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第二章 誰が為の出会い
第十一幕 恋心
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リナはすぐに、出発の準備に取り掛かった。ただ、他の兵士達には気付かれない様に静かに。
アルフレッド王太子の居場所は、昨日の内に早鳥を使って王室の子に聞いていた。王都近くの商業都市ベニスに居る事が先程わかった。
普段お忍びで出掛ける時と同じ、使い慣れた茶色の短髪のカツラ、着古したズボンとシャツ姿に着替える。
リナは、お忍びの時は男装している。
女性があまり足を運ばない場所に、よく行く為だ。
リナは、テント内で着替えをしながら、手を止めずにマリーと話し始める。
「マリーを悲しませない様に頑張るから…ルイもちゃんと帰って来るからね。」
リナは、シャツの下に胸を潰す為のサラシを巻き終え、鏡の前に座る。
「帰って来なかったら、許さないですからね!本当色々…気よつけてくださいね…」
マリーは鏡の前で、リナの銀髪を綺麗にまとめ上げて、茶色のカツラを被せてピンで固定する。
「うん。でも、アルフレッド王太子に会うのは楽しみな気持ちもあるのんだよね」
「凄いかっこいいらしいですもんね?!ついにリナ様も、恋にあたふたする時が来るのかもしれないですね!」
「マリーだって、恋にあたふたした事まだないじゃない?」
「私はリナ様に恋してますもん。なので、リナ様より、恋する気持ち分かりますよ!」
マリーは得意げな顔で、鏡の中のリナに語りかける。
「その人が居るだけで嬉しかったり、心が右往左往して、一緒に居なくても相手の事考えてしまったり、相手の一言で凄い悲しくなって、寝れなかったり…」
「マリー凄いわ。恋心についての授業は先生にも、誰にも教えてもらってない事に今気づいた」
マリーは嬉しそうな顔しながらカツラの固定を終わらせると、リナの肩にそっと手を置く。
「好きって気持ちは上手く説明出来ないんですけど、自分の気持ちが動くんですよ。そーなったら楽しみですね」
「そー言う気持ちなら、私もマリーやルイの事が好きだよ。」
「リナ様のその好きは、好きの中でも家族愛みたいな物だと思うんですよね…恋の好きは、ちょっと違うと思います。」
リナは、肩に置かれたマリーの手にそっと手を重ねた。
「マリーやルイに、私の好きな気持ちがちゃんと伝わってたら嬉しいな」
「伝わっていますよ。私達を人として初めて見てくれたのはリナ様ですもん。だから、私達の世界はリナ様が中心にいて、それ以外はどーでも良くなってしまうんですけど…」
マリーは話しながら昔を思い出していた。
マリーとルイは双子だ。
白の王国は、昔の双子の王子で国が別れた事から、双子を禁忌の忌子として嫌っている風習がある。
双子が産まれても二人とも殺すか、片方を殺して一人だけ育てる。
そして、男女の双子は双子の中でも余計に嫌われる。
産まれる前から、男女の混じりがあるとされ汚れた子とされているのだ。
マリーとルイの両親は汚れの双子を産んだが我が子を殺す度胸なく、家の中で監禁して動物以下の生活をさせて二人を三歳まで育てた。
三歳になり両親が耐えられなくなって、見世物小屋に売り飛ばされた。
見世物小屋に売られてからも、飼われると表現していい扱いだった。
見た目が良いという事で、マリーとルイは見世物小屋の変態団長の慰めものになりながら飼われていた。
九歳になる頃、興行があまり上手くいかなくなり双子の災厄の性だと捨てられた。
いつも殴られ、蹴られてその身は吐瀉物にまみれていた。時には身体を好きな様に弄ばれ、寝る時は土の上で丸まっていた。
名前を呼ばれた事もなく、いつもおいとか犬と呼ばれていた。
マリーとルイは何をされてもお互いの手を固く繋いでいた。
その手だけが救いだった。
いつの日か暖かい布団でゆっくり眠る事が夢だった。
マリーとルイが団長に捨てられた日、その日が人生の最高の日になるなんて二人は思ってもみなかった。
最後に酷い折檻を受けて、口からは血が流れ、ボロボロの布切れ一枚でガリガリに痩せて、もう動けないゴミとして街の外の林の中に捨てられた。
