64 / 69
9章、魔法学園、本格始動
第64話
しおりを挟む
ガイが私の護衛騎士になった。毎日、同じ時間になると王宮に現れる。
午後のその時間が近付くと私はぴょこぴょこしてしまう。もしケモミミや尻尾が生えていたら周囲にバレバレになっていただろう。
それくらいガイに会えるのが嬉しくてたまらない。
ガイに会えるようになってから不思議なくらい体調が良くなった。夢を見ないでぐっすりと眠れる。そうすると少しずつ食事も取れるようになった。
ある日、ウォルターとガイのお見舞いの時間が重なった。
いつもはガイは道場で鍛錬した後、午後3時くらいに王宮に来る。ウォルターは時間をずらして午前中に来ていたのだが、その日は用事があって午後にずれ込んだらしい。
「忙しいなら毎日来なくても大丈夫なのに」
「毎日ジュリア姉さんの顔を見ないと心配で眠れないんですよ」
「ああ、それはよく分かる」
心配性の男二人で頷き合っている。
年中体調不良でふらふらしている私は何も言えない。
「気がつくと、とんでもない事になっているし」
「俺も聖女になったと聞いた時は驚いた」
「別にわざと騒ぎを起こしてる訳じゃないのに‥」
「それでいつも騒動の真ん中にいるのは、一種の才能かな?」
とガイが言う。
「そんな才能いらないよ!」
ウォルターとガイ、二人して笑った。
才能というより乙女ゲームの呪いじゃないのかな。
「ところで、彼が誰なのか訊いても構わないか?」
ガイが私の隣にいるこうちゃんを見て言った。
「こうちゃんがユニコーンだって言ってなかった?」
「それは聞いたけど、彼の元になった人物について知りたいんだ」
「それは俺も知りたいと思っていました」
ウォルターも身を乗り出した。
「聖獣は聖女の親しい人間に擬態すると言われています。
こうちゃんはどう見てもライメルス人ではない。こうちゃんの元になった人は誰なんです?」
聖獣は聖女の親しい人に擬態するのか。だから光太郎兄さんだったんだ。
それは分かったけど、光太郎兄さんのこと、どう説明したらいいんだろう?
「ええと、兄みたいに慕っていた人と言うか‥‥」
兄そのもの、とは言えない。
「俺は会ったことがない人ですが」
「ウォルターがホーン男爵家に来る前に親しくしていた人なの」
そう、ウォルターが来る前、前世で親しくしてました。
「昔からジュリア姉さんには秘密が多い気がする」
「そんなには、ないよ」
ちょっと、前世のことを隠しているくらいだ。
「ジュリアがそんなに仲良くしている人なら会ってみたいな」
ガイが言った。
「もう会えない人なの」
「そうなのか。その、亡くなってしまっているのか?」
「うん」
前世の私が死んでしまって、もう会えない人なのだ。
「こうちゃんを見ると、まだ若かっただろうに」
「あのね、こうちゃんを見ると馬鹿っぽいけど、本物は賢くって、優しくって、本当にステキな人なんだよ」
私は光太郎兄さんの素晴らしさを力説した。
「オレは馬鹿っぽくなんかないぞ!」
こうちゃんが拗ねた。
聖獣の機嫌が悪くなったせいで、その日王都は突然の大雨に見舞われた。私はこうちゃんの機嫌を取りながら、聖獣って本当に面倒くさいなと思った。
午後のその時間が近付くと私はぴょこぴょこしてしまう。もしケモミミや尻尾が生えていたら周囲にバレバレになっていただろう。
それくらいガイに会えるのが嬉しくてたまらない。
ガイに会えるようになってから不思議なくらい体調が良くなった。夢を見ないでぐっすりと眠れる。そうすると少しずつ食事も取れるようになった。
ある日、ウォルターとガイのお見舞いの時間が重なった。
いつもはガイは道場で鍛錬した後、午後3時くらいに王宮に来る。ウォルターは時間をずらして午前中に来ていたのだが、その日は用事があって午後にずれ込んだらしい。
「忙しいなら毎日来なくても大丈夫なのに」
「毎日ジュリア姉さんの顔を見ないと心配で眠れないんですよ」
「ああ、それはよく分かる」
心配性の男二人で頷き合っている。
年中体調不良でふらふらしている私は何も言えない。
「気がつくと、とんでもない事になっているし」
「俺も聖女になったと聞いた時は驚いた」
「別にわざと騒ぎを起こしてる訳じゃないのに‥」
「それでいつも騒動の真ん中にいるのは、一種の才能かな?」
とガイが言う。
「そんな才能いらないよ!」
ウォルターとガイ、二人して笑った。
才能というより乙女ゲームの呪いじゃないのかな。
「ところで、彼が誰なのか訊いても構わないか?」
ガイが私の隣にいるこうちゃんを見て言った。
「こうちゃんがユニコーンだって言ってなかった?」
「それは聞いたけど、彼の元になった人物について知りたいんだ」
「それは俺も知りたいと思っていました」
ウォルターも身を乗り出した。
「聖獣は聖女の親しい人間に擬態すると言われています。
こうちゃんはどう見てもライメルス人ではない。こうちゃんの元になった人は誰なんです?」
聖獣は聖女の親しい人に擬態するのか。だから光太郎兄さんだったんだ。
それは分かったけど、光太郎兄さんのこと、どう説明したらいいんだろう?
