を祝福してくれているのだろう。今日は自国を離れて我が国に来てくれた、他国の方々への歓迎の宴だ。みな、子供達は同じ学校に通う学友としてぜひ交流を深めて貰いたい。みな、楽しい時間を、過ごして欲しい。忙しい中時間を作ってくれた全ての者達に感謝を。」
アレクサンダー国王が話して間に配膳の方達が全ての人に飲み物を配っていた。
アレクサンダー国王も飲み物を受け取り空に掲げる。
「乾杯」
みんなも飲み物を掲げてそれに答えた。
ヴァネッサさんがすぐさま慌てた用に私達の前から去ろうとする。
ぇ?さっきまであんな事言ってたのにいったいどーしたのかと思ったら私達のすぐ目の前に王女が立っていた。
「初めましてレイチェル・サン・ヴィクトリアと申します。キャロル王女とアンナ様にはぜひお会いしたいと思っていました。不躾にお声かけして申し訳ありません。」
完璧なカーテシーをしてレイチェル王女は天使の様に微笑んだ。
レイチェル様に声をかけようとする人の壁に阻まれて去れなかったのか、まだ横にいたヴァネッサさんに振り向くと。
「何やら、ヴァネッサ様とお話し中みたいでしたが、何を話されていたんですか?私もぜひ仲間に入れてください。」
ヴァネッサさんは諦めた様にこちらを振り向くと先程迄とは全く違う苦笑いを浮かべていた。
「これはレイチェル様。お久しぶりです。挨拶をさせて頂いていただけですわ。ねぇ?」
私に同意しろと目で訴えていた。
「そうなんですか?そうですよね。私の耳には貴族の令嬢が言うなんて信じられない、ましてや王女に言うのは余計信じられない田舎者っていう言葉が聞こえてきた気がしたんですが…やっぱり気のせいですよね?」
「まぁそんな言葉をおっしゃる方が居たんですが?信じられませんね。」
「シエロ王国は素晴らしい国です。その素晴らしい国を侮辱する言葉を吐くと言う事は自分の無知を教えている様なものだとお分かりになった方が宜しいですよ。」
それまで微笑んでいたレイチェル様がヴァネッサさんに笑顔なしで厳しい目つきで言い放った。
ヴァネッサさんは顔を赤くして失礼します。っと言って人垣を強引に割って去って行った。
「嫌な気持ちにさせてしまって本当にすみません。アンナ様も本当にすみません。彼女は……ちょっと変わっていて。」
「レイチェル様が謝られる事ではありませんわ。」
「いえ、我が国の貴族としてあの様な振る舞いは許されません。学校で少しでも学んでくれたら嬉しいのですが…。」
苦笑いで笑いかけてくれる。
目の前のレイチェル様は背こそ私達より低いが話す事はまるで大人だ。
とても4歳だと言われても信じられない。
でもレイチェル様の雰囲気がそれを違和感なく見せている。
「キャロル様とアンナ様には本当にぜひお会いしたかったので、我が国に来てくださって嬉しいです。」
「私達もレイチェル様とお会いしたかったです。」
「はい!お話ししたかったです。」
アンナも笑顔でレイチェル様に話しかける。自己紹介をしようとしたら大丈夫ですと笑ってくれた。
「本当ですか?そう言って頂けると嬉しいです。今日はゆっくり話せませんが学校が始まったらその機会もあると思います。ぜひその時お話しさせてください。」
そう言って斜め後ろの紳士に話しかけるとレイチェル様はまた微笑んだ。
「色々自国と勝手も違って大変だと思うので、彼を2人のエスコートにお連れください。料理の説明など聞きながらゆっくり楽しんでいってください。」
そう紹介されて膝を折ってくれたのは我が国でチェロを引いていた予想偉い人だった。
「お久しぶりです。キャロル様、アンナ様。エスコート役を拝命しましたルイ・フェルナルトです。宜しくお願いします。」
「彼から素敵なお二人のお話しを良く聞いていたんですよ。何か困った事があったら彼に言ってください。」
去り際に、お二人ともドレスとてもお似合いです。っと言ってくれた。
先にドレスのお礼を言わなければいけないのは私達なのに…マナーが全然なっていなかったと後悔した。
その後は、美味しい見た事ない料理をルイさんの詳しい説明を聞きながら楽しんだり、同い年や歳の近いクリスタ国の貴族の令嬢にルイさんが紹介してくれて楽しくお喋りしながら過ごせた。
王様、王妃様への挨拶もルイさんがエスコートしてくれて無事にこなせた。
カイル王子にも挨拶したが緊張して良く覚えていない。
でも優しく歓迎の言葉を言ってくれたのは覚えている。
夢の様な時間はあっという間に終わり、その日の夜のおしゃべりはアンナと終わらなかった。
