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9章、魔法学園、本格始動

第64話

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 ガイが私の護衛騎士になった。毎日、同じ時間になると王宮に現れる。
 午後のその時間が近付くと私はぴょこぴょこしてしまう。もしケモミミや尻尾が生えていたら周囲にバレバレになっていただろう。

 それくらいガイに会えるのが嬉しくてたまらない。
 ガイに会えるようになってから不思議なくらい体調が良くなった。夢を見ないでぐっすりと眠れる。そうすると少しずつ食事も取れるようになった。

 ある日、ウォルターとガイのお見舞いの時間が重なった。
 いつもはガイは道場で鍛錬した後、午後3時くらいに王宮に来る。ウォルターは時間をずらして午前中に来ていたのだが、その日は用事があって午後にずれ込んだらしい。
 「忙しいなら毎日来なくても大丈夫なのに」
 「毎日ジュリア姉さんの顔を見ないと心配で眠れないんですよ」
 「ああ、それはよく分かる」
 心配性の男二人で頷き合っている。
 年中体調不良でふらふらしている私は何も言えない。
 「気がつくと、とんでもない事になっているし」
 「俺も聖女になったと聞いた時は驚いた」
 「別にわざと騒ぎを起こしてる訳じゃないのに‥」
 「それでいつも騒動の真ん中にいるのは、一種の才能かな?」
 とガイが言う。
 「そんな才能いらないよ!」
 ウォルターとガイ、二人して笑った。
 才能というより乙女ゲームの呪いじゃないのかな。

 「ところで、彼が誰なのか訊いても構わないか?」
 ガイが私の隣にいるこうちゃんを見て言った。
 「こうちゃんがユニコーンだって言ってなかった?」
 「それは聞いたけど、彼の元になった人物について知りたいんだ」
 「それは俺も知りたいと思っていました」
 ウォルターも身を乗り出した。
 「聖獣は聖女の親しい人間に擬態すると言われています。
 こうちゃんはどう見てもライメルス人ではない。こうちゃんの元になった人は誰なんです?」
 聖獣は聖女の親しい人に擬態するのか。だから光太郎兄さんだったんだ。
 それは分かったけど、光太郎兄さんのこと、どう説明したらいいんだろう?
 「ええと、兄みたいに慕っていた人と言うか‥‥」
 兄そのもの、とは言えない。
 「俺は会ったことがない人ですが」
 「ウォルターがホーン男爵家に来る前に親しくしていた人なの」
 そう、ウォルターが来る前、前世で親しくしてました。
 「昔からジュリア姉さんには秘密が多い気がする」
 「そんなには、ないよ」
 ちょっと、前世のことを隠しているくらいだ。
 「ジュリアがそんなに仲良くしている人なら会ってみたいな」
 ガイが言った。
 「もう会えない人なの」
 「そうなのか。その、亡くなってしまっているのか?」
 「うん」
 前世の私が死んでしまって、もう会えない人なのだ。
 「こうちゃんを見ると、まだ若かっただろうに」
 「あのね、こうちゃんを見ると馬鹿っぽいけど、本物は賢くって、優しくって、本当にステキな人なんだよ」
 私は光太郎兄さんの素晴らしさを力説した。

 「オレは馬鹿っぽくなんかないぞ!」
 こうちゃんが拗ねた。 
 聖獣の機嫌が悪くなったせいで、その日王都は突然の大雨に見舞われた。私はこうちゃんの機嫌を取りながら、聖獣って本当に面倒くさいなと思った。
 

 
 
 


 
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