迷子

響影

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八代はゴクリと固唾を飲んだ。
目の前の少年が自分の作った料理を見て美味しいと言いながらすごい速度で手料理を平らげていく。今まで、殆どの時間を一人で過ごした八代にとって、手料理を誰かに振る舞う機会などなかった。口に合うかも分からない料理を出すことに対し内心、不安を感じていた。

それがどうだ、美味しい美味しいとたいあげられ、八代は感じたことのない胸が温まるような感覚に襲われていた。この感情はなんだろうか?

「ごちそうさまでした。」

「もう食べたの?…そっか、そんなに美味しかったんだ。」

ホッとした表情のやしろをみる。そんなに料理に自信がなかったのかな?




それからはやしろとおれの変な生活が始まった。
やしろはおれを誘拐?しただけあって、多分変態だ。
最初の頃は一日をぼーと過ごしたり家の中を探検したり、ボールになりそうな球を蹴って一人で遊んでいた。

やしろは朝、昼、夜、毎日ご飯を作って俺の感想を求めてはホッとした表情を見せるだけだった。

だが、だんだんと距離が近くなっている気がする…
前までは一人で寝ていたのに、最近では朝起きると隣にやしろがいる。風呂だって一人だったのにおれが入るとどこかから駆けつけてか、やしろがあとから必ず入ってくるようになった。

しかも、地道に体の距離が縮まっている。
最初こそ寂しすぎて仕方なかったが、今ではどこにいてもやしろがついてきてうざったい。


「ついてこないで」

みっちりついてくるものだからサッカーするにも動きづらくて仕方がない。しかもほとんど無言で着いてくるのだ。

「どうして?」

まただ、やしろはよく分からないと言った表情をよくする。おれの気持ちがいっさい分からないらしい。

「動きずらいから」

理由を言っても首を傾げてくる
未だに離れようとしないやしろにおれはしびれをきらしていた。


「(サッカーするのに)邪魔!あっちいけ」

そう、やしろに言い捨てるとボールを持って庭に走り出した。




「……じゃ、邪魔。僕が邪魔…」

なんとなく後ろを振り向く、家の中でさっきの場所から動かないやしろを見た。言いたいことを言ってスッキリしていた反面、明らかに言いすぎたなと後悔が襲う。


誤りに行った方がいいだろうか?
いや、でも明らかに悪いのはやしろだ。

それに謝りにいくのが少し怖い。
今の不気味な雰囲気をまとったやしろは前見たみたいに目を真っ黒にさせて、瞬きをせずにこちらを見ている。


おれは悪くない。人の気持ちを考えないからこうなるんだと思いサッカーを再開する。




しかし、どうにもこちらをじっと見て動かないやしろに罪悪感を覚えてサッカーに集中できない。



おれはボールを持ってやしろの方に歩き出した。

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