ヴァネッサさんには、嫌な気持ちにさせられたがレイチェル様が早速と助けてくれてまるで王子様みたいだった。
聞こえてるはずない会話を、どうやってレイチェル様は知ったのかアンナと謎解きに熱中した。
ヴァネッサさんは、国で見た事がある怯えてる子犬がよく吠えるのと一緒に感じて、全然気にならなかった。
また何か言われても大丈夫だ。
それにお話した他の貴族の令嬢達はみんなとっても優しく、話しやすかったし素敵な方々だった。
疲れてるはずなのに、話が止まらず真っ黒な空が薄く白くなってからアンナと同じベットで気を失う様に寝てしまった。
学校が始まる朝、とっても素敵な白と金を基調とした制服に着替えて貴賓宮の正面玄関に行くと馬車が渋滞していた。
歓迎の宴では同性の方ばかりとお話ししていたが貴賓宮にいるのは男性の方が多い様だ。
私とアンナは最後で良いと正面玄関のすぐ横に順番待ちの為なのか開放されている客間に入ろうとする。
すると、栗色の髪に金の目の端正な顔立ちの男子に声かけられた。
制服がまるでその人の為にしつらえた様に完璧に着こなしている。
レディ達は先にとエスコートしてくれた。完璧な紳士だ。
初めてレディと言われて胸がドキドキした。
授業は楽しくてあっという間に過ぎた。
楽しすぎてはしゃいだせいなのかお腹がペコペコになりながら食堂というご飯を食べる場所に行った。
何から何まで知らない事、新しい事で目まぐるしいがとっても楽しい。
アンナと笑顔で顔を合わせて笑う。
アンナも凄い楽しんでいる事がわかった。
私はオムライス。アンナはトルティーヤという食べ物を注文して綺麗なテラス席に座る。
すると、レイチェル様が声をかけてくれた。
歓迎の宴でゆっくり話そうって言っていた事を社交辞令じゃなくて、気にしてくれていたのかと嬉しくなる。
興奮気味に楽しく色んな話をした。
アンナもあまり普段は私以外には話題を振ったりしないのに沢山質問したり感想を言ったりしていた。
やはり、じっくり話しをしてみても4歳とは感じなかった。
同い年…いや年上にすら感じる事が度々あった。
それから学校生活は驚きと、楽しみの連続で私は2週間に一度書こうと決めていたお父様への手紙は、毎回10枚は書きたい出来事が出来た。
それは卒業まで変わらない私の習慣になった。
アンナも書く手紙がいつも私より厚くなっている。
定期的にレイチェル様は私達に声をかけてくれてお昼ご飯をご一緒した。
貴賓宮でもみんなで食べる食堂みたいな場所があってそこにもレイチェル様は定期的に参加されていた。
よく観察しているとレイチェル様の側には銀髪の青年と黒髪の少年がよく居る事が分かった。
午後のカリキュラムで一緒になった時は必ずどちらかの方と一緒に居た。
私達や他のご令嬢、御子息ともよく話して仲良くしてくれたが、彼らの前ではレイチェル様は全く違う顔をしていた。
彼らと私達の違いはいったいなんなのか…
ある時、その銀髪の青年アーサーと黒髪の少年テトとお昼ご飯を外で一緒にする機会があった。
私は思い切って聞いてみた。
私達とその2人との違いはなんなんですか?っと。
他にもサルーン様達が居たけど我慢できずに聞いてしまった。
レイチェル様は少し困った後に建前なしで正直に聞きたいですか?っと言った。
勿論っと、その場に居た全員が声を揃えて返事をした。
「皆さんは心から大切な友達です。でも違いがあるとすれば…それは……私はみなさんを守らなければいけない存在だと思っています。でも、アーサーとテトは守る必要を感じてなくて、肩を並べた相棒だと思っているんだと思います。
もし、キャロルが違いを感じているとしたらそこかもしれません。
でもだからって、皆さんが大事じゃないとかそうじゃないですよ!大好きですから!!」
レイチェル様は焦りながら、私達をどれだけ大切に思っているか話してくれた。
レイチェル様が言う事はもっともだった。
私達は何度もレイチェル様に助けて貰っている。
悔しかった。
私もレイチェル様と肩を並べたかった。
私達の日常を変えた人。
私達を何度も助けてくれた人。
私達に笑う時間を増やしてくれた人。
私達に驚きと喜びをくれる人。
私達の世界を変えてくれた人。
初めて憧れて、認められたいと思った人。
レイチェル・サン・ヴィクトリア
私はその人に出逢った。
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