王女は想う。王女は歩む。王女は……。 黒と白の王国

紫苑

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第二章 誰が為の出会い

第七幕 出発

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翌日、まだ空が明るくなり始める前、馬小屋でリナはユーリと待ち合わせしていた。
リナは、ここ一年ほぼ毎日着ている、白い軍服姿だ。昨日のドレス姿とはまとう雰囲気が変わっている。

一本にまとめられ、三つ編みに編み込まれた銀髪と、白いズボンと銀の装飾のされた服は洗礼された雰囲気で、見る物を魅力する。
隠されずに出ている耳には、リナの目より深い青のラピスラズリのピアスが光っている。
それがリナのただ一つ装飾品だ。


ユーリも、昨日の礼服の軍服とは違う平素の白い軍服を身を纏っている。

「先生、おはようございます。朝一に、書状の原文は受け取ってきました。」


「おはよう。今日も王城の侍女達は仕事がいがないと、泣いているだろうな。」

ユーリは、黒い馬の手ずなを持ちながら、クスクスと笑った。

リナは困った様な顔をして、白い馬の鞍にまたがった。

リナは自分の身の回りの事を自分でやってしまう。
朝の用意なども自分で、全てやってしまうのだ。
そして、普通の王族が昼近くまで寝ているのに対してリナは朝が早い。
気づくと侍女達は綺麗な王女を飾る楽しみを、いつも奪われているのだ。

「マリーとルイには、いつも大人しく弄られてるので、たまには好きにしていいじゃないですか…」

リナはいじけた様に話しながら、愛馬のアスランを馬上から優しく撫でた。
ユーリも黒い馬にまたがり、馬小屋番達に礼を言って馬を進めた。

まだ朝の準備をする人のいない、静まりかえった王都の道を足早に馬をかける。

四刻程でワグナーの谷の駐屯地に着くだろう。昼前には着く予定だ。

馬上でリナは、走馬灯の様に昔の思い出を思い出していた。

普通の王族は、王都以外の土地を実際に知る事はあまりない。

しかし、リナは幼い頃から家庭教師であるユーリに連れられて、王都以外の色んな所を見て回った。
それは生きていたシルビア王妃たっての願いでもあった。

実は、ユーリはシルビア王妃の実の弟でリナの叔父にあたる。
ユーリは王妃の実の弟だと言う事は内緒にして、己の実力で大学院を飛び級して卒業した若き天才だ。

ユーリは頭が良いだけではなく、剣の腕も近衛騎士団が束になっても敵わないほど凄腕だ。

そんなユーリは、大学院卒業と同時にリナの専属家庭教師の任を拝命した。

リナにとってユーリは、最高の家庭教師だった。

いつも甘いお菓子を隠し持っていて新しい事を覚えたりするとご褒美にくれた。大人になった今でも、頑張った時は頭を撫でてくれる。その風にリナに接する人物は居なかった。

ユーリはいつも、実際に目で見て人と関わる事を大事にしていた。

「先人達の残してくれた本という知識も大事だけど、現実、そして人の感情を学ぶ事もとても大切だよ」

そー言って、外に連れ出して、農民がどーやって働いているか、商人達はどーやって商売をしているかを実際に目にする事はリナにとってとても楽しく、有意義だった。

ユーリの授業はリナにとって、とても楽しく、そして、思い出深い。

良く覚えてる授業に、二組の農耕民の道の授業がある。

どーしたら早く、そして低予算で民も誰も損をしないで道を作れると思う?と言う問題だった。

リナは、道具の効率などを考えていたが…

ユーリは、二組に別れて毎日、先に工事が進んだ方に、報酬を多くあげると良いと言った。

実際に毎日競わせると、二組はお互い頑張って、半分の納期で道が出来てしまった。

頑張ったら、頑張った分だけお金を貰えて嬉しいし、競い合った事で納期も半分で終わり、工賃も成功報酬を含めても最終的に少なく済んだ。

ユーリの授業は、本では学べない人の気持ちを知る授業が多かった。



なので、今でも人を知る為に民が集まる場に良く行く。酒場や市場などだ。
ユーリは護衛としても一級だし、リナも自分の身は自分で守れる様に鍛えた。

そんな、昔のことやユーリ事などリナが色々な思い出に浸っていると、目的地のワーグナーの谷の駐屯地に着いた。

リナが、愛馬のアスランを停めて降りようとすると、奥のテントから飛び出してくる人影が見えた。

「リナ様~~~!!!」
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