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episode4
王都からの旅立ち
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私は国王陛下に「両親ならクラウス様のため、私の意見に賛同して下さる筈です」
と自信満々に言ったがそれはまさに、はったり以外の何者でもなかった。
侯爵邸に帰ってからすぐ、私は両親にお願いを決行した。晩餐中も晩餐が終わってからも、お得意の減らず口でありとあらゆる角度から、シュタンブルク行きについての説得を両親に浴びせ続けた。
メルキアの第三王子が直々に同行して下さるとまで仰っている上に、メルキアとの外交も兼ねているのに今更断るとは何という事か!
しかもシュタンブルクの人々はまだその地にいらっしゃるのに、私には呑気にダラダラと長期休暇を満喫しろと言うのか。
国王夫妻は許可して下さったのに、許可しないとは何事か!(正式な許可ではない)など。
親が「でも」や「しかし」と言った言葉を紡ぎそうになれば、二倍増しで熱弁を続け追随を許さなかった。
長時間、私の止まる事のないトークを聞かされ続けた両親は、流石にげっそりしていた。これは素直に申し訳なく思っている。
温厚な父と落ち着いた性格の母は、何故何方にも似ずに産まれ育ったと、考えているに違いない。
皆が私を危険な目に合わせられない一番の理由は、時期王太子妃だからだろう。だけどクラウス様にもしもの事があれば、私は王太子妃になる事は無い。
この身はローゼンシアとクラウス様にのみ捧げると決めている。
◇
荷物を運ぶ専用のドラゴンもいるとの事で、少ない荷物を使用人に馬車へと運んで貰おうとしていると、侍女のアンがやって来た。
「お嬢様、私もお供させて頂きます」
「昨日のうちに申し出てくれたんだよ。アンが一緒に行ってくれるなら安心だ」
アンの同行を決めた事もあってか、見送りにエントランスまで来て下さったお父様は、安堵の表情を浮かべている。
「えっ、でも使用人の同行についてなんて、アルヴィス王子に聞いていませんし…」
「取り敢えず、お聞きしてみてはどうかな?」
アンは行く気満々のようで、お父様の提案に大きく頷いてみせた。
「う~ん…まぁ、聞いてみるくらいなら…」
確かに一人で知らない地に行くよりも、仲が良くてしっかり者のアンが付いて来てくれるにこしたことはない。渋々了承すると、お母様が私の目の前に立つ。
「決して殿下にご迷惑をかけたり、邪魔をしないように」
「…邪魔なんてしません」
刻限が迫っている事もあり、アンも連れて王宮へと向かう事にした。
両親とハグをしてから馬車に乗り込む。
馬車内で別れ際に言われた、お母様の余計な一言についてボヤいていたら、アンに「いつまで経っても心配なんですよ、親って」と大人の対応で諭されてしまった。
予定通りの時刻に着き、魔法訓練所のグラウンドに足を運ぶと、相変わらず巨大なドラゴン達が鎮座している。私の後ろでアンが「ヒュ~、ドラゴンかっこいいですね~」と言っているが、口笛が吹けないため『ヒュ~』の部分をしっかり発音していた。
と自信満々に言ったがそれはまさに、はったり以外の何者でもなかった。
侯爵邸に帰ってからすぐ、私は両親にお願いを決行した。晩餐中も晩餐が終わってからも、お得意の減らず口でありとあらゆる角度から、シュタンブルク行きについての説得を両親に浴びせ続けた。
メルキアの第三王子が直々に同行して下さるとまで仰っている上に、メルキアとの外交も兼ねているのに今更断るとは何という事か!
しかもシュタンブルクの人々はまだその地にいらっしゃるのに、私には呑気にダラダラと長期休暇を満喫しろと言うのか。
国王夫妻は許可して下さったのに、許可しないとは何事か!(正式な許可ではない)など。
親が「でも」や「しかし」と言った言葉を紡ぎそうになれば、二倍増しで熱弁を続け追随を許さなかった。
長時間、私の止まる事のないトークを聞かされ続けた両親は、流石にげっそりしていた。これは素直に申し訳なく思っている。
温厚な父と落ち着いた性格の母は、何故何方にも似ずに産まれ育ったと、考えているに違いない。
皆が私を危険な目に合わせられない一番の理由は、時期王太子妃だからだろう。だけどクラウス様にもしもの事があれば、私は王太子妃になる事は無い。
この身はローゼンシアとクラウス様にのみ捧げると決めている。
◇
荷物を運ぶ専用のドラゴンもいるとの事で、少ない荷物を使用人に馬車へと運んで貰おうとしていると、侍女のアンがやって来た。
「お嬢様、私もお供させて頂きます」
「昨日のうちに申し出てくれたんだよ。アンが一緒に行ってくれるなら安心だ」
アンの同行を決めた事もあってか、見送りにエントランスまで来て下さったお父様は、安堵の表情を浮かべている。
「えっ、でも使用人の同行についてなんて、アルヴィス王子に聞いていませんし…」
「取り敢えず、お聞きしてみてはどうかな?」
アンは行く気満々のようで、お父様の提案に大きく頷いてみせた。
「う~ん…まぁ、聞いてみるくらいなら…」
確かに一人で知らない地に行くよりも、仲が良くてしっかり者のアンが付いて来てくれるにこしたことはない。渋々了承すると、お母様が私の目の前に立つ。
「決して殿下にご迷惑をかけたり、邪魔をしないように」
「…邪魔なんてしません」
刻限が迫っている事もあり、アンも連れて王宮へと向かう事にした。
両親とハグをしてから馬車に乗り込む。
馬車内で別れ際に言われた、お母様の余計な一言についてボヤいていたら、アンに「いつまで経っても心配なんですよ、親って」と大人の対応で諭されてしまった。
予定通りの時刻に着き、魔法訓練所のグラウンドに足を運ぶと、相変わらず巨大なドラゴン達が鎮座している。私の後ろでアンが「ヒュ~、ドラゴンかっこいいですね~」と言っているが、口笛が吹けないため『ヒュ~』の部分をしっかり発音していた。
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