マリーとルイはもう動けなくて、ただ眠くてお互いの手だけ固く握って眠ろうとした時…。
銀色の天使が、木の間からマリーとルイを覗いていた。
マリーは重たくなる目を、その天使と思える人に向けた。
ろくに言葉も知らないし、文字も読めないが、昔街に貼ってあるポスターに、羽が生えた天使が描かれていた。
それを子供達が見て天使と言っていたのを覚えていたのだ。
天使は近づいてくると、優しくマリーとルイを抱きしめた。
マリーとルイは、初めて優しく人に抱きしめられた。その時初めて目から水分が溢れてきた。止めどなく、なぜ流れるかわからないけど止まらなかった。
自分達の身体にこんな機能があるなんて、その時まで知らなかった。
それが涙と言うものだと、後で知った。
その天使は、他の人を呼んでマリーとルイが手を離さないで良い様に、馬車に運んでくれた。
その日から、マリーとルイの世界の全てが変わった。
天使は名前がない事を知ると、マリーとルイという名前をつけてくれた。
毎日暖かいベッドで寝れて、殴られないし、蹴られない。
ご飯をお腹いっぱい食べれて、天使が抱きしめてくれる。
天使はリナと言う名前で、マリーとルイの世界の中心になった。
リナと一緒にいる為に必要な侍従としての教育を受けて、あらゆる事が出来る様に勉強した。
双子と罵られていたので、自分達が双子だという事をリナに知られたら捨てられてしまうのではと不安に思った。
でも、リナの事を知っていって、リナはそんな人ではないとわかっていった。
それでも、マリーとルイはリナに双子と言うのが怖かった。
そんなある日リナが急に真剣な顔で、
「マリーとルイって双子だよね?それで、辛い思いをしてたなら本当にごめんなさい。双子が悪い印象なのは王族の性なの…」
マリーとルイの手を握りながらリナは悲しそうに語り出した。
予想外すぎてマリーとルイはお互いの顔を見合わせた。
双子だと忌み嫌われて地獄の様な日々を生きていたのに、目の前の天使はそれを謝ってくれている。
そんな現状が信じられなかった。
それまでのマリーとルイの世界は辛くて苦しめるしかないモノだったけど、そんな事ないと教えてくれた人が現れた。
辛かった事を許せたし、救われた。
普通に産まれていたらきっと、リナと一緒に居れなかった。
それなら双子で産まれて嫌われ、ざんざんな目にあった事が意味があった事の様に思もえた。
誰からも名前を呼ばれない。暖かく抱きしめてくれない。心を砕いてくれない。
そんな世界を変えてくれたリナをマリーとルイは崇拝していった。
恋心なんてものでは表現できない。
マリーとルイの世界そのものなのだ。
マリーがそんな思い出と気持ちに囚われているとリナが声が耳に入ってきた。
「帰ってきたら一緒にクコの実でパイを焼きましょう。約束よ。」
リナはマリーとの約束を破った事がない。
マリーはリナの両手を包んでその場に跪くと。
「約束ですね。立派にお留守番しておきますので、いってらっしゃいませ」
リナは微笑みながらマリーの手から手をぬき包み返した。
その時、ユーリとルイがテントに入って来た。
ユーリとルイもいつものお忍び用の着古したシャツとズボンに着替えている。
マリーは、ルイに向き直ると顔を覗き込み。
「私の分もリナ様の事ちゃんと守ってよ。」
「姉さんの分までお守りするし、ちゃんと帰ってくるからお留守番宜しくね」
ルイはマリーの頭の上に手を置くと優しく撫でた。
「ユーリ様もおきよつけて。ルイの事よろしくお願いします。」
ルイの手をどけてマリーは、ユーリにお辞儀した。
「リナの事もルイの事も任せていいよ。マリーも色々大変だと思うけど宜しくね。」
「もう少ししたら姫さまが倒れたーって騒ぎますので、三人は裏からどうぞ出発されてください。」
夕方になり世界が茜色に染まる中、静かに林の中に紛れた。
今回はお忍びなので、アスラン達愛馬もみんなお留守番だ。
林の中で三人は歩幅を速めながら、駐屯地を後にする。
リナの背中に広がるワグナーの谷には、昨日死んで埋葬された黒と白の兵士達が眠っている。
物言わぬ死者達の墓標は認識タグと不揃いの石だ。そんな暖かさの欠片もない悲しい景色に見た者は言葉を失ってしまうだろう。
その悲しい景色をもう二度と作らない為にリナは歩きだした。
アルフレッド王太子の居場所は、昨日の内に早鳥を使って王室の子に聞いていた。王都近くの商業都市ベニスに居る事が先程わかった。
普段お忍びで出掛ける時と同じ、使い慣れた茶色の短髪のカツラ、着古したズボンとシャツ姿に着替える。
リナは、お忍びの時は男装している。
女性があまり足を運ばない場所に、よく行く為だ。
リナは、テント内で着替えをしながら、手を止めずにマリーと話し始める。
「マリーを悲しませない様に頑張るから…ルイもちゃんと帰って来るからね。」
リナは、シャツの下に胸を潰す為のサラシを巻き終え、鏡の前に座る。
「帰って来なかったら、許さないですからね!本当色々…気よつけてくださいね…」
マリーは鏡の前で、リナの銀髪を綺麗にまとめ上げて、茶色のカツラを被せてピンで固定する。
「うん。でも、アルフレッド王太子に会うのは楽しみな気持ちもあるのんだよね」
「凄いかっこいいらしいですもんね?!ついにリナ様も、恋にあたふたする時が来るのかもしれないですね!」
「マリーだって、恋にあたふたした事まだないじゃない?」
「私はリナ様に恋してますもん。なので、リナ様より、恋する気持ち分かりますよ!」
マリーは得意げな顔で、鏡の中のリナに語りかける。
「その人が居るだけで嬉しかったり、心が右往左往して、一緒に居なくても相手の事考えてしまったり、相手の一言で凄い悲しくなって、寝れなかったり…」
「マリー凄いわ。恋心についての授業は先生にも、誰にも教えてもらってない事に今気づいた」
マリーは嬉しそうな顔しながらカツラの固定を終わらせると、リナの肩にそっと手を置く。
「好きって気持ちは上手く説明出来ないんですけど、自分の気持ちが動くんですよ。そーなったら楽しみですね」
「そー言う気持ちなら、私もマリーやルイの事が好きだよ。」
「リナ様のその好きは、好きの中でも家族愛みたいな物だと思うんですよね…恋の好きは、ちょっと違うと思います。」
リナは、肩に置かれたマリーの手にそっと手を重ねた。
「マリーやルイに、私の好きな気持ちがちゃんと伝わってたら嬉しいな」
「伝わっていますよ。私達を人として初めて見てくれたのはリナ様ですもん。だから、私達の世界はリナ様が中心にいて、それ以外はどーでも良くなってしまうんですけど…」
マリーは話しながら昔を思い出していた。
マリーとルイは双子だ。
白の王国は、昔の双子の王子で国が別れた事から、双子を禁忌の忌子として嫌っている風習がある。
双子が産まれても二人とも殺すか、片方を殺して一人だけ育てる。
そして、男女の双子は双子の中でも余計に嫌われる。
産まれる前から、男女の混じりがあるとされ汚れた子とされているのだ。
マリーとルイの両親は汚れの双子を産んだが我が子を殺す度胸なく、家の中で監禁して動物以下の生活をさせて二人を三歳まで育てた。
三歳になり両親が耐えられなくなって、見世物小屋に売り飛ばされた。
見世物小屋に売られてからも、飼われると表現していい扱いだった。
見た目が良いという事で、マリーとルイは見世物小屋の変態団長の慰めものになりながら飼われていた。
九歳になる頃、興行があまり上手くいかなくなり双子の災厄の性だと捨てられた。
いつも殴られ、蹴られてその身は吐瀉物にまみれていた。時には身体を好きな様に弄ばれ、寝る時は土の上で丸まっていた。
名前を呼ばれた事もなく、いつもおいとか犬と呼ばれていた。
マリーとルイは何をされてもお互いの手を固く繋いでいた。
その手だけが救いだった。
いつの日か暖かい布団でゆっくり眠る事が夢だった。
マリーとルイが団長に捨てられた日、その日が人生の最高の日になるなんて二人は思ってもみなかった。
最後に酷い折檻を受けて、口からは血が流れ、ボロボロの布切れ一枚でガリガリに痩せて、もう動けないゴミとして街の外の林の中に捨てられた。
マリーとルイはもう動けなくて、ただ眠くてお互いの手だけ固く握って眠ろうとした時…。
銀色の天使が、木の間からマリーとルイを覗いていた。
マリーは重たくなる目を、その天使と思える人に向けた。
ろくに言葉も知らないし、文字も読めないが、昔街に貼ってあるポスターに、羽が生えた天使が描かれていた。
それを子供達が見て天使と言っていたのを覚えていたのだ。
天使は近づいてくると、優しくマリーとルイを抱きしめた。
マリーとルイは、初めて優しく人に抱きしめられた。その時初めて目から水分が溢れてきた。止めどなく、なぜ流れるかわからないけど止まらなかった。
自分達の身体にこんな機能があるなんて、その時まで知らなかった。
それが涙と言うものだと、後で知った。
その天使は、他の人を呼んでマリーとルイが手を離さないで良い様に、馬車に運んでくれた。
その日から、マリーとルイの世界の全てが変わった。
天使は名前がない事を知ると、マリーとルイという名前をつけてくれた。
毎日暖かいベッドで寝れて、殴られないし、蹴られない。
ご飯をお腹いっぱい食べれて、天使が抱きしめてくれる。
天使はリナと言う名前で、マリーとルイの世界の中心になった。
リナと一緒にいる為に必要な侍従としての教育を受けて、あらゆる事が出来る様に勉強した。
双子と罵られていたので、自分達が双子だという事をリナに知られたら捨てられてしまうのではと不安に思った。
でも、リナの事を知っていって、リナはそんな人ではないとわかっていった。
それでも、マリーとルイはリナに双子と言うのが怖かった。
そんなある日リナが急に真剣な顔で、
「マリーとルイって双子だよね?それで、辛い思いをしてたなら本当にごめんなさい。双子が悪い印象なのは王族の性なの…」
マリーとルイの手を握りながらリナは悲しそうに語り出した。
予想外すぎてマリーとルイはお互いの顔を見合わせた。
双子だと忌み嫌われて地獄の様な日々を生きていたのに、目の前の天使はそれを謝ってくれている。
そんな現状が信じられなかった。
それまでのマリーとルイの世界は辛くて苦しめるしかないモノだったけど、そんな事ないと教えてくれた人が現れた。
辛かった事を許せたし、救われた。
普通に産まれていたらきっと、リナと一緒に居れなかった。
それなら双子で産まれて嫌われ、ざんざんな目にあった事が意味があった事の様に思もえた。
誰からも名前を呼ばれない。暖かく抱きしめてくれない。心を砕いてくれない。
そんな世界を変えてくれたリナをマリーとルイは崇拝していった。
恋心なんてものでは表現できない。
マリーとルイの世界そのものなのだ。
マリーがそんな思い出と気持ちに囚われているとリナが声が耳に入ってきた。
「帰ってきたら一緒にクコの実でパイを焼きましょう。約束よ。」
リナはマリーとの約束を破った事がない。
マリーはリナの両手を包んでその場に跪くと。
「約束ですね。立派にお留守番しておきますので、いってらっしゃいませ」
リナは微笑みながらマリーの手から手をぬき包み返した。
その時、ユーリとルイがテントに入って来た。
ユーリとルイもいつものお忍び用の着古したシャツとズボンに着替えている。
マリーは、ルイに向き直ると顔を覗き込み。
「私の分もリナ様の事ちゃんと守ってよ。」
「姉さんの分までお守りするし、ちゃんと帰ってくるからお留守番宜しくね」
ルイはマリーの頭の上に手を置くと優しく撫でた。
「ユーリ様もおきよつけて。ルイの事よろしくお願いします。」
ルイの手をどけてマリーは、ユーリにお辞儀した。
「リナの事もルイの事も任せていいよ。マリーも色々大変だと思うけど宜しくね。」
「もう少ししたら姫さまが倒れたーって騒ぎますので、三人は裏からどうぞ出発されてください。」
夕方になり世界が茜色に染まる中、静かに林の中に紛れた。
今回はお忍びなので、アスラン達愛馬もみんなお留守番だ。
林の中で三人は歩幅を速めながら、駐屯地を後にする。
リナの背中に広がるワグナーの谷には、昨日死んで埋葬された黒と白の兵士達が眠っている。
物言わぬ死者達の墓標は認識タグと不揃いの石だ。そんな暖かさの欠片もない悲しい景色に見た者は言葉を失ってしまうだろう。
その悲しい景色をもう二度と作らない為にリナは歩きだした。
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