「ええと、兄みたいに慕っていた人と言うか‥‥」
兄そのもの、とは言えない。
「俺は会ったことがない人ですが」
「ウォルターがホーン男爵家に来る前に親しくしていた人なの」
そう、ウォルターが来る前、前世で親しくしてました。
「昔からジュリア姉さんには秘密が多い気がする」
「そんなには、ないよ」
ちょっと、前世のことを隠しているくらいだ。
「ジュリアがそんなに仲良くしている人なら会ってみたいな」
ガイが言った。
「もう会えない人なの」
「そうなのか。その、亡くなってしまっているのか?」
「うん」
前世の私が死んでしまって、もう会えない人なのだ。
「こうちゃんを見ると、まだ若かっただろうに」
「あのね、こうちゃんを見ると馬鹿っぽいけど、本物は賢くって、優しくって、本当にステキな人なんだよ」
私は光太郎兄さんの素晴らしさを力説した。
「オレは馬鹿っぽくなんかないぞ!」
こうちゃんが拗ねた。
聖獣の機嫌が悪くなったせいで、その日王都は突然の大雨に見舞われた。私はこうちゃんの機嫌を取りながら、聖獣って本当に面倒くさいなと思った。
0
お気に入りに追加
76
あなたにおすすめの小説
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。
せいめ
恋愛
メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。
頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。
ご都合主義です。誤字脱字お許しください。
【完結】いてもいなくてもいい妻のようですので 妻の座を返上いたします!
ユユ
恋愛
夫とは卒業と同時に婚姻、
1年以内に妊娠そして出産。
跡継ぎを産んで女主人以上の
役割を果たしていたし、
円満だと思っていた。
夫の本音を聞くまでは。
そして息子が他人に思えた。
いてもいなくてもいい存在?萎んだ花?
分かりました。どうぞ若い妻をお迎えください。
* 作り話です
* 完結保証付き
* 暇つぶしにどうぞ
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
おデブな悪役令嬢の侍女に転生しましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます
ちゃんゆ
恋愛
男爵家の三女に産まれた私。衝撃的な出来事などもなく、頭を打ったわけでもなく、池で溺れて死にかけたわけでもない。ごくごく自然に前世の記憶があった。
そして前世の私は…
ゴットハンドと呼ばれるほどのエステティシャンだった。
サロン勤めで拘束時間は長く、休みもなかなか取れずに働きに働いた結果。
貯金残高はビックリするほど貯まってたけど、使う時間もないまま転生してた。
そして通勤の電車の中で暇つぶしに、ちょろーっとだけ遊んでいた乙女ゲームの世界に転生したっぽい?
あんまり内容覚えてないけど…
悪役令嬢がムチムチしてたのだけは許せなかった!
さぁ、お嬢様。
私のゴットハンドを堪能してくださいませ?
********************
初投稿です。
転生侍女シリーズ第一弾。
短編全4話で、投稿予約済みです。
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
侯爵夫人のハズですが、完全に無視されています
猫枕
恋愛
伯爵令嬢のシンディーは学園を卒業と同時にキャッシュ侯爵家に嫁がされた。
しかし婚姻から4年、旦那様に会ったのは一度きり、大きなお屋敷の端っこにある離れに住むように言われ、勝手な外出も禁じられている。
本宅にはシンディーの偽物が奥様と呼ばれて暮らしているらしい。
盛大な結婚式が行われたというがシンディーは出席していないし、今年3才になる息子がいるというが、もちろん産んだ覚えもない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる